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フランス

フランスのラグジュアリー品売上

高の201416年度のCAGRは全地域中で最高の10.3%、前年比成 長率は2番目に高い5.8%となった。フランス企業全体の2016年度に おける純利益率も全地域中で最も高く、11.1%と報告されている。こ れは2015年度とほぼ同水準である。フランスの最大手ラグジュアリー 企業であるLVMHKeringL'Oréal LuxeHermès4社は、いず れもラグジュアリー品売上高が50億米ドルを超えている。上位100 に入ったフランス企業全体の売上高のうち90%近くはこの4社による もので、残りの5社の寄与率は10%をわずかに上回る程度である。そ のため、フランスのラグジュアリー企業の平均規模は2位以下を大きく 引き離してトップの58億米ドルで、2016年度の上位100社全体のラ グジュアリー品売上高に占めるシェアも最大(24.3%)となっている。

Fastest 20にランクインしたフランス企業は、SMCPHermèsKering L'Oréal Luxe4社で、いずれも201416年度のCAGR2桁で あった。SandroMajeClaudie Pierlotブランドを所有するSMCP は、上位100社中5番目に高い201416年度のCAGR24.3%)を報 告している。成長を牽引したのは、全ブランドの全地域市場における 成長、Majeのヒット製品である「M」バッグの成功、新店舗の拡大、

80%近くの成長を達成し同社の2016年度世界全体売上高の約 10%を占めるまでになったeコマースである。SMCP2016年に Shandong Ruyiに買収されたが、現在も独立した企業として運営さ れている。同社はフランスで2016年度において2桁の売上高成長率を 記録した唯一の企業であり、最も目覚ましい成長を2年連続で遂げ た。SMCP以外は、アクセシブルラグジュアリー企業のLongchamp 除き、どの企業も1桁の成長率を報告している。Longchamp2015 年度に13.2%の成長率を達成したにもかかわらず、今年度は売上高 を2.3%減らした。Jeanne Lanvin4年連続で売上高が減少し、上位 100社から脱落している。同社のブランドは、20163月にAlber Elbazがアーティスティックディレクターを退任して以来、危機的状況 にあると見なされている。後任のBouchra Jarrar20177月に解 雇された。

Hermèsは、フランス企業の中で総じて最も優秀な成績を収めたと言 えるだろう。201416年度のCAGR12.4%、純利益率は上位100 社中で2番目に高い21.2%となった。同社は2016年度、売上高を日 本で20%以上、その他の全地域で56%伸ばしている。なかでも同 社の「得意分野」である革製品と馬具類は、最も力強い成長を達成した

(14.5%)。世界をリードするラグジュアリー企業LVMHの純利益率は、

上位100社中10番目に高い11.6%で、前年度からわずかに改善して いる。

2016年度の純利益を公表したフランス企業4社全体の純利益率は、

前年度と同じ11.2%で、上位100社の平均を2.4ポイント上回った。4 社全体の総資産利益率(ROA)は6.9%で、上位100社の平均と同水 準である。

ドイツ

この分析で対象とする他の地域の企業

群と比較すると、ドイツ企業は2番目に規模が小さく、ラグジュアリー 品の年平均売上高は87,300万米ドルであった。上位100社入りし たドイツ企業は5社で、2015年度よりも1社減となっている。スキー・

スポーツウェア専門のBognerは、3年連続で売上高を減らして上位 100社から脱落した。ジュエリー企業のWempeを除く全企業がファッ ション企業である。

ドイツの業績のうち圧倒的に大きな割合を占めるのが、当分析グルー プで唯一の公開企業であるHugo Bossで、ドイツ企業全体の売上高 の3分の2以上を占めた。Hugo Boss2016年度、4.1%の売上高減 を報告している(為替変動の影響を除いた場合は2%減)。米国の百貨 店の不調が原因で、同社は「値引きを主な原動力とするブランドイメー ジに悪影響を及ぼす卸売パートナーとの決別」に至った。また、中国 における価格がヨーロッパ・北米・南米の価格により近い水準まで調 整された結果、中国における2016年度第4四半期の既存店売上高は 20%増加した。同社の業績回復戦略は、上位高級ブランドBOSSと、

BOSSよりも約30%低価格のエントリーレベル(若年層向け)ブランド HUGOという、2つの中核ブランドに焦点を絞ったものとなっている。

BOSS OrangeBOSS Green2ブランドについては、中核ブランド BOSSへの統合が進められている。世界全体での価格統一、卸売流通 の再編、ウェブサイトのリニューアルや新たなモバイルアプリによるオ ンラインへの注力強化も、同社の業績回復戦略の主な柱である。

最も優秀な成績を収めたのは靴下・ストッキング専門企業のFalkeで、

2%の売上高成長を遂げた。Marc Cainは前年比で売上高を維持した が、MARC O'POLOは売上高を1.3%減らしている。Wempeの売上 高は、中国における売上高の激減と、より全般的な経済の減速が原因 で、12.1%急落した。

高級ファッション企業のMarc Cainは当分析グループ中で最も高い純 利益率(8.6%)を報告し、Falkeも前年度よりも高い利益率(6%)を報 告している。Hugo Boss2016年度における純利益率は4.2ポイン ト減の7.2%となった。WempeMARC O'POLO2016年度の利 益を開示していない。ドイツ企業全体で見ると、売上高成長率は上位 100社中で3番目に低いマイナス4.3%となっている。

イタリア

イタリアは今年度も、上位100

にランクインしたラグジュアリー企業の数でトップとなり、24社を輩出 している。2016年度のラグジュアリー品売上高成長率は1%で、為替 変動に後押しされた前年度から5.7ポイント減となった。イタリア企業 全体の業績は、上位3社であるLuxotticaPradaGiorgio Armani の実績に大きく左右されている。これら3社は2016年度、上位100 入りしたイタリア企業全体のラグジュアリー品売上高の半分近くを占 めた。

同族経営が中心となっているイタリアのラグジュアリー企業は、上位 100社の平均よりも規模が小さく、平均売上高は14億米ドルで、上位 10社に入ったイタリア企業はLuxottica Groupだけであった。Luxottica はフランスのレンズ企業Essilorとの間で500億ユーロ規模の合併を 予定しているが、本社がミラノに残るか、パリに移動するかはいまだ不 明である。Luxotticaのグローバル眼鏡事業の2016年度における成 長率は2.8%で、為替変動に後押しされた2015年度から12.7ポイント 低下した。為替変動の影響を除いた成長率は3.9%で、前年度からわ ずか0.4%減に留まっている。Luxotticaは小売分野で6%の成長を遂 げた。これは、同社がイタリアの眼鏡小売チェーンSalmoiraghi &

Viganòの買収と、その他の小売業者との提携によって店舗数を約

1,000件増やし、世界的ネットワークを拡大した結果である。Prada Giorgio Armaniは前年比売上高を大きく減らした(それぞれ10.3%

と5.3%の減少)。Pradaの業績回復計画には、製品ポートフォリオの 刷新、小売ネットワークの改革、eコマースとデジタルマーケティングへ の投資拡大などが盛り込まれている。Giorgio Armani2009年以 来初めて売上高が減少したことを受けて、店舗ネットワークを合理化 するとともに、7つあったブランドを減らし、中核的な最上級ブランドの Giorgio Armani、中級ブランドであるEmporio Armani、若者をター ゲットにしたアクセシブルブランドのA/X Armani Exchangeだけを残 す計画を打ち出した。

イタリアのデザイン力と、その伝統、遺産、品質に対する名声により、

「Made in Italy」の刻印は世界中でラグジュアリー品の強力なブラン ディングツールとなっている。ラグジュアリーブランドとしてのイタリア の名声はファッション界において圧倒的であり、上位100社にランクイ ンするイタリア企業の3分の2以上が衣料・靴カテゴリーに属するとい う事実がこれを裏付けている。さらに、上位100社のうちバッグ・アク セサリーの商品カテゴリーに属する企業の過半数がイタリア企業で あった。この状況を後押ししているのは、同族経営によるブランド価値 の手厚い保護である。24社のうち20社は創業者一族が株式の過半数 の保有者または経営者であり、一族の名前がブランド名となっている ことが多い。

イタリアの小規模な企業は、大規模な企業よりも平均的に業績が良 く、2016年度の上位100社の最上位に入った企業も存在する。イタリ ア企業は今年度も6社がFastest 20にランク入りし、そのうち3社は 昨年度に続いての再登場となった。Valentinoの売上高は201316 年度の3年間で倍以上に増加し、2016年度は11.7%の成長を遂げ、

初めて10億ユーロの大台を突破している。デザイナーのPierpaolo Piccioliは、超最高級ブランドであるValentinoのブランド力を守った 功労者とされているが、2017年の開発の焦点は、日本、eコマース、

デジタル化推進へと移された。Furlaは、Fastest 20にランクインした 唯一のバッグ・アクセサリー企業であり、同社の2016年度における売 上高成長率は、上位100社全体で4番目に高い24.5%となっている。

Furlaのアクセシブルな高級バッグ・アクセサリーは、同社最大の市場 である日本のほか、ヨーロッパやトラベルリテール市場でも力強く成 長した。

Monclerは、上位100社において全ての基準で好成績を収めたわず か5社のうちの1社であり、売上高成長率(18.2%)と純利益率

(18.9%)の両方で2桁を達成した。同社はまた2016年度、ブランド力 を原動力としたオーガニックな成長と、単一ブランドのみを扱う小売 店ネットワークの継続的な開発により、初めて10億ユーロ以上の売上 高を計上している。Finosは上位100社への再ランクインを果たした。

これは、大規模な構造改革(Tru Trussardiラインの廃止を含む)、増 資、不採算店舗の合理化の結果、Trussardiブランドが2016年度に

36.6%の売上高成長率を達成し、特にロシアにおいて優れた業績を

上げたことによるものである。Dolce & GabbanaBrunello Cucinelli2016年度売上高は、それぞれ14.3%10.1%2桁成長 を報告している。

2016年度は9社が1桁の売上高成長を報告したが、同じく9社が売上 高を減らした。後者には、世界有数の一流ラグジュアリーファッション ブランドであるPradaArmaniOTBDiesel)、ZegnaTOD'Sも含 まれている。2017年にデロイトがイタリア、米国、英国および中国のミ レニアル世代の消費者を対象に実施した調査『ミレニアル世代ラグ ジュアリー消費者調査:何がミレニアル世代の消費を拡大させるのか

(Bling it on: What makes a millennial spend more?)』11によれ ば、ミレニアル世代のラグジュアリー消費者は、上の世代に比べてブラ ンドに対するロイヤルティがかなり低く、伝統や憧れの対象であると いった特性をそれほど重視しない。彼らが求めるのは、品質と独自性 である。ミレニアル世代による消費の特徴は、オンラインの台頭であ る。これは、売上高はもちろんのこと、情報やアドバイスについても言 える。先に挙げた大手ブランドの低迷には、景気や創造性などのさま ざまな要因が影響しているが、ラグジュアリー消費者の変化への対応 が後手に回っていることも関係しているはずである。

イタリア企業の最終利益はわずかに改善し、純利益率は2015年度の 7%から2016年度には7.1%となった。イタリアのラグジュアリー企業 のうち、2桁の純利益率を達成したのは、MonclerFerragamo EuroitaliaLiu.JoGiorgio Armani5社である。純損失を計上した のは7社で、前年度より2社多かった。

イタリア企業の総資産利益率(ROA)は5.8%で、上位100社全体の平 均を下回った。

スペイン

スペインは、同族経営のラグ

ジュアリー企業4社が上位100社にランクインしている。この分析で対 象とする他の地域の企業群と比較すると、スペイン企業は規模が最も 小さく、ラグジュアリー品の年平均売上高は74,100万米ドルであっ た。スペイン企業の2016年度における売上高成長率は全地域中で最 も高い6.2%で、上位100社全体の平均を5.2ポイント上回っている。

Puigはスペインのラグジュアリー企業のなかで突出して規模が大きく、

このグループ全体の売上高の67%を占めている。2016年度は売上高 の8.8%増を計上し、為替変動の影響を除いた売上高は前年比5% 増加となった。成長を後押しした要因は、資生堂が保有していたJean Paul Gaultierの香水におけるライセンスが2015年末に終了したの を受けて、同ブランドを統合したことと、Carolina Herreraが手掛け て大ヒットしたGood Girlなどの新製品を発表したことである。Puig は買収戦略を続行し、2016年にEB Florals(ニッチ香水企業)と

Granado(ブラジルにおける高品質自然派化粧品の草分け的メー

カー)の株式取得により少数株主に、2017年にはギリシャのブランド APIVITAの過半数株式の取得により大株主となった。アクセシブルラ グジュアリージュエリー企業のTous2016年度は好調な業績を収 め、売上高を11.3%伸ばしたが、ファッション企業のTextil Loniaと時 計メーカーFestina Lotusはいずれも売上高を減らし、それぞれマイ ナス0.5%、マイナス8.8%の成長率となった。

スペイン企業は2016年度、全企業で黒字となっている。最も高い純利 益率を報告したのはTextil Loniaで、1.5ポイント増の11.2%だった。

Tousも純利益率を8.7%まで改善している。スペイン企業全体の平均 利益を下げたFestina Lotusは、辛うじて黒字を出すに留まった。

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