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ベ トナムの貿易改革の行方 一国際貿易協定のインパク ト

貿易や直接投資に開放的な政策を採 ることが成長率を高め,貧困層の所得 増大にも資することは,

Do l l a ra n dKr a a y( 2 0 0 2 a ,b)

などの実証研究や これ までの分析か ら明らかになっている。では,ベ トナムの貿易改革の促進要因, 阻害要因は何か。世界銀行の

Au f f r e t ( 2 0 0 3 )

は,ベ トナムが今後貿易改革を 進める上での課題を二点 (①国有企業改革,国有銀行改革,徴税管理改革等 の進展の遅い改革 との調整,②

WTO

加盟)挙げ,この克服がベ トナムの市 場経済化の持続的進展を占う試金石 となるとしている。

(1)貿易改革 と他の構造改革との調整

Au f f r e t ( 2 0 0 3 )

によれば,ベ トナムは これまで,国有企業など国内市場向 けの企業を保護 しなが ら,貿易制度の 自由化を進めることができた。例えば,

コメの輸出や肥料の輸入を民間企業が事実上行 えない ようにする関係省庁の 厳 しい規制等がいまだに存在する。関税構造 も,国有企業が用いる投入物 に ついて低 く設定 されるな ど,国内産業に有利なように設定 され,AFTA加 盟 に伴 う関税引 き下げに対 して も主要品 目は 「一般例外 リス ト」 として引 き 下げの例外 とされていると言 う。更に,形式上全ての企業が可能 となってい

る銀行 か らの外貨取得 も,実際は国有企業 に代表 される大企業のみが国有銀 行か ら購入で きる との ことである。

この ような国内市場指向型産業 (特 に国有企業)を優遇する政策は,経済 主体の投資意欲 に影響 を与 え,多大な厚生上の損失を生んでいる。公共投資 や外国の直接投資は保護水準が高い産業 (製造業,特 に自動車,二輪車,衣 料繊維,プラスティック製品)を中心に行われ 保護水準の低い農業に対 し ては資源が流れて行かない。合弁事業 も,外資 と民間 との合弁ではな く,国 有企業 との間の合弁が奨励 されるため,物的資本が急速 に増大 して も,その

こと自体は市場経済化 を促進するものではない。

しか しなが ら,Auffret(2003)は,AFTA13)やUSBTA14)な どこれま で批准 して きた国際貿易協定を実施 していけば,国有企業の保護水準の引 き 下げ等 を通 じ,「国有企業 ・銀行改革」は深化す る可能性 がある と論 じる。

AFTAの下で数量制限は廃止 されることになってお り,暫定除外 リス トに

13)AFTA加盟に際 しベ トナムは,①ASEANか らの輸入の95%に当たる関税 を2003‑2006 年までに最大20%削減 し,無税〜5%の関税にする,②工業品に係 る平均関税率を2004年 初頭までに50%削減す る,③2004年初頭 までに,織経,皮革,木材製品,非金属鉱物製 品 (ガラス,鞄器等),食品の平均関税率を60%以上削減することを約束 している。

14)USBTAにおいてベ トナムは,米企業の貿易 自由化,特定品 目の関税引 き下げ,ほ とん どの製品での数量制限の廃止 といった 「モノの貿易」の 自由化に加え

,

「サービス貿易」

について,ウルグアイ ・ラウン ドで低 ・中所得国が約束 した市場アクセス以上の 自由化 を行い,銀行 ・保険 ・リース等の業態 に米企業 (過半数の株式所有)の参入を認めるこ

ととしている。

5 部門別の有効保護率 (ERP) (2002年)

部 門 有効保護率 (%)

1997 2002

農業 7.7 7.4

鉱業 6.1 16.4

製造業 121.5 96.0

単純平均 59.5 54.1

(出所)Auffret(2003)

ある品 目は2003年 までに関税化 リス トに移 され, 2006年 までに6%以下の関 税率 に逓減 される。また,センシテ ィブ品 目は2010年 までに解消することと

なっている。その結果,平均

CEPT

関税率は, 2002年の10.7%から2006年 には3%に大幅に低下 し,国有企業の保護水準 も低下する。 これに対 して補 助金等の保護政策 を継続するのではな く,民営化や国有企業 と国有銀行の関 係浄化で対応 し,産業の競争力をつけてい くこともで きよう。また,

USB TA

では,米国に過半数の資本取得 を認める等,銀行 ・保険を含むサービス 分野の開放 を約束 してお り,これは銀行 ・保険部門の競争力強化や銀行改革, 銀行規制 の強化の進展に資することともなろう。

更にAuffret(2003)は,国際貿易協定の実施が 「徴税改革」を深化 させる 機会を提供する と主張する。 これまでの経験 か ら,

AFTA

,

USBTA

の ような関税率の削減は,中長期的には,関税 を含む輸入税収入を増加 させる はか,国内のタックス ・ベース も広げ ることにより,政府の歳入増大に繋が るとい う。そのため,徴税改革の一環 として,貿易協定の影響を織 り込んだ 長期の歳入戦略を作 る必要がある と主張する。税収の増加は,公共投資に用 いるべ き政府貯蓄の増大を意味 し,新古典派の資本蓄積方程式や従来の実証 分析か らも,成長率を高める方向に働 くもの と考 え られる。

国際貿易協定の実施はまた,「貿易関連 インフラの改善」を ももた らし得

る。USBTAに伴 うWTO規定に則 った関税評価の導入や,国際海事機構 (IMO)の国際海上交通円滑化条約の批准 に伴 う必要文書の簡素化が,質 易の効率化 に資 し,貿易量を拡大 させ ることが期待 される。 しか し, この よ うな貿易量の拡大 について行 くには,前述の通 り,運輸産業の規制緩和や標 準化,インフラ ・サー ビスへの民間参入等 による貿易関連 インフラの改善が 緊要であろう。

( 2)W T

Oへの早期加盟

Auffret(2003)が指摘す るベ トナムの貿易拡大 に関す る第二の課題 は,W TO加盟である。ベ トナムは,1995年1月にWTOへの加盟 申請 を行 って以 莱,市場アクセスに係 る二国間交渉 を進め るはか,2003年5月まで六回の作 業部会 を開いて きた。 しかし,第

6

回の作業部会で も,ベ トナム側か らの情 報 が不足 している等の議論があ り,作業部会議長 が 「ベ トナムが2005年 まで に加盟する との 目標 を達成 したいのであれば,成功するか どうかはベ トナム 側の飛躍的な努力にかかっている」 と述べ るほ ど交渉は進展 していない。

他方 ,Auffret(2003)によれば,WTOへの早期加盟はベ トナムに大 きな 利益を与える。そ もそ もWTOは無差別原則等の規定 を加盟国には適用する が,非加盟国には適用 しない (差別する)ため,その点だけか らもWTO加 盟はベ トナムに利益を与 える。更に,中国のWTO加盟後の動 きをみて も, 法制度の整備,統計 ・会計 ・公開情報の整備等 により,生産性の向上 と対 内 投資の増大 が見 られ る とい う。 また,近年輸入国は関税 ではな く,

SPS

(衛生 ・検疫),ダン ピングや補助金 に対す る相殺措置 といった非関税措置 に訴えることが多 く,ベ トナムか らの輸 出もEU,米国,カナダ等の これ ら の措置の対象 となっている。しかし,ベ トナムはWTO加盟国ではないので,

これ らの措置 に対 してWTOの 「紛争処理手続 き」を利用することがで きな い。そのため,個別 に貿易紛争を処理することとなるが, これは極めて高 く つ く。更に,WTOの 「加盟条件」は既加盟国の要求の増大 によ り時間 とと もに高 くなってい く傾 向があ り,ベ トナム としては,「加盟条件」が上昇す

るであろう ドーハ ・ラウン ド決着

(2005

1月1

日予定)前 に加盟すること が重要 となる。

特 に,中国が WTO に加盟 した ことにより,ベ トナムの

WTO

加盟は更に 喫緊の課題 となっている。第三国市場 での中国 との競争は

,2005

年か らの中 国繊維輸 出の数量制限廃止等 に伴 い,激 しさを増 して くるもの と考 え られ る

15)

。また,中国の

WTO

加盟は中国のビジネス環境を改善 し,ベ トナム等, 同様の比較優位を持つ国へ行 くはずであった直接投資が中国へ向かうことも あ り得 る

16)

0

この ような国際環境の もと,ベ トナム政府は

WTO

加盟 に高い優先度を置 き,米国 とも

WTO

と同様の交渉を経験 した。それにも拘わ らず,ベ トナム の

WTO

加盟交渉は進展 していない。

Auffret(2003)

によれば, これは,国 有企業や国有銀行に影響する貿易 自由化 に反対する勢力 と,貿易改革の早期 実施に積極的な市場経済指向の勢力 とのせめぎあいになっているため とされ る

。Auffret(2003)

も述べている とお り

,

「 貿易改革 を実施できるかどうかが, 市場経済 に対 す るベ トナムの コミッ トメン トの強 さを表 す試験場

(testing ground)

」 と言え,更に,ベ トナムが今後 とも高成長を続けることができる

か どうかを占う試験場 とも言 えよう。

15)Auffret(2003)によれば,中国のWTO加盟 によ り,食品加工等の品 目で,ベ トナムか ら中国への輸 出は増 えることが予想 され るためベ トナムの輸 出額全体はさほど変化 しな いが,第三国市場 (特 に米,EU)では,特 に繊維製品 (ベ トナムの輸 出の16%)につ いてベ トナムの大幅な輸 出減少が予想 される。

16)Auffret(2003)によれば,電気通信,流通,金融等のサー ビス部門を外資 に認め,内国 民待遇 を与 えた こと,及び知的所有権保護の国際基準を遵守 し法制度の透 明性を増す等 の措置 を採 った ことによ り,直接投資はベ トナム等か らむ しろ中国へ向か う可能性が強 い と言 う。その結果,ベ トナムの直接投資は2010年 には30%も減少 し,成長率 も低下す る との推計 も出ている。

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