実際の人工衛星では,姿勢角や角速度をセンサで測定し,姿勢決定の入力として用いており,本シミ ュレータでは,3.1.4 項,3.1.5 項で説明したキネマティクス方程式及びダイナミクス方程式で算出され た姿勢角及び角速度を真の角速度とし,この値にセンサのランダムノイズを加えることでセンサの出力 を模擬している.この節ではセンサのノイズの式を示し,模擬したセンサの計算値の妥当性の検証につ いて述べる.
4. 2. 1 恒星センサ( STT )
本研究で用いる恒星センサは,AxelSpace社製のAxelStar-3を搭載すること想定している.AxelStar-3
は J2000.0 赤道面座標系基準での機体座標系の姿勢角誤差をクオータニオンで出力するセンサであり,
機体座標系とSTTのアライメント誤差はないものと仮定して,機体座標系のx軸とSTTのロール軸が 一致するものとしている.STTで生じる誤差としては,出力値であるクオータニオンの姿勢決定値のば らつきがランダム誤差となり,姿勢決定制度としてロール(光軸回り)は 77[arcsec(3σ)],ピッチ/ヨー
図 4.1 主要座標系間の関係18)
(光軸回り以外)は 7[arcsec(3σ)]が生じる.本シミュレータにおいて,この決定精度誤差を表現するた めに,衛星の真のクオータニオンをq,STTのランダムノイズをn,STTの出力するクオータニオンを𝒒𝑺𝑻𝑻
とする.ここで,ランダムノイズnは以下で示される.
𝒏 = [𝑛𝛷 𝑛𝜃 𝑛𝜓]𝑇 (4.1)
ランダムノイズは,すべて白色雑音であると仮定し,次式で規定する
E[𝑛𝛷(𝑡)] = 0,E[𝑛𝛷(𝑡)𝑛𝛷(𝑡′)] = 𝜎𝑛𝛷2 (𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′) E[𝑛𝜃(𝑡)] = 0,E[𝑛𝜃(𝑡)𝑛𝜃(𝑡′)] = 𝜎𝑛𝜃2 (𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′) E[𝑛𝜓(𝑡)] = 0,E[𝑛𝜓(𝑡)𝑛𝜓(𝑡′)] = 𝜎𝑛𝜓2 (𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′)
(4.2)
ここで,𝛿(𝑡 − 𝑡′)は連続系におけるデルタ関数であり,次式を満たす.
∫ (𝑡 − 𝑡′)𝑑𝑡 = 1
∞
−∞
(4.3)
STTのランダムノイズによる姿勢変化の方向余弦行列はnが微小量であることから以下の式に近似され る.
C ≅ [
1 𝜓 −𝜃
−𝜓 1 𝛷
𝜃 𝛷 1
] (4.4)
式(3.7),式(3.9)より,ランダムノイズによる姿勢変化のクオータニオン𝒒𝒏𝒐𝒊𝒔𝒆は以下で近似される.
𝒒
𝒏𝒐𝒊𝒔𝒆≅ [𝑛𝛷 2𝑛𝜃 2
𝑛𝜓
2 1]
𝑻 (4.5)
以上より,STTより出力されるクオータニオン𝒒𝑺𝑻𝑻は次のように計算できる.
𝒒
𝑺𝑻𝑻= 𝒒 ⊗𝒒
𝒏𝒐𝒊𝒔𝒆= 𝑫(𝒒)
𝒒
𝒏𝒐𝒊𝒔𝒆= [
𝑞4 −𝑞3 𝑞3 𝑞4
𝑞2 𝑞1
−𝑞1 𝑞2
−𝑞2 𝑞1
−𝑞1 −𝑞2
𝑞4 𝑞3
−𝑞3 𝑞4
]
(4.6)
STT により出力されるクオータニオンの計算値の妥当性の検証のために,J2000.0 赤道面座標系に対 する初期姿勢を[0 0 0]𝑇とし,姿勢変動がないものとして出力した値𝒒𝑺𝑻𝑻を式(3.4)及び式(3.8)からオ イラー角に変換し,それぞれの軸周りのオイラー角ごとに確率変数を計算したものを図 4.2 及び図 4.3 に示す.
図4.2,図4.3より,各軸の姿勢決定精度のグラフが正規分布となっていることから,シミュレータに
よるSTTに出力はAxelStar-3の姿勢決定を模擬できている.
4. 2. 2 MEMS ジャイロセンサ
本研究で用いる MEMS ジャイロセンサはシリコンセンシング社製の CHR02-025 を用いており,
CHR02-025二より出力される1軸周りの角速度𝜔𝐼𝑅𝑈は,衛星の真の角速度をω,MEMSジャイロのバイ
アスレートをb,システムノイズを𝜂1とすると以下のように表現される10).
𝜔
𝐼𝑅𝑈=𝜔 + 𝜂
1+ 𝑏 (4.7)ここでバイアスレートbの誤差モデルにはランダムウォークモデルとECRVモデルの2つがあり,次式 で表される.
ランダムウォークモデル 𝑏̇ =
𝜂
2 (4.8)図 4.2 STTによる姿勢決定精度(ピッチ/ヨー)
図 4.3 STTによる姿勢決定精度(ロール)
ECRVモデル 𝑏̇ = − 1
𝜏𝑏𝜔𝑏+
𝜂
2 (4.9)本論文ではランダムウォークモデルを採用しており,実際の多くの科学衛星でもランダムウォークモデ ルが採用されている.システムノイズ,ランダムウォークノイズは白色雑音であると仮定すると,次式 で規定される.
𝐸[
𝜂
1(𝑡)] = 0,𝐸[𝜂
1(𝑡)𝜂
1(𝑡′)] = 𝜎𝑣2(𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′) (4.10) 𝐸[𝜂
2(𝑡)] = 0,𝐸[𝜂
2(𝑡)𝜂
2(𝑡′)] = 𝜎𝑢2(𝑡)𝛿(𝑡 − 𝑡′) (4.11) 𝛿(𝑡 − 𝑡′)は連続系におけるデルタ関数であり,式(4.3)の値である.また,𝜎𝑖の次元はそれぞれ次のよう になる.𝜎𝑣2 [rad2⁄ ] s 𝜎𝑢2 [rad2⁄ ] s3
(4.12)