2.1. 全体概要
Fig. 1 は,新型 FCV に搭載された水素系,
エア系のシステムを示す.水素系システムは,
大別すると高圧水素系と,低圧水素系に分け られる.
高 圧 水 素 系 の シ ス テ ム に は ,水 素 ス テ ー ションとの接続部となる充填口(Receptacle),
水素タンク充填時の流路とスタックへの水 素供給及び遮断を行うタンク主止弁(Intank Valve)(2),水素タンクから供給されてきた圧
*1 開発本部 第9開発部
※ 2016 年 7 月 28 日受付
FCV has been developed to realize the sustainable society. Honda started lease of new FCV as the proto model for the future mass production on March 2016.
Generally, a fuel cell stack of FCV generates power with hydrogen supplied from high pressure tanks and air supplied from an air pump as fuels. A vehicle requires the control of gas pressure and flow rate for FC under the situation such as ignition on/off, and necessary output power. Therefore, the hydrogen and air systems have various electronic controlled valves which are operated through the ECU.
Keihin has developed FCV special valves for a long time, applying the technology of NGV and ICE products.
In this paper, we introduce the functions and profile of the valves installed in the hydrogen and air systems of the new FCV.
Fig. 1 System chart
Air Supply
Air system
Hydrogen system
Hydrogen supply Receptacle
High Pressure Device
Low Pressure Device Intank Valve
Regulator Injector Injector Ejector Unit Ejector Stack
Purge Valve
Drain Valve Bypass Valve
Stack Bypass Valve Cathode
Cut-off Valve
Cathode Cut-off Valve
Humidifier TANK
Pressure Control Valve Air
Pump
力を減圧させる減圧弁(Regulator)が搭載され ている.
低圧水素系のシステムには,スタックへの 燃料供給圧及び流量を制御する流量調整弁
(Injector)とその流速を利用してスタック出 口の余剰水素を循環させるエゼクタ(Ejector)
機構とを組み合わせた,インジェクタエゼク タユニット,スタックから出る水及び不純物 を排出するパージ弁(Purge Valve),スタック から出る水を主に排出するドレイン弁(Drain Valve)が搭載されている.
エア系システムには,エアポンプからス タックへ供給されるエアの圧力を制御する 背圧制御弁(Pressure-Control Valve),エア の湿度を調整する加湿器バイパス弁(Bypass V a l v e),エアポンプからの余剰なエアを排 出させるスタックバイパス弁(Stack Bypass Valve),停止後にスタック内にエアの流入を 封止する封止弁(Cathode Cut-off Valve)がス タック入口/出口に搭載されている.
続いて,各システムにおける製品詳細を以 下にて説明する.
2.2. 高圧水素系製品技術概要
対象製品は,タンク主止弁,減圧弁,充填口 である.
本報では,タンク主止弁と減圧弁について 紹介する.
2.2.1. タンク主止弁
供給流路を共有化した.
駆動構造は,高差圧での作動性と小型化を 考慮してキックパイロット構造を適用した.パ イロットバルブには,樹脂を採用することで,
気密性,強度,耐久性を確保させている(3). 軽量化,コストダウンとして,ボディにアル ミの鍛造製法を採用した.
本タンク主止弁は,高圧ガス保安法 国際 圧縮水素自動車燃料装置用附属品の技術基 準に基づく設計確認試験及び,U N G l o b a l Technical Regulation(世界技術規則:GTR)
No13 に適合している.
2.2.2. 減圧弁
Fig. 2 Intank valve
Fig. 4 Injector assembly Fig. 3 Regulator
小型,軽量化を目的とし,ピストン式受圧構 造を採用した.バルブ構造は,NGV の減圧弁 技術を応用することで,高精度の減圧を一段 で可能とし,高い締め切り性能も有している.
軽量化,コストダウンとして,タンク主止弁 と同様にアルミの鍛造製法を採用した.
2.3. 低圧水素系製品技術概要
低圧系の製品は,インジェクタエゼクタユ ニット,パージ弁,ドレイン弁であり,以下に 詳細を説明する.
2.3.1. インジェクタエゼクタユニット
水素タンク用バルブとして,小型,軽量化を 考慮し,インタンク式の構造を採用し,逆止弁 と遮断弁の機能を統合することで,充填及び
新型 FCV 向けバルブ製品開発 -水素,エア制御バルブ-
で作動するため,シートとの貼り付きが課題 であり,従来はステンレス鋼を切削したシー トに特殊なコーティングを施し,貼り付き防 止を図っていた.
今回のモデルでは,まずシートを,出口流路 一体の樹脂インジェクション成型品とし,大 幅なコストダウンを図った.また,樹脂のシー ト面を特殊な表面性状とすることで,コー ティングを廃止すると共に,貼り付き防止と シート性を両立させた.
2.3.3. ドレイン弁 Fig. 5 Injector ejector unit
Fig. 6 Purge valve
Fig. 7 Drain valve インジェクタエゼクタユニットに内蔵され
ている流量調整弁は,NGV 向けの量産品 KN8 型をベースに,耐久性,低温作動性,シール性 の改良を行い水素環境下での仕様成立性を確 立した.特に耐久性に関しては,NGV と比較 して高い作動圧力により,しゅう動部・ストッ パー部への負荷が課題となった.これらの対 応手段として,しゅう動部・ストッパー部の コーティング変更による長寿命化やガイド構 造の見直しを行い,作動耐久性を向上させた.
インジェクタエゼクタユニットは,スタッ クとの燃料供給インターフェースとして,水 素供給・循環流路,補機類の流路及び接続・保 持,及び 流 量 調 整 弁 と エ ゼ ク タ の機能を一 体化させることにより,システムの小型化に 大きく貢献した.特に,ボディは,狭いスペー ス配置に伴う複雑形状と,高い水素気密性が 要求されるため,アルミ一体の熱間鍛造とし た.これは,ケーヒンのアルミ熱間鍛造部品と しては最大級の大きさである.
2.3.2. パージ弁
コイル部分に,量産ソレノイドバルブ部品 を流用し,磁路設計を見直すことにより小型・
軽量かつコストダウンを実現させた.流路ボ ディは,耐環境性を考慮しステンレス鋼を使 用している.ケーヒン初の熱間鍛造製法を採 用することにより,車載レイアウト性の確保 とコストダウンを実現した.
2.4. エア系製品概要
Fig. 8 Pressure Control valve
エア系の製品は,背圧制御弁,加湿器バイパ ス弁,封止弁,スタックバイパス弁である.
本報では,背圧制御弁に関して紹介する.
背圧制御弁は,低圧損かつ流量制御性に優 パージ弁は,水素シール性を確保するため,
弁体にゴムを使用している.低温・氷点下環境
著 者
菊 池 匠
私共の製品技術が,世の中の水素社会の実 現に向けて貢献できたことを大変うれしく,
誇りに思います.量産立上げに際し,ご協力 いただいた各部門の方々に深く感謝申し上げ ます.(菊池)
れているバタフライバルブ構造を採用し,駆 動部にガソリン車用スロットルバルブ部品を 流用することで,コストダウンを図った.
ガソリン車のスロットルバルブと比較し,
流路内には大量の生成水が存在するため,耐 食性と凍結による作動不良が課題である.そ の対応として,シャフト及びバルブ材をステ ンレス鋼に変更した.さらに,バルブとボアと の隙間に入った生成水の凍結防止として,ボ ア部分に特殊なはっ水コーティングを施し,
水抜き穴も設置した.水抜きは,ボアを通過す る流体のベンチュリー効果を利用することで 排水性を向上させた.
以上の対策により,水蒸気に対する耐食性 と氷点下での作動性を確保した.
3.まとめ
2016 年 3 月にリース販売した新型 FCV 向 けに,新規技術と既存技術を応用し,高圧水素 系3製品,低圧水素系3製品,エア系5製品 の,合計 11 製品を新規に開発した.本開発を 通して,水素社会実現に向けて大きく貢献し た.
参考文献
(1) 発行所 株式会社三栄書房,発行人 鈴木賢 志,編集人 塚本剛哲:ホンダクラリティ FUEL CELL の全て
(2) 朝野護人,加藤航一,尾崎浩靖,和田信:
FCV 用 70MPa インタンク電磁弁の開発 (2016),自動車技術会学術講演会予稿集 No.80-16S
(3) 滝沢啓太,加藤隆秀,岡野正嗣:FCV 用高 圧水素供給バルブにおけるパイロット弁 仕様の開発 (2016),自動車技術会学術講 演会予稿集 No.129-16A