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スクールカウンセラー・コンサルテーション実践モデルの作成の試み

―初心スクールカウンセラーへの研修における有用性の検討―

第 1 節 問題と目的

前章までの研究では,これまでSCが実践してきたSCコンサルテーションの特徴を明ら かにし,SCと教師双方の視点からSCコンサルテーションのプロセスを明かにしてきた。

本章では,それらを踏まえ,実践モデル作成を試みる。そして,初心SCへの研修で使用す ることで有用性を検討し,最後に実践モデルを利用した初心SCへのSCコンサルテーショ ン研修モデル(以下,研修モデル)の提言を行いたい。

第 1 項 スクールカウンセラー・コンサルテーション実践モデルの提案

学校場面で学校内部の専門家(主にSC)および外部の専門家が行うコンサルテーション の方法については,黒沢他(2015)がSFA の立場から11ステップモデルを作成し,その 有用性も検証されつつある。また,Caplan&Caplan(1993/1999)も組織内の精神衛生コン サルテーションについて研究を重ねている(丹羽,2015)。これらのモデルは,SCがコンサ ルテーションを行う際に有用である。しかし,現代日本のスクールカウンセリング実践の場 に即して使用するためには,SFAやCaplan&Caplan(1993/1999)のモデルに,日本のSC コンサルテーションの現状を組み入れた実践モデルが必要と考えられる。

そこで,本章では,日本のSCコンサルテーションについて第1章から第3章でSCと教 師の双方の視点から明らかになった点を,SFAとCaplan&Caplan(1993/1999)のモデル に加味するモデルの作成を試みる。ここで加味しようとする視点は,次の 6 点である。1)

継続的関与の積極的意味付け,2)クライエント(子ども・保護者)への直接関与,コンサ ルティ以外の教師への同時並行的な関与,3)柔軟な枠組みでの対応,4)コンサルテーショ ン開始前の教師・学校との信頼関係,5)コンサルティ(教師)が主体的に機能できるため の工夫,6)コンサルティ(教師)からの依頼以外でコンサルテーションが始まる場合の考 慮。但し,2)の子ども・保護者への直接関与,コンサルティ以外の教師への関与自体はコ ンサルテーションではなく,コンサルテーションに並行する支援である。しかし,SCコン サルテーションと強く関係する活動であるため,モデルに加えることにした。

作成を試みる実践モデルは,スクールカウンセリング実践場面をイメージしたモデルで ある。実践モデルと,Caplan&Caplan(1993/1999)の組織内のコンサルテーションプロセ スおよび黒沢他(2015)11ステップモデルとの比較を表4-1-1,表4-1-2に示した。全体的 な流れに違いはないが,今回の実践モデルで加えた点をコンサルテーションの開始から順 を追って説明する。

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まず,コンサルテーションの開始前の教師との関係作りは,第2章でSC視点から示唆さ れ,第 3 章で教師の視点から必要性が明らかになったものである。コンサルテーションが 開始されるかどうかは重要であるため,その点を加えた。また,コンサルテーション開始の きっかけは,コンサルティからの依頼に限らないことが,SC,教師の双方の視点から明ら かになっている(第1章,第2章,第3章)。コンサルテーションの開始は,依頼のみでな いことの説明を加えることにした。

教師と状況を共有する際,教師からの情報収集は当然のことであるが,それに加え直接情 報収集として,子どもの行動観察や面接,保護者との接触が事例研究における事例の67.4%

で行われており,コンサルティ以外への関与の一部となっている(第1章)。状況を共有す る段階で,直接情報収集,また他の教師からの情報収集を考えるよう加えた。

教師が主体的に機能できるためのSC側の工夫は,第3章で明らかになった教師の「自分 取り戻し」に関連するものである。第3章の結果は,職務上で自分が困っていると表明して いる教師が「自分取り戻し」を経て主体的に機能するプロセスである。そこから,困ってい ることを表明していない教師も含め,教師が主体的に機能できるために,SCの工夫が望ま れることを加えた。まず,SC視点を伝える段階で単にSCの見立てを伝えるだけでなく教 師の状況を理解した上で伝えること,各段階で安心感を提供することを加えた。開始の段階 でSCが教師の向上心に気づくこと,適切な情報収集を行うこと,教師の取り組みや強みに 目を向けること,非難せず労いを伝えることも必要である。また,作戦会議の段階では,教 師がSCの提案を取捨選択できることを加えた。こうしたコンサルティが問題を解決する主 体的な力の尊重は,SFA11 ステップで当然ながら重視されているが,本実践モデルでは,

スクールカウンセリング実践場面に則して記述するようにした。

さらに,継続的関与の積極的な意味が確認されたため(第2章,第3章),継続的関与の 段階を加え,その意味を説明した。Caplan&Caplan(1993/1999)は,狭義のコンサルテー ションの特徴として通常2,3回であると述べているが,日本の学校の中では,柔軟な枠組 みで継続することが多くの場合実質的であると考えられる。継続して検証を重ねる中で少 しずつ理解が進むこと,小さな変化を共有し,教師の後ろ盾になることに意味があると考え られるため,それらを加えた。

柔軟な枠組みでの対応(第1章,第2章,第3章)は,継続的関与の段階の方法として,

また終了後の関係の段階に記述を加えた。説明と合意などの明確な契約ではなく,情報収集,

SC視点を伝える際の柔軟さを前提とした具体的な動きを記述した。

また,表4-1-1および表4-1-2のSFA11ステップモデルに[ ]で示したステップ8「当面 の目標についての話し合い」,ステップ 9「当面の目標を達成するために役立ちそうなこと の話し合い」は,今回の実践モデルではそのまま当てはまる段階はないが,それを否定する ものではない。11ステップモデルではコンサルタントとコンサルティの関係が,SFAで用 いられるセラピスト―クライエント関係のうち,「こういうことで困っている」と問題を表 明できるカスタマータイプ(森・黒沢,2002)を前提としていると考えられる。一方,本実

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践モデルでは,開始の時点でコンサルティが何に困っているかを明確に表明できない場合 も含まれるため,実践モデル内の記述は控えたものである。加えて,実践モデル内は「教師」

ではなく「先生」という表現を用いた。これは,SCにも教師にも親しみやすい表現とする ことで,実践モデルが活用しやすくなると考えたためである。

表 4-1-1 SC コンサルテーション実践モデルと Caplan&Caplan のプロセスおよび SFA11 ステップモデルの比較(その 1)

SCコンサルテーション実践モデル(修正前) Caplan&Caplan のプロセス(機 関参入後に要請 を待つ場合)

SFA11 ス テ ッ プ モ デル

0.開 始 前 の 関 係作り

・先生が利用しやすいようにしていますか

・学校全体の状況を理解しようとしていま すか

コンサルタント とコンサルテー ションについて 知ってもらう 対等な関係形成 と維持

1.

コ ン サ ル テ ー ションの開始

〈3つのパターン〉

先生ご本人からの依頼 他の教師からの紹介,依頼

SCからの働きかけ(子ども・保護者から の相談他)

✔先生の向上心に気づいていますか?

2.

先 生 と 状 況 を 共有

情報収集,役割 モデルの提供 コンサルティの 内面には踏み込 まない

1基本属性の収集 2 事例との関わりの 聴取

3 事例内外にあるリ ソース聴取 4 事例の肯定的例外 さがし

5 上手くいった関わ りといかなかった関 わりの聴取 6 コンサルティ内外 のリソース共有 7ニーズの再確認 [8 当面の目標につ いての話し合い]

[9 当面の目標を達 成するために役立ち そうなことの話し合 い]

先 生 か ら の 情

先生のペースに合わせて

・基本的な情報を収集

・これまでの先生の取り組み

・子どものリソース(得意なこと・好きなこ と・良好な関係)は何?

・保護者の理解や協力は?

・先生の強みと弱み・得意なことは?

<先生ご本人からの依頼なら>

・先生が困っていることは何?

<SCからの働きかけの場合>

・協力関係の糸口は?

✔先生個人の内面や人格に踏み込まないが,

念頭に置く

✔労い,先生の状況の理解,安心感が伝わっ ていますか?

子 ど も ・ 保 護 者・他の先生か らの情報収集

無理のない情報収集

・行動観察(授業中の教室,休み時間,掃除,

部活他)

・子ども・保護者面接

・子どものノートや作品 ・前担任,教科担 任,部活顧問などから

✔情報収集に担任の先生の承諾を得ました か?

✔:留意して欲しい点 [ ]:実践モデルには該当する段階がない 空欄:該当する内容がない

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表 4-1-2 SC コンサルテーション実践モデルと Caplan&Caplan のプロセスおよび SFA11 ステップモデルの比較(その 2)

SCコンサルテーション実践モデル(修正前)

Caplan Caplan のプロセス(機関 に入った後に要請 を待つ場合)

SFA11ステップモ

デル 3.

見立てる

・ケースの個人(子ども,保護者),ケース をとりまく状況の両方の見立て

アセスメント SCの視点を伝

える

先生の理解,反応を確かめながら伝える

・発達の見立て(強みと弱み,何歳頃の課 題?)

・関係(子ども同士,家族,教師との関係)

の見立て

・リソース

・先生の関わり 良かった点:再確認

・先生が失敗と考えている点のリフレー ミング

✔先生の立場,状況理解に基づいています か?

✔非難せず,労いを伝えていますか?

「そうかもな」くらいは,受け取っても らえていますか?

✔先生が自信の回復し,見通しを持ててい ますか?

✔そうなってしまった状況全体が理解さ れていますか?

アセスメントを伝 える:専門用語を 使わず,職員に理 解可能な表現を用 いる。機関(特有 のコミュニケーシ ョンの様式を習 得)

6 コンサルティ内 外のリソース共有 10 事例とコンサ ルティに対する肯 定的フィードバッ

4.

作戦会議(対応 を話し合う)

具体的にできることを一緒に考える

・目標のずれがあれば話し合う

・見立てから対応を提案(具体的な案を複 数)

・実行可能性を共に検討,否定も歓迎

・先生自身が対応を見出すための質問

(ちょっといい時は?どんなことなら乗 ってきそう?)

・新しい方法は,「薄味でいきましょう」「や ってみて考えましょう」

✔先生の主体的判断を大事 にしています か?

✔先生はSCの提案を拒否できますか?

✔先生の後ろ盾になっていますか,一緒に考 えていく覚悟が伝わっていますか

問題解決の計画,

立案

計画に関するフィ ードバックを得て 修正

実施はコンサルテ ィに任せる

[7 ニ ー ズ の 再 確 認]

[8当面の目標につ いての話し合い]

[9当面の目標を達 成するために役立 ちそうなことの話 し合い]

11 方 針 の提 示 と 具体的提案

5.

継 続 し て 関 わ

・諦めず取り組むこと自体も意味がある

・継続する中で少しずつ理解が進む

・小さな変化が共有できる

・継続の枠組みは柔軟に 終了

い つ で も 相 談 できる関係へ

・うまくいっているなら 時々様子を聞く 程度

・困ったら相談してもらえる関係がよい

・気にかけていることは伝える

先生主導の関係を大事に

フォローアップの 提案は控えめに

(実施主体はコン サルティ)。関係 の継続による教育 効果(コンサルテ が必要な時に)

✔:留意して欲しい点 [ ]:実践モデルには該当する段階がない 空欄:該当する内容がない