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ステロイド・免疫抑制薬

ドキュメント内 循環器病ガイドラインシリーズ JCS2017 isobe h (ページ 36-40)

7.1.1 ステロイド

巨細胞性動脈炎には

GC

が奏功し,第一選択薬である

(推奨クラス

I

,エビデンスレベル

B

).治療が遅れると,失 明や不可逆的な神経障害の危険性が高まるので,疑った場 合,早期に高用量の

GC

で治療を開始する.

a. 初期投与

以下にあげた

GC

の初期投与が推奨される7,212, 230-232)

1

)眼症状,神経症状がない症例では,プレドニゾロン

PSL

0.5

1 mg/kg/

日(最大

60 mg/

日)が推奨され る(推奨クラス

I

,エビデンスレベル

B

).

2

急激に眼症状,神経症状が出現した症例では,ステロ イドパルス療法(

mPSL 0.5

1 g/

日,

3

日間)を先行さ せ,その後

PSL 1 mg/kg/

日(最大

60 mg/

日)の投与が 推奨される(推奨クラス

I

,エビデンスレベル

B

).

初期投与量を

2

4

週間継続後,臨床症状が軽快し,巨 細胞性動脈炎による

ESR

CRP

の上昇が正常化すれば,

PSL

を減量できる.

PSL

投与量

20 mg/

日までは

2

週ごとに

10 mg

ずつ,

10 mg/

日までは

2

4

週ごとに

2.5 mg

ずつ,

それ以降は

1

ヵ月ごとに

1 mg

のペースで減量できる.状況 に応じては減量のペースを増減してもよい.

1

2

年間で多 くの症例で

GC

投与の中止が可能になる.

b. 再発時

しかしながら,巨細胞性動脈炎は約半数が再燃する233, 234). 再発時期は,治療開始

1

年以内で

PSL

漸減期間中もしくは 治療終了後

1

年以内が多く,再発症状としては,頭痛とリ ウマチ性多発筋痛症が

8

割を占める223-238)

1

再発を疑わせる症状が出現し,この症状が眼症状や神 経症状ではない場合には,

PSL

5

10 mg/

日程度増 量するだけでよい.

2

眼症状や神経症状で再発した場合は,初期投与量に 戻し,治療を再開する.

表10  巨細胞性動脈炎の治療に関する推奨とエビデンスレ ベル

推奨

クラス エビデンス レベル

ステロイド

I B

ステロイドパルス療法

I B

メトトレキサート(MTX)

Ⅱa A

シクロホスファミド(CY)

Ⅱb B

アザチオプリン(AZA)

Ⅱb B

シクロスポリン(CyA)

Ⅲ B

トシリズマブ(TCZ)

I A

インフリキシマブ(IFX)

Ⅲ B

アダリムマブ(ADA)

Ⅲ B

エタネルセプト(ETN)

Ⅱb B

抗血小板薬

Ⅱa B

保険適用外

III. 巨細胞性動脈炎

3

)ただし,

ESR

CRP

などの炎症反応の変化だけでは再 発とみなさず,注意深く観察し,他の原因も探索する.

高齢者に高用量の

GC

を投与するので,

8

割以上の患者 に副作用が出現する233).ビスホスホネート製剤などの骨粗 鬆症治療薬やプロトンポンプ阻害薬などの抗潰瘍薬は,

GC

に併用(予防投与)すべきである(推奨クラス

I

,エビデ ンスレベル

A

).また,ニューモシスチス肺炎が,巨細胞性 動脈炎患者において,高用量(

30 mg/

日以上)の

PSL

投与 例,メトトレキサート(

MTX

)併用例,末梢リンパ球数

400/

μ

L

以下の症例に出現したという報告があるため,この ような状況下では,

ST

合剤

0.5

1 g/

日(連日)もしくは

2 g/

日(週

2

回)の予防投与を考慮したほうがよい239, 240).その ほか,糖尿病や高血圧などの副作用が出現したら対応する.

7.1.2 免疫抑制薬

免疫抑制薬は,

GC

治療抵抗症例,

GC

漸減に伴い再発 する症例,副作用のため

GC

を早期に減量したい症例など

に,

GC

と併用投与される.免疫抑制薬単独で巨細胞性動 脈炎の治療は行わない.しかしながら,免疫抑制薬併用群 は,

GC

単独投与群と比較して,有効性や安全性に関して 有意差はなかったという報告があり,免疫抑制薬の巨細胞 性動脈炎に対する治療効果は限定的と考えられる241)

MTX

併用の有効性と安全性を比較した

3

つの

RCT

があ

242-244).これら

3

つの試験をメタ解析した結果,

MTX

10

15 mg/

週)併用群では,非併用群と比較して,程度は大 きくないが,巨細胞性動脈炎の再発の低下と

GC

薬総投与 量の抑制効果が認められた191).このことから,

GC

治療抵 抗例,副作用などのために十分量の

GC

が投与しにくい,

あるいは早期の減量が必要な症例には,

MTX

(保険適用 外)の併用は試みるべき治療法と考えられる(推奨クラス

IIa

,エビデンスレベル

A

).

シクロホスファミド(

CY

)については,

GC

治療抵抗例,

GC

の減量がしにくい症例,

MTX

など他の免疫抑制薬併 用で効果不十分例などに

GC

と併用投与され,一定の効果 があったという報告がある245-248).しかしながら,感染症な ど副作用の頻度が高く,注意を要し,高齢者が多い巨細胞 性動脈炎に対する第一選択薬ではない(推奨クラス

IIb

, エビデンスレベル

B

).

アザチオプリン(

AZA

)の併用については,1つの小規 模コホート研究で巨細胞性動脈炎に対して

GC

単独投与群 より有効であり,

1

年後の

GC

量を有意に減量できたと報告 されている249).また,最近の小規模後ろ向き観察研究で も,同様の効果が報告されている250)(推奨クラス

IIb

,エ ビデンスレベル

B

).

シクロスポリン(

CyA

)は巨細胞性動脈炎に対して効果 がないと報告されている251, 252)(推奨クラス

III

,エビデン スレベル

B

).

7.2

生物学的製剤・抗血小板薬など

7.2.1

生物学的製剤

巨細胞性動脈炎は

GC

に対する治療反応性は良好である が,

GC

減量中の再発の頻度が高い.再発のリスクを減ら すために

GC

の減量速度を遅くすると高率に

GC

関連の副 作用を合併する.

GC

の副作用を軽減するためには早期に

GC

を減量する必要があり,生物学的製剤を治療初期から 併用することで

GC

の早期減量が可能となるかを検討する 目的で,欧米でトシリズマブ(

TCZ

),アダリムマブ(

ADA

) あるいはインフリキシマブ(

IFX

)併用の有効性に関する

保険適用外

急激な眼症状,神経症状の出現の場合は1 mg/kg/日 図24  巨細胞性動脈炎の治療フローチャート

急激な眼症状,神経症状の出現

眼症状・神経症状

なし あり

なし あり

mPSLパルス療法を開始 0.5~1 g/日,3日間 PSL 0.5~1 mg/kg/日

2~4週間

・治療抵抗症例

・副作用のため,

PSLを減量したい 症例

いずれかを併用 TCZ s.c. 162 mg/週

寛解したらPSLを漸減 再発

MTX 6~16 mg/週

(葉酸を併用)

AZA 1~2 mg/kg/日

PSL 5~10 mg/日増量 治療終了 CY 1~2 mg/kg/日

(3ヵ月で他剤に変更)

またはIVCY(500 mg/回 2~4週ごと,6回まで)

or or or

RCT

が行われている190, 253, 254)7.2.2

TCZ

IL-6

受容体阻害薬である

TCZ

の有効性に関しては,巨 細胞性動脈炎の

GC

治療の初期から

TCZ

を開始する治療 プロトコールの有効性が

2

つの

RCT

で評価された.

1

つめ

RCT

は単施設での第

2

相試験として

2016

年にスイスか ら 報 告 され た.

TCZ +GC

TCZ

群,

20

例)とプ ラセ ボ

+GC

(プラセボ群,

10

例)について,

PSL

12

週までに

0.1

mg/kg

に減量するというプロトコールで,主要評価項目と

して

12

週での寛解率(症状なし+炎症反応正常化+

PSL 0.1 mg/kg

の達成率),副次評価項目として

52

週での再発 率,

GC

の投与量が比較された.

TCZ

は関節リウマチの保 険適用量である

8 mg/kg/

月が点滴静注で投与され,寛解 率は

TCZ

85

%,プラセボ群

40

%と

TCZ

群で有意に高い ことが示された.

52

週までの再発率は

TCZ

群で有意に低 く,

GC

の累積投与量は

TCZ

群で少なく,

GC

を中止でき る頻度が

TCZ

群で有意に高いことが示された254)

2

つめの

GiACTA

試験は多施設

RCT

で,

4

つのアーム(

1

群:

TCZ 162 mg

週1回皮下注射+

26

GC

2

群:

TCZ 162 mg 2

週に1回皮下注射+

26

GC

3

群:プラセボ+

26

GC

4

群:プラセボ+

52

GC

)からなり,主要評価 項目は

12

52

週の寛解継続率(

12

週以降症状なし,炎症 反応正常化の達成率)であった255).本ガイドライン作成の 時点では

2016

年の

ACR

でその成績が発表されており,

1

群,

2

群の寛解継続率はそれぞれ

56

, 53.1

%であり,

3

14

%,

4

群の

17.6

%と比較して有意に高かった.

GC

の 累積投与量に関しても

TCZ

の皮下注射を併用したほうが プラセボ+

52

GC

群と比較して半分以下であった.以上 の

2

つの

RCT

から

TCZ

を治療初期から使用することで,

寛解率が有意に高くなり,

GC

の使用を

6

ヵ月程度に抑え ることが可能となることが期待される.

GC

投与中の再発例あるいは免疫抑制薬と

GC

の併用療 法中の再発例に対する

TCZ

の有効性を評価した

RCT

はな いが,症例報告や小規模ケースシリーズで,

GC

と免疫抑 制剤の併用や

TNF

阻害薬の投与歴がある難治例に対して,

TCZ

投与後に

PSL

を低用量に減量あるいは中止できたこ とが報告されている100, 102, 256, 257)

TCZ

は,免疫抑制薬や

TNF

阻害薬と比較してエビデンスレベルは高く,図24に 示すように,

GC

抵抗例や

GC

の早期減量を必要とする症 例において,安全性に留意しながらリスクベネフィットを 勘案したうえで

TCZ

を投与する(推奨クラス

I

,エビデン スレベル

A

,保険適用あり).

7.2.3

TNF

阻害薬

TNF

阻害薬(保険適用なし)に関しても

GC

と併用する ことで寛解率を高めて

GC

を早期に減量できるかが,

RCT

により

ADA

IFX

で検討されているが,有効性は証明さ れていない.

ADA

の有効性を評価した試験では,治療開 始

2

週以内の患者を無作為に

ADA

群(

34

例)とプラセボ群

36

例)に割付けし,両群とも

PSL

0.7 mg/

時で開始され,

4

週後から

0.5 mg/kg

12

週後から

0.2 mg/kg

24

週から

0.1 mg/kg

に減量された.主要評価項目は

26

週で寛解(

PSL 0.1 mg/kg

以下かつ巨細胞性動脈炎の活動性に関連する症 状の消失かつ

CRP 1.5 mg/dL

以下)を達成した患者の頻度 で,両群とも

50

60

%の寛解達成率で差を認めなかった.

再発率は両群ともに

70

%程度で,再発例の半数は再発時 の所見が

CRP

増加のみで巨細胞性動脈炎の活動性に関連 する症状の悪化を認めなかった.

ADA

群で感染症を含め た有害事象の増加は認められなかった190)

IFX

に関する試験では,

40

60 mg

PSL

で症状が消 失し血液検査で

ESR 40 mm/

時未満の患者を対象に,

IFX

群(

28

例)とプラセボ群(

16

例)に

2

1

でランダムに割付 けし,

PSL

12

週で

10 mg

前後に減量され

22

週で中止さ れた.主要評価項目は

22

週までの再発(

ESR 40 mm/

以上かつ巨細胞性動脈炎の活動性に関連する症状

1

つ 以上)の頻度で,プラセボ群

50

%,

IFX

43

%で両群に有 意差を認めなかった.感染症の頻度は

IFX

群で多い傾向を 示した253)

以上の

ADA

IFX

2

つの臨床試験の結果からは,

TNF

阻害薬を治療開始初期から

GC

に併用することは推奨 されない(推奨クラス

III

,エビデンスレベル

B

).ただし,

この

TNF

阻害薬に関しての

2

つの

RCT

は,エントリーされ た症例数が少なく,また巨細胞性動脈炎の疾患活動性の評 価方法は

ANCA

関連血管炎のように確立されていないと いう問題点もある258)

GC

投与中の再発例あるいは免疫抑 制薬と

GC

の併用療法中の再発例に対する

TNF

阻害薬の 有効性を評価した

RCT

はない.長期の

GC

で病状は安定 したが

GC

関連の副作用が出現し

GC

の減量を必要とする 患者を対象にエタネルセプト(

ETN

)の

GC

減量効果を検 討した

RCT

では,症例数が少なく統計学的な有意差は得 られなかったが,試験開始

12

ヵ月後に疾患活動性がコント ロールされかつ

PSL

を中止できた症例の頻度は,

ETN

50

%,プラセボ群

22

%であった259).現時点では,長期に

GC

投与が行われている患者に対する

ETN

GC

減量効果 は期待されるもののエビデンスレベルは低く,今後の再評 価が待たれる(推奨クラス

IIb

,エビデンスレベル

B

).

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