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(1) FTAとの関係

a. FTA は新シルクロード建設にとって重要な足がかり

新シルクロード建設の内容は、インフラ建設の相互連結やエネルギー分野での協力、投資貿易の相 互連携・相互通行だけでなく、FTA の設立を通じた協力の推進など多岐にわたる。

FTA の設立を通じて、ある地域に特別な関税政策や金融支援、外国企業管理方法などを提供すれば 発展の基礎を育むことができ、その後点から面へと拡大させ、新シルクロード沿線国の急速な発展を 促すことが可能となる。FTA が新シルクロード建設にもたらす効果を具体的に挙げると次のようなも のがある。

(a) 地域内貿易の成長を促し、各国が新シルクロード建設を共同で進めるにあたっての協力基盤を固 めるのに役立つ

FTA の発効は、地域内全体で高効率な分業体制をもたらし、各国の経済発展を促すほか、貿易・投 資規模の拡大や開放レベルの向上など、新シルクロード建設における経済基盤を固めてくれるだろう。

(b) 地域経済の一体化に対する反対の声を抑制し、シルクロード建設を保障する

一部の国の貿易保護主義により地域の発展が阻害されることがあり、国家協力、地域協力があって はじめて世界経済における主導権を握ることができる。

FTA の発効は、新シルクロード沿線国が地域経済協力の波の中で孤立するという局面を変え、東ア ジア・中央アジア・南アジアなどで EU や北米自由貿易協定(NAFTA)とのバランスを保つのを助け、

シルクロード建設を保障するものとなるだろう。

b. 新シルクロード建設は FTA の推進を後押し

新シルクロード構想は、中国とその他の国との経済貿易を推進し、中国経済の対外開放レベルを高 め、FTA に関する交渉や設立の歩みを加速させるのに役立つだろう。新シルクロード建設は、具体的 には次の三つの方面において FTA 発効に有利な状況をもたらす。

(a) 新シルクロード建設は国家間の関係を縮め、FTA 発効の環境を整えるのに有益

新シルクロードは「政策のコミュニケーション、道路の相互通行、スムーズな貿易、資金の流通、

互いに通い合った国民の心」の強化を通じて実務協力を全面的に強化する。

政治関係や経済の相互補完に関する優位性を実務協力、継続的成長の優位性へと転化し、互恵的 win-win の「利益共同体」をつくり、新シルクロード沿線各国が「共に発展し、繁栄する良きパート ナー」となり、そこから新型地縁経済グループへとつながっていき、新興国の台頭や世界経済の発展 にとっての力強い支えとなることを促す。新シルクロード建設は、各国の経済貿易関係をさらに近づ ける橋渡しとなって FTA 形成に有利な条件を提供してくれるだろう。

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(b) 新シルクロードは地域経済一体化構造を形成し、各国における FTA 発効の需要を高めるのに有益 第 1 に、交通・通信・エネルギー・産業の一体化に役立つ。交通に関しては、新ユーラシア・ラン ドブリッジという広域交通インフラ建設ですでに大きな進展を見せている。江蘇省の連雲港と新疆ウ イグル自治区のホルゴスなどを結ぶ幹線道路が竣工しているほか、精河-グルジャ市-ホルゴス(いず れも新疆ウイグル自治区内)などを結ぶ鉄道プロジェクトも着実に進んでいるなど、基本的に点と線 とのバランスがとれ、スムーズな通行が可能な中央アジア輸送ネットワークが形成されている。

通信面に関して、中国は中央アジア国家と非常に強い相互補完性を有している。例えば、中国は世 界最先端レベルの通信設備・技術を有しており、経済のモデルチェンジの過程にある中央アジア諸国 では現在電信業界の私有化や現代化が全面的に推し進められており、中国と中央アジア諸国は通信・

情報サービス分野において非常に強い協力意識を持っている。

また、エネルギー協力も新シルクロード建設を促進させる上で重要であるが、中国・カザフスタン 間および中国・トルコ間石油天然ガスパイプライン敷設工事はいずれも大きく進展している。そのほ か、産業面では、中国と中央アジア諸国の産業の比較優位や分業の見通しが立ちはじめるなど分業協 力の動きが強まっており、非常に大きな発展の可能性を秘めている。

第 2 に、貿易の一体化を実現させるのに役立つ。輸出市場振興のため、中国は必ず潜在力のある新 たな海外市場を探し出さなくてはならず、新シルクロード沿線国はまさに貿易の潜在力を持った巨大 な新興市場である。それと同時に、新シルクロード建設の中で交通インフラが完備されていくにつれ て各国の交通レベルも明らかに高まるため、貿易コストも著しく下がるはずである。これも貿易の一 体化にとって強固な基礎となる。

第 3 に、金融の一体化を実現させるのに役立つ。新シルクロード建設は金融支援と不可分の関係に ある。中国と欧州、アジア各国はいずれも経済のモデルチェンジまたは構造改革の重要な時期にある。

新シルクロード建設は各国の金融協力を強化し、地域内の資金流動をよりスムーズに、金融サービス をより便利に、各国の資源移動をより簡単にし、流通コストを引き下げてくれるだろう。

(c) 新シルクロード建設は政治面での相互信頼を強化し、自由貿易づくりの環境を整えるのに有益 現在の世界において日増しに強まる市場化改革の動きは地域経済の深化・協力に体制的基盤を提供 している。多くの国が、地域経済グループに入らなければ、世界経済は市場化改革の中で新たな活路 を見出すことはできないと認識している。新シルクロードは、地域経済の大規模な協力を行うという 構想である。力を入れる方向は主に経済分野に集中しているが、経済は政治の基礎であり、経済関係 の深化や経済依存度の強化は必ず政治面での相互信頼を強め、政治関係に調和をもたらしてくれるは ずであり、FTA 発効に良好な政治的環境をもたらすだろう。

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補論:中国-中央アジア FTA 発効の促進に対する「陸上シルクロード」の重要な役割

中国は製造業や陸橋建設などインフラ建設面で明らかな技術的優位性を持っている。一方、中央ア ジア諸国は豊富な自然資源を有しているため、双方は大きな協力の可能性を秘めている。このよう な背景の下、「陸上シルクロード」という概念が提出されたことで中国と中央アジア諸国の協力が大 幅に促進され、中国-中央アジア FTA 発効にも大きな影響を与えるだろう。

第 1 に、中央アジアは「陸上シルクロード」が必ず経由する地域であり、中国-中央アジア FTA の 設立における地理的メリットは明らかである。現在、経済のグローバル化や地域経済の一体化が急 速に進んでいる中、「陸上シルクロード」建設が完備されていくにつれて、新ユーラシア・ランドブ リッジの価値も日増しに高まりつつある。中国は、新ユーラシア・ランドブリッジを利用して中央 アジアを経由して欧州へ向かうことができる。また中央アジア諸国も、中国を経由して東アジアや 太平洋地域へと向かうことができる。新ユーラシア・ランドブリッジは中国と中央アジア諸国の経 済回廊であり、またアジア-欧州間貿易における重要な交通路でもあるため、中国と中央アジア諸国 の地域経済協力を推し進めることができ、中国-中央アジア FTA 発効に向けた土台になっている。

第 2 に、「陸上シルクロード」建設は中国と中央アジアに貿易分野での協力環境を提供する。中国 と中央アジア諸国は経済構造や経済総量での差が大きく、明らかな相互補完性を持っている。中央 アジア諸国は石油や天然ガスなどエネルギー資源を豊富に有しているが、世界経済との連結度が低 いため、これらの資源を商品化して国の経済づくりに必要な資金にあてることができない。また、

中央アジア諸国の大部分は資源性製品の生産を主としており、中国に対する生活用品の依存度が高 い。一方、中国はエネルギー資源の大部分を輸入に頼っており、その需要は日増しに増加している。

また、中国は生活用品が豊富にあるため、中央アジア諸国の既成品不足問題を解消させることがで きる。このように、中国と中央アジア諸国は貿易分野において巨大な協力の可能性を有している。

しかし現在、中央アジア 5 カ国内部の平均関税が 1.6%なのに対して、中国からの輸入品に対しては 6.5%の関税が設けられている。これに対して、中国が中央アジア 5 カ国に対して設けている輸入関 税は平均 4.4%と、中央アジアは中国に対して高い貿易障壁を設けており、双方間貿易を行う上で不 利であることは明らかである。「陸上シルクロード」建設が進むにつれて、徐々に関税障壁も取り除 かれていき、中国と中央アジア諸国の貿易規模が拡大し、win-win 関係が実現できると思われる。

第 3 に、「陸上シルクロード」建設は調和のとれた周辺環境を築くのにも有益であり、中国-中央 アジア FTA 発効を保障してくれる。中国西部の新疆ウイグル自治区と中央アジア諸国には 3,000km 以上にわたる共同境界線があり、古来より新疆ウイグル自治区の平和・安定は中央アジア地域情勢 と密接に関わってきた。現在中国が急速に平和に向かっている中、新疆ウイグル自治区は今なお治 安問題を抱えている。「陸上シルクロード」建設は、中国と中央アジア諸国民の友好的往来、相互理 解と伝統的友情の深化を助け、FTA 建設を進める上で頑丈な民意的・社会的基盤となるだろう。

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