(タイプ・トークン比)について
4.4 キーネス
Keyness とは2種類のコーパスを比較した場合,
どの語の使用頻度が大きく違うかを数値化したもの である(資料:表6,表7参照)。ゆえに,先に挙げ たファイルが後に挙げたファイルに対して異なり度 合いの大きいものが上位に並び,その数値が大きい ほど異なり度も大きい。逆に下位に位置するものは 対照順序が逆になり,後者のコーパスが前者のコー パスに対して異なり度の大きいものが並ぶ。すべて の文章の種類対母語話者コーパスだけをそれぞれ挙 げた。まず上位語(表6)の叙述文対母語話者であ るが,上位のI, my の頻度が極めて高く,日本人学 習者の書く英文の特徴としてよく言われることであ る。同時に機能語が少なく平易な名詞と動詞が多い。
特にbut の使用頻度が高いことは論理的で直線的な
文脈構成を妨げるものと考えられる。逆に下位を形 成するのは(表7)機能語と頻度の高い動詞である。
特に代名詞(their, these, they, this, his, that)の使 用頻度が低いことがわかる。つまりcohesion(結束 性)をあまり意識していないか,繰り返し同じ名詞 を使用しているかの傾向がわかる。
次に物語文と母語話者の場合はおおむね叙述文と 似た傾向を示すものの,明らかに過去形の動詞が上 位を占めている。特に動作を表す動詞のバリエーシ ョンや格変化を目的としたライティングには物語が 向いていることが示唆されているようである。
そして論述文との比較で顕著な点は,上位に名詞 が並び,機能語の使用に母語話者との相違が少ない ことを示唆していることである。下位からは叙述文で 少なかった代名詞も比較的よく使用されていることが 観察できる。ただ不定詞(to)の使用の頻度の差が大 きいため,より論理的に文脈を作成する上で意識的 に不定詞(目的用法)の練習を入れる必要がある。
すべての文章の種類に共通して言えることは,前 置詞や助動詞の過去形の使用に母語話者との差が認 められる点であろうが,仮定法やヘッジはライティ ングで扱う文法事項の中でも優先順位の低い部類と 思われる。おおむね名詞を除いた語使用では,同じ 文章の種類である論述文を書かせると英語的なロジ ックを踏まえた文脈が見られることがわかる。
4.5
品詞別結果4.5.1
be動詞be動詞に関しては,叙述文と論述文は現在形の am, was で,その差が大きい。母語話者は原形,及
びbeen, being に高い頻度が見られる。これは不定
詞,完了形,進行形の多さを示している。逆に日本 人学習者の物語では過去形の使用比率が高い。また 助動詞の項目でも説明するが否定語のnot の付いた 短縮形(isn’t, wasn’t, weren’t)の使用頻度がいずれ も母語話者よりも高い(表2)。
4.5.2
助動詞助動詞については,would, should, might は母語 話者が頻繁に使用されており,ヘッジと呼ばれるぼ かし語調が使用されている。日本人学習者では論述 文で同様の傾向が見られる。また,原文の観察から 特定の語の特定の意味で日本人学習者の値が高くな っ て い る 。must は 「 し な け れ ば な ら な い ( 義 務)」,can は「できる(可能)」,would はwill「だろ
■表 2 :b e動 詞 ( 以 下 品 詞 別 結 果 は 正 規 頻 度 を 100,000語に標準化して掲載)
verb 叙述文 物語文 論述文 母語話者
%=noun 頻度 頻度 頻度 頻度
am 309 107 61 18
are 380 253 1130 793
be 350 288 499 992
been 89 143 175 246 being 41 44 106 177 is 1811 999 2826 1956
isn’t 23 26 30 12
was 2089 2259 509 483
wasn’t 33 31 3 5
were 323 344 210 228
weren’t 3 8 3 3
( は各項目中最大値)
う(推量)」の時制の一致に偏った使い方をされてい る。また,助動詞+not の短縮形であるcan’t, could-n’t, didcould-n’t, doescould-n’t, docould-n’t, shouldcould-n’t, won’t で母語話 者よりも出現比率が高くなっているにもかかわらず,
not の使用比率では逆の現象が出ている。これは部 分否定や語否定を多用する傾向と助動詞の否定は not を分離することも考えられる。no は論述文,
never は物語文で多用されている点からこの種類の 文では強い否定が好まれているようである(表3)。
4.5.3
前置詞前置詞の使用状況においては23種類の調査項目の うち,11項目において母語話者が日本人学習者より も高比率を記録した。全平均でも日本人学習者の前 置詞の使用頻度が限られている点が浮き彫りになっ た。これは表1の1文の長さを考慮すると,日本人 学習者は前置詞句の数が少ないことを意味する。
いくつか特徴的な点を挙げると,比較的使用頻度 の高いものの中ではas とof にその相違が認められ
る。またto に関しては叙述文の中で移動や到達の動
詞とともに用いられるが,逆に論述文では減少する。
不定詞のto は母語話者の使用が多い。ただ論述文の
数値を見ると,割合母語話者に近い結果が得られて いるため,種類の同じ英文中では母語に関係なく同 じ傾向が出てくる可能性がある。また場所,時間に 関係した前置詞(at, before, near, after など)の使 用頻度の高さに比較して,関係や原因を示す前置詞
(with, for, of, as など)の使用頻度が低いことが注目
される。
また参考に不定詞のto (inf) も併記してある。母語 話者の不定詞の使用頻度の高さが目立つ。
4.5.4
論理的機能語等研究課題のaに,論理的結束性を示す文章の種 類は論述(問題解決)>叙述>物語作成としたが,
因果関係の語では叙述>論述>物語作成>母語話者 と,全く予想に反した結果が出ている。しかし精査 すると,because とso の2語だけで総語数の0.13% を占め,いずれも母語話者の約3倍の出現頻度で,
平均値だけからの判断は危険である。以下強調・条 件,付加,否定では母語話者の値が最大になってい る。譲歩に関してこれと逆の結果が出た点が興味深 い。「しかし,だが」の多用は論理的文脈にはマイナ スに働くと考えてよいであろう。特に注目すべきは
■表3:助動詞
can 285 269 565 414 could 96 142 25 197
did 231 441 66 85
do 280 287 441 220
does 21 26 66 129
may 64 54 89 151
might 14 17 25 26
must 103 116 284 100 need(aux) 1 3 51 30 should 63 69 243 239 will 348 251 606 346 would 70 154 53 453
( は各項目中最大値)
助動詞 叙述文 物語文 論述文 母語話者
■表4:前置詞
叙述文 物語文 論述文 母語話者 about 281 183 504 179 after 307 356 160 99 against 15 26 13 73
along 18 25 15 19
around 40 76 61 46
as 263 398 535 879
at 618 551 370 316
before 95 74 53 70
between 9 8 30 69
by 407 387 568 529
for 753 576 869 976 from 263 335 433 368 in 1555 1285 2020 1977 into 103 168 112 152
near 46 45 28 8
of 1330 1191 3145 3331
on 482 499 542 557
through 21 20 13 91 to 2052 1780 846 1434 to(inf) 1309 1138 1320 1901
under 18 23 25 40
with 564 535 395 592 without 32 34 41 72 平均頻度 460 422.3 526 599
( は各項目中最大値)
否定の項目である。この表を見る限り,母語話者の ほうが否定辞を多用しているが,表5の助動詞の否 定を合計してみると,叙述文:1136,物語文:
1461,論述文:1087,母語話者:1121となった。論 述文と母語話者の文で値が低いことがわかり,否定 表現も論述文,母語話者ともに論理的文脈には歓迎 されないことが予想される。母語話者はnot を単独 で使用する部分否定や語否定に代表されるように 種々の形式での使用が考えられる。意外だったのが フィクションで,空想の世界の中で否定表現が1%
近くを占める点である。表全体で合計すると母語話
者(0.283)>論述文(0.274)>叙述文(0.269)>
物語文(0.262)という結果になった。
論理的なつなぎ語は圧倒的に母語話者の使用頻度 が高い。ただ日本人学習者の論述文も他の2種類の 文に比較し母語話者に近い値が出ている。特に譲歩,
逆接を示すbut, however, (al)though については叙 述文,物語文で高いのは助詞の「が」を直訳したも のと思われる。また叙述文では圧倒的にbut の比率 が高く,この点についてはレトリックの反映と考え られ,起承転結という一度文脈を否定することによ る意外性をもととするテキスト形式や謙譲の文化が その背景にあると推察できる。Kaplan(1966)の示 した渦巻状の文脈展開がこのような対比語に集約さ れているとも考えられる。これは日本語のレトリッ クは発想がそのまま反映されやすい叙述文,物語文 において顕著に現れているが,多用は非論理的な文 脈を作り,結論を必要とする論述文では論旨を不明 確にしてしまうため,指導上の注意が必要であろう。
論述文では論理的なつなぎ語は満遍なく使用され,
母語話者のそれを類似した語使用となっている。
according to, also, because of, due to, instead, therefore, thus でその傾向が強い。前置詞でもas, between, of, without で母語話者に次ぐ頻度がある。
まとめると,日本人学習者,母語話者ともに論理 的な英文には多くの付加,強調,因果を補助する語 が使われ,否定や譲歩・逆接を示す語は少ないほう がよい,と推測できる。
4.5.5
一般動詞表8(資料参照)の一般動詞については変化形頻 度も原形の項目にまとめて表示してある。数値は示 していないが,全体的な傾向としてbe動詞同様,一 般動詞も叙述文で現在形(原形),物語文で過去形の 使用比率が高い。以下それぞれの文章の種類別に最 も頻度の高かったものを抽出してみると,叙述文は arrive*, belong*, buy, enter, feel, finish, go*, hold, hope, learn, like, meet, move*, play, practice, read, ski*, sleep*, speak, start, stay*, study, take, talk*, want, watch, win*, write で , 物 語 文 はanswer, appear, ask, become, begin, call, climb, come, cry, decide, die, eat, fall, find, forget, give, get, hear, help, know, leave, live, look, lose, love, marry, notice, open, pass, put, remember, return, run, say, see, stop, tell, thank, try, turn, understand, wait,
■表5:論理的機能語など
叙述文 物語文 論述文 母語 話者 範疇 according 5 7 20 38 因果 because 582 357 347 265 因果 because of 38 38 71 60 因果 due to 2 9 10 48 因果 so 700 555 558 224 因果 therefore 26 15 53 94 因果
thus 1 1 15 43 因果
平均 193.4 140.3 153.4 110.3 only 12 15 17 23 強調 even 39 38 96 142 強調 if 243 162 378 331 条件 instead 4 0 13 40 条件
平均 74.5 53.75 126 134
although 32 16 53 69 譲歩 but 963 878 583 403 譲歩 however 29 17 33 62 譲歩 different 85 90 132 183 相違 though 29 55 35 47 譲歩 平均 227.6 211.2 167.2 152.8 not 385 250 147 746 否定 no 138 433 471 209 否定 never 66 105 48 51 否定
平均 196.3 262.7 222 335.3
also 89 50 188 267 付加 and 2280 2480 2557 2582 付加 another 66 50 41 91 付加
平均 811.7 860 928.7 980
( は各項目中最大値。行合計頻度50以上の語彙のみ扱 う)