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ディスカウンティッド・キャッシュ・フロー(DCF)

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Ⅰ.事業再生におけるDCF法の活用

  長引く景気低迷、デフレの中、生き残りをかけた事業の選択と集中による買収や統合な どの再編劇が、企業間で盛んに進められている。また、金融機関の不良債権問題の処理は、

金融及び産業の早期再生を図るための緊急の課題となっている。事業再生や不良債権処理 といった場面で事業価値あるいは企業価値の算定は、重要な意味を持ってくる。

事業あるいは企業が持っている本来の「価値」を測るとき、最近では利益ではなくキャッ シュ・フロー、それも現在価値に置き直したディスカウンティッドキャッシュフロー(以下

DCF)で測ることが投資家の間では常識となっている。DCF とは簡単に言えば、「将来の

キャッシュ・フローの割引現在価値」であり、ある事業または企業が将来稼ぎ出すであろう キャッシュを時間価値とリスクで評価したものである。

破綻企業を清算に移行した場合の清算価値に基づく資金回収額に比べて、事業継続によ って生み出されるキャッシュ・フローからの資金回収が現在価値ベースで上回れば、その 企業は継続させるべきである。そこには、従来の不動産を主とする担保書分に過度に依存 した債権回収の発想を改め、事業存続を前提とする将来キャッシュ・フローを現在価値に 割り引き、債権回収原資とみて合理的に比較する発想が重要である。この発想は、包括的 な企業信用と切り離された個別事業のキャッシュ・フローに着目して資金を供給するプロ ジェクトファイナンス(ノンリコースローン、リミティッドリコースローン)の発想と共通 するものである。

  また、事業再生におけるDCF法の活用として、企業の価値を算定し、企業の実態現状 を把握することによって企業をモニタリングするということが挙げられる。我が国では債 務不履行の危険性が高まった段階でようやく事業再生に着手するケースが多い。この段階 では実質的に債務超過の状態になっていることが通常であり、事業再生に当たって債権放 棄が不可避となる。債権放棄に際しては、株主責任と経営責任を明らかにした上で、債権 者の間で債権放棄の負担について合意が形成されなければならないが、こうしたプロセス には多くの時間を要する。

  事業に変調が生じはじめた初期の段階で事業再生に着手すれば、多大な時間とコストを 要するまでもなく事業は再生し、過剰債務構造に陥ることを未然に防ぐことができる。こ のためには、企業・金融機関・株主がそれぞれ債務不履行にいたるまで問題を先送りにす るのではなく、事業の状態を従来以上にきめ細かくモニタリングしながら、事業再生に向 けた取り組みに早めに着手する慣行を築いていかなければならない。

  我が国では、企業と銀行、株主の間で、長期的な関係が重視されてきたが、これからは、

キャッシュ・フローに代表される事業の収益性に着目して、三者の間で新たなモニタリン グの体制を築き、早期着手が自ずと促される仕組みを確立することが必要である。経営の 評価軸の変更や融資慣行の転換、より積極的な株主行動の実現が必要である。

 

Ⅱ.キャッシュ・フロー分析の重要性

  債務者企業が破綻に陥るプロセスの中で、現在債務者企業はどのような状況にあり、ど のような施策が必要かを把握するためには、損益のみの指標で企業の業績を評価しても有 用ではない。それがバランスシートの悪化を招かず、債務者企業の業績および財務状況を 同時に改善させるものでなくてはならない。

  あくまで会計上の利益は意見であり、事実ではないといわれることがある。損益すなわ ち利益は会計処理法によって数字が異なり、真の会社の収益力の把握のために時として妨 げになってきた。ただし、利益が無意味なものかといえばそうではない。利益数値は、費 用配分・引当金の計上を通じて収益と費用の適切な対応関係を実現させた上での数値のは ずである。確かに採用する会計基準、会計処理方法によって利益数値は変わるが、同一の 会計基準での過年度の業績と比較することは有意義であるし、企業における財務的な構造 変化があまりない場合には利益数数値を業績評価と見ても十分に有用であると思われる。

  しかしながら、利益数値には日経常的に発生する費用も営業費用に含まれていることも あるため、実際の正常な収益力を把握するためには、より個別な資料を用いて分析・検討 しなければならない。また、企業の破綻プロセスを概観し、企業がどのような状況にある かを把握するためには、利益のみを分析の対象とするのではなく、企業価値の向上という 観点からの全般的な財務分析が必要となる。

  企業価値とは、将来のキャッシュ・フロー獲得能力といえる。ここでのキャッシュ・フ ローとは、フリー・キャッシュ・フロー呼ばれるものであり、投資化および金融機関に配 分可能なキャッシュ・フローを意味する。フリー・キャッシュ・フローという指標は、損 益の悪化、貸借対照表の悪化、資金繰りの悪化を包括的にモニタリングすることを可能に する。企業が破綻するプロセスを鑑みれば、結果として将来のフリー・キャッシュ・フロ ーが資金調達者にとって十分か否かが鍵となり、これを重視した評価が必要である。

Ⅲ.ディスカウンティッドキャッシュフロー(DCF)法

企業価値評価方法は、大別すると三つの方法に分けることができる。一定時点での資産 と負債の状況に着目して評価する純資産方式、事業の利益またはキャッシュ・フローを基 礎として価値を算定する収益方式、同業を営んでいる会社の企業価値と、各社の財務数値 等から算定される各種の要素を用いて対象会社の相対的な価値を算定する比準方式である。

このうち、DCF法は収益方式の一つで、事業の継続価値を算定することを目的とした方法 であるといわれている。

ディスカウンティッドキャッシュフロー(DCF)方式とは、簡単に言えば評価の対象とし ている資産や事業などが将来獲得すると期待される現金ベースの収益(キャッシュ・フロ ー)を現在価値に引き直すことにより、その資産ないし事業の価値を算定しようというもの である。

こうしたキャッシュ・フローに着目した評価手法は、もともと欧米において発展し、根 付いてきた手法である。欧米においては、株主価値の評価、事業部の評価、その他の局面 においてDCF法はディファクトスタンダードであるといえる。

モノの価値は、そのモノが将来にわたって生むキャッシュ・フローに基づいて評価され るべきものであるということがDCF法の背景にある。会社や資産が永久に存続すると仮 定すると、全存続期間において獲得される利益の金額をベースに会社ないし資産の価値を 考えることになる。この場合の利益は、期間損益計算の目的で算定される会計上の利益と は異なり、実際に獲得あるいは支出された現金の純額によって算定される。すなわち、そ の価値の算定の基礎を、会計上の利益ではなくキャッシュ・フローに基づいて考えるので ある。会計処理法の違いによって、会計上の利益の額は年度間を通じて異なってくるが、

DCF法では一般的には会計処理法などに左右されないキャッシュ・フローに着目した評価 方法であり、経理処理を変更するといった小手先の処理では評価結果に影響を及ぼさない、

「事実としてのキャッシュ」に主眼を置いた評価方法である。

DCF法では企業価値の算定の基礎を、会計上の利益ではなくキャッシュ・フローに基づ いて考えるため、実際にキャッシュ・フローが発生する時期と評価時点との間の時間経過 に対する費用、および獲得されるキャッシュ・フローは将来のことであるため、実際に期 待したとおりのキャッシュ・フローが実現しない可能性があるという不確実性(リスク)を 考慮する必要がある。したがって、将来のキャッシュ・フローを「割引率」で割り引いた「現 在価値」を評価のベースとする。

以上のように、DCF法では、キャッシュ・フローと割引率の二つの要素から成り立って いる評価方法である。この二つの要素については後で詳しくみていく。

Ⅳ.企業価値の算定方法

  DCF法では、具体的に以下の算定式を用いる。

株主価値=将来キャッシュ・フローの合計の割引現在価値+現預金+遊休資産−負債

−有利子負債  

(1)将来キャッシュ・フローの割引現在価値

将来キャッシュ・フローの基本的な考え方は、株主あるいは債権者に対して分配可能な 将来年度ごとのキャッシュ・フローを予測し、その現在価値の総和により評価する

現在価値の算定に当たっては、株主および債権者が期待する利回りつまり対象会社が負 担すべきコストの加重平均が割引率である。

(2)現預金

評価基準時において、企業の事業を継続するために必要となるもの以外の現預金等に関 しては、キャッシュ・フローの価値に加える。本業であるビジネスをこなすために投下し ている現預金等は加算されないが、評価時点におけるキャッシュで、将来のキャッシュ・

フロー獲得に関係のない余剰している現預金等は加算される。

(3)遊休資産・負債

評価基準時において、企業の事業を継続するために必要となる資産ではなく、明らかに 遊休している資産については、キャッシュ・フローの価値に加える。また、本業には関係 ない負債で、特に将来にわたって発生することのない負債についてはキャッシュ・フロー の価値から減算する。これらは、現預金と同様に、処分によって将来キャッシュ・フロー の獲得に影響を与えないものとして計算される。

これらの価値は将来のキャッシュ・フローの価値に含まれず、評価基準時点での時価に よって評価し、株主価値を算定する。逆に、遊休資産・負債であっても、それらから将来に わたって獲得されるキャッシュ・フローが事業計画に含まれている場合は、その資産等の 時価をキャッシュ・フローの価値には加算しない。

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