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の場合とは異なり、契約期間中の譲渡ではあり ません。いったん譲渡した原盤については、「所 有権」についてはマスターテープという物体が存 在しているかぎり、また、「著作隣接権」について は、その権利の存続期間中レコード会社が保有 することになります(まれに、契約期間中にかぎっ て譲渡というケースもあるが、この場合、契約が 終了すれば、譲渡した権利が原盤制作者に復帰 するので、実質的な供給契約にあたる)。たとえ ば、あるアーティストの実演による原盤について レコード会社と2年契約をした場合、それが譲渡 契約であれは、2年の間に譲渡した原盤に関す る所有権と著作隣接権は、2年後に契約が終了 したとしても、引き続きレコード会社に帰属するこ とになるのです。この点をよく理解してください。では、譲渡契約における「契約終了」の意味 は何かといえば、契約が終了したのちにそのア ーティストの実演による原盤を制作しても、これ をそのレコード会社に譲渡する義務がないとい うことです。
原盤制作者は、原盤をレコード会社に譲渡す ると、その所有権と著作隣接権を失いますが、
代わりに原盤印税の分配請求権を、最短でもそ の原盤の著作隣接権存続期間中取得します(著 作隣接権が切れたのちも、その原盤を利用して いるかぎり原盤印税を支払うと定めている契約 もある)。
譲渡契約の場合、レコード会社に譲渡する著 作隣接権にはレコード製作者の他に実演家に 関する著作隣接権も含まれるので、原盤制作者 は前もってアーティストから実演家に関する著作 隣接権の譲渡を受けておく必要があります。こ れは、原盤制作者がアーティストとレコーディン グ契約をするときに取り決めます。
報酬や補償金の請求権については、レコード 会社に譲渡する場合、契約書上は原盤制作者 の他に実演家の分まで譲渡するケースが多い 方法などです。
「原盤利用許諾契約」は、制作済みの原盤の利 用について、原盤制作者とレコード会社が取り 交わす契約です。この契約では、原盤の利用の 範囲、独占性、原盤印税などを定めます。
原盤提供契約について
原盤提供契約は、「譲渡契約」といわれている 契約形態と、「供給契約」といわれている契約形 態に分けることができます。これら2つの契約形 態の違いについては以前この講座で簡単に触 れましたが、今回詳しく説明します。
1. 譲渡契約と供給契約
譲渡契約と供給契約の違いを一言で表現す ると、「原盤に関する所有権と著作隣接権(報 酬・補償金請求権を含むケースも多い)をレコー ド会社に譲渡するか否か」ということで、譲渡す る契約を「譲渡契約」、譲渡しない契約を「供給 契約」といっています(供給契約の場合、これら 権利は原盤制作者に留保されることになる)。
この違いは契約書の条文によって明らかにな るものであり、当然ながら契約書のタイトルだけ で判別することはできません。たとえ契約書のタ イトルは「原盤供給契約書」となっていても、そ の契約書に「原盤制作者は原盤に関する所有 権と著作隣接権をレコード会社に譲渡する」旨 の条文があれば、その契約は譲渡契約にあたり ます。
なお、原盤に関する著作隣接権を譲渡するこ とが可能なのは、著作権法61条1項で「著作権 は、その全部又は一部を譲渡することができる。」 と規定し、これを103条で著作隣接権の譲渡に ついて準用していることからも明らかです。
2. 譲渡契約の特徴
原盤契約において「譲渡」とは、著作権契約
のですが、実際は、実演家に関する報酬・補償 金は日本芸能実演家団体協議会・実演家著作 隣接権センターが権利行使し、実演家に配分し ています。
なお、原盤制作者がレコード製作者に関する 報酬・補償金請求権をレコード会社に譲渡した 場合でも、報酬等の受領権を放棄していないか ぎり、報酬等の配分を受ける権利は残ります。
また、譲渡契約の場合、著作権法上は著作 隣接権を構成する支分権の一部を譲渡すること も可能ですが、業界慣習としては著作隣接権の 全部を譲渡するのが原則なので、レコード会社 がその原盤に関するすべての利用形態について 独占的に権利を持つことになります。したがって、
たとえば音楽配信の権利だけを原盤制作者に 残すような契約はできません。
3. 供給契約の特徴
供給契約では、原盤の所有権や著作隣接権 は原盤制作者に留保されます。著作隣接権は 原盤制作者に帰属しているといっても、原盤の
独占的な利用権をレコード会社に渡しているの で、同じ原盤を他のレコード会社に利用許諾す ることはできません。原盤制作者が自分で利用 する場合でも、供給先のレコード会社の承認が 必要になります。
契約が終了するとレコード会社は原盤を利用 する権利を失い、契約で定められた一定のセル オフ期間(在庫品の販売が可能な期間。普通 は6ヶ月程度)を過ぎると、在庫品は廃棄しなけ ればなりません。
原盤制作者は、レコード会社との契約が終了 後、それらの原盤の利用について別のレコード 会社と契約することができます。
供給契約は利用許諾契約の一種と見ること もできるので、たとえばCDなどパッケージ化の 権利のみレコード会社に付与し、音楽配信の権 利などを契約から除外することは契約技術として は可能ですが、これからレコード会社と一緒にそ のアーティストを売っていこうという趣旨の契約 である以上、原盤に関するすべての利用権をレ コード会社に渡すのが筋でしょう。
アー ティ スト の権 利と お 金の 流れ を 知ろ う
! 今す ぐわ か る著 作権
講座 レコード会社
レコード会社
レコード会社または原盤制作者 注2)
レコード会社または原盤制作者または実演家注3)
レコード会社 レコード会社の承認が必要
原盤制作者 原盤制作者
原盤制作者
原盤制作者または実演家注4)
原盤制作者または実演家注1)
権利の内容 譲渡契約の場合 供給契約の場合
所有権
レコード製作者の著作隣接権 実演家の著作隣接権 レコード製作者の報酬・
補償金請求権
実演家の報酬・補償金請求権 第三者への許諾権 原盤制作者による自己利用
レコード会社
「譲渡契約」と「供給契約」との比較(権利の帰属先)
注1・注4:供給契約の場合、レコーディング契約書に明記がないときは、実演家に帰属することになる。
注2:譲渡契約書に明記のない場合は原盤制作者に帰属することになる。
注3:譲渡契約書に明記のない場合は原盤制作者または実演家に帰属することになるが、レコーディング契約書にも明記がなけ れば、実演家に帰属することになる。
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レコード会社が権利行使を行います。権利譲渡の場合は、原盤提供契約における 譲渡契約と同様、譲渡した側は原盤印税の分 配請求権だけが残ることになります。したがって、
権利譲渡をともなう原盤共同制作契約は、原 盤譲渡契約の変型判ということができると思い ます。
原盤利用許諾契約について
すでに制作済みの原盤について原盤制作者 がレコード会社と結ぶ契約には、「利用許諾契 約」に類するものと「譲渡契約」に類するものが あります。
1. 利用許諾契約の意味
著作物、レコード、放送番組などの利用を希 望する者に対して、それらの知的財産を利用す ることにともなって働く著作権、著作隣接権など の権利を有する者が、当該利用を許諾する(ラ イセンスする)契約のことを利用許諾契約(また は「ライセンス契約」)といいます。利用許諾契約 では、権利者を「ライセンサー」、利用者を「ライ センシー」といういい方をすることがあります。
著作権と著作隣接権の利用許諾について規 定している著作権法の条文は63条と103条(著 作隣接権への準用規定)です。このうちもっと も基本的な条文を以下に記します。
原盤共同制作契約について
原盤の共同制作(共同原盤)に関する契約は、
ひとつの原盤を複数の者が共同して制作すると きに取り交わすもので、共同制作者にレコード 会社が含まれる場合と含まれない場合で内容が 異なりますが、ここではレコード会社が含まれる 場合、つまりレコード会社との共同制作につい て説明します。なお、レコード会社を含まない場 合は、まず原盤制作者同士が共同制作に関す る契約を締結し、その後、制作者のうち代表者 がレコード会社と原盤提供契約または原盤利用 許諾契約を締結することになります。
レコード会社を含めた共同原盤契約の場合 は、共同制作に関する契約と制作された原盤の 利用に関する契約がひとつの契約書にまとめら れます。
レコード会社との原盤共同制作契約のポイン トは次の通りです。
①原盤制作費の負担割合
②原盤の所有権と著作隣接権の持ち分割合
(原盤制作費の負担割合とイコールにするの が原則)
③アーティスト印税の額と負担割合、および その印税の支払い当事者
④レコード会社が契約相手の原盤制作者に 支払う原盤印税の料率と支払方法
⑤権利の帰属
レコード会社との原盤共同制作契約における 権利(原盤の所有権と著作隣接権)の帰属につ いては、契約当事者がそれぞれの権利持ち分を そのまま保有する場合(権利共有)とレコード会 社でないほうの原盤制作者の権利持ち分をレコ ード会社に譲渡する場合(権利譲渡)があります
(レコード会社がその権利持ち分を相手の原盤 制作者に譲渡することはほとんど考えられない)。
権利共有の場合は、両当事者を代表して権 利行使を行う側を定めますが、ほとんどの場合
第63条 著作権者は、他人に対し、その著 作物の利用を許諾することができる。
2 前項の許諾を得た者は、その許諾に係 る利用方法及び条件の範囲内において、
その許諾に係る著作物を利用することが できる。
3 第1項の許諾に係る著作物を利用する権 利は、著作権者の承諾を得ない限り、譲 渡することができない。
※原盤の利用許諾については、上記条文の「著作権者」を「著 作隣接権者」、「著作物」を「レコード」と読み替えればよい。