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〜  まちづくりの現状と課題をふまえて  〜

  上越市においてはまちづくりは一貫して行政の重要として位置付けられ、数多くの取組みがなさ れてきた。本章では、これをコミュニティ行政を創造する視点から整理し、上越市においてコミュ ニティ行政を推進するにあたって上越市の有する条件や今後新たに取組むべき課題の検討を行う。

4−1  上越市におけるまちづくりの現在とコミュニティ行政の位置付け

4−1−1  まちづくりの経緯と市民本位のまちづくり

合併によって本市が誕生して以降、あるいはそれ以前から、市民福祉の向上を目指し、様々な基 盤整備がすすめられてきた。その結果、第 2 章において検討したように現在の水準の都市環境が実 現され、現在はそのストック(蓄積)の恩恵を受けて成り立つ部分が大きい。

近年では、これまでのまちづくりのあり方とそれに果たす行政の役割を見直す必要性から、積極 的に行政改革を実行し、行政のスリム化と効率的運営の両立を目指すとともに、「自前のまちづくり」

を目指し、行政の政策形成能力の向上に取り組んできた。

また、市の中核施設である市民プラザの建設にあたっては、大規模な空き店舗を転用することで コストを削減し、設置および管理運営の一部にPFI方式を導入することで積極的な民間活力の活 用を図るなど、民間との協働をすすめている。ソフト面においては、例えば少子化対策に力を入れ、

子育て環境の向上を図ったり、ISOの認証取得によって、環境政策の実現に向けた取組みを進め るなど、どちらかと言えば市が率先するかたちで政策を進めてきた。現在では、こうした取組みが 一応の評価を得たところである。

市組織の使命とは、市が目標とする都市像の実現であり、全体の奉仕者として市民福祉の向上に つながる活動を展開することである。この点で、これまでの取組みは市民を中心とするまちづくり や市民生活の充実を目的としながらも、その前提として、それを実現するために行政のあるべき姿 を確立することが先決であり、結果として行政改革をはじめとする市の取組みが 率先垂範 的に 先行した時期であったと言えよう。言い換えれば、これまでの取組みは、今後のまちづくりを実現 するための基盤形成や土壌づくりの段階として位置付けることができる。

現在までの取組みはやや行政内部に重点が置かれてきた印象があるが、今後は、この間の成果を 市民の自治の活発化に向けたものへと発展させていくことが求められる。本市は現在、まちづくり の主役として市民自らが考え、決定し、実践する 市民本位のまちづくり を標榜し、すでに市民 参加による市基本構想「のびやか

J

プラン」の策定をはじめとして、市民が主役となるための取組 みに着手している。

4−1−2  市民本位のまちづくりとコミュニティ行政

こうした中にあって、コミュニティ行政の推進は、市民本位のまちづくりにしっかりとしたフレ ームをあたえる契機となることが期待される。すなわち、市民本位のまちづくりは一過性の取り組

みではなく、持続的・継続的な取り組みであるべきであり、そのためには市民が継続的にまちづく りを担う組織的な参加の枠組みとその活動にふさわしい拠点施設が必要となる。そして、コミュニ ティ行政は、そうした組織的な枠組みと拠点施設をセットで提供するものとなる。

4−1−3  コミュニティ行政推進の視点

コミュニティ行政の先進地である三鷹市では、あえてコミュニティセンターの建設というハード 整備事業から始め、コミュニティセンターの自主管理運営組織の育成を通してコミュニティ行政を 育てた。この間、最初のコミュニティセンターの建設から20年以上をかけて7つの全コミュニテ ィにコミュニティ行政を根付かせていった。

本市の場合、ハード面ではすでに一定の公共施設が整備されていること、行政主導ではあるが様々 な市民の参加する取組みがなされてきており、市民の活動水準というソフト面でも一定の条件が存 在すると考えられる。

本節では、本市のこうしたハード、ソフト両面の条件を検証し、上越市におけるコミュニティ行 政の展望をさぐる。

4−2  ハード的分野

4−2−1  市民活動拠点の整備の現状

本市は、市民活動や世代間の交流を支援・促進し、市民の自由な活動の場を提供するほか、ボラ ンティア活動など多様な活動を総合的に支援するための取組みの一環として、市民活動の拠点施設 の整備を行ってきた。これは、市民活動をハード的な観点から支援する意味合いをもつ。

活動拠点の整備は、市民や近隣地区、地域間などのふれあいや相互交流を通じ、様々な形態のコ ミュニティ活動が展開されることにより、活力あるまちの形成を図ろうとするものである。コミュ ニティ形成にはふつう長期間を要するものであるが、活動拠点の提供によって、子育てなど生活に 密着した問題や、地域に身近な課題についての意見交換や話し合いの場が醸成され、ここを足がか りとしてまちづくりを担うコミュニティの基盤が形成されることが期待される。

また、最近ではボランティアやサークル、NPO(非営利活動団体)活動などが活発化してきて おり、こうした組織の活動拠点の役目も果たすものである。

こうしたまちづくりの拠点施設は、類似の機能を備えた施設の規模順に、市民プラザ、3世代交流 プラザ、こどもの家、町内会館1に分類することができる2

1  日常生活圏の基礎をなす町内・集落のコミュニティづくりに資する施設で、市民が設置するもの。町内会が地域住民の集 会・研修・いこいなどを目的として設置し、維持管理する施設をいい、呼称はさまざまである。 

設置にあたっては、地域住民の負担軽減を図るため、市が設置費を補助している。設置する土地の確保ができている町内 会が事業費 100 万円以上で集会場を新・増築するおよび大規模改修等をしようとする場合に、300 万円を限度としてその費用 の 20%を交付。 

平成 12 年度末現在で、集会場の未設置町内会は 39(設置率 88. 4%)。 

2ここでは市の単独事業で設置されたものを対象とし、公民館については検討の参考にとどめるものとする。なお、小・中 学校における週休2日制の導入や、少子化の進行にともない、最近では学校の空き教室を広く地域に開放し、様々なまちづ くり活動への利用を促進する施策が取り入れられている。

特に、本市の市民活動の中核を担う市民プラザは、その建設にあたりPFI方式(民間の会社に 委託する方式)など先駆的な方法を採り入れるほか、民間店舗が併設されるなど複合機能を備えた 施設となっており、設置運営面が特長となっている。

開館からこれまで(2001(平成13)年1月4日から2002(平成14)年3月17日までの433日間)

の市民プラザの利用状況は、累計で49万4,755人となっており、1日平均1,143人の利用となってい る。この数字は市による貸館事業や民間事業(スポーツクラブ)をすべて含めたものであり、利用 状況の推移には当然のことながら変動がみられる。

市民プラザの利用対象は上越市民に限定されていないものの、間もなく延べ50万人を突破するこ とが予想され、単純に言えば上越市民がこの 1年3ヶ月ほどの間に4回弱、何らかの理由により市 民プラザを訪れ、利用していることになる。この数字から、市民プラザは市民活動の多様な拠点施 設として広く市民に認識され、利用されていると言えよう。

図表4−1  上越市における市民活動拠点   

管理運営方式 施    設  置 

(設置日)

設  置  目 

(設置基準) 機 

設  運 

市民プラザ

1

[H13.1.4

市民、NPOなどの多様な活動を 総 合 的 に 支 援 す る た め の ま ち づくり拠点組織を整備し、地方 分 権 時 代 の 新 た な 市 民 社 会 の 形成に資する。

・総合ボランティアセンター

・女性センター

・国際交流センター

・環境情報センター

・子どもセンター

・健康づくり支援センター

・観光振興センター

・その他

民間 市、民間

3世代交流プラザ 1 [13.5.3]

の び の び と 心 豊 か な 子 ど も を 育むとともに、高齢者の生きが いと健康づくりを推進し、世代 を 超 え た 交 流 に よ り 地 域 社 会 の形成を図る。

・ピロティ(遊具や砂場)

・研修室

・ふれあい広場

・調理室

・世代間交流サロン(図書コ ーナー等)

・自由広場

市民

(注1

こどもの家 37

・将来を担う子どもたちに健全 な遊びの場を与え、自主的な活 動を通じて健康を増進し、情操 を豊かにし、心身ともに健やか な子どもを育成する。

( 小 学 校 区 単 位 を 目 安 に 設 置 され、基本的には公民館がない 地区が設置)

・会議室(集会室)

・遊びの広場

・調理室機能 ほか

(注2

(注1)  市がサポートを行いつつ、運営協議会が主体となって管理

(注2)  一部市民に管理委託(施設管理が主で、自主事業等の実施を含まない)

(出所)各課資料をもとに上創研作成(管理運営方式の現状は平成143月時点)

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