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スクールカウンセラーの視点からみたスクールカウンセラー・コンサ ルテーションのプロセス

第1章では,日本のSCコンサルテーションについて,その特徴を明らかにし,類型化に よって全体的傾向を把握することを試みた。本章では,SC視点で研究されている事例研究 の質的分析によりSCコンサルテーションのプロセスを明らかにする。

第 1 節 問題と目的

第1章でSCコンサルテーションは,子ども本人の面接,行動観察,保護者面接などコン サルティ以外への関与が同時並行で行われている例が多いこと(72.7%),継続の枠組みは 柔軟であること(69.1%),担任を中心にしながら必要に応じてコンサルティが拡大するこ と,また事例の対応方針は何らかの形で共有されている(90.9%)がコンサルテーションの 方法の説明と同意は多くの事例で記述されておらず(85.5%),契約の枠組みを持たないか SCに意識されていない,といった特徴が明らかとなった。これらの特徴は,SCコンサルテ ーションのプロセスにおいて,どのように位置付けられるのであろうか。また,序章で述べ たように,すでに一定の研究が進められている学校コンサルテーションの中で,SCコンサ ルテーションのプロセスは,特有の面を有するだろうか。

日本における学校コンサルテーションのプロセスとしては,すでに鵜養・鵜養(1997), 石隈(1999),黒沢(2004)が経験的にまとめている。小林(2009 b)は, 石隈と鵜養・鵜 養のプロセスをまとめ,STEP1:関係づくり,STEP2:情報収集・アセスメント,STEP3:

介入,STEP4:方略の評価と終結の4段階にまとめている。鵜養・鵜養はコンサルテーショ

ンに入る前にコミュニティへの見立てを行い,以降の段階でも常にコミュニティへの影響 を考慮する必要があるとしている。介入段階では,教師および学校のリソースを活用した具 体的手だての提案が概ね共通して重視されている。但し,石隈はコンサルティに保護者も含 む広い概念,鵜養・鵜養は外部専門家をコンサルタントとするプロセスを示しており,伊藤

(2011)が述べるような内部性と外部性の両方を併せ持つ SC が行うコンサルテーション との異同があるかは明らかでない。また両者ともに文部省のSC事業導入のごく初期に示さ れたものである。よって,その後実践が積み重ねられているSCコンサルテーションは,既 に示されたこれらのプロセスとの違いが生じている可能性がある。

ところで,序章で述べたように,SCコンサルテーションの研究の問題点として教師視点 の研究が少ない点が挙げられるが,第 1 章で使用したこれまでの事例研究を確認したとこ ろ,教師視点の事例は55事例のうち中山(2000)1事例であった。教師視点のSCコンサ ルテーションの研究は,プロセスに限らず必須であるが,本章ではまず,事例研究が重ねら

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れているSC視点のSCコンサルテーションのプロセスを明らかにすることとする。

以上のことから本章では,SC視点でのSCコンサルテーションのプロセスを明らかにし,

学校コンサルテーションと比較しつつ,その特徴と課題について考察することを目的とす る。

第 2 節 方法

第 1 項 文献の抽出方法

2014年10月6日,論文検索サイトCiNiiで,検索キーワードを「コンサルテーション」

および「スクールカウンセラー(SC)」または「スクールカウンセリング」で検索した。ヒ ット数 93 編のうち,教育,心理学関連の学術誌に限定し,そこから,SC をコンサルタン ト,小中学校,高等学校の教師(個人または集団)をコンサルティと明記している36編を 抽出し,学校コンサルテーションの研究で多く引用されている学術論文を加えた38編を対 象とした。さらに,38 編のうち個別のコンサルテーションの過程が述べられている事例研 究を22編抽出した(以下,事例研究)。教師視点の事例研究1件は除外した。複数の事例 を含む論文があり,分析対象は21編,29事例となった。

第 2 項 SC コンサルテーションのプロセスの分析

事例研究におけるコンサルテーションのプロセスを探索的に明らかにするため,質的研 究が適当であると考え,KJ法(川喜田,1970)に準じた方法を用いて分析した。KJ法は川 喜田が現場の経験といった事実に語らせ,それをまとめる方法として編み出したものであ る。コンサルテーションのプロセスは,事例研究者の経験として事例に記述されたものであ り,それらをまとめるために適した方法と判断した。

まず事例研究の事例に関する記述の中で,SCの行為が記述された文章を抽出して切片化 した(記述数421)。筆者(SC経験16年)が内容や働きが近いものを集めてカテゴリーを 生成し,カテゴリーの定義と分類されるラベル,記述内容を繰り返し検討した。その後,筆 者とSC経験14年の臨床心理士の2名で切片化したSCの行為を再度カテゴリーに分類し た(重複集計)。一致しなかった記述については,両者で協議して分類した。分類の一致率 は74.8%であった。

第 3 節 結果

第 1 項 各カテゴリーの説明と出現率

KJ 法に準じた方法により生成されたカテゴリーは最終的に10 個となった(表2-1)。生 成されたカテゴリーについて説明し,その出現率を述べる。記述中,コンサルティは全て教 師(個人また集団)であるが,コンサルティでない教師と区別するためコンサルテーション

49 を受けている教師をコンサルティと表記した。

A【開始時の問題把握】は,コンサルテーションが開始された時に問題の状況だけでなく,

コンサルティの問題意識をコンサルタントである SC が把握することである。27 事例

(93.1%)でみられた。

B【アセスメント】は,課題となっている子どもあるいは組織の問題について,SC がコ

ンサルティから情報を聞き取る,子ども・保護者の面接を行う,授業その他で子ども本人の 行動観察を行う,何らかの尺度やチェックシートを実施する,教室の掲示物・作品等の観察 を行うことにより情報を得て,子ども本人だけでなく,学校,学級,関係者,さらには関係 者間の関係のアセスメントを行うことである。全ての事例でみられた。

C【見立てを伝える】とは,B【アセスメント】で 見立てた結果について,コンサルテ

ィに伝えることである。行動コンサルテーションにおいて行動理論による説明をコンサル ティに行う場合も含むとした。25事例(86.2%)でみられた。

D【対応の検討】は,コンサルテーションの対象となっている課題への具体的対応につい て検討することである。具体的には,コンサルティが主体的に工夫していること,工夫しよ うとしていることやコンサルティの実感を尊重して話し合い,そこに SC からの提案や助 言,コンサルティへの依頼等が含まれた。このカテゴリーは全ての事例でみられた。

E【SC からの働きかけ】とは,コンサルティ以外の他の教師,周囲の児童生徒,学級全 体,子ども本人,保護者,また学校組織や教育委員会など,コンサルティ以外の者にSCが 積極的に働きかける行為とした。ここでは第1 章第1節で分類したコンサルティ以外への SC の関与のうち,SC から積極的に働きかけた関与のみとし,保護者から面接を求められ た場合など,相手から依頼されての関与は含んでいない。15事例(51.7%)でみられた。

F【対応への評価】は,コンサルティの現状報告や対応実行の様子,SCによる子ども本人 の行動観察や面接,保護者面接の結果などから,コンサルティの対応に対する評価をSCが コンサルティに伝えることである。11事例(37.9%)でみられた。

G【再アセスメント】は,コンサルティが対応を実行した後に,コンサルテーション開始 時と同じ指標で,再度アセスメントを行うことである。4事例(13.8%)でみられた。

H【SC 視点の提供】は,子どもの行動や特徴だけでなく保護者の様子やコンサルティの 対応についてのリフレーミングや意味づけを行うこと,コンサルティをエンパワーメント すること,コンサルティ自身や状況の中にあるリソースの活用,理論・技法の説明,さらに 当事者(子ども,保護者,コンサルティ)の主体性尊重など,心理臨床の視点をSCが提供 することである。27事例(93.1%)でみられた。

I【情緒的支援】は,SCがコンサルティをねぎらう,安心感を与える,困惑感や感情を共

有する等コンサルティを情緒的に支援することである。15事例(51.7%)でみられた。

J【解決の場の維持】とは,コンサルテーションの開始後,コンサルティだけでなく,組 織や他の教師と問題や経過を共有すること,SCと関係者の関係を維持すること,関係者間 の関係をつないだり,支えたりすることである。コンサルティや他の教師から報告や説明を