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スレート型タブレット筐体の非定常解析

本節では,4.3節と同じモデルを使用し,マイクロプロセッサが1.0Wで定常状態に至った後,4.5Wの TDP(Thermal Design Power)相当のアプリケーション負荷がかかった際の非定常温度遷移について検証 する.

4.5.1 シミュレーションの実施とその結果

図4.11に示すスレート型タブレット筐体をモデル領域として,4.3節で説明した“Graphite Sheet”ケース について有限体積法による非定常熱伝導シミュレーション [4-17]を実施する.

図4.31に最初の200秒間の温度遷移を示す.まず最初に“Silicon Die”温度及び“Heat Spreader”温度がt = 0直後に上昇を開始する.続いて,“Motherboard”温度がt = 0から1秒以内に上昇を開始する.残りの3 つの温度モニタポイントの温度はt = 0からしばらくの間値が変動しないが,その後,少しずつ温度を上 昇させていく.

4.5.2 各温度モニタポイントにおける温度差

各温度モニタポイントにおける温度遷移の原因を理解するため,2つの温度モニタポイント間の温度差 を図4.32に対数表示で示す.

“Silicon Die”と“Heat Spreader”の温度差は大きく変動することはなく,ほぼ一定に近い値を採り続ける.

これはマイクロプロセッサの発熱が“Heat Spreader”に非常に早く伝わっていることを示している.値が少 しずつ変動するのは上方と下方の伝熱経路に流れる熱の割合が時々刻々と変化していることに起因して いると考えられる.

“Silicon Die”と“Motherboard”の温度差は,時刻ゼロから急激に変化を開始し,10秒以内にほぼ一定値に

到達する.これにより,マザーボードにおける熱の拡がりにかかる時間が数秒間であることが分かる.

“Heat Spreader”と“Bottom Chassis”の温度差は,時刻ゼロから急激に変化を開始し,その後しばらくの間

(約100秒もしくはそれよりよりやや短い期間)上昇を続け,その後,定常状態に至る.また,“Motherboard”

と“LCD Panel”の温度差は,時刻ゼロ以降,温度上昇を開始し,その後も温度上昇し続ける.この値が長

Figure 4.31 Transient Simulation Result.

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Figure 4.32 Transient Temperature Difference along Heat Transfer Paths.

い時間上昇を続ける原因は空隙である.つまり,空隙における伝熱が定常状態に至るには長い時間がか かる.そして,これをうまく利用することができれば,筐体表面温度の制御に用いることができると考 えられる.

“LCD Panel”と“Top Glass”の温度差は,10秒後(t = 10)付近から緩やかに上昇を開始する.温度差は小

さいものの,数秒遅れで“Motherboard”と“LCD Panel”の温度差と同様にそのまま値が上昇し続ける.

4.5.3 スレート型タブレット筐体の非定常解析に関するまとめ

本節では,スレート型筐体を採用するファンレス設計のタブレットデバイスをモデル領域として,3次 元非定常熱伝導シミュレーションを実施し,各温度モニタポイントの温度遷移について検証,考察した.

得られた知見は以下の通りである.

- 温度モニタポイントによって,温度上昇のタイミングは異なる.

- “Silicon Die”と“Heat Spreader”の温度差はマイクロプロセッサの発熱が“Heat Spreader”に非常に速く 伝わるため,大きく変動することはなく,ほぼ一定に近い値を採り続ける.

- “Silicon Die”と“Motherboard”の温度差は,時刻ゼロから急激に変化を開始し,10秒以内にほぼ一定値

に到達する.これにより,マザーボードにおける熱の拡がりにかかる時間が数秒間であることが分 かる.

- “Motherboard”と“LCD Panel”の温度差は,時刻ゼロ以降,温度上昇を開始し,その後も温度上昇し続

ける.この値が長い時間上昇を続ける原因は空隙である.空隙における伝熱が定常状態に至るには 長い時間がかかるため,筐体表面温度の制御に用いることができると考えられる.

4.6 まとめ

小型電子機器の薄型化に伴って,より綿密な筐体の熱設計とともに,マイクロプロセッサの消費電力 制御を含むシステムの非定常挙動を考慮し,それをうまく利用した,いわゆるシステムレベルの非定常 熱設計が必要となってきている.そのため,本章では,システムレベルの非定常熱設計に関するトピッ

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4.1節では,システムレベルの非定常熱設計の必要性及び本章の構成について説明した.限られたスペ ースに高性能なマイクロプロセッサを搭載するには,定常状態のみを考慮した既存の熱設計だけではデ ザイン,コスト双方の観点から競争力の高い製品を作り出すことは不可能であり,マイクロプロセッサ の動的な消費電力管理機能や機器筐体の非定常状態における温度遷移を考慮した非定常熱設計を組み合 わせた新たな熱設計手法へのパラダイムシフトが必要となってきていることについて述べた.

4.2節では,電子機器筐体の表面温度制御を目的として,マイクロプロセッサ内蔵の消費電力制限機能 を用いた非定常温度制御について,3次元非定常熱伝導シミュレーションを実施し,その結果について考 察した.近年の薄型筐体の表面温度を考慮した非定常熱設計については,既往研究において十分な考察 がなされていないのが現状であり,シミュレーション結果の考察から,消費電力制限中の温度変化の傾 向は消費電力制限時の消費電力値及びその開始時刻によって決まり,消費電力制限の継続時間が変化し ても,実用的な時間範囲では温度変化の傾向は変化しないという新たな知見を得た.

スレート型筐体についてはすでにさまざまな製品が存在するものの,1~3W 程度のマイクロプロセッ サの採用が大半であり,より高消費電力,高性能なマイクロプロセッサを搭載するには,綿密な熱設計 が必要である.4.3 節~4.5 節では,薄型筐体の伝熱経路のスレート型(板状)筐体を採用するファンレ ス設計のタブレットデバイスの非定常熱設計に関する知見を得ることを目的として,まず定常状態にお ける伝熱経路について詳細に検証、考察し,最終的に非定常状態の温度遷移について考察した.4.3節で は,筐体内の伝熱経路を変更した4つのテストケースを用いて,3次元定常熱伝導シミュレーションを実 施し,熱伝導部における伝熱性能について有効ビオ数を導入して評価するともに各部の伝熱量を確認し,

筐体内の熱の流れについて検証した.4.4 節では,4.3 節のシミュレーション結果について,熱回路網を 用いて考察した.平面方向のサイズが大きいヒートスプレッダを採用することで,熱源の熱を拡散させ るのに役立つだけでなく,筐体内部で熱を拡散させることができ,ホットスポットを解消しながら,筐 体表面の平均温度を高く保つことができること,マザーボードの構成が変わらなかったとしても,対向 するヒートスプレッダサイズが変わると,マザーボードにおける熱の流れが変わるため,結果としてマ ザーボードにおける拡大熱抵抗の値が変動すること,グラファイトシートの採用により,さらに筐体表 面全体に熱を伝えることが可能になり,筐体内部全体を伝熱経路として利用することが可能になること が分かった.4.5節では,3 次元非定常熱伝導シミュレーションを実施した.非定常状態では,マザーボ ードにおける熱の拡がりにかかる時間が数秒間であるのに対して,空隙における伝熱が定常状態に至る には長い時間がかかることが確認された.

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