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モバイル環境における課題と本研究の成果

第 6 章 本研究の総合評価と今後の展望

6.2 モバイル環境における課題と本研究の成果

本論文の3章,4章,5章で提案した方式の評価と成果について,次に述べる.

(1) 画像変換による携帯電話機用サーバ・レンダリングWEBブラウザ方式

リソースの少ない端末でのフルブラウザ実装として,サーバ上のWEBブラウザ で WEBアクセス及びレンダリング処理を行い,WEBブラウザの表示イメージを

画像データに変換し,クライアントで画像の表示を行うサーバ・レンダリングによ るWEBブラウジング方式の提案と実装及び評価を行った.

クライアント処理の単純化とリソース消費の低減,小さい画面,及び十字キーに よる操作・閲覧,通信データ量の削減,フォントの制約の課題に対する,新たな方 式の提案,及び実装,評価による効果を検証した.

クライアント処理の単純化では,サーバ・クライアント方式とし,サーバ側の WEBブラウザでレンダリング処理を行い画像化し,クライアントで画像の表示を のみ行うことで,クライアントでのレンダリング処理を無くし,実装の単純化が可 能となった.また,画像を分割することにより,データ転送処理の効率化と 消費リソースの低減が可能となった.

小さい画面,及び十字キーによる操作・閲覧では,拡大縮小による画像ビューア としての閲覧方式により,画面全体の把握,及びページの一部の拡大閲覧が容易と なった.また,ページ全体を75%に縮小することにより,画面内での表示情報量が 増え,閲覧性が向上した.操作閲覧では,操作モードと閲覧モードを分離し,それ ぞれの操作に特化することでより閲覧性,選択性が向上した.

通信データ量の削減では,ページ全体を画像化し,75%に縮小60%に圧縮するこ とにより,特に画像が多いページでは,通信データ量が半分近くに削減する効果が 得られた.

フォントの制約では,サーバ側のフォントを使用しレンダリング処理を行うこと で,端末のフォントに依存しない多言語の表示が可能となった.

本方式ではサーバのブラウザを使用し,WEBページを画像に変換を行う方式,

画像を分割しクライアントに効率よく転送する方式,ブラウザからリンク情報を抽 出する方式,クライアントで分割した画像をリソース消費を抑えて表示する方式に ついて述べた.

(2) 携帯電話機のテレビ電話を利用した動画配信によるサーバ変換型 WEB ブラウジ ング方式

クライアントに専用アプリケーションが不要なフルブラウザ実装として,サーバ 上でWEBページを動画に変換し,WEBブラウジングに携帯電話機にあらかじめ

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搭載されているテレビ電話の機能を用いる,サーバ変換型WEBブラウジング方式 の提案と実装及び評価を行った.

端末に依存しないWEBブラウザ実装では,WEBページを動画に変化するサー バ変換型ブラウザ方式とし,携帯電話機の3G端末の半数以上に標準搭載されてい るテレビ電話を使用した,専用クライアントを必要としないフルブラウザを実現 し,フルブラウザを持たない多くの機種で利用できることを確認した.また,テン キーによる画面スクロール,及びリンク選択では,リンクの該当番号を入力し選択 することにより,テンキーに限定された入力インタフェースによるWEBブラウジ ングが可能となった.

本方式では,サーバでWEBページを動画に変換して配信する方式,テレビ電話 によるフルブラウザの操作,及びリンク選択の方式について述べた.

(3) HTMLメールを利用したモバイル環境におけるWEBブラウジング方式

通信状況に左右されないバックグラウンドによるWEBアクセス,ユーザの状況 変化による中断を想定した断続的な利用,オフラインによる閲覧操作を考慮した,

HTMLメールを利用したSMTP通信によるサーバ変換型WEBブラウジング方式 の提案と実装及び評価を検証した.モバイルでの通信,利用環境を考慮した WEB ブラウジングの課題に対する,新たな方式の提案,及び実装,評価による効果を検 証した.

WEB ページを HTML メールに変換するサーバ変換型ブラウザ方式とし,サー バとクライアント間の通信にメールを用いることにより,WEB アクセス中に閲覧 がブロックされずクライアントの通信状態に影響されない,非同期通信を実現し た.またWEBページがメールとしてクライアントに保存されるため,閲覧の中断,

再開やオフランでの閲覧が可能となった.クライアントは既存のHTMLメールク ライアントが利用でき,特別な専用アプリケーションを必要とせず,既存の多くの 端末で利用可能となった.

本方式では,サーバでWEBページをHTMLメールに変換する方式,携帯電話 での制限のあるメール環境での変換方式,閲覧性を向上するため,メールとブラウ ザを併用た閲覧方式について述べた.

6.2.1 各ブラウザ方式の比較

携帯電話機向けの WEB ブラウザの方 式 と し て ,クライアント方式,サーバ・ク ライアント方式,サーバ変換方式における,代表的な実装による画面例を図 6.1に,比 較を表 6-1に示す.

図 6.1 各方式の実行画面 表 6-1 各方式の機能比較

提案方式 NetFront i-mode

ブラウザ jig pc2m 画像変換 (3章)

動画変換

(4章)

メール変換

(5章)

処理方式 クライアン ト型

クライアン ト型

サーバクラ イアント型

サーバ変換

サーバクラ イアント型

サーバ変換

サーバ変換 専用クライ

アント 必要 不要 必要 不要 必要 不要 不要

クライアン

ト実装 Native imode

ブラウザ Java imode

ブラウザ Java テレビ電話 imode メール 閲覧方式 PC

携帯型 携帯型 PC

携帯型 携帯型 PC PC 携帯型

PCサイト 不可 不可

多言語表示 不可 不可 不可 不可 不可

End to

End SSL 不可 不可 不可 不可 不可

リンク選択 スクロール スクロール ポインタ スクロール モード切替 モード切替 スクロール 回線方式 パケット パケット パケット パケット パケット パケット 回線交換 通信方式 http http http http http 3G-324M SMTP

非同期通信 不可 不可 不可 不可 不可 不可

圧縮 無し 無し 有り 有り 有り 有り 無し

サーバ 不要 不要 必要 必要 必要 必要 必要

NTT

NetFront jig pc2m 画像変換(3章) テレビ電話(4章)

NetFront jig pc2m 画像変換(3章) テレビ電話(4章)

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の記述として,3章の「画像変換による携帯電話機用サーバ・レンダリングWEBブラ ウザ方式」を「画像変換方式(3 章)」,「携帯電話機のテレビ電話を利用した動画配信 によるサーバ変換型WEB ブラウジング方式」を「動画変換方式(4章)」,「HTMLメ ールを利用したモバイル環境におけるWEBブラウジング方式」を「メール変換方式(5 章)」とする.

i-modeブラウザは,ほとんどの端末に搭載されているため,多くの機種で利用可能

であるがPC WEBページが閲覧できない.pc2mにより変換を行うことで,i-modeブ

ラウザでPC WEBページを閲覧することが可能となる.しかし,表示領域が画面幅に

限定されたてスクロールしかできないため,WEBページのレイアウトが崩れてしまう.

NetFrontは最も高機能であるが,プログラムサイズやリソースの消費が大きく,搭

載できる端末が一部限定される,また,コンテンツの圧縮ができないことから,通信デ ータ量が多く,データ処理量も多くなるため,処理能力の小さい携帯電話機では,動作 が遅くなる.jig や画像変換方式では,データ圧縮による高速な動作ができ,消費リソ ースも少なく,多くの端末で利用可能であるが,専用クライアントが必要となる.動画 変換方式や,メール変換方式では,専用クライアントが不要で多くの端末から利用でき るが,動画変換方式ではテレビ電話が必要なこと,テレビ電話の操作制限や通信の遅延 があることから,快適な操作を行うことが難しい.メール変換方式では,状況を考慮し た通信が可能であるが,携帯電話のメールの制限により閲覧できるWEBページが限定 される.各方式の特徴と問題点について以下に述べる.

NetFrontは,最もPCブラウザに近い高い機能を有し,End to EndのSSLも可能 である.また,特別なサーバを必要としない.しかし,プログラムサイズやリソースの 消費が大きく,利用できる端末がごく一部に限定される.また,データ圧縮ができない ため,通信データサイズが大きく,通信時間が長くかかり,通信料金も多くかかる.

i-modeブラウザは,ほとんどの機種で利用可能であり,End to EndのSSLも可能 である.また,特別なサーバを必要としない.しかし,通信データサイズの上限が100KB と小さく,サポートされるHTMLタグが一部に限られるため,PC WEBページの多く を閲覧することができない.また,ページスクロールが縦方向に限定される.

jigブラウザは,リソース消費が少なく,iアプリ(Java)で実装されているため,

多くの端末に後からインストールをして利用することができる.また,データ圧縮が可