3.3 大型クルーズ客船の要目等データ収集・整理と操縦性能の推定
3.3.6 スラスター等による横移動制御能力
着離岸操船においては、船首尾サイドスラスター(もしくは船尾アジマス・スラスター)
を活用しての船体横移動制御が行われる。真横から強い風を受けると制御が困難となり、
さらに船体前後方向に速力が生じるとスラスターの能力が減少して更に難しくなる。
ここでは、船体の前後方向速力成分を考慮した横移動制御能力を評価する。
(1) 船体に作用する外力の算出方法
船体に作用する外力は、正横方向から風と潮流を受けるときに最大となり、次の式で 算定できる。
2 2
2 1 2
1
a Ya a w
YW
wC Ld(V V ) C BV
P ここで、
P:船体に作用する外力 L:垂線間長[m]
d:喫水[m]
CYW:流圧横力係数 CYa:風圧横力係数
ρw:海水密度(104.5kg・sec2/m4) ρa:空気密度(0.125kg・sec2/m4) V:横移動速度[m/s]
Vw:流速[m/s]
Va:風速[m/s]
Ba:側面受風面積[m2]
(2) 計算条件
以下の条件で計算する。
船舶:14万総トン級(2軸2舵)、17万総トン級(アジマス2基搭載船)
前進速力:0~10ノット
風速:5~15m/s
風向:船首尾法線に対して90度(正横)
潮流:なし
喫水:最大喫水
水深喫水比:1.1
流圧横力係数:2.6(水深喫水比1.1)※操船通論より
風圧横力係数:1.0
-55- (3) 計算結果
前記条件に基づき、横移動制御能力を評価すると、各船舶でそれぞれ図 3.1.8と図 3.35に示すとおりである。
本船のスラスターは、 ( 0.3V)
O e T
T (T:船速 V ノットにおける有効推力、To:船体 停止時の有効推力、V:船速(ノット))1の式より、本船の前進速力がゼロのときは 100%の効果を発揮するが、前後方向速力成分の増加とともに効力が逓減する。
船尾アジマス・スラスターもサイド・スラスターと同様に前後速力成分によって効果 が検証するものと想定した。
いずれの船舶の前後速力ゼロのときは横風15m/secに十分対抗できる能力を有してい るが、前後方向に速力成分が生じると制御力が低下し、15m/sec の風に対応できなくな る。
0 50 100 150 200 250
0 2 4 6 8 10
推力、 風圧力 [tf]
前進速力[kns]
横推力 風速15m/s 風速12m/s 風速10m/s 風速8m/s 風速5m/s
※ 船首尾に同じ推力のサイドスラスター(2,500kW×3基ずつ)を装備している スラスターの推力はメーカーカタログから合計222tfと推定した。
図 3.34 横移動制御能力(14万総トン級(2軸2舵FPP))
1 出典「操船の理論と実際、井上欣三著、成山書店」
-56- 0
50 100 150 200 250 300 350
0 2 4 6 8 10
推力、 風圧力 [tf]
前進速力[kns]
横推力 風速15m/s
風速12m/s 風速10m/s 風速8m/s 風速5m/s
※ 船首は3,500kW×4基=14,000kWのサイドスラスターを装備し、船尾はS/Bで約 10,000kWのアジマス・スラスターを2基装備している。
船首尾のバランスを考慮して船尾側の推力に船首側を調整するものとした。
メーカーカタログから合計300tfと推定した。
図 3.35 横移動制御能力(17万総トン級(アジマス・スラスター2基))
操船に及ぼす影響が大きい外力条件を求めるときに用いられる「数値操船シミュレー ション」の実施例を巻末参考資料に示す。
数値操船シミュレーションとは、ある操船方法(制御方式)をあらかじめ設定し、こ れによって対象船舶の操船を自動的にコンピュータ内で行う操船シミュレーションであ り、外力による操船への影響を定量的に把握するために持ちられる手法である。
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