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チャンネル導波路型第二高調波発生素子の高出力化

図 2.2 チャンネル導波路型SHG素子の第二高調波発生実験:

プロトン交換アニール法 、● 実験値、実線 計算値

Fig. 2.2 Conversion efficiency as a function of fundamental-wave power of SHG device with proton-exchanged channel waveguide fabricated using periodically poled

MgO:LiNbO3; solid circles: measured results and solid curve: calculated results.

図 2.1 波長変換効率向上への課題:黒 基本波、灰色 第二高調波 Fig. 2.1 Difficulties in increasing the wavelength-conversion efficiency.

高調波発生実験の結果と計算値を示す。図より、基本波入力 10 mWまでは実験値と 計算値がほぼ一致するが、基本波入力 30mWで波長変換効率が飽和し、その後は波長 変換効率が下がっていく様子が観察された。これは高温アニールによる結晶欠陥の回 復が不十分であり、非線形光学性能の低下や、吸収中心による光吸収が増加している ものと考えられ、高出力化の研究には不向きであると考えた。

本研究では、コアになる非線形光学結晶へのダメージが少ないエッチング法を採用 し、リッジ形状のチャンネル導波路を加工した。導波路設計は、垂直方向(図 1.13 のy軸方向)に基本波と第二高調波の基本横モード間の電界分布重なりを大きくでき る高比屈折率差構造、水平方向(図 1.13 のz軸方向)にリッジ形状で 0.3%程度の比 屈折率差をつけた基本横モード導波路構造にした。この高比屈折率差導波路は高次モ ードの伝播を許容するので、波長変換効率を高めるには基本横モードのみを励振する ことが重要である。チャンネル型SHG素子では、導波路端面からの反射戻り光が進 行波の電界に擾乱を与えて波長変換動作を不安定にするので、導波路端面の斜め加工

(xz面内)が頻繁に用いられる。ビーム伝播法で解析すると、この斜め加工した入 射端面付近で漏洩モードが発生することが分かった。そこで、y軸方向に基本横モー ドのみを励振し、z軸方向には漏洩モードを低減する方法として、光軸に垂直な導波 路端面にモード整合したガウスビームを結合させる方法を提案した。この構想を実現 するため二波長対応の反射防止膜を開発したうえで、実際にチャンネル導波路型 SHG素子を試作し、第二高調波発生の高出力化に効果を発揮することを実証した。

以下に、その内容を詳細に述べる。

2.2 伝播モードと導波路損失 2.2.1 高比屈折率差導波路

図 2.3 に、本章のチャンネル導波路型SHG素子と、次章のプレーナ導波路型 SHG素子の比較を示す。垂直方向(xy面)には、基本波と第二高調波の基本横モ

ード間の電界分布重なりを大きくできる高比屈折率差導波路であり、本章でこの導波 路の考え方について詳しく述べる。なお、水平方向(xz面)には、チャンネル導波 路がリッジ形状を使った基本横モードの伝播であるのに対し、プレーナ導波路は 0 次 のガウスモードを自由空間伝播させる点が相違している。

簡単のため、図 2.3 の右上に示す周期分極反転したYカットMgO:LiNbO

(PPMgLN)のコアに、二酸化珪素(SiO)のクラッドを蒸着したプレーナ 導波路の導波モードについて考える。一軸性複屈折率材料であるPPMgLNのYカ ット基板で作製した光導波路をTEモードで励振する場合、図 2.4(a)に示すとおり 電界Eには異常光屈折率 n(e)しか見えない。従って、マクスウェルの波動方程式は スカラーヘルムホルツ型に簡単化でき、設計が容易になる。一方、PPMgLNの Zカット基板で作製した光導波路をTMモードで励振すると、図 2.4(b)に示すとお り電界Eから常光屈折率 n(o)と異常光屈折率 n(e)が見え、導波路設計は若干面倒 になる。クラッド材に熱伝導が良いタンタル酸リチウムや、屈折率が低いエアクラッ ド を 用 い る 場 合 も あ る が 、 前 者 は 屈 折 率 の 異 方 性 に 起 因 す る 漏 洩 モ ー ド

図 2.3 チャンネル導波路型SHG素子とプレーナ導波路型SHG素子の比較 Fig. 2.3 Comparison between channel-waveguide and planar-waveguide SHG devices.

図 2.5 (a)基本波、(b)非線形分極、(c)第二高調波の波数ベクトル Fig. 2.5 Wave vectors of (a) fundamental wave, (b) nonlinear polarization, and (c) second-harmonic wave.

図 2.4 屈折率の異方性と導波モードの電界ベクトルとの関係:

(a) Yカット基板のTEモード励振、(b)Zカット基板のTMモード励振 Fig. 2.4 Electromagnetic fields in Y-cut and Z-cut MgO:LiNbO3 planar waveguides.

が発生しやすく[3]、後者は埃の付着対策が課題になる。本研究では、複雑な電磁界 問題が発生しないYカットPPMgLNのコアに、等方性材料であるSiOの蒸着 膜をクラッドとして採用した。

次に、YカットPPMgLNをコアとしたプレーナ導波路における基本波と第二高 調波の位相整合について述べる。図 2.5(a)の説明図に示すとおり、基本波の導波モ ードであるTE0 次モードは、上向きと下向きの平面波合成 E(波数ベクトルω kω= n1ωk0、 伝播定数 βω = neffωk0、横方向の波数 κω)で簡単に表せる。この基本波によって、

図(b)に示す二次の非線形分極波が励振され、非線形光学定数(テンソル)đを用い ればđE ω E ωで表せる上向き、直進、下向きの 3 つの平面波(波数ベクトル 2kω、伝 播定数 2βω、横方向の波数 2κω)の合成波が発生する[1], [2]。この非線形分極波の うち、図(c)に示す上向きと下向きの平面波の合成で表せる第二高調波の伝播モー ド(波数ベクトル k2ω= 2n12ωk0、伝播定数 β2ω= 2neff2ωk0、横方向の波数 κ2ω)である TE0 次モードが効率よく結合し、波長変換が達成される。

最大の非線形光学定数 d33を利用できる周期分極反転は、図 1.7 に示すとおり基本 波と第二高調波の波長分散によって伝播方向に位相差が生じるため、図 1.8 に示した ように長さ Λ毎に分極方向を 180°反転させることで位相整合条件を満足させる[4]。

ここで、周期分極反転の間隔Λは、基本波の基本横モードに対する伝播定数 βωと第 二高調波の基本横モードに対する伝播定数 β2ωで決定される。つまり、伝播方向の 位相整合は基本波、第二高調波ともに基本横モードでなければならない。なお、基本 波光源のスペクトラム(縦モード)は、この位相整合を満足する波長の範囲内にあれ ば、単一モードでも多モードでもかまわない。

2 0

2

2 =

− Λ

− β π

β

ω ω (2.1)

但し、Λ =

(

neff2ωλneffω

)

2 (2.2)

導波路厚さ方向(y軸)への位相整合は、非線形分極波と第二高調波の電界の重な りを表す重なり積分で表される。簡単のため、基本波と第二高調波がほぼ完全に余弦 関数で導波路に閉じ込められていると仮定すると、重なり積分 κは次式のとおり、

3 つの項の和に比例する。これを最大にするには、基本波と第二高調波の横方向の伝 播定数を一致させ、基本波と第二高調波の電界分布の重なりを高めれば良い[5]。と ころが、MgO:LiNbOは屈折率分散をもつので、コアとクラッドの境界にお けるグース・ヘンシェンシフト(Goos-Hänchen shift)の波長依存性が存在する。そ こで、横方向の伝播定数を近づけるには、導波路の比屈折率差を大きくして、グース・

ヘンシェンシフトの絶対値自体を減らすことが有効である。

∫ ( )

= E E dy

y

2

*

2ω ω

κ

( )

( )

( )

( )

2 sin 2 2 2 2

2 2 sin

2 2 2 2 sin

2 2

2 2

2 2

t t t

t t

t

ω ω

ω ω

ω ω

ω ω

ω ω

κ κ κ

κ

κ κ

κ κ

κ

κ

⎜ ⎞

⎛ +

⎟⎠

⎜ ⎞

⎛ −

+ +

⎟⎠

⎜ ⎞

⎛ +

∝ (2.3)

図 2.6 基本波と第二高調波の電界閉じ込めのコア厚依存性:

実線 基本波、破線 第二高調波

Fig. 2.6 Electric-field confinement of the fundamental and SHG waves (solid and dashed curves, respectively) as a function of core thickness.

図 2.6 に、PPMgLNのコア(異常光屈折率(n1) 2.18、波長 1064 nm)に SiOのクラッド(屈折率 1.45)で作られたプレーナ導波路に対する基本波と第二 高調波の閉じ込め係数のコア厚依存性を示す。図より、コア厚 t が 2.5 μm以下に なるとクラッドへの電界の漏れが大きくなって電界の重なりが低下すること、コア厚 が 3 μm以上になると電界の重なりが徐々に高まることが分かる。しかし、コア厚 3 μm、波長(λ)1064 nmに対しては、比屈折率差

2 1

2 0 2 1

2n n n

=

∆ が 30%、導波路

の正規化周波数 = 2∆ 2 2

1

n t

V λ

π が 15.6 になり、高次モードを許容する導波路になる。

一般に、導波路型SHG素子の導波路の長さは高々十ミリメートル程度なので、応力 付与などによる複屈折を発生させない限り、このような多モード導波路でも基本横モ ードのみを励振すればモード変換することなく伝播させることができる。この導波路 の基本横モードを励振する最も確実な方法は、導波路端面をxy面内で光軸と垂直に してモード整合したガウスビームを結合する方法である。

2.2.2 伝播モード解析と結合実験

チャンネル導波路型SHG素子の導波路の断面形状は、図 2.7 に示すとおり、

図 2.7 リッジ形状チャンネル導波路の構造:

濃い灰色:MgO:LiNbO3、灰色 SiO2、黒 空気 Fig. 2.7 Structure of a ridge-type channel waveguide.

(a)基本波:978 nm (b)第二高調波:489 nm

図 2.9 基本波と第二高調波に対する近視野像

Fig. 2.9 Near field patterns of (a) fundamental and (b) second-harmonic waves.

図 2.8 リッジ形状チャンネル導波路の等価屈折率

Fig. 2.8 Equivalent refractive index of a ridge-type channel waveguide in orthogonal coordinate system.

リッジ幅(W)4.35 µm、コア厚(t1)3.7 µm、クラッド厚(t2)2.0 µmであり、

PPMgLNの上面、下面、側面に二酸化珪素を蒸着している。この導波路の直交す る 2 軸に対する等価屈折率を図 2.8 に示す。断面aaのコア内部の比屈折率差は 0.1%

程度であり、コアがPPMgLN、クラッドがSiOの高比屈折率差構造になる。

つまり、基本波に対する正規化周波数が 17.8、第二高調波に対する正規化周波数が 37.6 の多モード導波路である。断面bbには比屈折率差が約 0.3%の基本横モード導 波路になる。この導波路の電界分布の定常解は、ビーム伝播法ソフトウェア OptiBPM

(Optiwave 社)を用いて解析できる。図 2.9(a)と(b)は、それぞれ基本波と第二 高調波に対する基本横モードの電界分布の計算結果であり、電界分布の重なりが良い ことが分かる。

この導波路型SHG素子で高い波長変換効率を得るには、ガウスビームの入力光と 導波路の基本横モードをモード整合させ、基本横モードのみを励振する必要がある。

図 2.9(a)の横モードとモード整合するガウスビームのスポット径は 1.6 μm、結 合効率は 93%、端面のフレネル反射を考慮した導波路への結合効率は 80%と計算さ れる。なお、ここで基本波の波長は 978 nm、第二高調波の波長は 488 nmである。

試作したチャンネル導波路型SHG素子の形状を図 2.10 に示す。素子長(L) 8.3 mm、幅 (W)1.4 mm、導波路を貼り付けるLiNbO基板の厚さが 1 mm、導波路端面はxy面には光軸と垂直、xz面には角度(θ)10°である。

図 2.10 チャンネル導波路型SHG素子の形状

Fig. 2.10 Structure of SHG device with a ridge-type channel waveguide.

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