【報告者】吉武博文(ナショナルトレセンコーチ)
1.大会概要とその取り組み
ラインでの有効な組み立てとGKとボランチの活用の工夫を強調し たい。
(4)フィジカル
①連戦、暑さ、選手登録数の少なさなど、持久力に対して厳しい 条件ではあるが、中学生年代の心肺機能向上を経てU-16年代を迎 えた選手にしては、運動量が試合終盤や大会終盤には落ちてきた ケースが多かった。中学生年代のチームやトレセンとタイアップ して、心肺機能の向上に取り組む必要がある。
②上背のない選手で、スピードに乗り、俊敏性のある動きからの チャンスメークや得点できる選手がいたのは日本人らしいプレー で頼もしく感じた。
(5)メンタル
①メンタル的に大変不安定な年代である。一つのパスミスやトラ ップミスで必要以上に硬くなったり怖がったり、一夜明けると非 常に積極的に取り組んだりとメンタル的な起伏が大きく難しい時 期である。だからこそ、一貫指導の中でいろいろな角度からの刺 激を与えることが重要である。
②ゲーム中の「ひたむきさ」を感じた。精神的に不安定な時期、
しかしゲームに没頭し、真摯に取り組む時期でもある。そんな時 期にしのぎを削る戦いを体験することは精神的に飛躍的な成長を 促すこととなる。
③個人での駆け引き、チームでの駆け引き、レフェリーの癖や基 準を見抜きプレーするといったところまでには、まだまだほど遠 いと感じられた。サッカーのゲームでの本質に迫る駆け引きを身 につけてほしい。そして、この大会を境に大人のサッカーへと移 行するよい機会である。
(6)その他
①タレントとしてはサイドアタッカーが少なかった。大型FWや大 型CBが目を引いた。これは各都道府県での選手発掘→強化・育成 という流れの成果といえる。
②GKからの配球の意図・狙いは良いが、それを実行するだけの技 術が未熟である。また、しっかりとビルドアップするにはDFのポ ジションをGK自らが修正するリーダーシップも必要となる。さら にクロスやセットプレー時のDFとの連携や、危険なスペースにDF を配置できないなどの課題も残った。これらは経験を積むことに より改善できる課題でもある。
③プレー全体に「危なっかしさ」を感じてか、監督・コーチや県
の関係者などの必要以上のサイドコーチも見られた。U-16年代は、
まだまだ失敗が許される年代であり、「失敗から学ぶ」ことの方が 定着する場合もある。また、そのゲームにおける選手のパフォー マンスを無視し、チームの約束事として選手交代をしたり、残り 時間が15分もあるのにボールキープに入ったり、采配で勝敗を決 めようとする大人の働きかけも見られた。采配ももちろん大切で はあるが、日常の継続的な取り組みで選手個人の力を高めて勝負 したいものである。
それぞれの県によりチーム力・選手の力には差があるのは否め ない。発展途上にある県はまずイージーミスの撲滅に取り組みた い。ある程度ボールを支配できるチームは相手ゴール前(ペナル ティーエリア付近)での工夫により決定的なチャンスを演出した い。また、どの県も積極的にボールを奪いに行き、1試合を通じて ハイテンション・ハイプレッシャーな守備ができることをベース としたい。
国体U-16に出場した選手たちは、大会にかける選手自身のモチ ベーションが高く、勝利へのこだわりが強かった。そのため、観 ている者を共感させ、この先の成長を見守りたいという気持ちに させた。
この大会は高校生年代の最初の大会であり、これから2年間の変 化や成長・改善の余地を残し、次のステップへと期待感を抱かせ る大会でもあった。また、日程が進むにつれて、大会期間中にう まくなる選手も多く、体験や経験により無限の可能性が広がるこ とを強く感じた。良い刺激を与えれば与えるほど、短期間でもパ フォーマンスが向上する年代であることも再認識させられた。
国体U-16の初の大会は、好成績の常連でありJクラブのある千葉 県と本国体出場権獲得が目標であった沖縄県の両県優勝で幕を閉 じた。この結果は、組織づくりや国体へのこだわりを持って取り 組んできている県に対し、今までのやり方は間違いなかったとい う自信と確信を与
えた。また、地域 的なハンディやJ ク ラ ブ の な い 環 境、これまでに一 度も結果を残した ことない県に夢と 希望を与えた結果 と な っ た 。 や り 方・取り組み方・
連携の仕方等で、
4 7 都 道 府 県 す べ てに優勝のチャン スがあることを証 明してくれたこと となる。各県の来 年度の躍進と取り 組みが結果に反映 されることを心よ り願ってレポート の結びとします。
3.まとめ
今回、U-16となって最初の国体を沖縄県と両県優 勝という形で終わることができた。今回の国体を振 り返って、U-18年代で行われた国体と比較して、感 じたことを何点か述べたいと思う。
『理解しているようで理解していないU-16年代』
今回の国体を準備し、戦ってきて一番強く思った ことである。U-18年代の国体もコーチとして、2度 参加したが、U-18年代の選手は各チームのエース・
中心選手の集まりで、試合経験もある。 一言えば 三わかる とまでもはいかなくても、トレーニング や試合の中で選手自身の力で修正できる力がついて いた。トレーニングの狙いや試合のコンセプトの伝 達が多少あいまいになっても、こちらの意図を推察 してプレーすることができた。今回初めてU-16年代 を指導することになり、一番苦慮したことがこの点 である。攻守の個人戦術の理解度が低い、オン・
ザ・ピッチとオフ・ザ・ピッチで良い習慣が身につ いていない、サッカーに対する意識が甘いなど、ま だまだ未熟な部分が多かった。代表を経験している 選手も何名かいたが、こちらが思っているほどサッ カーを理解していなかったし、「知らない」という ことも多かった。
また、こちらの伝達方法もうまくなかったことも 原因だと思うが、所属チームと選抜チームのゲーム コンセプトの違いに戸惑い、機能しないことも多々 あった。自分のプレーについて「自分はこうしたい」
と考えながらプレーしている選手は多くいたが、試 合の流れや状況に応じて考えてプレーしているかと いうと課題があった。今回、われわれ千葉県スタッ フもやりきれなかったが、この年代を指導する上で、
指導者が明確なコンセプトを持ち、そしてコンセプ
トを選手に落とし込むための工夫をするということ がとても重要になってくると思う。
『コミュニケーション下手』
トレーニングをしていても元気がなく、単純な声 すら出せない。スタッフが鼓舞してもなかなか乗っ てこない。好きな子や同じ所属チームでのグルーピ ングが多い等々。選抜チームとして戦う上で一番大 事な部分であると思うが、コミュニケーションをと るということを指導することが浸透していかなかっ た。コミュニケーションの問題は、サッカーの場面 だけで指導できる問題ではない。成長段階における この年代特有の部分であるかもしれないが、コミュ ニケーションの重要性を理解させ、あらゆる場面で 指導していく必要があると感じた。
また、自分と関係ないことには関心が低く、チー ムとして・仲間として助け合うことが少ない。例え ば、相手の攻撃に対し、ゾーンディフェンスで対応 するとする。自分のゾーンに入ってきた相手のマー クはするが、ゾーンから出て行った相手に対して、
味方に声をかけて受け渡しをしない。味方の視野か ら消えている選手がいることを、見えている選手が 教えない。だからCBとSB、DFとMFの間にポジシ ョンをとられるとマークがあいまいとなり、そこか ら崩されることが多い。クロスに対する守備も相手 選手を簡単にフリーにしてしまい、失点してしまう 場面も見られた。
『スタッフ』
今回初めてのU-16ということで、いつもより多く のスタッフを配した。Jクラブに所属する選手が多 いことから、柏レイソル、ジェフユナイテッド千葉
の両チームからコーチを派遣してもらい、所属チー ムとの連携をスムーズにすることや選手の情報や掌 握をお願いした。ヘッドコーチ格には市立船橋高校 のコーチとして何度も全国優勝の経験のある曽我氏 をお願いした。今回、チームコンセプトを実践して いくためのトレーニング構築や試合の分析において は曽我氏の手腕によるところが大きかった。やはり 全国大会で何度も勝利を収めている経験は大きく、
選手からの質問にも即座に対応でき、コンセプトを 実践する上で指導の軸がぶれないため、一貫した指 導ができたのではないかと思う。私も一緒に仕事を して、勉強することが多かった。
U-16年代では上記のような問題も多々あり、国体 の年代が下がったからこそ、豊富な経験があり、指 導力のある人材を配することがチーム強化には不可 欠ではないかと思う。
『試合を通して』
千葉県選抜の場合、1回戦から気の抜けない試合 が続き、いつ負けてもおかしくない大会であった。
相手のミスやラッキーに助けられた部分もあった が、試合を重ねるごとに上記の問題点が少しずつ克 服されていった。マークの確認の声が出てくる、状 況を考えたプレーをする、ミーティングで話し合っ たチーム戦術が機能し始めるなど、選手の成長が感 じられた。勝つことによってミーティングで選手の 顔つきが変わってくる。やはり経験というものは選 手にとっても指導者にとっても大事である。連戦が 続くという大会方式には問題もあると思うが、シビ アな戦いを続け、所属チーム以外の指導者の指導を 受けるという経験はU-16年代で選手の幅を広げてい く意味でもとても大切なことではないかとあらため て強く感じた大会であった。
56
沖縄県少年選抜は、第61回兵庫のじぎく国体少 年の部で優勝することができた。沖縄県のサッカ ー界にとってはサッカーの全カテゴリーを通じて 初めての「全国制覇」で記念すべき大会となった。
国体のU-16化の流れの中で取り組んできたこと は、各県と同様にU-11・12からのトレセン活動を 継続して3種(U-13〜15)につなげてきたこと。そ れと、現U-16がU-13のころに一部の地域ではあっ たが1年生のリーグ戦(8チーム2回戦総当たり、名 称「マンゴーリーグ」)をナイターで実施した。こ のマンゴーリーグのころから加藤久氏とかかわり 始め、ジュニアユースの各大会、トレセン活動な どで献身的にかかわっていただいた。その中で加 藤氏は全国のレベルを十分把握していない自分た ち(トレセンスタッフ)にいつも口癖のように
「全国でも十分通用する、優勝できる」と言ってく れた。ちなみに、このマンゴーリーグから育った 選手の中から6名が国体のメンバーに選出された。
毎月1回の県トレセン活動や3種年代の各大会を
こなしていく中で、選手をピックアップ、フォロ ーアップを繰り返し行い、昨年9月に40名程度でU-16化に向けて3種のスタッフと加藤氏も加わって
「U-16のサッカーをしている子どもたちに夢を与え るんだ」というミッションを掲げ、「本国体で頂点 に立つんだ」という目標をもとに本格的にスター トを切った。
最初は、月2回のペースで練習を行った。内容は ほとんどが高校生とのゲームが中心であった。 練 習を繰り返し行う中で選手選考を行い、今年3月に は20名程度に絞り込んでいった。 その間、加藤氏 はもちろん、ナショナルトレセンコーチ九州担当 の吉武博文氏にも直接選手の指導、助言をもらい ながら強化していった。
いよいよ4月を迎え、2種のスタッフ1名を加え、
加藤氏も含め6名のスタッフで取り組むことになっ た(スタッフの内訳は1種-1名、2種-1名、3種-2名、
医科学-1名、加藤氏)。4月からの練習は2種の大会 等の絡みで調整は大変だったが各チームに理解、
協力してもらい比較的スムーズに行うことができ た。
7月の九州予選に向けては、5月の連休(2日〜5 日)に御殿場(静岡県)で県外合宿を行った。経 費の面ではほとんどが自己負担(7万円程度)では あったが保護者にも理解、協力してもらい、選 手・スタッフにとっても県外の強豪校や清水エス パルスとゲームをすることができ、良い経験をす ることができた。
その後の取り組みとしては、県内の高校チーム との練習ゲームを中心に週1回の練習を行い調整し た。最終的に16名に絞り込み九州大会を迎え、予 選突破し、本国体に出場することができた。本国 体でも選手、スタッフが信頼関係をさらに深め、
目標に対して常に良い準備ができたことが今回の 結果につながったのではないかと思う。
最後に今までいろいろな面でサポートしていた だいた方々へ感謝するとともに、また今回の結果 に満足することなく、今までの活動を地道に継続 していきながら、地域に合った「沖縄らしいサッ カー」を追求し、すばらしい選手を輩出していき たい。