第 4 章 低温測定 25
4.2 キャリア密度と移動度
古典領域における物性の評価として、キャリア密度と移動度を調べるため以下の実験を 行った。
実験 ソースドレイン電圧をVsd = 100 mVに固定し、バックゲート電圧Vbgを-20 Vか ら20 Vまで0.5 Vずつ変化させながら、磁場をB= −1〜1 Tに変化させて抵抗率 ρを測定した。
横抵抗率ρxy は、磁場Bに対して線形に変化していた。各バックゲート電圧におけるそ の傾きをフィッティングから求めグラフに表したものを図4.2に示す。また、この結果か
ら、(2.30)式を用いてキャリア密度を計算したものが図4.3である。
-20 -10 0 10 20
-6 -3 0 3 6
xy
/B(k)
V bg
(V)
図4.2 ρxy/Bのバックゲート電圧依存性
4.2 キャリア密度と移動度 27 図4.2をみると、Vbg =5 Vを境に反比例していることがわかる。Vbg <5 Vが正孔キャ リアによる電気伝導、Vbg > 5 Vが電子キャリアによる電気伝導である。このことから、
本試料では、グラフェン表面の不純物により、ディラックポイントがVbg =5 Vにずれて いると考えられる。
キャリア密度は、図4.3からわかるように、バックゲート電圧に対して線形に変化して いた。
-20 -10 0 10 20
-2.0 -1.0 0.0 1.0 2.0
n(10
12 cm
-2 )
V bg
(V) n
n fitting
図4.3 キャリア密度のバックゲート電圧依存性
これを線形フィッティングしたところ、傾きがn/∆Vbg=(7.61±0.17)×1010cm−2/Vと なった。これを、SiO2を誘電体としたときの電荷Qの関係式、
Q= ne= ϵϵ0
d (Vbg−Vbg0 ) (4.7)
と比較してみると、SiO2 の比誘電率 ϵ = 3.9、膜厚 d = 285 nm、真空の誘電率 ϵ0 = 8.85×10−12F/mを代入して、Cbg/e=n/∆Vbg= 7.57×1010cm−2/Vとなる。したがって、
フィッティングの結果は、この理論的な計算に合っていると考えることができ、正しく ゲート操作ができていることがわかった。
次に、ゼロ磁場における縦伝導率から、サンプルの移動度を評価する。図4.4が縦伝導 率、図4.5が移動度である。図4.5において、黒いドットはフィット前のキャリア密度を、
赤い折れ線はフィット後のキャリア密度を用いている。
グラフェンは、その分散関係の特徴から考えるとフェルミエネルギーがちょうどデイ ラック点にあるとき状態密度がゼロとなり、電気伝導をしないはずである。しかし、実際 には伝導率がゼロとならず有限の最小値をとることがわかっている。これは、ディラック 点付近においては電子と正孔が共存し2バンド系を作るためであると考えられている[6]。
-20 -10 0 10 20 0.0
0.5 1.0
xx
(10
-3 )
V bg
(V)
図4.4 B=0 Tにおける伝導率
本実験においても、図4.4においてディラックポイント付近において有限の最小値をとっ ており、他の実験結果と同様であることを確認した。
-20 -10 0 10 20
0 5,000 10,000
(cm
2 /Vs)
V bg
(V) from calculated n
図4.5 移動度のバックゲート電圧依存性
また、揺らぎが大きく詳細な議論は難しいものの、我々がゲート操作した領域において は、正孔移動度がµh = 2500〜8000 cm2/V·s、電子移動度がµe = 3000〜8000 cm2/V·sで あることがわかった。この結果は、他の文献[9, 10] と比較しても同等かそれ以上であると いえる。