キタキチョウ(シロチョウ科)
●北海道を除く全国(日華区)
●多化性(成虫越冬) ●ハギ類などのマ メ科
春〜秋に年数回発生。林の内外を飛び回 り、いろいろな花を訪れる
コツバメ(シジミチョウ科)
●北海道〜九州(日華区) ●1化性(蛹越冬)
●アセビ、ナツハゼなどの花、つぼみ 早春にあらわれる。林縁を活発に飛び回 り、いろいろな花を訪れる。翅表は濃青 色
スジグロシロチョウ(シロチョウ科)
●北海道〜九州(日華区)
●多化性(蛹越冬) ●イヌガラシなどの アブラナ科
春〜秋に年数回発生。林の内外を緩やか に飛び、いろいろな花を訪れる
トラフシジミ(シジミチョウ科)
●北海道〜九州(日華区) ●多化性(蛹 越冬) ●フジ、クズ、ウツギ、ナツハ ゼなどの花やつぼみ
春と夏にあらわれ、林の内外を活発に飛 びいろいろな花を訪れる
ツマキチョウ(シロチョウ科)
●北海道〜九州(日華区) ●1化性(蛹 越冬) ●タネツケバナなどのアブラナ 科
早春にあらわれ、田畑の周りの明るい林縁 を緩やかに飛び、いろいろな花を訪れる
ルリシジミ(シジミチョウ科)
●全国(全北区) ●多化性(蛹越冬)
●マメ科、バラ科、ミズキ科、ブナ科な どの花やつぼみ、果実
春〜秋に数回発生。樹上をチラチラと飛 び回り、花に集まる
55 チョウたちと里山をつくる
ミョウセセリやススキなどのイネ科草本を食草とするヒメウラナミジャノメやジャノメチョウなどです。ふもとの集落や棚田で行ったトランセクト調査の結果、ゼフィルスの森のチョウの一部は山麓が供給源となっていることが示唆されました。ゼフィルスの森のチョウ類群集の多様性を維持するには、森林部分だけでなく、集落や田畑などを含む里山景観全体を保全する必要があるのです。里山林部分について今後は、下刈りばかりでなく、間伐や萌芽更新、落ち葉掻きなどを行う必要がありそうですが、チョウ類を指標とした順応的な管理手法を続けるのがよいのではないかと考えています。ゼフィルスの森のチョウ類群集の多様性を維持することは、三草山全体の里山としての植生景観を保全することと同じだからです。 床照度の低下や落葉層の肥厚によるものと思われます。ゼフィルスの森に林床環境の異なる 区( 31個の方形
行った調査では、 25メートル四方)を設置して
管束植物が記録され、そのうち 77科205種の維
ヤマノイモなどを寄主とするダイ 乏しい種が含まれています。例えば、 ぶれを見ると、森の中に寄主植物が ゼフィルスの森のチョウ類の顔 性が指摘されています。 減少傾向にあるようで、間伐の必要 ダラシジミ(食樹はイボタノキ)が はコバノトネリコなど)、ウラゴマ 木に依存するウラキンシジミ(食樹 るオオミドリシジミや、低木層の樹 直後のクヌギの萌芽林を好むとされ ジミなどは健在です。しかし、伐採 ロオナガシジミ、ヒロオビミドリシ かったウラナミアカシジミやミズイ ランセクト調査で確認個体数の多 ルス類はどうかというと、最初のト この森のシンボルであるゼフィ 空率が大きい方ました。 た、チョウ類の種多様度は、林冠開 上することが認められています。ま 種多様度は落葉層の除去によって向 た。この調査では、草本層の植物の 199種が草本層で確認されまし 75科
早春のゼフィルスの森
生物多様性国家戦略では、管理の停止による里山の放置は、生物多様性の第二の危機として認識されています。第一の危機にある原生的な生態系の保全が「人間活動の影響を低減すること」であるのに対し、里山では「適切な人間活動を継続すること」が保全のためには不可欠です。つまり、生物多様性を保全するために関わりを絶つことが原生的自然に対して求められるのに対し、里山では関わりを持ち続けるための努力が必要ということです。では、その努力をどこに向ける必要があるのでしょうか。この問いに対して、兼子ほか(2009)は絶滅危惧植物の種数を調べることで
コラム 絶滅危惧植物からみた里山
0 100 200 300 400 500 600 700 800
0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2
草地 湿地 農地 森林
種数︵種︶ 単位面積あたりの種数︵種/km2︶
中国 5 件における絶滅危惧植物の種数(■)と単位面積当たりの 種数(■)(兼子ほか,2009 を元に作図)
写真:里山の絶滅危惧植物
右上/ベニバナヤマシャクヤク(絶滅危惧 II 類)
左上/オキナグサ(絶滅危惧 II 類)
左下/ヒゴタイ(絶滅危惧 II 類)
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回答しています。中国地方5県のレッドデータブック(絶滅のおそれのある生物のリストをまとめた本)に掲載されている絶滅危惧植物は、全部で1254種です。生育環境毎に種数を調べると、森林が最も多く(762種)、次いで農地(332種)、湿地(306種)、草地(272種)と続きます。ところが、各生育環境の面積は、森林(
育環境の中国地方 平方キロ)、の順でした。これら生 地(300平方キロ)、草地(228 ロ)、農地(5599平方キロ)、湿 2万1959平方キ 合は、森林は 5県の中の面積割
78%、農地は
ぼりますが、湿地、草地はそれぞれ 20%にの 1・0%、
数を求めると、 単位面積あたりの絶滅危惧植物の種 0・8%に過ぎません。
種数が草地では 1平方キロあたりの 1・
20種、湿地では
1・ 02種と密度が高く、農地では 0・
06種、森林では
0・
てることは困難です。一方、面積が 込まないと、現実的な保全対策をた め、特に重要な場やその環境を絞り 危惧植物が分散して生育しているた 面積が広い森林や農地では絶滅 が低いことがわかりました。 03種と密度 策が必要です。 で、しばらくは保全を目的とした施 山との新たな関係が出来上がるま の過渡期にあると言えます。人と里 里山の生物多様性を未来に繋ぐため システムに組み込み、残されている す。現在は、そうした仕組みを社会 用の仕組みが創り出されつつありま 流通やツーリズムなど、今日的な利 れているように、木質バイオマスの ありますが、一方で、本書で紹介さ 動は、社会の変容により失われつつ て暮らしの中に組み込まれていた活 動を継続することが必要です。かつ 里山の保全には、適切な人間活 じていくことが求められます。 育地に対して今すぐに保全対策を講 育している草地・湿地は、個々の生 小さく、絶滅危惧植物が集中して生
(白川勝信)
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きによるススキ等の炭化物や地下茎からの有機物の供給により、草原は非常に重要な炭素吸収源であることも明らかになってきました。ところが、このような多様な恵みを提供してくれる阿蘇の草原が今、危機に瀕しています。その原因は、野焼き作業の担い手不足と農・畜産業の沈滞にあります。自然の草原に、なぜ人間の社会の変化が影響しているのでしょう。
草原は人の手で 守られてきた
温暖で雨の多い日本では、植物はたいへんよく育ちます。畑を放っておくと雑草だらけになるように、なにもない土地もすぐに草地になり、やがて森になります *。火山の噴火や川の氾 はん濫 らんなどで、たびたび植物が失われる **ような場所を除けば、「自然の状態」の草原が草原のままであることはむずかしいのです。私たちが目にする草原の多くは、草を資源として家畜の餌や肥料などに利用するために、野焼きや採草、放牧などを行って、人による攪 かく乱 らんで植生遷 せん移 いをリセットすることで維持されてきたものです。 国立公園にも指定されている阿蘇の雄大な草原は、人間活動とかかわりながら
の湧水地や 水を地下に蓄え、1500以上も が降る阿蘇では、草原は多量の雨 います。年間3000ミリもの雨 養能力を持ってに匹敵する水源涵 かんよう それだけではなく、草原は森林 息しています。 て、多くの種類の鳥類や蝶類が生 な豊富な草原性植物に支えられ な草花が咲き誇ります。このよう キスミレなど、四季折々にかれん であるヒゴタイ、ヤツシロソウ、 いないハナシノブ、絶滅危惧植物 ラソウ群落、阿蘇にしか生育して ません。日本一の規模を誇るサク として訪れる人々を魅了してやみ で、わが国を代表する風景の一つ まさしく文化的遺産といえるもの にわたって維持されてきました。 1万年以上もの永き さらに、最近の研究から、野焼 です。 がめ」ともいわれるのはこのため なっています。阿蘇が「九州の水 含めると、500万の人の水源と 道に送水されている福岡都市圏を 域となっていて、筑後川から上水 ちくご 6本の一級河川の源流
◎生態学の言葉では、*を「草本群落から森林群落への植生遷移(せんい)」、**のように生えている生物の生育環