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アジマス・スラスターの操作方法

ドキュメント内 Microsoft Word - 報告書(最終) (ページ 64-111)

3.3 大型クルーズ客船の要目等データ収集・整理と操縦性能の推定

3.3.8 アジマス・スラスターの操作方法

「ポッド推進船の操船について 東京海洋大学名誉教授矢吹英雄」(日本水先人会連合 会会報 No.88、2014年11月)」及び英国水先人協会の資料「Piloting Vessels Fitted With Azimuthing Control Devices(ACD’s)」を参考にアジマス・スラスター(アジポッド)の概 要及び基本操作方法について整理した。

(1) アジマス・スラスター(アジポッド)の概要

最近の大型クルーズ客船のなかには、従来の2軸2舵方式ではなく、図 3.37に示すポッ ドにプロペラを取り付けた推進装置を採用する船舶が多い。この推進装置には舵がなく、

ポッドが水平方向に 360°回転して自由に推力方向を変えられることからアジマス・ス ラスターと総称され、その繭型回転楕円体形状からアジポットと呼ばれている。

アジポットは、1980年代にフィンランドのABB社によって考案され、当初は砕氷船 や海洋観測船に利用されていたが、その操船の自由度から大型クルーズ客船への採用が 増加している。

図 3.37 アジポッドの概要

-59- (2) ポッド推進器の基本操作

① ポッド操作の制限

1) ポッドは可能な限りゆっくりと操作する。

2) 回転数を所定の最小回転数以上に維持し、Positive RPMでの使用を心掛ける。

Negative RPMは、着離桟など2~4ノットの低速力で航行中及び錨泊、DP等 の船位保持には使用してよいが、航海速力で航行中の使用は避ける。また、パ イ ロ ッ ト ステ ー シ ョ ンへ の ア プ ロー チ 時 に は、 時 々 使 用す る の で あれ ば Negative RPMを使用して差支えない。

3) 他のポッド、特に推力を発生していない状態のポッドに放出流を当てる操作は 避ける。

4) 低速時に推力を発生していない状態のポッドを旋回させる操作は避ける。

5) 高速で航行中、ポッドを大角度で旋回させると船体が大きく傾斜し、ポッドに 強い力が加わるので避ける。

6) 船速とポッドの回転数に大きな差が生じるような操作は避ける。

7) 緊急停止は避ける。

② 操縦モード

ポッド推進船では、航行状態に応じて操縦モードを変更して操船が行われる。

基本となる操縦モードには、100%の出力で運転し、複数のポッドの回転数、旋回角 度を同期させて制御する「Cruise mode」や出力を50~60%程度に下げて各ポッドを 個別に制御する「maneuvering mode」などがあり、大洋航行中は前者、港内航行中 は後者のモードが選択される。

③ 操作方法

船尾左右に1基ずつポッド推進器を搭載した典型的なポッド推進船について、アジマ ス・コントロール・デバイスの操作方法と船体運動を模式的に示した基本的操作例を図 3.38~図 3.40に示す。

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低速前進 全速前進

低速後進 全速後進

図 3.38 速力制御操作例

-61- ゆっくりとした左変針 ゆっくりとした右変針

通常の左変針 通常の右変針

図 3.39 変針操作例

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左その場回頭 右その場回頭

左横移動 右横移動

図 3.40 回頭・横移動操作例

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4 まとめと今後の課題

我が国では、「明日の日本を支える観光ビジョン」(2016年3月)で2020年の東京オリン ピック開催年において訪日クルーズ旅客数 500万人を目標値と掲げている。これは2015年実 績の約 4.5 倍もの値である。国土交通省では、この実現に向けて様々なクルーズ振興政策を実 行しており、日本国内の港湾において、今後より一層大型のクルーズ客船がより一層高頻度で 寄港するものと予想され、これまで大型クルーズ客船の寄港実績のなかった港湾にも拡大して いくものと考えられる。

大型クルーズ客船は1990年頃から船型大型化と就航隻数の増加が拡大し、2010年頃には23 万総トン級の世界最大のクルーズ客船が就航した。国内には17万総トン級の船舶が実績最大で あるが、世界最大級の23万総トン大型クルーズ客船についても2018年には国内の港湾に寄港 する計画となっている。

国内港湾においては、大型クルーズ客船の入港申請に呼応するため、施設の改良が行われて いるが、クルーズ客船の大型化のスピードに追い付いていないのが実情である。一方、最近の 大型クルーズ客船は、アジマス・スラスターのように操船自由度の高い高性能推進装置を搭載 したり、高出力サイドスラスターを装備したりして風の影響を受けやすい構造に対応した性能 を有する船舶が多い。各港湾においては、水域施設の規模と受入れ船舶の性能がマッチングし ているかどうか、操船シミュレーション手法等を活用した科学的な検証を行って必要な航行安 全対策の検討が行われている。

大型クルーズ客船は、タグボートによらず、基本的には自力による着離岸・回頭操船が行わ れることから、水先人と本船船長との役割は一般船舶と異なる。とりわけアジマス・コントロー ル・デバイスは取扱いが特殊であるため、本船船長あるいは航海士が直接デバイスを操作し、

水先人の本船に対する指示も舵角やエンジン・モーションではなく、針路や速力をオーダーす る。

大型クルーズ客船の操縦性能と操船の特徴を理解することは水先人にとって重要であり、自 動車専用船のように風の影響を受けやすい構造であることから、外力影響を予測した操船計画 を適切に設計することと、それを確実に履行できるよう、大型クルーズ客船の特徴を踏まえた 操船ガイドラインの策定が望まれているところである。

参 考 資 料

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航行安全対策事例(釧路港)

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14 万総トン級大型クルーズ客船(アジマス・スラスター搭載船)の基本操船性能

出典:平成24年 小樽港大型客船係留検討委員会報告書、日本海難防止協会

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