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国際的なディスカバリーの問題 1間題意識一国際的Eディスカバリーの問題

 Eディスカバリーの問題は、アメリカ国内の訴訟の問題に留まらない。それ は、独禁法の域外適用だけでなく、近時の特許紛争のように、国境を越えた訴 訟においても問題となる。

 現在の国際取引の状況は、コミュニケーション技術の進歩によってグローバ ル経済が加速することが特徴的であるといえる。その場合、Eディスカバリー

の問題はかなり複雑な問題を生み出す。とくにコミュニケーションが国境を越 えて行われるような法律行為を含む訴訟に関しては、混乱を引き起こす可能性

がある。

 さらにEディスカバリーの対象が複数言語でデータが書かれている国際的 な場合にはもっと問題となる。例えば、アメリカにおいて提訴された訴訟に関 連して、訴訟当事者が非英語圏の他の国々の相手方からE S Iを収集し、それ

を検討できる範囲などについて複雑な問題が生じる。まず、翻訳はどうするか、

何語でおこなうのか、それらについては、どのように非開示のための保護命令 が認められるか、あるいは各々の国の国内法規との抵触はどう解決するのか、

などがたちまち問題となる。これまでは一般的にそのような争点を解決する場 合には、国際的な法的原則が利用されてきた。1しかし、現在の国際法原則は

E S Iを考慮して立案されてこなかったし、その規則は電子証拠の適正な取扱 いを反映するための変更がまだ加えられていない。2

 たとえば、提出できるESIとその保護についても、世界の多くの国々にお いては、データ内の例えばプライバシーにかかわる部分は基本的人権に基づく 個人情報の保護という法的構成がとられている。しかし、アメリカにおける個 人情報概念は、これよりやや狭く、個人情報という場合、個人の医療記録の情 報、社会保険番号および銀行口座情報のような特定のカテゴリーが考えられ、

その他はもっぱらプライバシー権の問題として扱われる。欧州経済地域(EU)

加盟国いくつかの先進国においては、個人情報の概念は、アメリカよりはるか に広範であり、個人を認識する広範な情報を含む。これらの個人情報は、アメ

リカにおけるよりもはるかにより広範に受け入れられている。そのような場合、

ES Iの情報開示はアメリカ国内はど自由に進むことは期待しにくい。また、

個人データの範囲やその「処理」について国家問で異なる法制度や概念がある

 さらに、アメリカにおけるES Iデータの処理のあり方は、一般的に一つの 形態からもう一つの形態ヘデータを変える(例えば電子回路から別なハードデ イスクヘ、あるいは紙へ)か、またはデータの検索条件を追加、もしくは再検 索するというES I対応の技術的対策が中心となる。これとは対照的に、いく つかの国々における処理では、それに加えてES Iを収集すること、保存する こと、準備することおよび移動させることに関して、これらのデータ保護に関 する国々の個別法規はその違反については別途、刑法等で刑罰と金銭的な制裁 を課すことが立法化されている。言い換えれば、データの処理さえ禁止する 国々においては、アメリカの弁護士は、訴訟に用いるためにそれを検討すると か、それらをアメリカに移動させることさえ妨げられる。また、個人情報とし て電子メールの発信者または受取人の識別の保護を含む国では、アメリカの訴 訟制度が求めるものと、そのような国際的プライバシー保護体制とが本質的に 対立してくることになりそうなのは容易に理解できる。

 この点について、今までのアメリカの連邦裁判所の態度は、一方で楽観的で あり、強引でもある。国際紛争に直面すると、大多数のアメリカの裁判所は、

訴訟に対する外国のデータの重要性、文書提出要求の特定性の程度、情報がア メリカに元々あったものかどうか、情報を得るために代替手段が存在するかど うか、どの程度非開示がアメリカまたは情報が求められている外国の利益を損 なうかについての範囲、そしてディスカバリーに反対している当事者の法的遵 守と誠実性を含む、さまざまな要因を争点としてアメリカ法の枠内で扱ってき た。4しかし、連邦裁判所は、他国の情報提出に関するブロック(阻止)制定 法があっても、連邦民事訴訟規則に勝るものではないと信じ、判決し続けてい る。なぜなら問題となっているディスカバリーがその範囲において制限される のは許されないことであるし、何よりもアメリカが訴訟の結果に対して重大な 利益を有していると考えられているからである。

 国境を越えるディスカバリーの争点を規定する国の法律を特定することは、

簡単ではない6とくに電子証拠は新しい挑戦を提示する。なぜならそれは多く の場所に「存在する」からである。例えば、電子メールは、A国の従業員のコ ンピューターに、B国のサーバーに、C国の第二のサーバーに、D国の個人に 関する持ち運び用のデバイス(装置)に、そして、E国のこれらの個人の会社 本社内に、全てに同時に存在することが可能である。これらの国々の各々のデ ータ保護についての法律は、個別に検討する必要がある。たとえば個人情報を アメリカに移送する必要がある訴訟の場合に関する一つの解決策は、「民事あ るいは商業問題における司法及び司法外書類の海外への送達に関するハーグ 条約第10a条」5を行使することを裁判所に求めることである。ハーグ条約は、

裁判所の管轄の中で関連する証拠を収集する際に、ある国の裁判所が他の国の

裁判所から支援を要求することができる場合に、一連の手続を確立した。この 点、連邦裁判所も、当事者が外国のデータを得ようとじ、また得るためにはハ ーグ条約を用いなければならないと判決している。しかしながら、他方で、そ れぞれの国の制定法を上手に行使する可能性はの問題は別問題である。という のも、多くの他国は、それらが外国の裁判地で訴訟に関する情報についてのデ ィスカバリーを許容しないとすでに宣言しているからである。6特に国民の安 全が開示を許可することによって危険にさらされると国家が感じる場合には、

国家に対して要求に従う義務もない。

 このようにES Iのディスカバリーに関連を巡る国際的問題は」層多様で あり、また複雑な問題を生む。そのような例が次に示す判例である。

2国際的ディスカバリーが問題となった事例

ドイツ国内での民事訴訟において当事者でないものの有する文書の

ディスカバリーをアメリカの連邦地裁に認めさせた事例一 n re

Application of Gemeinshchftspraxis Dr.lVled.Schottdorf for an Order Directing t11e Production of Certain Documents t◎Assist a Foreign Tribuna■Pursuant to28U.S.C. §1782.2006∪一S.Dist.

LEX■S94161(2006)

 本件は、外国(ドイツ)での民事訴訟に関連して、一方当事者がアメリカの 連邦地裁にドイツで開示しなかった情報についての開示を、ディスカバリーの 一環として求めた事例である。連邦地裁は、当該訴訟において、ドイツでの訴 訟に関わっているドイツ人の訴訟当事者は、(1)アメリカに存在しない文書 であり、(2)現在実際に彼らが訴訟中のドイツの裁判所からでは入手できな い文書であっても提出命令をアメリカの裁判所から獲得できると結論づけた。

ア事実の概要

a 当事者の関係

 本訴の原告のスコットドルフはドイツの研究医で医学症状に関する分析研 究所を運営しており、その研究成果に対しては、ドイツのKassenarzt1iche Bundesvereinigung (以下「連邦協会」とする。)の一員である医師協会(以

下「医師会」とする。)によって報酬が支払われている。ところが、1999 年に、医師会の特別委員と健康保険会社は、この研究所に支払う報酬額を2 0%引き下げた(以下、「20%ルール」とする)。この20%ルールはニュー ヨーク州に本社を構える国際的なコンサルティング会社であるマッケンジー の助言に基づくものであった。マッケンジーは、ドイツにおいてドイツ語で準 備をした報告書において明記された報酬の引き下げは、規模の経済(eConOmy ofsca1e)によって正当化されたとした(以下、「マッケンジー報告」とする)。

b ドイツでの訴訟

(i)社会裁判所での訴訟

 まず、原告のスコットドルフは、20%ルールはドイツ法の下においてはス コットドルフの平等保護の権利を侵害していると主張し、いくつかの訴訟をド

イツの社会裁判所に提起した(GemeinschaftspraxisDr.Med.Bemd

Schottdorf U.S. v Kassenarz1iche Vereinigung Bayems Wegan

Honorarbescheidfur das Quarta1皿/99(r社会裁判所の訴訟」)。その手続に おいて、社会裁判所は、連邦協会が20%ルールの根拠となったマッケンジー の役割に関していくつかの質問に答える準備をすることを要求した。

 これに対し、連邦協会は、研究所の改善策はマッケンジーの意見だったと認 めた。しかし、マッケンジー報告は、マッケンジーの知的財産に関係しており、

また開示制限を受けているためマッケンジーから直接的に要求されるべきで ある、とした。しかし、社会裁判所は、マッケンジー報告については、連邦協 会にもマッケンジーにも要求せず20%ルールを維持する決定を出した。裁判 所は、連邦協会によって決定された報酬予定を再検討するためには、評価委員 会がその規制権限を上回っていたとか、原告の報酬の損失については医師がマ イノリティであったとかの理由による評価権限の濫用でないかぎり介入でき ないとした。

(ii)デュッセルドルフ地裁での訴訟

 スコットドルフは、他方でデュッセルドルフにあるドイツ地方裁判所(以下

「デュッセルドルフ地裁」とする。)でマッケンジーに対して別個の訴訟(以下 rデュッセルドルフ訴訟」とする。)を提起した。このデュッセルドルフ訴訟 の本質は、マッケンジー報告を手に入れるためのディスカバリー請求のためだ けであった。しかし、デュッセルドルフ地裁は、スコットドルフの主張した危 害にマッケンジーは責任があるという決定を出すには、いくつかの実行可能な