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本システムの利用上の評価

第5章 教員の講義改善活動を支援するシステム

5.3 実験

5.3.4 本システムの利用上の評価

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っているので,システム利用時には講義の内容や流れを明確に覚えている状態であった.

もし始めから本システムで振り返りを行っていた場合は,もう少し時間が掛かったり振 り返りのシーン数も変わってくる可能性も否定はできないが,自身の講義ビデオの内容 を一定以上明確に覚えている場合は,インストラクションは非常に有効に機能していた と考えることができる.

教員にシステム中の各 STEP が講義を振り返ったり,講義改善を考えたりする上で参 考になったかを尋ねると,『各 STEP ともに特徴的に出ている箇所に関しては,理由無 くそのような行動を取る学生はいないと思うし,その理由を考えることは講義活動の役 に立った』,『特に改善の可能性を持った箇所がピンポイントで出てくる,わかること が良い』と言った旨の発話が得られた.

また今回の実験においては,各 STEP の特徴が表れた箇所について,重なる箇所も多 かった.例えば,難易度が強く出ている箇所について,一時停止や再生回数も高く表れ ているし,そこで検索も発生している,といった形である.このように複数の学習行動 の特徴が重なるような箇所は,教員側からすると講義改善を行う際の重要な候補して確 認しておく必要があるだろう.

そしてシステムを通して教員が学生の反応を感じ取ることができた旨の発話も得ら れた.

実験者:「本システムにより,授業を受けている最中の学生の反応を感じることはでき ましたか?」

教員:「そうね,対面講義の表情や雰囲気とはまた違うんだけど,学生が勉強している ときに考えてることをなんとなく想像したり,パソコンで授業受けている様子をちょっ と後ろから見てるような感じはあったね」

このあたりの発話は,授業評価アンケートでは得ることの難しい,授業を受けている 最中の学生の様子を感じることができたという旨の発話である.事例の数を増やしたり,

長期的な評価から検証を行っていく必要はあるが,非同期型 e-learning で受講中の学 生の反応をタイムラインとともに感じることができることは,教員が講義改善のポイン トを考えるきっかけにつながり,授業の質の向上にもつながると考えられる.

また講義中のちょっとしたミスは授業評価アンケートには表れにくいだろう.例えば 本事例のように,1枚のスライドの変数と色付けの対応関係が間違っていたときに,対 面の講義であれば『なんか学生の反応悪いな.あ,色が違う』と気付くこともあるかも

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しれないが,一定回数講義終了後の授業評価アンケートで学習者がわざわざそのような 細かいスライドのミスを指摘するケースは稀だろう.今回は学生の一時停止時間や再生 回数に特徴が表れた箇所を確認し,その箇所にミスを発見することができた.これは従 来の非同期型 e-learning の評価システムや運用体制からは得ることの困難であった,

受講中の反応を学習者から取得できたためだと考えられる.

教員が自身の講義を振り返る際に,手掛かりが無ければ,本実験のように,始めから 一度通して視聴するかもしれない.特に今回のケースのように,講義を収録してから時 間が経っている場合は,このような振り返りを行う可能性も高いだろう.しかし,教員 が講義内容をよく覚えていて,講義の中で重要なポイントや難しい箇所を,自身でそも そも把握している場合は,講義を通して視聴することなく,当該箇所を直接チェックす ることも考えられる.しかし,そのようなチェックを行ったところで,講義の内容を変 更する結論に行き着くだろうか.

何の情報も持たずに自身の講義を振り返った場合,その振り返りの範囲や質は限られ てくると考えられる.そもそもの授業の準備が不十分であった場合は,講義資料のミス を発見したり,時間があれば加えたかった内容を追加したりすることは可能だろう.し かし,十分な準備のもとに録画された講義ほど,個人の振り返り作業の中で改善点を見 出すことは困難だろう.したがって,本システムで示した学習者の受講中の反応など,

教員が自分一人の力で気付くことができない部分を支援する仕組みが必要となってく る.

第三章の実験のインタビューデータからも述べたように,教員は,そもそも難しい内 容として設定している箇所の説明については,レベルを下げて教えたり,易しく教えた りすること自体は可能なのである.本実験においては「もう少し式の展開を細かくして ゆっくり教えてもよかった」といったような発話でそのことがうかがえた.そのような 箇所については,難易度がグラフのような形で定量的なデータとして示されれば,それ だけである程度は改善へとつながると考えられる.

その一方で,教員の想定には無かったような改善点に対する気付きあった.例えば,

本実験の範囲では「用語」の説明などが挙げられる.特に用語の場合は,対面形式の講 義でわからなかったらそのまま取り残されて授業の難易度を高く感じたまま終わって しまうようなケースも考えられるだろう.しかし,非同期型 e-learning の場合は,そ うとも限らない.「調べ学習」という手段が学生に許されており,ちょっとわからない 単語などは検索すればすぐにわかることも多い.前章のデータより,このようなちょっ とした検索の手間で済んだような箇所については,主観的に難易度にあまり影響が無い.

本システム,本実験の場合は,「検索ワード」という形でデータを取得しており,そ れを教員にフィードバックさせることにより,授業の範囲で学生は用語を理解しきって

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はいなかった様子を教員が理解し,授業の改善点として挙げた.しかし,教員によって は,非同期型 e-learning という環境なのだから「調べ学習」は当然の前提であり,調 べてすぐわかることであれば授業の内容で改善する必要は無いという発想の教員もい るだろう.e-learning という新しいツールの登場は,講義のあり方や学生の学習姿勢 に対する意識,授業はどの範囲で完結させるべきなのか,教員のそういったローカリテ ィを拡張させた可能性もある.

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