31295 20代 28
ρU 6 ハ∠ 8.48 7,86
⑥因子6「予防のための生徒全体への働きかけ」
「昨年度一年間の不登校人数の推移」の回答毎の、因子6「予防のための 生徒全体への働きかけ」の得点の平均値と標準偏差を表2−21に示す。
表2−21 因子6「予防のための生徒全体への働きかけ」の平均値と標準偏差 答
回 度数 平均 標準偏差
1(少ないまま)
2(多いまま)
3(増加した)
4(減少した)
5(一定でない)
ρU 6 ハ∠
8.484)考察
(1)各因子の信頼性について
最終的に、6因子27項目の構成となった。回答が偏っている項目や、
項目を削除したときのα係数が削除する前より高くなっている項目を削 除することにより、因子ごとの信頼性が向上した。
調査前の段階で設定したカテゴリーと、抽出された因子のまとまりに は違う部分もあったが、「チーム支援」「S Cとの連携」「情報の収集」「相 談体制」「会議」「予防のための生徒全体への働きかけ」という6因子の 構成となった。
中島・小泉(2005)にはなかった「S Cとの連携」「予防のための生徒全 体への働きかけ」が加わり、他職種との連携や予防のための取組につい ても確認できる形となった。当初、様々な他機関との連携についての項 目を設定していたが、スクールカウンセラーとの連携のみが因子として 抽出されたことは、スクールカウンセラーという立場の特殊性によるも のと考えられる。児童相談所や病院とは異なり、スクールカウンセラー は学校に直接訪れるため、連絡がとりやすく学内の現状もある程度把握 した上での対応が可能であることから、特にその立場の重要性が認めら れたのではないかと考えられる。一方、スクールカウンセラーが配置さ れていない学校も多く、配置されている学校と配置されていない学校と のデータの差を検証する必要があったと考えられる。
(2)各因子の妥当性について
全ての因子間には正の相関があり、チェックリストとしてのまとまり があることが示された。
尺度間相関については、因子l rチーム支援」、因子2「S Cとの連携」、
因子3「情報の収集」、因子6「予防のための生徒全体への働きかけ」の 4因子が、「実効感」を測る「理解協力感」「校内の状況」「校内の不登校
についての認識」の3因子すべてと正の相関があったことから、これら は相互に効果を示すと考えられる。その他、因子4「相談体制」は、「理 解協力感」とのみ関係があり、因子5r会議」は、r理解協力感」とr校
内の不登校についての認識」に関係があることが示された。
これらのことから、本チェックリストはr理解協力感」r校内の状況」
r校内の不登校についての認識」との関係があることが認められた。こ れは中島・小泉(2005)の結果と類似しているが、中島・小泉(2005)の結 果では「担任だけでなくチームを構成して指導・対応」という因子のみ がr校内の状況」にあたる因子と関係があったのに対し、本研究では因 子1rチーム支援」、因子2r S Cとの連携」、因子3r情報の収集」、因 子6「予防のための生徒全体への働きかけ」の4因子が「校内の状況」
と関係があるという結果となった。
本研究で追加した「S Cとの連携」と「予防のための生徒全体への働 きかけ」が遅刻や早退、別室登校などの「校内の状況」に関係があると 示されたことは、取組を考えていく上での新しい視点が加わったことに なると考えられる。
「昨年度一年間の不登校人数の推移」については、因子1「チーム支 援」において、不登校人数が「少ないまま変化無し」の学年と「増加し た」学年に得点の差があり、「増加した」学年の方が「チーム支援」を行 っていることが示された。また「多いまま変化無し」と「増加した」学 年は、「一定でない」学年よりも「チーム支援」を行っていることが示さ
れた。
因子3r情報の収集」においては、不登校人数がr一定でない」学年
が「少ないまま」「多いまま」「増加した」学年よりも得点が低かった。
因子2「SCとの連携」、因子4「相談体制」、因子5「会議」、因子6「予 防のための生徒全体への働きかけ」においては、どの推移を示す学年に も差がなかった。
以上のことから、不登校が多い学年のほうが「チーム支援」や「情報 の収集」という取組を多く行っているという結果が示された。
ただし、今回の調査では不登校生徒がいない学年のデータが多く、「不 登校生徒がいないので取組を行っていない」という意見が多かった。逆 に不登校生徒が「多いまま」の学年と「減少した」学年、「増加した」学 年のデータが、取組頻度と不登校の減少との関係について検討するには 少なかったため、構成概念妥当性の検証が十分でないと考えられる。構 成概念妥当性の検討のために、さらなるデータの収集が必要である。
また、今後、年度の初めと学期の終わり毎に本チェックリストを実施 し取組を検討することで、不登校生徒がどう変化していくかについての 追跡調査が必要であると考えられる。
なお、本研究では「不登校予防のための生徒への働きかけ」について の項目を取り入れた。本調査の結果からは、行なっていない学校が多い ことが示されたが、今後必要になってくる項目であると判断した。大平・
山中(2006)によると、ストレスマネジメント教育プログラムを行なうこ とで、学級の雰囲気が改善され、いじめ被害感が減少したと報告されて いる。ストレスマネジメント教育についての項目を設定することで、教 員が興味をもち、実施するきっかけになることが予想される。
(3)本チェックリストの課題
予備調査の段階で含まれていた「生徒の記録」についての項目の多く が、尺度を構成している内に削除された。そのため、生徒のアセスメン
トに関する項目が少ない。生徒についてのアセスメントは、支援を行な う際に非常に重要である。アセスメントが十分になされないまま支援を 行なおうとすると、不登校生徒本人の二一ズとすれ違いが起こる可能性 がある。勝崎・川島(2005)では、「怠惰」な様子を見せていた不登校の子 どもに対して、rいじめ」を受けていた子どもやr教師恐怖」の子どもよ りも「嫌になる」「不愉快だ」という嫌悪的なイメージをもたれやすいと している。「朝起きられない」「体がだるい」と訴える生徒に対して、十 分なアセスメントがなされなければ、「怠惰」と見なされ嫌悪的なイメー ジをもたれてしまう可能性がある。適切な支援を行なうために、石隈ら
(2005)が用いている「茨城式S O Sチェックリスト」や「田村・石隈式 援助資源チェックシート」、「石隈・田村式援助チームシート」などを有 効に活用することで、生徒の状況や二一ズ、環境資源を得られることが
できるだろう。
また、本研究では、どの学校の不登校対応にも効果的にはたらくと考 えられる取組について探求した。そのため、各学校の特色に応じた取組 については含まれていない。例えば、rスクールカウンセラーがいる」と いう前提で設定した項目については、スクールカウンセラーがいない学 校ではそれに変わる項目が必要であったが作成されていない。また、大 規模校、小規模校でも、教育相談担当の教員の配置などの教員の構成に も大きく差があることが考えられる。どの学校にも適用可能な取組を示 し、各学校の取組の特徴について考察できることは、本チェックリスト の利点の一つであるが、それを活かして各学校が自分の学校に適したチ
エックリストに改訂していくことも考えていくとさらに使いやすくなる と考えられる。
(4)チェックリストの活用について
チェックリスト後のコメントには、rこの取組が必要なことはわかって いるが、実際に行う時間がない」という意見が多かった。この件に関し ては、学校毎に事情が異なることと思うが、このチェックリストの結果 を学年全体、あるいは学校全体で振り返る際に、自分の学校の現状に対 して、その取組が必要であるかどうか、またその取組を行うためには何 が必要になり、誰がどの分担を行うのかについて話し合う必要があるだ ろう。r取組を行っていないからいけない」というのではなく、r自分の 学年(学校)でその取組をする必要があるかどうか」を考えるきっかけと
しての利用を望みたい。
そこで、このチェックリストを元にした話し合いの促進のために、チ ェックリストの因子ごとに、話し合いのポイントとなると考えられる内 容について、記述する欄を設けることとした。ポイントとする内容につ いては、rこの取組が今あなたの在籍する学校(学年)にどのくらい必要だ
と思うか、またそれは実行可能であるか」rこの取組をすることでどのよ うなメリット・デメリットが考えられるか」「この取組を行うためには誰 のどんな行動が必要になるか」などである。
取組を実行する際に、時間的負担や労力が大きすぎることのないよう、
あらかじめ話し合われることで、必要だと思う取組が実行できるような 環境に近づけられるのではないかと考えられる。