イムノブロッティングの検出に最も多く利用されている酵素系は、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(
HRP
) です。これはルミノール又はTMB
(3,3',5,5'-
テトラメチルベンジジン)の酸化を触媒し、発光(化学発光)又 は発色(比色法)の形で検出可能なシグナルを生じさせます。化学発光による検出は比色法に比べて何倍も感 度が高いものですが、コストと手間がかかります。比色法による検出は実験台の上で行うことができ、またシグ ナルの発生を直接観察することができます。免疫検出は間接的又は直接的に行うことができます。直接検出法の場合はタンパク質又はタグに対する
HRP
結 合抗体を使用しますが、間接検出法は2
段階で行われます。すなわちタンパク質又はタグに対する非標識の「1
次」抗体と、次に
1
次抗体に対する標識「2
次」抗体を利用します。間接検出法のプロトコールは時間がかかります が、感度が高く、幅広いタンパク質の検出に利用できます。以下のプロトコールはモノクローナル抗ポリヒスチジン抗体の標識バージョンと非標識バージョン(
CAT.
NO.A7058
、CAT.NO. H1029
)からのもので、他の幅広いスペクトルの抗体に対しても成果をあげます。ただ し、抗体に固有のプロトコールに従った場合に、最適な結果が達成されます。転写バッファー
1
(Transfer Buffer 1
)Tris-HCl, pH 10.4 0.3 M
Methanol 20%
転写バッファー
2
(Transfer Buffer 2
)Tris-HCl, pH 10.4 0.025 M
Methanol 20%
転写バッファー
3
(Transfer Buffer 3
)Tris-HCl, pH 10.4 0.02M
Methanol 20%
ε
-amino caproic acid 25 mg/mL
反応用の基質(
2
次抗体の標識と検出系に応じて選択)アルカリホスファターゼ基質:
SIGMA FAST BCIP®/NBT
、BCIP/NBT
溶液ペルオキシダーゼ基質:
AEC
染色キット、メンブレン用TMB
基質液、SIGMA FAST DAB
タブレットなど その他ニトロセルロース(
NC
)膜、孔径0.45
µm
ブロッティングペーパー1
次抗体アルカリホスファターゼ標識またはペルオキシダーゼ標識の
2
次抗体 反応用の基質(2
次抗体の標識と検出系に応じて選択)ブロッキング溶液:
5%
ウシ血清アルブミン(BSA
)(CAT.NO.A9647
)含有TBS
またはPBS
溶液関連製品
CAT.NO.
価格メタノール、
JIS
特級19-2410-5-500ML-J 710
ε
-
アミノカプロン酸A2504-25G 5,600
トリスバッファー塩
T6664-10PAK 8,900
Tween® 20
含有トリス緩衝生理食塩水(pH 8.0) T9039-10PAK 8,900
リン酸緩衝生理食塩水
P3563-10PAK 8,600
ニトロセルロース(
NC
)膜、孔径0.45
µm
(CAT.NO.N8267
)N8267-5EA 19,600
アルカリホスファターゼ基質:SIGMA FAST BCIP/NBT
タブレットB5655-5TAB 6,000
アルカリホスファターゼ基質:BCIP/NBT
溶液B1911-100ML 13,000
ペルオキシダーゼ基質:AEC
染色キットAEC101-1KT 22,700
ペルオキシダーゼ基質:メンブレン用TMB
基質液T0565-100ML 18,200
ペルオキシダーゼ基質:SIGMA FAST DAB
タブレットD4418-5SET 8,700
検 出
SDS-PAGE
10
〜20%
のアクリルアミドゲルを使用してSDS-PAGE
(カセットサイズ約80×80mm
)を行います。ゲルの 濃度は目的タンパク質の分子量に応じて選択します。分析用の場合は、1
ウェルに0.5
〜10
µg
のタンパク質 をアプライします予備実験用の場合は、1
枚のゲルあたり600
〜800
µg
の全細胞もしくは組織ホモジネート をアプライします。分子量マーカーを1
レーンアプライします。(もし、目的バンドが染色されないなどの場合 には1
レーン当たりのタンパク質の量を増やして20
µg/well
などでご検討ください。)追跡色素がゲルの終点から約
1cm
の位置に移動するまで、1
〜2
時間200V
の定電圧で泳動します。ゲルの 調製法は、文献や書籍等に多く記載されています。参考文献:
Disc Electrophoresis and Related Techniques of Polyacrylamide Gel Electrophoresis by H.R. Mauer
(de Gruyter;Berlin, New York, 1971
)タンパク質のブロッティング
陽極(
+
)プレート上に転写用の「サンドウィッチ構造」を以下のように作る。転写用バッファー
1
に浸漬したブロッティングペーパー2
枚 転写用バッファー2
に浸漬したブロッティングペーパー1
枚 脱イオン水であらかじめ湿らせたPVDF
又はニトロセルロース膜1
枚注意:
PVDF
を使用する場合は、あらかじめ100
%メタノールに10
秒間浸漬してください。タンパク質ゲル
転写用バッファー
3
に浸漬したブロッティングペーパー3
枚1.5mA/cm
2を室温で1.5
時間通電して転写。装置から膜を取り出し、免疫検出も進む。
オプション:転写はポンソー
S
溶液中で2
分間染色することで確認できます。その後水で洗浄してからブロッキングします
+ve
-ve
免疫検出
以下の反応および洗浄ステップは、室温でオービタルシェーカーの台の上で行います。
一次抗体は、二次抗体の宿主動物由来の
1%
正常血清※を含むTBS
またはPBS
溶液で希釈することをお勧めし ます。※血清の代わりに
BSA
、脱脂粉乳、ゼラチン、ヘモグロビン、もしくはオブアルブミンのようなタンパク質で代用することもできます。以下はペルオキシダーゼ標識抗ポリヒスチジン抗体での参考プロトコールです。
1
.NC
膜を細長く切断する。これを、転写時にゲルに接していた面を上向きにして、適当な染色バットに置く。
2
.4
℃で一晩、または、室温で2
時間ブロッキングする。ブロッキング剤は、後に 反応させるプローブの種類に合わせて選択する。3
.適当な濃度(製品データシート等に従います)に希釈した一次抗体(3
〜5 mL
)を膜が覆われるように入れる。1
〜3
時間、室温でインキュベート。4
.(抗体の希釈倍率は何種類か用意し、最適な希釈率をご検討ください。)5
.NC
膜を十分量のTBS/Tween®
またはPBS/Tween
で5
分間ずつ4
回洗浄する。6
.NC
膜を、TBS/Tween
またはPBS/Tween
で適当な濃度に希釈したアルカリホ スファターゼまたはペルオキシダーゼ標識二次抗体で1
時間インキュベートす る。7
.NC
膜をステップ4
の方法で洗浄し、TBS
中で5
分間ずつ3
回リンスする。8
.基質を調製する。アルカリホスファターゼの場合:
添付の製品データシートに従って、
SIGMA FAST BCIP®/NBT
基質タブレットを調製 します(または液体BCIP/NBT
基質を使用します)。ペルオキシダーゼの場合:
キットの製品データシートに従って
AEC
またはDAB
基質を調製します(または液体 のTMB
をそのまま使用します)。1
.NC
膜を基質溶液中で10
〜30
分間、発色するまでインキュベートする。2
.蒸留水を何回か交換しながらNC
膜を洗浄し、反応を停止させる。3
.NC
膜を風乾し、プラスチック容器に入れて暗所で保存する。4
.注記:ペルオキシダーゼ化学発光基質(ルミノール+増感剤など)を使用する 場合、一般的に二次抗体の反応溶液は、通常の色素性基質より5
〜10
倍希釈 する。1. Burnette, W.N., Anal. Biochem., 112, 195-203 (1981)
参考文献2. Hames, B.D., and Richwood, D .(eds.), Gel Electrophoresis of Proteins: A Practical Approach, IRL Press Ltd., Oxford (1981)
3. Gershoni, J.M., and Palade, G. E., Anal. Biochem., 131, 1-15 (1983)
検 出
免疫組織化学
免疫組織化学的染色法は、組織中の特定の抗原を検出するための有益なツールです。
HRP
又はアルカリホスファターゼで標識した2
次抗体により、抗体反応を酵素的に検出します。この手順は以下のステップから構成されます。
パラフィン除去/再水和
抗原回復(シグナルが弱い場合のオプション)
ペルオキシダーゼの不活化(
HRP
検出法を利用した場合)1
次抗体反応2
次抗体(又はExtravidin®
)反応 発色対比染色 試薬及び機器
ホルマリン固定、パラフィン包埋組織切片
10mM
リン酸緩衝生理食塩水pH7.4
(PBS
)CAT.NO. P3813
又はP4417
タブレット ウシ血清アルブミン(BSA
)CAT.NO. A9647
希釈液
1
%BSA
含有PBS
(CAT.NO. P3688
)キシレン
CAT.NO. 534056
無水エタノール
CAT.NO. 09-0780
0.1
%トリプシン含有PBS
、4mM CaCl
2、200mM
トリス、pH7.7
又は0.1
%プロテアーゼ含有PBS CAT.NO. T7409
CAT.NO. T7168
タブレットCAT.NO. P5380
マイクロウェーブ抗原賦活溶液
10mM
クエン酸ナトリウムpH 6.0
(CAT.NO. S4641)
+1mM EDTA, pH 8.0
(CAT.NO. E9884
)2
次抗体酵素基質 ペルオキシダーゼ系の場合:
AEC
染色キット(CAT.NO. AEC101
)、DAB
(CAT.NO. D4418
)。アルカリホスファターゼ系の場合:ファストレッ ドTR
/ナフトールAS-MX
(CAT.NO. F4648
)ヘマトキシリン溶液、マイヤー法
CAT.NO. MHS1
コプリン染色ジャー
CAT.NO. S5641
パラフィン除去/再水和
1
.スライドを56
〜60
℃のオーブン内に15
分間置く。注意:オーブンの温度は
60
℃を超えないようにします。2
.キシレン槽に写し、5
分間ずつ2
回キシレンを交換する。3
.余分な液を振り落とし、スライドを3
分間ずつ2
回、新鮮な無水エタノール中で 再水和する。4
.余分な液を振り落とし、スライドを新鮮な90
%エタノール中に3
分間静置する。5
.余分な液を振り落とし、スライドを新鮮な80
%エタノール中に3
分間静置する。6
.スライドを弱い流水で30
秒間リンスする。注意:直接強い水をあてると、洗い落としたり固定が緩くなることがあります。
7
.PBS
槽に静置し、更に再水和させる(室温で30
分間)。抗原回復(シグナルが弱い場合のオプション)
固定組織中では溶液中に比べタンパク質エピトープが近づきにくいため、酵素分解による抗原の回復ステップが 必要なことがあります。
注意:このステップは染色が弱い、又は染色が認められないとき、又は
1
次抗体の露出が必要な抗原について のみ行います。抗体と抗原に応じて、数種の回復法があります。酵素法
マイクロ波回復法
1
.0.1
%トリプシン含有PBS
又は0.1
%プロテアーゼ含有PBS
において37
℃で2
〜30
分間処理する。注意:インキュベーションの時間を延長することで、特異的 な染色が増強されることもあります。2
.10
分間PBS
でリンスする。1
.スライドを脱イオン水で洗浄し、抗原回復液の入ったマイクロウェーブ耐性プラ スチック製の染色瓶に置く。注意:スライドが完全に溶液で覆われるようにして ください。2
.マイクロ波を高出力(約700W
)で5
分間照射する。注意:スライドがまだ溶液 で覆われているかを確認し、足りない場合は新しい溶液を加えてからマイクロ 波照射を繰り返します。3
.この操作を2
〜3
回繰り返して行う。4
.室温に20
分以上置きゆっくりと冷却してから次のステップへ進む。ペルオキシダーゼの不活化(
HRP
検出法を利用した場合)注意:このステップは、ペルオキシダーゼ標識
2
次抗体又はExtrAvidin®-
ペルオキシダーゼを使用する場合に のみ行います。1
.スライドを水平な場所に置く。注意:このときスライドが互いに触れ合ったり、途中で乾燥しないようにしてください。