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強みによる 価値創造

1   アレセンサの意義と広がり

2014 2015

希少疾病用 医薬品指定

ロシュへ導出

申請

海外第Ⅲ相 臨床試験開始 承認

FDAにてBreakthrough  Therapy指定

発売

米国 申請 欧州 申請

米国 承認 2013

2012

▼国内

▲海外

強みがもたらす成果の実例

〜米国FDAのBreakthrough Therapy指定制度〜

Breakthrough Therapy 指定の意義

〜創薬力の証明〜

Breakthrough  Therapy(ブレークスルーセラピー:

画期的治療薬)指定*2(以下、BT 指定)とは、重篤また は致命的な疾患や症状を治療する薬の開発および審 査を促進することを目的に、2012年 7月に米国食品 医薬品局(FDA)にて導入された制度です。

BT 指定されることは、既存治療を上回りUMN を高い レベルで満たしうる治療薬であることと、そうした画期 的な治療薬を創製する力の双方が、FDA により評価さ れたものと考えられます。

近 年 、中 外 製 薬 で は 、「 ア レ セ ン サ 」「 A C E 9 1 0

(emicizumab)」「アクテムラ(全身性強皮症)」と、立て 続けに BT 指定を取得しました。

ファーストインクラス、ベストインクラスとなりうる新薬 の創出を第一義とする中外製薬にとって、これは極め て優良な成果です。

これは、当社独自の抗体改変技術とUMN の融合点を 模索した取り組みや、ロシュグループが誇る世界最先 端の創薬基盤による迅速な創薬が結実したものと言え ます。

*2  BT 指定には、1つ以上の臨床的に重要な評価項目において、

既存治療を上回る改善を示唆する予備的な臨床上のエビデ ンスが必要とされている

国内第Ⅲ相 臨床試験開始

Breakthrough Therapyだからできること

〜1日でも早く患者さんのもとへ〜

このように UMN を高いレベルで満たしうる BT 指定品 目は、開発の早期段階から FDA の全面的な協力が得 られ、Fast Track 指定*3など、開発や審査を促進する FDA のほかの制度の利点も享受でき、上市までの期 間短縮が期待されます。

革新的な医薬品の迅速な上市が可能になることで、医 薬品のライフサイクル全体での価値も向上します。

加えて、その医薬品の革新性が公的に評価されること で、医療従事者からの期待が高まるとともに、発売後 の浸透についても迅速化が図られやすいといわれてい ます。

「アレセンサ」と「ACE910」は、第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験の結果を もって、その革新性が高く評価されました。

最初の臨床試験から既存治療を上回る有効性と安全性 を患者さんで確認できたことが早期の BT 指定につなが りました。

また、BT 指定によるメリットを最大限に活かすには、指定 された後の開発を迅速に行う体制も重要となります。

中外製薬は、ロシュ・グループの持つグローバル開発体制 や薬事知識、FDAとの豊富な対応経験を通じて開発期 間の短縮を図り、自社で創製した革新的な医薬品を少し でも早く患者さんに届けることを目指しています。

ターを誘導せず、その影響を受けないと考えたのです。

 第Ⅷa因子の機能を再現するためには、第Ⅸa因子と第Ⅹ因子の位置・

角度を精緻に合わせる必要がありました。中外製薬では、数万種類のバ イスペシフィック抗体を作製し、その中からプロトタイプの抗体を選抜し たうえで、数千の改変体をデザインして改良を重ね、さらにバイスペシ フィック抗体製造のための抗体工学技術を開発して、「ACE910」(国際一 般名:emicizumab)の創製に至りました。emicizumabは、非臨床試験 にて、第Ⅷ因子に対するインヒビターの存在にかかわらず血友病A血漿の 凝固能を改善し、また、血友病A動物モデルにて止血活性を示しました。

 2014年12月の米国血液学会で発表された国内第Ⅰ相臨床試験の結果 や、2015年6月の国際血栓止血学会で発表された国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験 の結果では、第Ⅷ因子に対するインヒビターの有無にかかわらず、週1回 の皮下投与による出血抑制効果と良好な忍容性が認められています。

 これら国内第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験に基づき、2015年9月にFDAより「12 歳以上で血液凝固第Ⅷ因子のインヒビターを保有する血友病A患者さ んに対する予防投与療法」としてBreakthrough  Therapyに指定され ました。

2   「ACE910」の意義と進捗

血友病 A への新しいアプローチ 

 血友病Aは、血液凝固第Ⅷ因子の欠乏または機能異常に起因する出 血性疾患です。近年、その出血傾向の抑制を目的とする第Ⅷ因子製剤の 定期補充療法が浸透しつつあり、患者さんやそのご家族の生活の質の 向上に寄与しています。しかしながら、第Ⅷ因子は皮下からの吸収性が 低く、その血中半減期は半日程度と短いため、定期補充療法の実施にあ たっては週2〜3回の静脈内投与が必要です。特に、家庭で投与する場合 は患者さんやご家族の大きな負担となっています。さらに、第Ⅷ因子製 剤を用いた治療に伴い、インヒビターと呼ばれる第Ⅷ因子中和抗体が出 現することがあり、この場合、第Ⅷ因子製剤は効かなくなります。

 第Ⅷ因子は活性化され第Ⅷa因子に変換されると、第Ⅸa因子と第Ⅹ因 子を架橋し、第Ⅸa因子による第Ⅹ因子の活性化を促進します。本邦にて いち早く抗体医薬に取り組んできた中外製薬では、この第Ⅷa因子の機 能を、第Ⅸa因子および第Ⅹ因子に対する非対称型のバイスペシフィック 抗体で代替するアプローチを発案しました。抗体は一般に血中半減期が 長く皮下投与も可能であるため、投与に伴う課題を克服でき、また第Ⅷ 因子とは全く分子構造が異なることから、第Ⅷ因子に対するインヒビ 強みがもたらす成果の実例

〜米国 FDA の Breakthrough Therapy 指定制度〜

第Ⅷ因子

(活性型)

第Ⅹ因子 活性型

第Ⅸ因子

活性型 第Ⅹ因子

リン脂質膜 リン脂質膜

バイスペシフィック抗体

第Ⅹ因子 活性型

第Ⅸ因子

活性型 第Ⅹ因子

現在の治療の作用機序 emicizumabの作用機序

活性 第Ⅹ因

活性 第Ⅹ因

*3  完治が難しい疾患に対して、高い治療効果が期待される新薬 の開発促進と審査の迅速化により、早期実用化を促す制度

価値創造のこれから

〜複数同時開発に向けた投資〜

日本 政 府も、画 期 的 新 薬 の 開 発を後 押ししており、

2015年 4月に先駆け審査指定制度の試験的運用が開 始されたほか、研究開発予算を一元管理する日本医療 研究開発機構が発足。革新的プロジェクトであれば、高 い成功確率で患者さんに画期的な医薬品を届けること ができます。

一方、米国 FDA や日本当局よりひとたび画期的な治療 薬としての指定を受けても、UMNを満たす他の治療薬 が先に承認されれば、指定を取り消される可能性もあり ます。

各国における指定制度の活用を有力な選択肢としつつ、

戦略的かつ柔軟な開発体制が求められるのです。

中外製薬は、独自の抗体改変技術を適用したプロジェ クトを連続創出すべくCPR に優先的に投資するととも に、抗体や低分子では解決できない UMN を充足しう る中分子創薬技術を確立するなど、より革新性の高い 研究テーマに注力していきます。

開発においては、2015年までに刷新・確立したグロー バル開発体制のもと、自社創製品の early PoC 取得の 迅速化に注力するとともに、製薬機能においても開発 基盤の充実に向けた投資を行っており、一層のグロー バルでの価値増大を図ります。

 現在、中外製薬とロシュはインヒビター保有患者さんを対象とした第

Ⅲ相国際共同治験を進めており、2017年に申請予定です。また、インヒ ビター非保有患者さんを対象とした第Ⅲ相国際共同治験と小児の患者 さんを対象とした開発試験を2016年に開始する予定です。

「バイスペシフィック抗体」技術の活用について

 通常の抗体は1種類の標的分子にのみ結合するのに対し、バイ スペシフィック抗体は2種類の標的分子と同時に結合することが できます。一方、その構造が複雑なため、高い生産性と純度で製 造することが非常に困難でした。中外製薬では、「ART-Ig」と名づ けた独自の技術を確立することにより、その課題を克服しました。

また、同抗体は2剤の効果を1剤で発揮するのみならず、腫瘍細胞 と免疫細胞を架橋することによる抗腫瘍効果の増強や、同一細胞 上の異なる細胞の架橋による細胞内シグ

ナルの誘導、2つの異なる分子(例えば酵 素と基質)を接近させることで薬効を引き 起こすなど、通常の抗体では達成できない 新たな機能の発揮が期待されています。

病因 物質A

病因 物質B

2014 2015

第Ⅰ相 臨床試験開始

第Ⅰ/Ⅱ相 臨床試験開始

米国  希少疾病用 医薬品指定

▼国内

▲海外

ロシュへ導出 欧州 

希少疾病用医薬品指定

FDAにてBreakthrough  Therapy指定 第Ⅲ相国際共同治験開始

(インヒビター保有患者対象)

2013 2012

0 20 40 60 80 100 120

APTT (活性化部分トロンボプラスチン時間)

血友病A患者血漿

(インヒビター非保有)

血友病A患者血漿

(インヒビター保有)

ACE910

 [nM] 第ⅤⅢ因子製剤

 [U/dL]

0 1 3 10 30 100 300 1,000 1 10 100 血友病 A 血漿における emicizumab の凝固促進活性の評価

出典:Muto A, et al. J Thromb Haemost. 2014; 12: 206.