3. 民需・軍需航空機部門の市場動向
3.2 ゼネラル・アビエーションの市場概観
3.2.3 ゼネラル・アビエーションの製品分野別主要企業及び市場動向
本セクションでは、ゼネラル・アビエーションについて、①機体、②装備品、③エンジンの製品 分野別の主な企業や各製品分野別の市場動向を収集可能であった情報を基に取りまとめることと する。
(1)機体(胴体、主翼、尾翼)
ゼネラル・アビエーションの機体分野における製造企業の市場シェアに関するデータは、公開情 報からは確認できなかった。ただし、ゼネラル・アビエーションの製造に関しては、上述の中大 型機やリージョナル機の製造に見られるように、機体の各パーツを様々な企業が個別に製造して いるのではなく、一般的にセスナ・エアクラフト社やホーカー・ビーチクラフト社、ガルフスト リーム社、パイパー・エアクラフト社といった機体アセンブリを行う航空機製造企業が主に自社 で開発製造を行っており、装備品やエンジンなどの製造は他企業に外注しているようである。
(2)装備品(油圧システム、与圧・空調システム、燃料システム・燃料制御装置等の各種システ ム)
ゼネラル・アビエーションの装備品に関する製造企業の市場シェアに関するデータは公開情報か らは確認が不可能であった。
(3)エンジン
ゼネラル・アビエーション向けのエンジンを製造する北米企業としては、プラット&ホイットニ ー・カナダ社(Pratt and Whitney Canada、本社:カナダ・ケベック州)と GE アビエーション社 が挙げられる。
プラット・アンド・ホイットニー社の子会のプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社は、世 界的な不況により 2009 年のエンジンセールスは前年比約 20%減となったものの、2010 年は新規 雇用の一時停止、夏期の間一時的に生産工場を閉鎖、さらに従業員の約 15%を解雇するなどとい ったコスト管理措置を取り厳しい状況を乗り越えている。同社は、GE アビエーション社やロール ス・ロイス社といった競合と並び、小・中型ビジネスジェットエンジンから大型航空機用エンジ ンにまで同社エンジンのポートフォリオを広げることで、2015 年までには生産量をピーク時と同 じレベルまで復活させることを目指している。実際、同社が開発中の大型ビジネスジェット機用 エンジンの PW800 エンジンは今後数年のうち実用化される予定である。なお、同社は全世界のジ ェットエンジン市場において 10%強を占めているが、そのシェアを拡大することを計画している
91。
またプラット・アンド・ホイットニー・カナダ社は、新技術への投資を積極的に行っており、過 去 12 年間で 65 種類の新エンジンの開発を行ったという実績がある。今後 5 年間に亘り同社は 10 億カナダドル(約 9 億 6,900 万米ドル)を高性能エンジンの開発に投資するとしており、2010 年 秋にはミラベル航空宇宙センター(Mirabel Aerospace Center)を新設し、ボンバルディエ社の C シリーズ航空機に搭載される PW1524 型エンジンの組み立て・試験を当地で実施している92。 一方 GE アビエーション社は、小型から大型のエンジン、3.1.3 で触れたボーイング社の 787 型機 用 GEnx エンジンなど様々な種類のエンジンを開発・製造している。同社のエンジン部門の売上は
91 Hoover’s Database, “Pratt & Whitney Canada International Inc.”.
92 同上
2007 年~2011 年までの 5 年間で毎年 5%成長し、2011 年の売上額は 190 億ドルであった。なお 2010 年の同社売上額は、前年比 5.9%減となったが、その理由は、GEnx エンジンの出荷に伴い、
同製品の事業化及び製造関連の出費が増加したためである93。
なおこれら 2 社のゼネラル・アビエーションのエンジン部門の市場シェアに関する具体的なデー タは公開情報からは見つかっていないため、以下に 2010 年の①ターボプロップ機、②ビジネスジ ェット機、③ピストンエンジン機の出荷数が多かった航空機に搭載されているエンジンを基に、
それぞれの分野で台頭するエンジン製造業者を明らかにした。
① ターボプロップ機
2010 年のターボプロップ機の出荷機数上位 3 社が販売した航空機と当該航空機に搭載されている エンジンは表 14 のとおりである。これによると、6 機種全てにプラット・アンド・ホイットニー・
カナダ社の PT6A エンジンが搭載されており、同エンジンのシェアが大きいことが予想できる。ま た、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ社は、その他のターボプロップエンジンとしては、
PT6A よりも大きく、2,000~5,000 馬力で 30 座席~40 座席の航空機に利用される PW100 エンジン も提供している94。
表 14 主なターボプロップ機と搭載エンジン
航空機製造企業 機体名称 エンジン
製造企業 エンジン名称
セスナ社 C208 Caravan 675 C208 Grand Caravan
プ ラ ッ ト ・ ア ン ド ・ ホ イ ッ ト ニ ー・カナダ社
PT6A ホーカー・ビーチク
ラフト社
Beechcraft King Air 90 Beechcraft King Air 200 Beechcraft King Air 350 ピラタス社 PC-12
出所:各社ウェブサイトなど
93 IBIS World Industry Report, “Aircraft, Engine and Parts Manufacturing in the U.S. 2011”, December 2011.
94 Pratt and Whitney Canada, “PW100”. http://www.pwc.ca/en/engines/pw100
② ビジネスジェット機
2010 年のビジネスジェット機の販売数上位 6 社において、最も販売数が多かった航空機と当該航 空機に搭載されるエンジンは表 15 のとおりである。これによると、ビジネスジェット機には、
小型のターボファンエンジンが利用されており、小型ジェットエンジンにおいてもプラット・ア ンド・ホイットニー・カナダ社が台頭していることが伺える。
表 15 主なビジネスジェット機と搭載エンジン
航空機製造企業 機体名称 エンジン
製造企業 エンジン名称
セスナ社 C510 Citation Mustang
プラット・アンド・
ホイットニー・カナ ダ社
PW615F-A ボンバルディア社 Global Express ロールス・ロイス社 BR700 エンブラエル社 Phenom 100
プラット・アンド・
ホイットニー・カナ ダ社
PW617F ガルフストリーム社 G500/G550 ロールス・ロイス社 BR710 ダ ッ ソ ー ・ フ ァ ル コ
ン・ジェット社 Falcon7X
プラット・アンド・
ホイットニー・カナ ダ社
PW300 ホーカー・ビーチクラ
フト社 900XP ハネウェル社 TFE731-50R 出所:各社ウェブサイトなど
③ ピストンエンジン機
表 16 は、主なピストンエンジン機製造企業において、2010 年に最も納入数が多かった機体及び 搭載されているエンジンの一覧を示したものである。以下においては、ピストンエンジン機に搭 載されているエンジンを製造する企業は、1905 年創業のコンチネンタル社(Continental95)と 1845 年創業のライカミング社(Lycomoing96)の米国の老舗企業 2 社となっている。
表 16 主なピストンエンジン機と搭載エンジン
航空機製造企業 機体名称 エンジン
製造企業 エンジン名称
シーラス・デザイン社 Crrus RS-22 コンチネンタル社 IO-550-N セスナ社 Cessna 172S
Skyhawk ライカミング社 O-360 パイパー・エアクラフ
ト社
PA-46-350P
Malibu Mirage ライカミング社 TIO-540-AE2A97 ダイヤモンド・エアク
ラフト社 DA-40 ライカミング社 O-360
ホーカー・ビーチクラ フト社
Beechcraft
Baron B/G58 コンチネンタル社 IO-520 もしくは IO-550 アメリカン・チャンピ
オン社 8GCBC Scout ライカミング社 O-360 出所:各社ウェブサイトなど
95 http://www.genuinecontinental.aero/
96 http://www.lycoming.com/
97 http://www.lycoming.com/support/troubleshooting/resources/SSP-400_rev_2.pdf