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ウィックの定理

ドキュメント内 量子力学A (ページ 75-90)

逆に,断熱的にVI を消去すれば

|0i=e0U(∞,0)|0i, つまり |0i=e0U1(∞,0)|0i (8.5)から分かるようにU =U1であるから

h0|=e0h0|U(∞,0) になる。したがって

1 =h0|0i=ei(θ+θ0)h0|U(∞,0)U(0,−∞)|0i=ei(θ+θ0)h0|S|0i である。以上の結果から

h0|Φ(x)Φ(x0)|0i=ei(θ+θ0)h0|U(∞,0)U(0, t)ϕ(x)U(t, t0)ϕ(x0)U(t0,0)U(0,−∞)|0i

= 1

h0|S|0ih0|U(∞, t)ϕ(x)U(t, t0)ϕ(x0)U(t0,−∞)|0i になる。分子の部分でVI の1次はU(∞, t) ,U(t, t0) ,U(t0,−∞)からの寄与の和

(−i)

t

dt1VI(t1)ϕ(x)ϕ(x0) + (−i)

t t0

dt1ϕ(x)VI(t1)ϕ(x0) + (−i)

t0

−∞

dt1ϕ(x)ϕ(x0)VI(t1) である。これはt > t0 のとき

(−i)

−∞

dt1T (

ϕ(x)ϕ(x0)VI(t1) )

に等しい。2次以上も同様になるから h0|T

(

Φ(x)Φ(x0) )|0i

= 1

h0|S|0i

n=0

(−i)n n!

−∞

dt1· · ·

−∞

dtnh0|T (

ϕ(x)ϕ(x0)VI(t1)· · ·VI(tn) )|0i

= 1

h0|S|0ih0|T (

ϕ(x)ϕ(x0)S )|0i

になる。一般に h0|T

(

Φ(x1)· · ·Φ(xn)

)|0i= 1

h0|S|0ih0|T (

ϕ(x1)· · ·ϕ(xn)S

)|0i (8.8)

である。

(8.7), (8.8)においてexpを展開すれば,相互作用Lint についての摂動展開になる。これは時間と 空間が同等に扱われ共変的な形式をしている。量子力学で用いられる摂動論では時間が特別扱いさ れ,共変的な形式ではない。これを場の理論に適用してもよいが,非常に見通しの悪いものになる。

が求まればよい。これを求めるときウィック( Wick )の定理が見通しのよい方法を与える。

正規積( normal product )

場の積ϕ1(x1)· · ·ϕn(xn)で,すべての生成演算子がすべての消滅演算子の左にくるように並べ変え た積を考える。このとき,ディラック場が最初の並びの奇置換の場合は1を乗ずるものとする。こ れを正規積( normal product )といい

:ϕ1(x1)· · ·ϕn(xn) :

で表す。自由場ϕi(x)は生成演算子の部分ϕ(+)i (x)と消滅演算子の部分ϕ(i)(x)の和で書ける。例 えば,スカラー場φ(x)の場合

:φ(x1)φ(x2) : = : (

φ(+)(x1) +φ()(x1) ) (

φ(+)(x2) +φ()(x2) )

:

=φ(+)(x1(+)(x2) +φ(+)(x1()(x2)

+φ(+)(x2()(x1) +φ()(x1()(x2) (8.9) ディラック場ψ(x)の場合は

:ψα(x1β(x2) : = : (

ψα(+)(x1) +ψα()(x1) ) (

ψ(+)β (x2) +ψ(β)(x2) )

:

=ψ(+)α (x1(+)β (x2) +ψ(+)α (x1(β)(x2)

−ψ(+)β (x2α()(x1) +ψ(α)(x1(β)(x2) (8.10) である。第3項は最初の並び ψ(α)(x1(+)β (x2)とは逆になるから(奇置換)の符合が付く。自由 場の真空|0i

ϕ(i)(x)|0i= 0, h0(+)i (x) = 0 であるから,正規積の真空期待値は

h0|:ϕ1(x1)· · ·ϕn(xn) :|0i= 0 である。

交換関係[φ()(x1), φ(+)(x2) ]はx1,x2 の関数になり演算子ではない。これをC(x1, x2)とする と(8.9)より

φ(x1)φ(x2):φ(x1)φ(x2) : = [φ()(x1), φ(+)(x2) ] =C(x1, x2) である。両辺の真空期待値をとると,正規積の真空期待値は0であるから

h0|φ(x1)φ(x2)|0i=C(x1, x2) である。したがって

φ(x1)φ(x2) = :φ(x1)φ(x2) : +h0|φ(x1)φ(x2)|0i である。同様に

ψα(x1β(x2):ψα(x1β(x2) : =(α)(x1), ψ(+)β (x2)}=h0α(x1β(x2)|0i であり

ψα(x1β(x2) = :ψα(x1β(x2) : +h0α(x1β(x2)|0i

になる。時間順序積は T

(

φ(x1)φ(x2) )

=θ(t1−t2)φ(x1)φ(x2) +θ(t2−t1)φ(x2)φ(x1)

=θ(t1−t2) (

:φ(x1)φ(x2) : +h0|φ(x1)φ(x2)|0i) +θ(t2−t1)

(

:φ(x2)φ(x1) : +h0|φ(x2)φ(x1)|0i) :φ(x1)φ(x2) : = :φ(x2)φ(x1) :であるから

T (

φ(x1)φ(x2) )

= :φ(x1)φ(x2) : +h0|T (

φ(x1)φ(x2) )|0i

= :φ(x1)φ(x2) : +i∆F(x1−x2) になる。

T (

ψα(x1β(x2) )

=θ(t1−t2α(x1β(x2)−θ(t2−t1β(x2α(x1)

=θ(t1−t2) :ψα(x1β(x2) :−θ(t2−t1) :ψβ(x2α(x1) : +h0|T

(

ψα(x1β(x2) )|0i

:ψα(x1β(x2) : =:ψβ(x2α(x1) :より T

(

ψα(x1β(x2) )

= :ψα(x1β(x2) : +h0|T (

ψα(x1β(x2) )|0i

= :ψα(x1β(x2) : +i(SF(x1−x2))αβ である。ϕi(xi)を単にϕi と書くことにすると,一般に

ϕ1ϕ2= :ϕ1ϕ2: +ϕ1ϕ2, T (ϕ1ϕ2) = :ϕ1ϕ2: +ϕ1ϕ2 (8.11) ここで

ϕ1ϕ2≡ h01ϕ2|0i, ϕ1ϕ2≡ h0|T (ϕ1ϕ2)|0i

である。これらを縮約( contraction )という。(8.11)を一般化したものがウィックの定理である。

ウィックの定理

n個の積ϕ1ϕ2· · ·ϕn は可能な全ての縮約を含む正規積

ϕ1ϕ2· · ·ϕn= :ϕ1ϕ2· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2ϕ3· · ·ϕn: +· · · + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4· · ·ϕn : +· · · + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4ϕ5ϕ6· · ·ϕn: +· · ·

T (ϕ1ϕ2· · ·ϕn) = :ϕ1ϕ2· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2ϕ3· · ·ϕn: +· · · + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4· · ·ϕn: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4· · ·ϕn : +· · · + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4ϕ5ϕ6· · ·ϕn: +· · ·

に展開できる。ただし,縮約を取り出すとき,縮約する2つの演算子の間に奇数個のディラック場が ある場合にはの符号を付ける。例えば,ϕがディラック場の場合

:ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4· · ·ϕn :=−ϕ1ϕ3:ϕ2ϕ4· · ·ϕn:=−ϕ1ϕ3ϕ2ϕ4:ϕ5· · ·ϕn:

である。ウィックの定理の証明は場の理論の教科書を見よ。

ウィックの定理を使うとき, 最初から同一の正規積にある演算子の縮約は寄与しないので無視す る。例えば

:ϕ1ϕ2: :ϕ3ϕ4: = (

ϕ1ϕ2−ϕ1ϕ2

) (

ϕ3ϕ4−ϕ3ϕ4

)

では

ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4= :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4:

であるから

:ϕ1ϕ2: :ϕ3ϕ4: = :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: +ϕ1ϕ2( :ϕ3ϕ4:−ϕ3ϕ4) + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: +ϕ3ϕ4( :ϕ1ϕ2:−ϕ1ϕ2)

+ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4+ 2ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4

になる。:ϕ1ϕ2:−ϕ1ϕ2=−ϕ1ϕ2 より

:ϕ1ϕ2: :ϕ3ϕ4: = :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: + :ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4: +ϕ1ϕ2ϕ3ϕ4

である。同一の正規積にある演算子の縮約は寄与しない。

9 具体例

相互作用が

Lint =g:ψ(x)ψ(x)φ(x) : (9.1)

の場合を考える。相互作用は真空期待値を差し引いて正規積にしてある。

9.1 散乱

初期状態が(p1, s1) , (p2, s2)である2つのディラック粒子が(p01, s01) , (p02, s02)に散乱される確率 を求める。

|ii=a(p1, s1)a(p2, s2)|0i, |fi=a(p02, s02)a(p01, s01)|0i (9.2) のとき

Sf i=hf|S|ii=hf|ii+i

d4xhf| Lint(x)|ii −1 2

d4x d4x0hf|T (Lint(x)Lint(x0))|ii+· · ·

|ii,|fiはスカラー粒子に関しては真空と同じであるからhf|φ|ii= 0になり1次は0である。2 次の項をWickの定理で展開する(簡単のためψ=ψ(x) , ψ0 =ψ(x0)等とする)。(7.18)から ψψ0 は(a+b)(a+b)の型であるからψψ0ψ ψ0 の縮約は0 である。また

hf|:φ φ0 :|ii= 0 である。したがって

hf|T (Lint(x)Lint(x0))|ii=g2hf|T(

:ψψφ: :ψ0ψ0φ0:)

|ii

=g2φ φ0hf| (

:ψψψ0ψ0: + :ψψψ0ψ0 : + :ψψψ0ψ0 : +ψψψ0ψ0 )

|ii

=g2φ φ0 (

hf|:ψψψ0ψ0:|ii+ψαψβ0hf|:ψαψ0β :|ii

+ψαψ0βhf|:ψαψ0β:|ii+ψψψ0ψ0hf|ii )

になる。hf|:ψαψβ0 :|ii

h0|a(p01, s01)a(p02, s02)a(p, s)a(p0, s0)a(p1, s1)a(p2, s2)|0i

になるから,例えば(p01, s01) = (p1, s1)のように初期状態の1粒子状態と終状態の1粒子状態の少な くとも1組が同じでなければ0になる。以下では,初期状態の1粒子状態と終状態の1粒子状態は 全て異なるとする。この場合,最初の項だけが残り

Sf i=−g2 2

d4x d4x0hf|:ψ(x)ψ(x)ψ(x0)ψ(x0) :|iiφ(x)φ(x0) ψ()a, ψ(+)b からなる。(9.2)の状態には反粒子は存在しないから

hf|:ψ(x)ψ(x)ψ(x0)ψ(x0) :|ii=hf|:ψ(+)(x)ψ()(x)ψ(+)(x0()(x0) :|i i

=

αβ

hf|ψ(+)α (x)ψ(+)β (x0α()(x)ψβ()(x0)|ii

(7.18)より

ψ()(x) =∑

s

d3p (2π)3/2

m Ep

a(p, s)u(p, s)eip·x, p0=Ep

ψ(+)(x) =∑

s

d3p (2π)3/2

m Ep

a(p, s)u(p, s)eip·x であるから

hf|ψ(+)α (x)ψ(+)β (x0(α)(x)ψβ()(x0)|i i

= ∑

s3···s6

d3p3· · ·d3p6

(2π)6 exp(ip3·x+ip4·x0−ip5·x−ip6·x0) m2

√E3E4E5E6

uα(3)uβ(4)uα(5)uβ(6)h0|a10a20a3a4a5a6a1a2|0i ただし

uα(3) =uα(p3, s3), a1=a(p1, s1) と略記する。

a5a6a1a2|0i=a5

(

δ16−a1a6

)

a2|0i= (

δ16δ25−δ26δ15

)|0i, δ12≡δ(p1p2)δs1s2

同様に

h0|a10a20a3a4=h0|(

δ203δ104−δ103δ204

)

であるから

αβ

hf|ψ(+)α (x)ψ(+)β (x0α()(x)ψβ()(x0)|ii

= 1

(2π)6

m2

√E1E2E10E20

[

u(10)u(1)u(20)u(2) (

ei(p01p1)·x+i(p02p2)·x0+ (x↔x0) )

−u(20)u(1)u(10)u(2) (

ei(p02p1)·x+i(p01p2)·x0+ (x↔x0) )]

したがって Sf i= i g2

(2π)6

m2

√E1E2E10E20

d4x d4x0

d4q

(2π)4F(q)eiq·(xx0) (

u(10)u(1)u(20)u(2)ei(p01p1)·x+i(p02p2)·x0−u(20)u(1)u(10)u(2)ei(p02p1)·x+i(p01p2)·x0 )

= i g2 (2π)2

m2

√E1E2E10E20

δ4(p1+p2−p01−p02)Tf i

ただし

Tf i=u(10)u(1)u(20)u(2)∆F(p1−p01)−u(20)u(1)u(10)u(2)∆F(p1−p02) (9.3) である。デルタ関数δ4(p1+p2−p01−p02)はエネルギー・運動量が保存することを表す。10 と20 あ るいは1と2を入れ換えると符号が変わる。フェルミ粒子の状態は粒子の交換に関して反対称でな ければならないが,上の結果はこの要請を自動的に満たしている。

遷移確率を求めるには|Tf i|2 を計算する必要があるが,このとき終状態の粒子のスピンを観測せ ず, また初期状態ではスピンが偏極していないならば, s1s2 については平均し s01s02 につい ては足し合わせる。したがって

T 1 4

s1···s02

|Tf i|2 が求まればよい。ここで

f(1,2) =u(1)u(2) とおくとf(1,2) =f(2,1)であるから

T = 1 4

∑(f(10,1)f(20,2)∆F(p1−p01)−f(20,1)f(10,2)∆F(p1−p02) ) (

f(1,10)f(2,20)∆F(p1−p01)−f(1,20)f(2,10)∆F(p1−p02) )

= 1 4

∑(f(10,1)f(1,10)f(20,2)f(2,20)∆2F(p1−p01)

−f(10,1)f(1,20)f(20,2)f(2,10)∆F(p1−p01)∆F(p1−p02) + ( 10 20 ) )

なお,p2=m2,p02=m2のとき

(p−p0)2= 2m22p·p0 = 2m22EpEp0+ 2p·p02(

m2−EpEp0+|p||p0|)

ところで (

m2+|p||p0|)2

(EpEp0)2=−m2(|p| − |p0|)20

であるから(p−p0)20 になり,F(p−p0)の分母は(p−p0)2−m20<0であるからε= 0として よい。スピンについての和は,例えば

s1s01

f(10,1)f(1,10) =∑

αβ

s1s01

uα(p01, s01)uα(p1, s1)uβ(p1, s1)uβ(p01, s01)

=∑

αβ

s1s01

uα(p1, s1)uβ(p1, s1)uβ(p01, s01)uα(p01, s01) ここで(4.16)を使うと

s1s01

f(10,1)f(1,10) =∑

αβ

+(p1))αβ+(p01))βα= Tr (

Λ+(p1+(p01) )

= 1

4m2Tr (

(/p1+m)( /

p01+m)) (2.25), (2.26)より

s1s01

f(10,1)f(1,10) = p1·p01+m2 m2 になる。同様に

f(10,1)f(1,20)f(20,2)f(2,10) = Tr (

Λ+(p1+(p02+(p2+(p01) )

= 1

16m4Tr (

(/p1+m)( / p02+m)

(/p2+m)( /

p01+m))

= 1 4m4

[

p1·p01p2·p02+p1·p02p2·p01−p1·p2p01·p02 +m2

(

(p1+p02)·(p01+p2) +p1·p02+p01·p2

) +m4

]

結果はかなり複雑なので重心系の場合

p1= (Ep,p), p2= (Ep,−p), p01= (Ep, p0), p02= (Ep,−p0) を考える。エネルギー・運動量保存から|p|=|p0| である。

p1·p2=p01·p02=Ep2+p2, p1·p02=p01·p2=Ep2+p·p0, p1·p01=p2·p02=Ep2p·p0 であるから

f(10,1)f(1,20)f(20,2)f(2,10) = 1 4m4

((p1·p01+m2)2

+(

p1·p02+m2)2

(

p1·p2−m2)2) したがって

T= 1 16m4

(( p1·p01+m2 p1·p01−m2+m20/2

)2

+

( p1·p02+m2 p1·p02−m2+m20/2

)2

1 2

(p1·p01+m2)2

+(

p1·p02+m2)2

(

p1·p2−m2)2

(p1·p01−m2+m20/2) (p1·p02−m2+m20/2) )

pp0 のなす角をθとするとp·p0=p2cosθであるからT を散乱角θ で表せる。

非相対論的近似では

Ep≈m , u(p, s)≈ (

χs

0 )

F(p−p0) = 1

(Ep−Ep0)2(pp0)2−m20+ ≈ − 1 (pp0)2+m20 であるから(9.3)は

Sf i i g2

(2π)2δ4(p1+p2−p01−p02)

( δs1s01δs2s02

(p1p01)2+m20 ( 1020 ) )

(9.4) これと同等な結果になる2粒子間に働く非相対論的ポテンシャルV(x1x2)を求める。S行列は V の1次ではVI(t) =eiH0tV eH0tであるから

Sf i =−i

dthf|VI(t)|ii=−i

dt ei(EfEi)thf|V |ii=2πi δ(Ef−Ei)hf|V |ii 非相対論の場合,反対称化した2粒子状態は

|ii= 1

2 1 (2π)3

(eip1·x1+ip2·x2χs1χs2(p1, s1p2, s2))

|fi= 1

2 1 (2π)3

(

eip01·x1+ip02·x2χs0 1χs0

2(p01, s01p02, s02) )

である。2成分スピノールは最初の部分が粒子1, 2番目が粒子2の状態を表す。

hf|V|ii=

d3x1d3x2

(2π)6 V(x1x2) (

eip1·x1+ip2·x2ip01·x1ip02·x2δs1s0 1δs2s0

2( 10 20 ) )

x=x1x2 とおくと hf|V |ii= 1

(2π)3δ(p1+p2p01p02)

d3x V(x) (

ei(p1p01)·xδs1s01δs2s02( 1020 ) )

であるから Sf i= i

(2π)2δ4(p1+p2−p01−p02)

d3x V(x) (

ei(p1p01)·xδs1s01δs2s02( 1020 ) )

(9.5) になる。(9.4)と(9.5)を比較すると

d3x V(x)eip·x= g2

p2+m20 (9.6)

したがって,湯川ポテンシャル

V(x) =−g2

d3p (2π)3

eip·x

p2+m20 =−g2

em0r r を得る。

9.2 プロパゲータ

スカラー粒子のプロパゲータ

i G(x, x0) = 1

h0|S|0ih0|T (

φ(x)φ(x0)S )|0i

を結合定数gの2次まで考慮して求める。

h0|S|0i= 1 +(−i)2 2

d4x1d4x2h0|T (Lint(x1)Lint(x2))|0i+· · ·

= 1−g2 2

12

d4x1d4x2h0|T(

:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i+· · · (9.7) Lint の真空期待値は0であるから1次は寄与しない。和はスピノールの成分について行う。簡単の ため ψa1(x1)などを ψ1 と書く。(9.7)の時間順序積をウィックの定理で展開したとき, 正規積の真 空期待値は0 であるから,縮約だけの項が残る。また, (7.18)から ψ1ψ2 は(a+b)(a+b)の型で あるからψ1ψ2ψ1ψ2 の縮約は0である。したがって,同一の正規積内の縮約は寄与しないから

h0|T(

:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i=ψ1ψ1ψ2ψ2φ1φ2 (9.8) である。次に

h0|T (

φ(x)φ(x0)S

)|0i=h0|T (φ(x)φ(x0))|0i −i

d4x1h0|T (φ(x)φ(x0)Lint(x1))|0i +(−i)2

2

d4x1d4x2h0|T (φ(x)φ(x0)Lint(x1)Lint(x2))|0i+· · ·

=φ φ0−g2 2

12

d4x1d4x2h0|T(

φ φ0:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i

ただしφ=φ(x),φ0=φ(x0)である。正直に展開すると h0|T(

φ φ0:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i=φ φ0φ1φ2ψ1ψ1ψ2ψ2+φ φ1φ0φ2ψ1ψ1ψ2ψ2 +φ φ2φ0φ1ψ1ψ1ψ2ψ2

(9.8)及びψ1ψ2=−ψ2ψ1を考慮すると h0|T(

ψαψβ:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i=φ φ0h0|T(

:ψ1ψ1φ1: :ψ2ψ2φ2:)

|0i

(

φ φ1φ0φ2+φ φ2φ0φ1

)

ψ1ψ2ψ2ψ1 したがって

h0|T (

φ(x)φ(x0)S

)|0i=φ φ0h0|S|0i+g2

12

d4x1d4x2 φ φ1φ0φ2ψ1ψ2ψ2ψ1

これからg2 のオーダーまででは

i Gαβ(x, x0) =φ φ0+g2

12

d4x1d4x2 φ φ1φ0φ2ψ1ψ2ψ2ψ1

になる。縮約を自由な場合のプロパゲータ SF,F で表すと G(x, x0) =F(x, x0)−i g2

d4x1d4x2F(x, x1) Tr (

SF(x1, x2)SF(x2, x1) )

F(x2, x0) (9.9) である。

(9.9)はファイマン・ダイヤグラムで表すと見やすくなる。座標xなどに点 を対応させる。こ

れを頂点( vertex )という。SF(x, x0)には x0xを結ぶ矢印, F(x, x0)には x0xを結ぶ破線 を対応させると, (9.9)の右辺は図のようになる。量子化した場の効果で,単独のスカラー粒子の伝 播は単なる自由粒子の伝播(右辺第1項)ではない。SF(x, x0)はt > t0 のとき粒子の生成・消滅を, t0 > tのとき反粒子の生成・消滅を表すから, SF(x1, x2)SF(x2, x1)は粒子・反粒子の対生成・対消 滅であり,ファイマン・ダイヤグラムではループになる。一方の矢印を粒子とすると,もう1つの矢 印は逆向きであり反粒子を表す。空孔理論的に言えば, スカラー粒子との相互作用でディラック海 の負エネルギー粒子が正エネルギーに励起され, 励起した粒子が再び負エネルギー状態に戻る。こ れを真空偏極( vacuum poralization )という。

x0 x x0

x2 x1

x

(7.13)と(7.21)から

d4x1d4x2F(x, x1)SF(x1, x2)SF(x2, x1)F(x2, x0)

=

d4p1d4p2d4p3d4p4

[(2π)4]4 F(p1) Tr (

SF(p2)SF(p3) )

F(p4)

×

d4x1d4x2eip1·(xx1)ip2·(x1x2)ip3·(x2x1)ip4·(x2x0)

=

d4p1d4p2d4p3d4p4

[(2π)4]2 F(p1) Tr (

SF(p2)SF(p3) )

F(p4)eip1·x+ip4·x0 δ4(p1−p2+p3)δ4(p2−p3−p4)

=

d4p d4q

[(2π)4]2F(p) Tr (

SF(p+q)SF(q) )

F(p)eip·(xx0)

したがって

G(x, x0) =

d4p

(2π)4eip·(xx0)G(p) とすると

G(p) =∆F(p) +F(p)Σ(p)∆F(p), Σ(p) =−ig2

d4q (2π)4Tr

(

SF(p+q)SF(q) )

(9.10) である。Σ(p)を自己エネルギー( self–energy )という。

相互作用 Lint が与えられたとき, ここで行ったような計算を行わなくても, 可能なファイマン・

ダイヤグラムを書き,矢印にSF, 破線にF,相互作用の頂点にg,などを当てはめれば,前の図か

ら(9.9)を書く下すことは機械的にできる。一般に,ファイマン・ダイヤグラムに対してどのような

量を対応させるかを与える規則をファイマン則( Feynman rule )という。(9.1)の場合, ファイマン 則は

プロパゲータを表す矢印と破線にそれぞれiSF,i∆F

相互作用の頂点にig

頂点ではエネルギー・運動量は保存する。このとき独立なエネルギー・運動量qµ については 積分 ∫

d4q/(2π)4 を行う。

ディラック粒子の閉じたループについては 1 を乗ずる。

になる。前の図は

i G(p) =i∆F(p) +i∆F(p)ig

d4q

(2π)4(1)Tr (

iSF(p+q)iSF(q) )

ig i∆F(p) であるから(9.10)が直ちに求まる。このようにファイマン則は非常に便利である。

上図のようなダイヤグラムを無限次まで足し合わせれば G(p) =∆F(p)

(

1 +Σ(p)∆F(p) + (Σ(p)∆F(p))2+· · ·)

= F(p)

1−Σ(p)∆F(p) = 1

F1(p)−Σ(p) = 1

p2−m20−Σ(p) +iε (9.11) になる。ここで(7.13)を使った。(7.21)を(9.10)に代入すると

Σ(p) =−ig2

d4q (2π)4

Tr (

(/p+ /q+m)(/q+m) )

((p+q)2−m2+iε) (q2−m2+iε) である。(2.26)より

Tr (

(/p+ /q+m)(/q+m) )

= 4(

(p+q) +m2) であるから

Σ(p) =−4ig2

d4q (2π)4

(p+q) +m2

((p+q)2−m2+iε) (q2−m2+iε) Feynmanの恒等式

1 XY =

1 0

(αX+ (1−α)Y)2

を使うと

Σ(p) =−4ig2

1 0

d4q (2π)4

(p+q) +m2 (

(q+αp)2+α(1−α)p2−m2+ )2

kµ=qµ+αpµ とすれば Σ(p) =−4ig2

1 0

d4k (2π)4

k2−α(1−α)p2+m2+ (12α)p·k (

k2+α(1−α)p2−m2+ )2

p·k の部分の積分はkµ について奇関数であるから0 である。したがって Σ(p) =−4ig2

1 0

d4k (2π)4

k2−α(1−α)p2+m2 (

k2+α(1−α)p2−m2+

)2 (9.12)

である。∆F1(p2 = m20) = 0 である m0 が自由粒子の質量を与えるが, これは相互作用がない場 合の質量であり, 実際に観測される粒子の質量mR は相互作用の効果のため m0 ではない。mRG1(p2=m2R) = 0 で決まる。そこでΣ(p2)を p2=m2Rのまわりで展開して

Σ(p2) =δm2+ (p2−m2R)(1−Z1) + (p2−m2R)2C(p2) とする。ただし

δm2=Σ(m2R), 1−Z1= ∂Σ(p2)

∂p2

¯¯¯¯

p2=m2R

である。δm2 と1−Z1は発散しこのままでは物理的に無意味であるが ,形式的に G1=p2−m20−δm2(p2−m2R)(1−Z1)(p2−m2R)2C(p2) であるから

m20+δm2=m2R とすると

G1=Z1(

p2−m2R)

(

p2−m2R)2

C(p2) になりG1(p2=m2R) = 0である。更に

φ= Z φR としてφRを物理的な場と見なせば

G=Z GR であるから

GR1=p2−m2R+· · ·

になりZ を物理量から消去できる。無限大を有限な観測量で置き換えて無限大の困難を回避する。

これを繰込み( renormalization )という。

9.3 次元正則化法

繰込みでは, 無限大に発散する量をある処方で一時的に有限化する。その方法にはいろいろある が,ここでは次元正則化法( dimensional regularization )を採用する。この方法は4次元空間では発 散する量をn次元(時間1次元+空間n−1次元)で計算し,その後n→4 とすることにより発散 項を分離する。

まず ∫

0

dz eiz(k2M2+iε)= [

eiz(k2M2+iε) i(k2−M2+iε)

]

0

= 1

i(k2−M2+iε) である。z→ ∞のとき−zε→ −∞であるからz→ ∞の寄与は0である。これから

dnk

k2−M2+ =−i

0

dz

dnk eiz(k2M2+iε)

=−i

0

dz eiz(M2+iε)

−∞

dk0eizk20 (∫

−∞

dk1eizk12 )n1

ここでk2=k20−k21− · · · −k2n1である。k0=re とすると eizk20 =eizr2cos 2θezr2sin 2θ

sin 2θ >0 ならば r→ ± ∞のとき eizk20 0 であるから, 実軸上の積分を複素平面上の積分k0 = re,−∞< r <∞に置き換えられる。特にθ=π/4 とすれば

−∞

dk0eizk02=eiπ/4

−∞

dr ezr2 =eiπ/4

π z

同様にして ∫

−∞

dk0eizk21 =eiπ/4

π z したがって

dnk

k2−M2+ =eiπn/4πn/2

0

dz eizM2zn/2 t=izM2 とすると ∫

dnk

k2−M2+ =−i πn/2Mn2

i 0

dt ettn/2 更に ∫ iR

0

dt ettn/2+

0 π/2

dt

ettn/2¯¯¯

t=Re+

0 R

dt ettn/2= 0 第2項はR→ ∞のとき0になるから

dnk

k2−M2+ =−i πn/2Mn2

0

dt ettn/2 Γ 関数は

Γ(z) =

0

dt ettz1

であるから ∫

dnk

k2−M2+ =−i πn/2Mn2Γ(1−n/2) (9.13)

になる。M2 で微分すると

dnk

(k2−M2+iε)2 =i πn/2Mn4(1−n/2)Γ(1−n/2) (9.14) である。

以上の結果を使うと(9.12)の積分 In=

dnk k2+f(α, p2) (

k2−f(α, p2) +

)2, f(α, p2) =m2−α(1−α)p2

M2=f(α, p2)とすれば

In=i πn/2(1−n)Γ(1−n/2)fn/21

になる。右辺ではnは整数である必要はない。そこでnを実数として扱いn→4の極限を考える。

n= 4 +δとするとa=eloga であるから πn/2=π2eδ/2 logπ=π2

( 1 + δ

2logπ+· · · )

, fn/21=f (

1 +δ

2logf+· · · )

になる。Γ(z)は z= 0,1,2,· · · で発散するからΓ(1−n/2) =Γ(1−δ/2)δ→0で発散す る。Γ 関数の性質

Γ(z) =Γ(z+ 1) z を使うと

Γ(1−δ/2) =−Γ(−δ/2)

1 +δ/2 = Γ(1−δ/2) (1 +δ/2)δ/2 以上から

In=i π2f (

1 + δ

2logπ+· · · ) (

1 + δ

2logf+· · ·) (

3−δ

) Γ(1−δ/2) (1 +δ/2)δ/2

=3i π2f (

Γ(1−n/2) + Γ(1−δ/2) 1 +δ/2

(

log(πf) +2 3

) +O(δ)

)

δ→0 とするとΓ(1) = 1であるから In =3i π2f

(

Γ(1−n/2) + log(πf) +2 3

)

になる。第1項はn→4 のときΓ(1) になり発散する。Σは Σ(p) =− ig2

(2π)4

1 0

dα In

=3g22

[ (

m2−p2 6

) (

Γ(1−n/2) +2

3 + logπ )

+

1 0

dα flogf ]

(9.15) である。

9.4 繰込み

スカラー粒子の繰込みを具体的に行う。自由粒子のラグランジアンでm0 を物理的質量mRで表 してm20=m2R−δm2とし,場φφ=

Z φR とすると 1

2 (

(∂µφ)(∂µφ)−m20φ2 )

= Z 2 (

(∂µφR)(∂µφR)−m2Rφ2R )

+Z 2δm2φ2R

= 1 2 (

(∂µφR)(∂µφR)−m2Rφ2R )

+Z−1

2 (∂µφR)(∂µφR) +ζ

2φ2R (9.16)

ただし

ζ=Zδm2(Z1)m2R

である。(9.16)の第1項をこれまでの自由粒子のラグランジアンとし, 第2項と第3項を相互作用 に加えて

Lint=g:ψψφR: + Z−1

2 : (∂µφR)(∂µφR) : + ζ 2 :φ2R:

とする。ここでは扱わないが,ディラック場ψと結合定数gも繰込む必要がある。上式のψgは 繰込まれた量と考える。

新たに加えた相互作用の寄与を求める。

h0|T (

φR(x)φR(x0)S )|0i

において1次の寄与は(添字 Rは省略) I1=iZ−1

2

d4x1h0|T (φ(x)φ(x0) : (∂µφ(x1))(∂µφ(x1)) :)|0i I2=

2

d4x1h0|T (φ(x)φ(x0) :φ(x1)φ(x1) :)|0i である。ウィックの定理から

I1=iZ−1 2

d4x1

(

φ(x)φ(x0)∂µφ(x1)∂µφ(x1) +φ(x)φ(x0)∂µφ(x1)∂µφ(x1) )

=i(Z−1)

d4x1

(

µi∆F(x, x1) )

µi∆F(x1, x0) 微分はx1について行う。(7.13)より

I1=−i(Z1)

d4p

(2π)4p2F(p)∆F(p)eip·(xx0) になる。同様に

I2=−i ζ

d4p

(2π)4F(p)∆F(p)eip·(xx0) したがって(9.10)は

G(p) =∆F(p) +F(p)ΣR(p)∆F(p), ΣR(p) =Σ(p)−(Z1)p2−ζ になる。ここでF(p)の質量はmRである。(9.10)から(9.11)を導いたのと同様にすると

G(p) = 1

p2−m2R−ΣR(p) + (9.15)より

ΣR(p2) =(Z1)p2−ζ− 3g22

[ (

m2−p2 6

) Γ+

1 0

dα flogf ]

(9.17) ただし

Γ=Γ(1−n/2) + 2

3+ logπ , f(α, p2) =m2−α(1−α)p2 である。ここで

ΣR(m2R) = 0, ∂ΣR

∂p2

¯¯¯¯

p2=m2R

= 0

ドキュメント内 量子力学A (ページ 75-90)

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