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次にクータの技術的な特徴を

 クータ貼り機は晒

さらし

クラフト紙などを筒状にしてから表紙の天地寸法にカット し、表紙にベタ貼りします。

 本によって束幅が異なるので、現状では束幅7mm から 60mm まで1mm 単位 でクータを作ることができます。クータは束幅の両サイド 4.5mm ずつ幅広に作 りますが、これはページを開いた際、上製本のホローバックのように本文の背部 分が扇形に開くような立体構造にするためです。

 PUR の塗布量は 0.3mm 前後に設定しています。PUR は塗布量を多くすれば頑 強になりますが、それだけ開きの良さは損なわれます。クータ・バインディング の特徴は開きの良さなので、塗布量を効果的に設定することで広開性を維持して います。

クータ・バインディングの工程

❷ ❶

当社柳原事業所

①表紙の天地寸法、本の束幅 などに合わせて作られたクー タが、1枚ずつ表紙に貼られ ていきます。クータ貼り機1 台で平均 3000 枚 / h の加工能 力があります。

②クータ貼りされた表紙が連 続して排出されていきます。

クータが曲がって貼られてい ないか、接着不良がないかな ど、オペレータによって入念 に検査されます。

③クータ貼りされた表紙がバ インダーに給紙されていきま す。こうしてクータ・バイン ディング仕様の本が仕上がっ ていきます。

クータの開発秘話

 クータ・バインディングは「手で押さえなくても読める本がほしい」という手の不自由 な友人の一言がきっかけで生まれました。

 製本における基本理念とは、「丈夫で、開きやすく、美しい」ことですが、それまでは まず強度を考え、読みやすさを犠牲にして丈夫に作ることを優先しがちでした。一般の方 も開いた本が閉じてしまっても「しょうがない」という先入観があるためか、「手で押さ えなくても読める本」といった要望はあまり聞かれませんでした。「読みやすさ」では読 者に不便を強いていたのです。

 「開きやすさ」と「本の丈夫さ」という相反する難問を解決するために試作を繰り返す日々 が続きました。その糸口は手作業製本の時代に辞書などの背に貼ったクータ(空袋)にあ りました。試作してみると、本文の背と表紙の貼り合わせ部分に空洞ができて閉じる力が 分散され「開いたまま閉じない」美しい出来映えとなりました。

 こうして読む人に優しい製本方法を考えついたものの、製本コストを克服しなければ普 及していきません。最初に機械メーカーと共に2年越しでクータ貼り機の開発に取り組み、

量産機を完成させました。

 次の問題は、製本の基本理念である「丈夫であること」でした。従来の接着剤で試作を 繰り返しましたが、なかなか理想とする結果が得 られません。欧米へも接着剤を探しに出向いてい た頃、新型接着剤「PUR」とめぐり会いました。

このPURを使用して丈夫で手で押さえなくても 閉じない美しい製本がようやく実現しました。

 今では、実際に使った方々から「なぜもっと早 く考えられなかったの?」という声も寄せられて おり、あらためて利用者の立場からの「ものづくり」

の大切さを実感しています。ユニバーサル・デザ インの「クータ・バインディング」はこうして誕 生したのです。(渋谷一男)

「現代の名工」と特許取得

 「現代の名工」とは、厚生労働省の「卓越した技能者の表彰制度」によって厚生労働大 臣に表彰された卓越した技能者の通称です。この制度は、より広く社会一般に技能尊重の 気風を浸透させ、技能者の地位および技能水準の向上を図る目的で、昭和 42 年度に設け られました。金属加工、機械器具組立、大工など全 20 部門の職業分類の中から卓越した 技能者が選ばれます。

 平成 19 年、この「現代の名工」に「クータ・バインディング」の開発者で当社の最高 技術顧問である渋谷一男が選ばれました。長年の技術的蓄積とクータ・バインディングの 新技術が評価されたもので、クータの技術に社会的な価値を認めていただき、関係者一同 に大きな励みとなりました。

 また、平成 19 〜 20 年には日本・韓国・台湾でクータ・バインディングの特許を取得 しました(特許番号=日本 4146842、韓国 10-0689781、台湾 1-285595)。特許法第 1 条 に、「この法律は、発明の保護及び利用を図るこ

とにより、発明を奨励し、もって産業の発達に 寄与することを目的とする」とあるように、こ の特許取得は当社がクータ・バインディングを 占有することを真の目的とするものでなく、「利 用の促進」ならびに「業界の発展」「利用者(読 者)の利便性向上」を本意とするものです。

 クータを導入したいという同業他社にも積極 的にコンサルティングや技術移転を図っていま す。

 クータ・バインディングを今後、文化・言語・

国籍・老若男女といった違いや、障害の有無を 問わずに利用することができる製品(技術)で ある「ユニバーサル・デザイン」として普及さ

せていくことが当社の願いです。       「現代の名工」に選ばれた渋谷一男

❶本の構造と部分名称

 本には必要な名称が各部につけられています。この名称は、編集・製版・印刷の作業に も共通して使われます。これらの基本名称と関連する作業用語の一例を挙げてみます。

①天……本の上部(頭)に当たる部分をいいます。反対語は「地」。「天合わせ」とは印刷 物の天と天とが向き合う形で面付けする時に使う言葉です。製本では天揃え・天袋などと いいます。

②地(罫け し た下)……化粧断ちした本の下部に当たる切り口をいいます。化粧断ちする前の工

程では、ページ内の版面から下の余白部分を「罫下」と呼びます。編集・印刷でも製本と 共通の用語として使われます。折の地袋を断ち落とすことを「罫下落とし」ともいいます。

③小こ ぐ ち口……本のとじ目以外の化粧断ちした

部分を総称して小口三方といいます。その 中でとじ目の反対側を特に「前小口」とい います。通常単に「小口」という場合は前 小口のことをいい、ほかの小口は含まれま せん。三方の小口の面(束の厚さ)をコバ

(面)といいます。

④喉のど……本のとじ目側の 10mm 程度の幅を ノドといいます。レイアウトでは本のとじ 目と版面との間にある余白をノド・ノド幅・

ノドマージンといいます。

束(つか)

背標

背文字

小口

表紙

❷本づくりのチェック項目

①適正な厚さの用紙選択がなされているか

 本の束厚を求めるあまり、内容や大きさに関係な く、本文用紙に必要以上の厚紙が使われることがあ ります。こうした本は開くと、本文用紙が強張った 状態で開閉されますから、やがては本の背固めを破 壊する結果を招きます。

②企画だけを優先した無理な設計になっていないか  例えば切っ掛け図版や巻き折り図表など厚みのあ る付物を、1カ所に集中して挿入するような企画は、

ノドや小口側にすき間が多くできるため、仕上げ断 ちに際して、天地の小口面に裂け傷が発生します。

③見返・扉・口絵などの注意事項

 製本仕様上、別丁貼り込みとなる見返・扉・口絵・

図表などで、ノド際いっぱいまで図版が及ぶ場合は、

のりしろ

代としてノド際を3mm の幅であけてレイアウト・

製版し、白の部分を設けます。糊代を付けないと、

印刷インキが糊をはじいて、はがれの原因となりま す。

3㎜あける ベタ刷

とびら

④材料の加工適正に配慮しているか

 表装材料を選択する場合には、接着適正や箔は く お押し適正など、製本部門の意見を事前に十 分に聞くことが大切です。

⑤良い本づくりの条件

 良い本づくりには、どこかで水(接着剤)と油(インキ)との関係を断ち切る手立てが 必要となります。

箔押し      箔押し

亜鉛腐蝕凸版       真鍮金板(当社製造)

 特に糸かがりの場合、

折と折をつなぐのは、柱 となるとじ糸と、壁とな る接着剤で構成されてい ます。壁のくずれを防ぐ ことによって、安定した 背 固 め が 可 能 と な る の で、背の中心に当たる部 分(1〜8、1〜 16 ペー ジの間)を片面1mm ず つ両面で2mm の印刷面 のカットを推奨します。

 カットした背の部分に 背丁・背標の挿入が可能 となり、乱丁・落丁の防 止と背固めの安定という ダブル効果が期待できま す。

 確実に実施するために は、編集・デザイナーは、

レイアウトの際にカット 部分を念頭において印刷 絵 柄 を 想 定 し、 製 版 の 際に絵柄の削除を行いま す。

❸並製本の工程

①一部抜き

 刷本は入荷時に1部抜きし、製本見本を先 に作ります。印刷の誤りや別丁の裁ち指定を 確認すると同時に、貼り込み手配の段取りな どを計画します。

②突き揃え(突き揃え機)

 本文紙や付き物等の別丁を断ち割るための 前準備として、印刷紙のくわえ側と針側を揃 える作業です。

③断ち割り

 平台の本文紙は折り加工しやすいように断 ち割り、口絵や目次などの付き物類は、裁ち 指定どおりに断ち割りして、次の貼り込み工 程に回します。

④折り加工(折り機械)

 断ち割りした刷り紙を、八つ折・四つ折な ど、糸かがりする折本とアジロとじする折本 に区分けして、折り加工します。アジロとじ は、製本の加工内容からすると無線とじの一 種です。折り加工するには、折機のローラー 部位にスリッターナイフを取り付けて折り加

工します。折りの対象となるのは、4ページ・ 折り機

断ち割り

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