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ステントグラフト内挿術によるエントリー閉鎖術3

ドキュメント内 “‡Œ{flÇ-Œ{ŁÒ-01 (ページ 47-50)

Slonim らは臓器虚血(腸管,腎,下肢等)を伴った 急性大動脈解離40例に対し,ステント留置のみを24例 に,ステント留置とバルーン開窓術の同時施行を14例 に,バルーン開窓術のみを2例に施行し成績を報告して いる265).虚血領域の改善は37例93% で成功している ものの,10例25% が腸管虚血や偽腔の破裂などにより 30 日以内に死亡しており,早期成績に影響する有意な 因子は3臓器の虚血の合併と発症からインターベンショ ンまでの時間であったと述べている.

1

)適 応

本法の大動脈解離,解離性大動脈瘤に対する適応は未 だ意見の一致を見ていないが,基本的には外科手術が必 要であるが従来の開胸手術ではハイリスクと考えられる 慢性期例を最も良い適応とする施設が多い372,375)

一方急性大動脈解離では,挿入手技による脆弱な剥離 内膜(intimal flap)の新たな内膜亀裂の発生376,377)や血 管損傷が危惧されるが,狭窄した真腔や分枝動脈の拡大 が容易に得られるという利点がある180,272,378).現在のと ころ有症状の大動脈解離に対し緊急でステントグラフト を挿入している施設は,本邦では限られているが欧米で は積極的に行われ始め,最近の欧州よりの131例の報告 では,破裂,拡大,分枝動脈閉塞などの有症状例が 57

% を占め,46% が緊急留置であった374.破裂例,臓器 虚血合併例や,エントリーが下行大動脈に存在し解離が 逆行性に上行大動脈まで及んでいる逆行性解離による Stanford A 型症例では手術成績が不良なことより症例 によっては急性期でも本治療の適応と考えられてきてい

経カテーテル的開窓術,狭窄または閉塞真腔,

分枝血管に対するステント留置術 2

ステントグラフト内挿術によるエントリー閉鎖術

3

180379

本法では閉鎖すべきエントリーの前後でステントグラ フトが大動脈壁と十分に圧着固定される部分(landing zone)が必要で,圧着固定が不十分であれば,血液がす きまを通りエントリーに流入してしまう(エンドリー ク:endoleak).このため十分なlanding zone を得ること が必要で閉鎖可能なエントリーの部位は限定される.一 般には,中枢側はエントリーが左鎖骨下動脈分枝部より

1〜1.5cm 以上末梢にあるものが適応とされ,末梢側は

脊髄虚血の予防のため,腹腔動脈直上までの留置は控え る施設が多い.

また慢性期には真腔が変形,狭小化し内膜が肥厚硬化 しているためステントグラフトの留置直後は真腔の十分 な拡大が得られないこと380)や分枝動脈が偽腔より灌流 されている場合はエントリーの閉鎖により虚血に陥るこ とも問題点として挙げられ180),症例によってはカテーテ ルによる分枝動脈部での開窓術の作成を行っている381

2)方 法

詳細は真性大動脈瘤に対する治療の項に譲るが,本邦 では胸部大動脈に留置するステントグラフトは,現在業 者製のものは使用できず,各施設で自作されている.

ステントグラフトに用いるステントは形状が変化する 真腔に留置するため,恒久的に拡張力が得られる自己拡 張型が主流でZ-ステントが用いられることが多い.材 質は自作例ではステンレスが用いられることが多いが,

業者製のステントグラフトでは形状記憶合金のnitinol が主流となっている.被覆材料は thin wall のDacron

graft が用いられているが,一部の施設では内膜亀裂へ

のフィットの良さからe-PTFE graft も用いられている.

ステントグラフトのdelivery system には18〜24Fr サ

イズのTeflon sheath が用いられ,最近はあらかじめカテ

ーテルの先端にステントグラフトをpre-load しておき留 置目的部位にカテーテルを進め放出する system が広ま

っている375,382)

放出時には胸部大動脈内の強い血流によりステントグ ラフトが末梢側に流されること(distal migration)が最 大の問題点となる.真性大動脈瘤に対する治療で詳記す るが,ATP 投与による一時的心停止法383),バルーンに より上,下大静脈を閉塞し心拍出量を軽減する方法384), ステントグラフトを deployment 終了後に離脱させる

(stabilizer)方法385)等の工夫が行われている.

3

)成 績

最近の治療成績373374377を見てみると,初期成功率は

70.8〜94.4%,エンドリーク発生率は2.8〜19%,早期

死亡率は2.7〜13% と報告されている.これらの報告で

は,急性例が 43〜67% を占めているが,急性期治療の 率が高くなるほど成績が不良な傾向を示したが,差がな いとの報告も認めた374.また合併症の発生率は10.8〜33

% と報告されているが,脳梗塞,対麻痺などの発生頻 度は真性瘤にくらべ低率で,対麻痺の発生は0〜0.8%,

脳梗塞の発生は0〜4.2% と報告されている.

治療後の偽腔の状態の報告は少ないが,Shimono ら377 は6ヶ月以上,平均21.5ヶ月の観察期間で36例中胸部 偽腔の縮小を88.9% に,消失を59.3% に認めたと報告 している.

遠隔成績の報告は未だ少なく,2年程度の中期成績が 報告されつつある.Shimono らは37例,平均24.5ヶ月 の観察期間で,2年後の実測生存率は97.3%,心血管事 故回避率は78.3% と報告し,Hansen ら373)は24例の治 療例における2年間の遠隔死亡率は17% で,4例に追加 手技が,2例に外科手術が必要であったと報告している.

4

)おわりに

大動脈解離に対するカテーテル・インターベンション は,ステントグラフトによりエントリー閉鎖が可能とな り,適応が広がり治療成績が進歩した.しかし適応や成 績は施設ごとに異なり,施設ごとの経験に依存している のが現状である.今後は業者製のデバイスの導入により 施行施設が拡大すると考えられるが,施行医の研修・認 定システムの整備等が必要となると思われる.また未だ 遠隔成績の報告は少なく遠隔期の問題点は不明である.

遠隔成績の詳細な分析が待たれる.

多くの胸部・腹部大動脈瘤に対する経カテーテル的血 管内治療(ステントグラフト治療)の報告が術後初期の 安全性とその効果を証明している374386398.加えて出血 量が少なく合併症の頻度が低いことから ICU 滞在や入 院の期間が短縮され,早期回復が得られる等も報告され て い る . 腹 部 大 動 脈 瘤 に 関 し て は ,p r o s p e c t i v e randomized trial399400の成績が2004年に報告されている.

これらの trial はステントグラフト治療と外科手術の初

期治療成績を比べたものであるが,いずれもステントグ ラフト治療の優位性を示している.胸部大動脈瘤に関し ては,いまだprospective randomized study の結果は報告

(真性)大動脈瘤

2 2

1 はじめに

されていないが,腹部大動脈瘤に比べ外科手術の成績が 不良であることを考えると,カテーテル治療と外科手術 のいずれも可能な症例を対象とする場合,腹部大動脈瘤 と同様の結果が予測できる.

中期予後(3〜6年)についても外科手術と変わりな いとする報告も多いが391,392,396,398,401−404),エンドリーク,

再治療,外科手術への変更,瘤破裂などの報告も絶えず,

決して経過観察を怠るべきでない405−412).それゆえ,初 期成績の優位性をもってステントグラフト治療を第一選 択とする理由にはならず,遠隔期を含めた randomized study が待たれる.

現段階では,従来治療である外科手術の適応を基本と し(別項参照),これにステントグラフト治療が可能な 解剖学的条件が付加される.以下にステントグラフト治 療に必要な解剖学的条件と,本治療が外科手術より望ま しいと考えられる病態を列記する.

1

)腹部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の 解剖学的適応

①適 応

a.20〜22Fr のカテーテルシースの挿入が可能であるこ

と,

b.腎動脈下腹部大動脈(中枢側 landing zone)の径が

19〜26mm であり,かつ15mm 以上の長さが存在す ること,

c.同部位の屈曲が60度以下であること,

d.総腸骨動脈(末梢側landing zone)の径が8〜16mm で,長さが10mm 以上であること.(図20)

②除 外

両側総腸骨動脈瘤の合併

2

)胸部大動脈瘤に対するステントグラフト治療の 解剖学的適応

①適 応

a.20〜24Fr カテーテルシースの挿入が可能であること,

b.landing zone の長さが20mm 以上で,径は38mm 以 下であること,

c.landing zone は,ほぼ直線的であること.(図21)

②除 外

動脈瘤による圧迫症状をともなう大動脈瘤(嗄声を除 く,気管・気管支,食道の圧迫等).

図 20 腹部大動脈瘤・ステントグラフト治療に関する  decision tree

腹部大動脈瘤  ・φ≧ 50 mm

        ・急速拡大≧ 10 mm/年 

・腎動脈下腹部大動脈瘤

・腎動脈下大動脈に Landing zone ≧ 15 mm  (Landing zone 直下に)Angulation ≦ 60°

・総腸骨動脈の拡大なし≦φ 15 mm      Landing zone ≧ 10 mm

合併症あり 

ステントグラフト内挿術 

合併症なし  手術困難  手術可能 

保存療法  手術治療 

あり  なし 

解剖学的適応 

ステントグラフト治療 に対する患者の希望 

Extra-anatomical bypass 弱い・なし 

あり  なし  強い 

図 21 胸部大動脈瘤・ステントグラフト治療に関する  decision tree

・動脈瘤中枢・末梢にφ 20 mm 以上の Landing zone   (左鎖骨下動脈分枝部は Landing zone に加える) 

・Landing zone の angulation ≦ 30° 

・Landing zone のφ≦ 36 mm

合併症あり 

ステントグラフト内挿術 

合併症なし  手術困難  手術可能 

保存療法  手術治療 

あり  なし 

解剖学的適応 

ステントグラフト治療  の患者希望 

Extra-anatomical bypass 弱い・なし 

あり  なし  強い 

下行大動脈瘤   ・φ≧ 60 mm 

胸腹部大動脈瘤  ・急速拡大≧ 10 mm/年           ・≧ 50 mm +有症状 

2 適 応

ドキュメント内 “‡Œ{flÇ-Œ{ŁÒ-01 (ページ 47-50)

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