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ヌエック(国立女性教育会館)公開シンポジウム

8 プログラムの内容

(1) 第1部「少子化社会の子育てのゆくえ−広がる子育てサークル」

①子育てサークルの活動に関するアンケート調査報告(報告:安達 一寿、中野 洋恵)

国立女性教育会館が行った全国11都道府県における子育てサークルのメンバーを対象 とした「メンバー調査」(5000人)と、子育てサークルの代表者を対象とした「リーダー 調査」(1000人)の中間報告。「メンバー調査」からはサークル活動が個人に与える影響、

家族に与える影響等について、「リーダー調査」からはサークルの活動内容、行政支援 に対する考え方等について報告した。

②シンポジウム

育児ネットワークでの活動(報告:鈴木 玲子)

子育て情報誌の刊行、月刊「育児ネットBOX」の発行、助産婦を交えてのマタニティ サロン、子育てサロンなどの活動によってネットワークを広げてきた。児童福祉課から 助成金を得ているが基本的には会費によって運営している。ネットワークを県内に広げ ていきたいと思い、1999年10月に「彩の国さいたま子育てネットワーク」を立ち上げた。

活動を続ける中で専業主婦には場所を借りるお金もないし、伝える術もないということ に気がついた。自分のパートナーとの間でさえ、人と関わると傷つくと思う人も多く、

人間関係の難しさも感じている。

中野区の子育て支援(報告:田島 昭子)

子育て中の親から最初の問題意識やエネルギーを引き出すための条件整備が行政の役 割であると考えている。1992年に、地域の中で子育て支援の核となる人を養成するため に子育て仲間づくりリーダー育成事業が始まった。プログラムには、①グループワーク、

②実技講座、③参加体験、④自主企画講座の4つの柱がある。修了生たちが力をつけ、

児童館やPTAで活躍するようになった。しかし養成できる人数には限りがあるため、

集中講座方式をやめ、児童館で地域に密着した形でのリーダー育成を検討している。修 了生の会では事務局も決まり、着々と代替わりをしている。住民自治が進み自主活動が 育ってくる中で、行政はどのように地域を活性化していったらいいかが課題である。

子育てサークルと行政支援(報告:汐見 稔幸)

17―18年前に大団地に引越したとき、ひとりの母親の働きかけに始まり、子育てサー クルができた体験をした。横浜市の子育て支援計画づくりにも関わっている。親の要望 に行政があれもこれも支援すると、親の育児能力をうまく伸ばせない。育児支援は、き ちんと訓練を受けていないとできる仕事ではない。育児アドバイスを上手にしてくれる 人を配置するシステムづくりと、専門的な支援者の養成が大事になってくる。すべて自

(左から)結城氏、鈴木氏、田島氏、汐見氏 熱心な参加者

前でやれというのではなく、環境を整えるのが行政の役目である。行政は公的な論理を 大事にしなくてはならない。サークル活動にうまく出てこない人々への支援についても 考えてほしい。母親が自分を解放できる場をどうつくるのか問題を立て、育児支援と育 自を統一的に考えていかなければならない。子どもと関わる楽しさを父親にも体験して ほしい。

質疑応答・まとめ(コーディネーター:結城 恵)

行政からの支援の方法やサークル内の人間関係の調整についての質疑応答が行われ た。質疑応答を通して、子育てサークルは親からじかに吸い上げた子育て中の親の声を 社会に投げかけ、行政はそれを基盤にしてプログラムづくりや親同士が手を携えて子育 てをすることができるきっかけをつくるために大きな意味を持っていることが明らかに なった。そしてその結果として、親も子もそれぞれが子育てというサークルの中で育っ ていくことが望まれる。

(2) 第2部『国立婦人教育会館研究紀要「第4号」』入選論文報告会

①入選論文の報告「刑事司法とジェンダー」報告者 宮園 久栄(中央大学兼任講師)

この論文でこれまで事実であるかのように言われてきた「女性犯罪は稀少である」、「女 性は刑事司法過程において寛大な取り扱いを受けている」、「法は家庭に入らず」という 3原則について検討した。これらの原則は、女性は弱く保護すべき存在であるという女 性に対するステレオタイプ的なイメージに基づくものであり、事実というより神話とい うべきものである。正義の名の下に行われている刑事司法過程にジェンダーバイアスが 潜んでいることを、この論文によって明らかにしようとした。

刑事司法における男性優位の支配構造を変えるためには、立法、司法過程を担うのは 大部分が男性であるという事実を変え、女性の声や経験をそのような場に生かしていく ことを目指すべきである。これまで刑事司法はジェンダーバイアスを無自覚に内在さ せ、司法手続きを通してジェンダー支配構造を強化する役割を担ってきた。刑事司法が 変われば、人々の意識も変わる可能性があるのではないか。

②講評 大沢 真理(東京大学教授/国立女性教育会館研究紀要委員会委員長)

紀要第4号は17本の投稿があり、うち3本の論文と1本の研究ノートを掲載しており、

テーマが「女性と人権」だったことから、女性に対する暴力の問題に投稿が多かった。

掲載された論文、研究ノートについての講評が行われた。

掲載論文

「人権」を論ずることとの間隔―講義「人権」をめぐる考察―(根岸 泰子)

刑事司法とジェンダー(宮園 久栄)

加害者のDV克服支援から新たな視点―フェミニズムと 加害者臨床 の統合モデル に向けての試論」(草柳 和之)

研究ノート

A Cross–Country Analysis of the Economic Impacts of Female Education(畑佐 伸英)

9 今後の課題・展望

(1) 平成12年度はテーマが子育てサークルの活動と行政の家庭教育、子育て支援であった ことから行政担当者や団体・グループ関係者の参加が多かった。また保育をつけたこと により子どもを持っている若い親層の参加が見られたことも今回のシンポジウム参加者

の特徴である。これまで当館の事業に参加の少なかった若い層の参加が得られたことは 大きな成果であるといえよう。今後も時宜に応じたテーマ設定の調査研究を実施し、そ の成果を公開していくことは不可欠である。

(2) プログラムをシンポジウムと「国立婦人教育会館研究紀要」の入選論文報告会の2部 構成にしたことによってバラエティにとんだプログラムとなり参加者からも好評を博し た。

(3) 2月末という開催時期は、参加者、報告者双方にとっても忙しい時期なので検討が必 要である。

(4) 東京都教育委員会との共催により場所の確保とともに、東京都広報の紙面提供、ラジ オスポット等有効な広報手段を用いることができた。今後も公開シンポジウムの開催に 当たっては共通するテーマで開催できる機関・団体等との共催を積極的に進める必要が ある。

(事業課主任研究官 中野 洋恵)

論文の報告をする宮園氏 研究紀要の講評をする大沢氏