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(1) バングラデシュ・中国・インド・ミャンマー経済回廊(BCIM経済回廊)

バングラデシュ・中国・インド・ミャンマーサブリージョン(BCIM)とは、バングラデシュ、中国 西南部、インド東北部、ミャンマーが含まれる、インド洋と太平洋の中核エリアとアジアの各サブリ ージョンとを結ぶ重要な中枢である。内陸にはバングラデシュ、中国、インド、ミャンマーの広大な 内陸部が広がり、チッタゴン、コルカタ、ヤンゴンといった有名な港湾都市を出口に持つ、中国とイ ンドという二大新興経済国がつながった地域であり、中国・ASEAN・南アジアという三大市場が融合し た地域であると同時に、中国がインド洋出港ルートを開拓する上で必ず通る地域でもあるなど、その ルートの価値や立地、戦略的意義は極めて重要である。

1999 年にバングラデシュ・中国・インド・ミャンマーの 4 カ国が「昆明宣言」に署名してから 2013 年に中国・インド両国が共同で経済回廊建設を提唱するまでの約 14 年間に、4 カ国は貿易投資、交通・

観光および文化交流などの方面で一連の協力を実施して成果を収めており、BCIM 経済回廊建設に有利 な環境を整えている。

a. BCIM 主要経済協力分野

2013 年、中国・インド両国の首相は「BCIM 経済回廊の構築」を「中国インド共同声明」に盛り込ん だ。この提案を実行するために 2013 年 12 月、昆明で BCIM4 カ国共同活動チーム会議が開催された。4 カ国の政府職員や学者、金融機関等の代表者らによって共同活動チームが結成され、4 カ国共同研究 計画を議論し、共同研究の枠組みおよび研究スケジュールを確定したほか、「共同研究枠組み」などの 文書に署名を行った。

これは、BCIM 経済回廊が 4 カ国政府のメカニズム化を推進する段階に突入したことを表している。

BCIM が主に行う経済方面分野での協力には、貿易・投資や観光文化、相互連携・通行の三つの方面が 含まれる。

(a) 貿易投資協力

第 1 に、貿易投資の利便化レベルを改善する。BCIM 各国政府が市場参入条件の改善、関税障壁の撤 廃、貿易の利便化、通関インフラ建設の強化、通関プロセスの協調などを行い、その他加盟国への輸 出商品に対してゼロ関税政策を実施し、貿易障壁を撤廃することによって、よりバランスのとれた貿 易を促進していく。また、互いに投資し、合弁企業を設立することを奨励し、今後このサブリージョ ンにおいて地域貿易の活性化が図れることを目指していく。より幅広い市場参入は、とりわけ BCIM のような低所得国家にとっては地域内の貿易流動を刺激してくれるものになるだろう。

第 2 に、中継貿易を積極的に行っていく。中継貿易が行いやすいような港を一定数建設し、指定し た地域内部の税関検査港を中継貿易通関港とする。また、BCIM 各国政府は越境貿易の手続きをさらに 簡略化させ、人員や貨物および車両の越境をスムーズ化する必要もある。より合理的な政策措置や現 有のメカニズムを利用することで人員、貨物および投資の越境流動を促進させ、それによって国境貿

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第 3 に、投資および金融協力を強化する。BCIM 商務理事会の推進は、私営企業協力を促進したり、

政府の地域内協力を深化させたりする上でより大きな役割を果たすことになるだろう。BCIM 商務理事 会でより多くの新たなプロジェクトを提案して地域内貿易の推進や投資の刺激を行うほか、地域およ びサブリージョンレベルで合弁企業やプロジェクトを実施することによって当該地域における天然資 源開発を行っていくのである。

(b) 観光文化協力

第 1 に、観光の利便化協力を行う。地域の観光業界の発展を促進させるため、4 カ国政府はビザの 取得手続きに要する期間をできるだけ短縮したり、不必要な規定を削除して手続をスムーズにしたり するなどの措置をとり、観光協力を拡大していかなければならない。

第 2 に、観光施設建設の協力を行う。観光業や観光施設の発展を促進したり、観光施設の最新の情 報交換などを行っていく。

第 3 に、地域内の観光協力を強化する。観光ルートの共同計画、観光商品の PR、観光産業および管 理組織間の協力を強化するなど地域内の観光協力を促進する。また、観光業界や監督・管理機関間の 協力を強化したり、共同観光プロジェクト実施計画を提案したりしていく。

(c) 相互連携・相互通行協力

第 1 に、地域内の交通インフラの改善を行う。当該地域の道路および鉄道輸送の協力を行い、地域 内の交通インフラの改善を行う。また、マイカーでのイベントや自動車ラリー大会などを実施するな どして当該地域内の人員や貿易交流を拡大させる。

第 2 に、空路の利便化をはかる。新規直行便を開通させる。例えばダッカ、グワーハーティー(イ ンド東北部アッサム州)、コルカタ、昆明、マンダレー間や 4 カ国のその他地域を結ぶルートについて、

政府や航空会社は実際の手順を踏みながら空路の改善を行っていく。

第 3 に、現有のインフラの相互連携・相互通行条件を改善する。4 カ国は現有の道路やその他選択 可能道路の状況改善を優先的に行っていく。また出入国の利便化をはかり、車両や物資、人員がノン ストップまたは乗り換えなしで出入国できることを目指していく。4 カ国は ADB が地域の交通問題に ついて研究した「ベンガル湾多分野技術経済協力イニシアティブ」を参考にしながら、この問題につ いて研究していくべきである。そのほか、鉄道が 4 カ国の国境内で中断されている部分を整備してい くことも優先事項としていく。

b. BCIM 経済回廊協力の現状 (a) 貿易の規模は安定成長

中国・インド間貿易は 2002 年の 50 億ドル前後から 2011 年には 739 億ドルにまで成長し、全体的に プラス成長を維持している。ポスト金融危機に新興市場経済が疲弊した影響を受け、2012 年の両国間 貿易額は前年比 10.1%減少してわずか 664.7 億ドルとなった。2013 年末時点での両国間貿易は 2012

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年とほぼ同水準であった。2014 年 1~7 月期、中国とインドとの輸出入貿易額は前年同期比 7.1%増の 401.7 億ドルとなった。現在、中国はインドにとって 6 番目の輸出相手国であり、最大の輸入相手国 となっている。

次に、中国・バングラデシュ間の貿易発展状況は良好で、2002 年以降急成長期に入っている。現在、

バングラデシュは中国にとって南アジアで三番目の貿易相手国であり、バングラデシュにとって中国 は最大の輸入相手国となっている。

中国とミャンマー間については、両国間の貿易は急成長しており、2011 年には中国がタイに替わり ミャンマーにとって最大の貿易相手国となった。最近ではミャンマー北東部の武力衝突やミャンマー 国内の政策の影響を受けて両国間の貿易に変動が生じてはいるものの、全体としてはプラス成長を維 持している。統計によると、2014 年 1~7 月期の両国間貿易総額は 45.66 億ドルで、中国はミャンマ ーにとって最大の貿易相手国となっている。

(b) 投資は徐々に拡大

中国からインドへの投資については、今なお模索段階が続いており、相互間の投資額は年平均 1 億 ドル未満と少ない。投資は主に電力、IT、電信、機械設備製造、医薬および医療設備などの業界に集 中している。

また、インドから中国への投資は急成長を維持しているが、インドの対外投資総額が占める割合は やや少なく、投資分野もほとんど IT 業界に集中している。統計によると、2014 年 1~6 月期にインド が中国に新たに設立した企業数は 36 社で、投資額は昨年より 1.3 倍増加の 3,539 万ドルであった。ま た、2013 年末時点で中国企業がインドへ直接投資した金額は 24.5 億ドルで、主な投資分野は通信、

機械製造、冶金、家電製品などであった。

バングラデシュでの中国企業の投資はハイレベル分野に発展する傾向がみられ、投資は主に紡績、

服飾および関連機械設備分野に集中している。2012 年、バングラデシュの中国への投資額は 227 万ド ルであった。

中国は 2004 年よりミャンマーへの投資を増やしており、投資分野は主に石油、天然ガス、電力、鉱 業開発などのプロジェクトに集中しているが、集中式資源型投資は一定の障害にも見舞われている。

統計によると、2013 年の中国(香港・マカオ含む)からミャンマーへの投資額は前年比 9.2%増加の 3.1 億ドルで、中国はミャンマーへの直接投資国としては第 5 位にとどまった。

(c) 相互連携・相互通行は順調に進む

現在、BCIM4 カ国はすでに 5 本の交通路線を整備しつつある。

一本目は昆明−猴橋−ミッチーナー(ミャンマー)−レド(インド)−ダッカ−コルカタ(バングラデシ ュ)で、この路線では農産物の代替作物栽培や宝玉石加工、観光業および設備製造業を重点的に配置 させるのに適している。

二本目は昆明−瑞麗−マンダレー(ミャンマー)−ダッカ(またはチッタゴン)−コルカタ(バングラ

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