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スポーツボランティア

ドキュメント内 橡商学部提出用 A4 涌田.PDF (ページ 64-68)

第3章  運営モデル作成への課題

第2節  スポーツボランティア

第1項 スポーツボランティア

  プロスポーツクラブ運営は 誰に 対して「試合」を提供して行くのかますます問われ る傾向にある。J リーグの場合、その理念の中にはまず、サッカーというスポーツの普及 が掲げられている。プロスポーツクラブの運営者がプロスポーツクラブとして運営を望む のならば、理念の具現化を第一目標に据えるべきであり、基本的にすべての人に対して「試 合」を提供することを考えなければならないだろう。

  Jリーグクラブチームがすべての人に対して「試合」を提供するとすれば、「試合」のテ レビあるいはラジオ中継は入場者数の増加に伴う、観戦することができない人に対する救 済といった側面があると考えられるだろう。ところが、「試合」のテレビあるいはラジオと いったメディアを介する中継すらも、観戦することができない人に対する救済にはならな くなっているのが、イングランドのプレミアシップで起きた、マードック氏に対する訴訟 である。つまり、グローバル化はコンテンツ市場で大きく進展しているので、ここでも優 良顧客、不良顧客といった顧客の差別化が進展する可能性があり、それに対するイングラ ンド住民の危惧と捉えることができるだろう。

  そこで登場するのがスポーツボランティアの存在である。スポーツボランティアとは『ス ポーツ白書  2001年のスポーツ・フォア・オールに向けて』の中で、

 

1総務庁やアメリカでの定義を参考に、ここでは「報酬を目的としないで自分 の労力、技術、時間を提供して、地域社会や個人・団体のスポーツ振興のた めに行う活動のことを意味する。ただし、活動のための交通費などの実費程 度の金額の支払は報酬に含めない。」と定義する。 

 

  本論文ではスポーツボランティアの定義として、上記の定義を採用し、さらにプロスポ ーツクラブ運営について論じるために、特にプロスポーツクラブの提供する「試合」の運 営の為に行う活動のことを意味することとする。このスポーツボランティアが観戦したく でもできない人の一種の救済となるのではないかと私は考える。

  スポーツボランティアに対する人々の関心は最近高まりつつある。例えば、オリンピッ クボランティアの数の増加について、B.Christine GreenとLaurence Chalipは、

1 『スポーツ白書〜2001年のスポーツ・フォア・オールに向けて〜』SSF笹川スポーツ財団1996  p.88

1For example, the Atlanta Olympics required 40,000 volunteers (Emmons, 1996). The Sydney Organizing Committee for the Olympic Games (SOCOG) estimates it will require 50,000 volunteers for the 2000 Olympics and Paralympics (SOCOG 1997).

  1996年のアトランタオリンピックでは4万人のボランティアが必要とされ、2000年の シドニーオリンピックでは、5万人のボランティアが必要とされそうなのである。逆に言 えば、これ以上のボランティア人口があると考えられるわけであり、スポーツボランティ アに対する高まりは分かると思われる。

  しかし、その関心の高まりに、プロスポーツクラブ運営の困難な状況を解決してくれる 期待をしているわけではない。むしろ、ボランティアというカテゴリーが自己責任に基づ きそれゆえ自由であるという点に期待をしている。

  それはどういうことを意味しているのか。

  プロスポーツクラブ運営が直面している問題は、前節でも述べたとおり、 誰に 対して 商品を提供するのかということである。

  一方は、グローバルネットワークに加わること、すなわち、マーケットの拡大や顧客志 向の名の基にある顧客差別化といったルールの遵守(標準的技術の取得)である。それは、

優良顧客に対してのみ商品を提供することを意味する。これを採用しなければ、経営は苦 しく、運営をする基盤すなわち、スポーツクラブ自体が消滅の危機にさらされる。

  他方は、ローカルネットワークに加わること、すなわち、サッカーの普及や地域密着と いったルールの遵守である。それは、すべて(地域住民すべて)の人々に対して(のみ)

商品を提供することを意味する。これを採用しなければ、スポーツクラブとしての条件、

すなわちスポーツクラブからの脱退となってしまう。

  スポーツボランティアは自発的な集団であり、それゆえ地域住民であることが多いが地 域住民である必要はない。まるで優良顧客の如く、運営に積極的に参加する者もいれば、

途端にその集団から脱退してしまう者もいる。そう言った意味で、非常に自由なカテゴリ ーに属する。

  従来までは、こういった自由な遊軍的な立場の人を運営にとりこもうとするのは困難で あった。なぜならば、その位置付けや把握が困難であったからである。

  ところが、将来的にプロスポーツ運営が直面する問題は、こういった自由なカテゴリー に所属する人々をいかに運営して行くのかにかかっている。それは、プロスポーツクラブ が二者択一のうち一方を採用すれば一方が棄却され、その棄却した一方の理由によって、

自らのプロスポーツクラブとしての存在基盤を失ってしまうからである。そして、どちら の一方を採用しても、存在基盤を失うという答えが待っているからである。

1 B.Christine Green and Laurence Chalip ,Sport Volunteers :Research Agenda and Application,Sport Marketing Quarterly Volume 7 Number 2 1998 pp.14-23 

2 参加と潜在ニーズ

  プロスポーツクラブ運営が直面している問題を解決するには、スポーツボランティアの ような自己責任と自由を持った集合をどのように運営に取り入れていくのかを考えること である。スポーツボランティアを運営にとり入れようとする際、最も困難な問題の一つは、

その参加状況の把握が非常に不確実であることである。スポーツボランティアに参加する のか否かの判断は、それぞれ一人一人の判断によってなされるので、例えば、参加するで あろう数を予想することすら困難である。

  したがって、スポーツボランティアに対する運営を考えるとき、重要と思われる一つは、

ボランティアをどのように保持していくのか、そしてその離反(ボランティアをやめてし まうこと)のリスクをどのように軽減して行くのかといったことであろう。

  B.Christine GreenとLaurence Chalipは、ボランティア運営に関わる重要な一つであ

るボランティアを保持することについて、

1

In essence, retention requires building a relationship with the volunteer, monitoring the benefits volunteers seek, and continually marketing those benefits back to volunteers (Hobson, Rominger, Malec, Hobson,&Evans,

『Volunteer-friendliness of nonprofit agencies : Definition, conceptual model, and applications.』Journal of Nonprofit and Public Sector Marketing ,44(4) ,1996 pp.27-41).

  と述べている。ここで、スポーツボランティアを保持する為には、リレーションシップ の構築、スポーツボランティアの求める便益の把握、把握した便益をスポーツボランティ アに返却することを挙げている。

  また、スポーツボランティアの求める便益の特徴として、

2As the volunteer works for the organization, the benefits he or she seeks may change. This is consistent with the diffusion of innovations framework. On the one hand, there may be some satiation of initial benefits after they have been experienced for some time (cf. McCurley

「Recruiting and retaining volunteers」『The Jossey-Bass handbook of nonprofit leadership and management』R.D.Herman [Ed.], San Francisco:

Jssey-Bass pp.511-534). On the other hand, the experience of volunteering may elevate the importance of unforeseen benefits.

1 B.Christine Green and Laurence Chalip ,Sport Volunteers :Research Agenda and Application, Sport Marketing Quarterly Volume 7 Number 2 1998 pp.14-23  p.19

2 同上書p.20

  と述べている。そうすると、スポーツボランティアの便益は常に学習によって変化する ことが言えそうである。

  これら二つの引用から、スポーツボランティアのような集団を運営するときには、リレ ーションシップを構築する、One-to-one Marketingのような手法が効果的であるというこ とを意味している。なぜなら、One-to-one Marketingで行われた手法の目的は、顧客との 学習関係(learning relationship............

)を確立することにあったからである。

  では、スポーツボランティアのような参加者を相手に実際にマーケティングを手がけて いる事例を見てみよう。ここでは、製品開発を行う際に潜在的な顧客との対話を用いて、

ニーズに沿った製品開発を行おうとしている企業である。この企業の試みは、消費者と生 産者の一体化といった側面からも興味深いが、とくに、ホームページ上でのオープンな場 での対話を重要視している観点からも興味深い。

  その企業はリコーエレメックス社である。リコーエレメックス社は、インターネットホ ームページ上で、企画・デザインした腕時計を消費者と共に意見交換し、それを製品開発 に生かしていこうとする試みを行った。今回は、集英社の月刊誌「BART」のホームペー ジ上にコンセプトを提示し、議論を交わしている。リコーエレメックス社にはインタビュ ーを試みた。別紙資料Ⅶがその資料である。別紙資料Ⅶから、プロジェクトの概要を抜粋 すると、

 

1メーカーとメディア(雑誌とホームページ)と生活者(=読者)がジョイン トし、相互にリアルタイムに意見交換し合いながら、彼らの多くが欲する時 計を企画・製造し、限定で販売するという、国内初の試み。 

 

  となっている。別紙資料のインタビューからも分かる通り、リコーエレメックス社はこ のプロジェクトを、潜在ニーズを探るためとしている。

  しかしここで注目すべきは、二点ある。一点目は、競合他社(例えば、セイコー、シチ ズン時計)もこのプロジェクトに参加できることであり、つまり、参加者との対話の場が 非常にオープンな場であることである。もう一点は、製品にどこまで参加者の意見が反映 されるのかに関しての質問に対して、多数の意見を取り入れるわけではないことを述べて いる。それは、リコーエレメックス社がホームページ上に参加する人々を 消費者 と捉 えず 生活者 として捉えている事に見られるであろう。ホームページ参加者は必ずしも 消費者 ではなく、むしろ単なる参加者である。これは、金銭的報酬を求めていないとこ ろからも、一種のボランティア的な活動と捉えられなくもない。

  実際のホームページ上で寄せられている意見はツリーの形式で管理されている。それは、

あるメッセージに対してさらなるメッセージを付け加える事ができ、またその流れを見る こともできるのである。これは、時計に関する意見交換のオープンな場があるために、時 計に関する一種のネットワークが構築されて行く過程と見て取れるだろう。

  以上のように、スポーツボランティアの運営の内、まず始めにしなければならないこと は、対話の場<チャネル>を構築することである。

1 別紙資料Ⅶより抜粋

ドキュメント内 橡商学部提出用 A4 涌田.PDF (ページ 64-68)

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