第 4 章 実験装置 37
4.6 光双極子トラップ
4.6.4 トラップ周波数測定
本研究ではシングルビーム光トラップ中の原子の散乱を観測することで研究を している。よってシングルビーム光トラップのトラップ形状を詳細に知ることは 非常に重要である。ガウシアンビームによるトラップは中心付近では調和ポテン シャルと近似して良いため、3軸の運動はそれぞれ独立であり、3軸のトラップ周 波数を知ることが出来れば原子の密度などの情報を得ることが出来る。本研究で はトラップ周波数の測定は2種類の方法で行った。一つは原子雲の大きさが変化 するブリージングモードの測定、もう一つは原子雲の重心位置が変化するスロッ シングモードの測定である。本研究ではビームの動径方向のトラップ周波数をブ リージングモード測定、ビームの軸方向のトラップ周波数をスロッシングモード 測定で測定した。
またこの測定を様々なパワーで行い、4.11式に当てはめることで焦点でのビー ムサイズを正確に求めることが出来る。
• ブリージングモード
ブリージングモードの測定ではシングルビーム光トラップを一瞬(予想さ れるトラップ周期の1/10程)だけ切り、捕獲し直すことで、原子のトラッ プ内運動に位相の揃った励起を行い、その結果生じる原子雲の大きさの時 間変化(ブリージングモード)から原子のトラップ周波数を測定できる。図 4.14はブリージングモードとトラップ周波数の関係を表したものである。
図 4.14: ブリージングモードとトラップ周波数の関係
図4.14の(a∼e)はそれぞれある時刻の状況を表しており、位相の揃った励 起なのでポテンシャルの極小値に来るタイミングは重なり(b, d)、坂を登り きるタイミングも重なる(a, c, e)。トラップの1周期とはある原子が元の位 置に戻るまでの時間なので(a) (e)までにかかる時間であり、この間に原子 雲の大きさは(a)-(c)、(c)-(e)の2回振動する。よってブリージングモード の周波数はトラップ周波数の2倍となることがわかる。
ブリージングモードの測定では相互作用があると周波数が変化する。よっ て本研究ではスピン偏極された原子集団を用いることで原子散乱が起きな い状況を準備して測定を行った。
実際のブリージングモード測定の例を図4.15に記す。
図 4.15: ブリージングモード測定の例
• スロッシングモード
光トラップの軸方向のトラップ周波数はスロッシングモード測定にて行っ た。これは動径方向のトラップ周波数が軸方向のトラップ周波数よりも100 倍程大きいので、軸方向の励起を待つ程トラップを切ってしまうと原子が 動径方向に拡がりすぎて再捕獲出来なくなるためである。
軸方向に関しては磁場による影響があるため、本研究を行った磁場159 G で測定を行った。スロッシングモード測定は原子の重心位置を励起するこ とによって行う。磁場によるトラップ中心位置とシングルビーム光トラップ 中心位置が微妙にズレているために、予めどちらかのトラップが支配的な 実験条件に設定して原子をトラップしておき、瞬時に(予想されるトラップ 周波数の1/10程度のスピードで)目的のトラップ条件に持っていくことで 原子の重心位置を励起できる。このとき測定したいトラップ条件によって 初期状態を変える必要がある。例えば測定したいトラップ条件が光トラッ プが支配的なら初期条件は磁場トラップが支配的な条件にしておけばよい。
ブリージングモードの時とは違い、重心位置の時間変化の周期はトラップ 周期と一致する。
実際のスロッシングモード測定の例を図4.16に示す。
図 4.16: スロッシングモード測定の例