∆ EMbc VS ∆E
3.4 探索結果
3.4.1 シグナル事象の抽出
前節までに説明した選別条件を用いて、2.77×108 B中間子対生成事 象を記録した実験データからB0 → J/ψγ 候補事象を再構成した結果を 図3.21に示す。
-0.2 -0.15 -0.1 -0.05 0 0.05 0.1 0.15 0.2
5.2 5.2255.255.275 5.3 0 1 2 3 4 5
-0.2 -0.1 0 0.1 0.2
ID Entries Mean RMS
11 67 -0.4754E-01 0.9378E-01
0 1 2 3 4 5 6
5.2 5.2255.255.275 5.3
ID Entries Mean RMS
12 85 5.253 0.2536E-01
Exp Data
∆E(GeV) Number of event
Number of event
M
bc∆E
∆E(GeV) Mbc(GeV/c )2
Mbc(GeV/c )2
M
bcVS
∆E
図 3.21: 2.77×108B中間子対生成事象を記録した実験データによる∆E とMbcの分布:
∆E−Mbc二次元分布(左上)、Mbcをシグナル領域と同じ範囲にした∆E分布(右上)、
∆Eをシグナル領域と同じ範囲にしたMbc分布(左下)
この候補事象の∆E分布に適切な関数を用いたフィットにより、シグナ ルの事象数を得る。そこで以下に∆E分布のフィットに使用した関数を
説明する。
• シグナル(B0 →J/ψγ):Logarithmic Gaussian[23]
f(x) = N (²−x)σ0√
2π exp (
−1 2
1 σ0 ln
( ²−x (²−µ)eσ20
))
ここで、
²= σ
a +µ、y=a√
2 ln 2、σ0 = ln (y+√
1 +y2) 2 ln 2
また、フィッティングパラメーターは次の4つである。
N:規格化定数 µ:平均値 σ:標準偏差 a:非対称度
安定なフィットを実行するには、全てのパラメーターをフリーにす ることが難しかったため、B0 → J/ψγシグナル事象のモンテカル ロシミュレーションの∆E分布から平均値µ = 0.005 GeV、幅を σ = 0.034GeV、非対称度a = 0.42と固定し、規格化定数Nのみは フリーパラメーターとした(図3.22)。
• バックグラウンド(B0 →J/ψπ0):スムージングした関数
図3.18より、B0 → J/ψπ0の∆E分布は一次式で表すことはでき ない。しかしB0 → J/ψπ0過程は崩壊分岐比が既知であり、した がってその∆E分布はモンテカルロシミュレーションの期待値が崩 壊分岐比の誤差の範囲で信用に足るということである。そこで、こ の分布を表現する関数を得るためにスムージングという手法を利用 した。
スムージングとは、解析で得られたヒストグラムを近似するなめら かな曲線を得ることを言う。これにより得た関数でB0 → J/ψπ0 バックグラウンドを表現することにした。フィットの過程ではこの 関数は固定している。
• バックグラウンド(B0 →J/ψπ0以外のもの):一次式 f(x) = ax+b
-0.20 -0.10 0.00 0.10 0.20 0
100 200 300 400 500
∆ E
(Signal MC)
∆ E(GeV)
Number of event
図 3.22: B0 →J/ψγシグナルのDeltaE分布シグナルのフィット結果:
Logarithmic Gaussianでよく表現されている。
B0 → J/ψπ0以外のバックグラウンド(B0 → J/ψKL0 を含む)は、
図3.19、図3.18より、∆E分布でピークを持たず、実験データがシ ミュレーションデータの1/140以下の統計であることを考慮すると、
∆Eの一次式(直線)で充分表現されうると考えられる。傾きa、切 片bともにフリーパラメーターとした。
以上の関数を用いて実験データの∆E分布をフィットした結果を図3.23 に示す。この結果より、B0 →J/ψγシグナル事象数は0.1±6.5事象と得 られた。すなわちシグナル事象は見出せず、ゼロ事象であることと無矛 盾である結果となった。
-0.20 -0.10 0.00 0.10 0.20
0 2 4 6 8
∆ E
(Exp Data)
∆ E(GeV)
Number of event
図 3.23: ∆E分布のフィット結果:
エラーバーつきの点が実験データ、実線はフィット結果を表している。B0→J/ψγシ グナル事象数は0.1±6.5事象であり、分布はバックグラウンドで説明可能である。
Mbc分布による追試
前小節で述べた通り、∆E分布に対するフィットによりB0 →J/ψγ崩 壊のシグナルは見出せず、ゼロであることと無矛盾な結果となった。さ らに追試として、図3.21に示すMbc分布で5.28GeV/c2付近に見られる ピークがバックグラウンドで説明可能か検証した。
シグナルのB0 → J/ψγ 崩壊と同様、主たるバックグラウンドである B0 →J/ψπ0、B0 →J/ψKL0 もB中間子の二体崩壊である運動学的類似 性から、Mbc分布では5.28GeV/c2を中心に正規分布にしたがうピークを 作る。
その他のバックグラウンドはJ/ψと同一事象中のγを組み合わせたも ののうち、偶然選別条件を満たしたものであるから、位相空間分布を表
現するARGUSバックグラウンド関数
f(x) =N x
√ 1−
( x Ebeam
)2
exp (
² (
1− x Ebeam
)2)
で表現できる。ここでN と²はフリーパラメーターで、それぞれ規格化 定数と分布の傾きである。また、Ebeam= 5.29GeV/c2である。
こうしてシグナルとバックグラウンドの関数の和を用いてフィットした 結果を図3.24に示す。その結果、正規分布で表現されるピークを構成する 事象数は16.3±5.7事象であった。一方、モンテカルロシミュレーションに よるB0 →J/ψπ0 バックグラウンドの期待値は13.5事象、B0 →J/ψKL0 のそれは3.3事象であり、その和16.8事象はデータのMbc分布に見られ るピークをよく説明する。よって、シグナル事象がゼロであるという∆E 分布のフィット結果と無矛盾であることがわかった。
5.200 5.225 5.250 5.275 5.300 0
2 4 6
8
Mbc
(Exp Data)
Mbc(GeV/c )
Number of event
2
図 3.24: Mbc分布のフィット結果:
エラーバーつきの点が実験データ、実線はフィット結果を表している。5.28GeV /c2近 傍のピークは正規分布関数、それ以外は位相空間分布を表現するARGUS関数として、
これら2つの和をとった関数でフィットした。(詳細は本文参照)