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6-1 分析結果のまとめ

5-2では、3411 条例導入の効果として市街化調整区域における宅地供給の増加を受け て市街化区域において地価が下落し、市街化調整区域では地価が上昇していることが示さ れた。さらに、条例廃止の場合にはその逆に、条例廃止により市街化区域の地価は上昇し、

市街化調整区域の地価は下落することが示された。このことは、3411 条例により土地利用 の効率性の向上が起こっていることを示すものである。

一方で、5-3では、3411 条例による開発許可面積と普通建設事業費の関係を分析した。

3411 条例による開発許可面積が大きいほど、普通建設事業費が大きいという関係が示され た。公共投資による道路整備等による開発が誘発されたのか、開発が行われたから公共投 資が必要となったかの因果関係があるとまでは断定できないが、3411 条例により普通建設 事業費増加の効果をもたらしている可能性があるといえる。そして、この場合において土 地購入後に公共施設整備がなされ、受益に見合った負担がなされなければ、フリーライド の問題が生じる。

5-4では、3411 条例による開発許可面積の増加が空き家率の増加をもたらすことを示 した。3411 条例の自己用住宅の開発許可申請者の多くは、市内の居住者でありうち市街化 区域の在住者が多くを占めている。また、市外からの転入についても頭打ちの状況である ことから、住宅の相当数が空き家化が進んでいると考えられる。うち一定割合が管理不全 空き家となるとすれば、外部不経済をもたらしている可能性がある。

5-5では、3411 条例において、許可面積の拡大において、連たん緩和、文言指定方式・

エリア指定方式・文言指定方式とエリア指定方式の併用型、共同住宅用途の開発が可能と いう基準値について、3411 条例開発許可面積の増加と統計上有意であったが、これらは、

一律の規制の緩和が面積の拡大をもたらしている結果といえよう。

6-2 政策提言

3411 条例は、地価下落を通じて、都市の土地利用の効率性を向上させる効果を有する。

しかしながら、公共財や負の外部性等といった市場の失敗がある場合、規制の緩和による 土地利用効率性向上の効果が減殺又は規制緩和前より減少してしまうこともある。本章で は、市場の失敗発生防止、郊外のまちづくりの観点から政策提言を行うものとする。なお、

政策パッケージとしては、①税制、プライシングの手法によるもの、②規制的手法による もの、③計画的手法によるもの3つに分類し、5 の「上位計画との整合性の確保と広域的な 都市計画の推進」を行いつつ、下記(表 29)1~4 の政策を組み合わせるべきと考える。

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表 29 政策提言項目一覧

項目名 目的・内容 メリット・デメリット

1 都市計画税の徴 収等

受益・損失に見合った課 税・負担金等の徴収

(メリット)市場原理を用いた開発 需要の誘導により過剰な郊外化を 抑制

(デメリット)「受益」の具体的金 額算出の困難性

2 条例規制値等の 見直し

エリアの範囲を見直すと ともに、地域特性に見合 った規制値を設定する

(メリット)地域ごとに規制を変え て外部性を内部化できる。

(デメリット)条例改正を伴う場合 の合意困難

3 性能規定化の推 進

個々の開発案件ごとに発 生する外部不経済や必要 とすべき公共施設整備の 基準を示して許可

(メリット)個々の開発案件に応じ た市場の失敗の回避が可能

(デメリット)案件ごとの具体的な 基準の設定と許可後の許可条件履 行の担保(開発行為完了後の検査済 証の交付により開発許可の有する 効果が消滅)

4 市街化調整区域 地区計画の導入

エリアごとに地区計画を 定めて、地域特性に見合 った規制値を設定すると もに郊外における住民の 自主性を重視したまちづ くりの実施

(メリット)上位計画と整合性をも たせつつ地域住民の自主性を尊重 した郊外部のまちづくり

(デメリット)住民合意の困難性

5 上位計画との整 合性の確保と広域 的な都市計画の推 進

上位計画との整合性確保 ある一定の都市圏単位で 開発規制について設定す る

(メリット)上位計画との整合性確 保、過剰な都市間競争の緩和

(デメリット)自治体間の合意

6-2-1税制、プライシングによる手法

6-2-1-1市街化調整区域における都市計画税の徴収

公共財におけるフリーライド発生の問題、あるいは負の外部性発生に対する問題について は、その費用を地代に含ませることにより過剰な郊外化を防止することができる。その手 段としては、受益に応じた課税と負の外部性の社会的費用を負担させる課税(ピグー税)

である。

都市計画税は、土地又は家屋の所有者に課される市町村税で都市計画事業等のための費用 に充てられる目的税であり、受益と負担の関係を納税者に意識させることに資するもので ある。理論的にも社会的費用の負担がない場合、都市規模は過大に拡大してしまう。しか

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し、現実には、個々の土地の明確な受益の額の算出は難しい。そこで、次善の策としては、

道路・下水道等について市街化区域並みの公共施設が整備された場合には、市街化区域の 税率により課税することを提案する。

また、都市計画税の税率の上限は、0.3%である(制限税率)。しかし、都市施設の整備需 要は、都市によって様々であり、この制限を撤廃すべきと考える。

6-2-2 規制的手法

6-2-2-1条例規制値の見直し

連たん要件の緩和等の画一的な規制の緩和や区域設定の在り方が、面積拡大をもらしてい ることから、規制値や区域設定について、開発圧力の差や地域の開発ニーズの多様性等地 域の特性にあった規制の在り方を導入することを提案する。また、相当程度の公共施設整 備がなされていない区域が、3411 条例の対象区域に含まれていることもあり、きめ細やか な区域設定についても提案する。そもそも、3411 条例は、地域の実情に合わせた開発規制 の緩和を図ることが期待されており、都市内の地域ごとの特性を把握する自治体こそきめ 細やかな基準の設定が可能であると考える。

6-2-2-2性能規定化の推進

性能規定とは、物的な属性について数値や外形に関する仕様を定める仕様規定に対して、

要求する性能(機能) と性能の照査方法を明らかにする形式を指す。開発許可への応用と しては、開発行為に伴う個別の外部性の要因ごとに外部性を統制するために用いる。許可 に際しては、周辺環境や交通に負荷をかけない性能に基づいて審査を行い、許可の条件を 付する。もっとも、開発許可は、開発行為を行う者に一定の公共施設整備を課し、排水等 の基準により周辺環境への影響を少なくする意味で性能評価に近い運用がなされている。

そこで、開発行為完了後の環境負荷対策設備の適正な管理保全等の担保がなされていない 場合があり、外部不経済の発生を抑制する観点から維持管理も含めての条件付き許可が考 えられる。しかしながら、開発許可を受けた開発行為完了後に検査済証が交付された場合 に開発許可の有する効果は消滅すると考えられ、これに付された条件も消滅すると考えら れるため、現行制度上維持管理を含めた条件付許可は、実効性確保の観点から難しい。そ の場合、行政と開発許可申請者で協定を結ぶことも考えられるが、許可条件化するために は、法改正等の立法措置を要する。また、許可条件化ではなく罰則によって担保する手段 も考えられる。

また、開発許可申請者の公共施設整備は、原則開発区域の内部に留まることから全ての外 部性を内部化できるものではなく、完全な性能規定化は難しく、都市計画税の賦課等の課 税等との組み合わせが必要である。

45 6-2-2-3市街化調整区域地区計画

上位計画と整合性をとりながら郊外のまちづくりを行いつつ地域の特性を踏まえた土地 利用をきめ細やかに行うため、市街化調整区域地区計画の導入を提案する。郊外独自のま ちづくりという位置づけができれば、立地適正化計画等のコンパクトシティ関連施策との 整合性も図りやすい。ただし、地区計画の導入は、住民の納得のもと進めていく必要があ り、新旧の住民が混住している状況では、双方の合意も難しい。そこで、長期的に、地区 計画化するよう誘導を図っていくべきである。

6-2-3 計画的手法

6-2-3-1上位計画との整合性の確保と広域的な都市計画の推進

3411 条例の規制の緩和の在り方においては、都市郊外部のまちづくりにおける在り方が 問われているが、コンパクトシティの推進と多様な住環境に対するニーズや既存集落のコ ミュニティの維持に応えるということは、政策的に矛盾するものではない。市街化区域内 とは違った地域固有の独自のまちづくりの在り方を示し、住民のコンセンサスを得ながら 位置づけを行っていくことが肝要であると考える。また、人口の奪い合い等の地域間競争 のため、規制を緩和せざるを得ないという状況を踏まえると、例えば、雇用都市圏 を構成 する市町村で、都市計画規制の在り方をについて協議し、コンセンサスをとっていくべき である。

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