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多くの地方都市においては、これまで郊外開発が進み市街地が拡散してきたが、今後は 急速な人口減少が見込まれている。これに対して、国は拡散した市街地のままで人口が減 少し居住地の人口密度が低下すれば、一定の人口密度に支えられてきた医療・福祉・子育 て支援・商業等の生活サービスの提供が将来困難になりかねない状況にあると危惧し、あ わせて社会資本の老朽化の急速の進展によるその維持管理費・更新の増大も含めて将来的 な都市経営の持続可能性を問題にしている。

そのような問題意識のもと、国はその対策として、医療・福祉施設、商業施設や住居等 がまとまって立地し、高齢者をはじめとする住民が公共交通によりこれらの生活利便施設 等にアクセスできるコンパクトな都市構造への転換を図るべきとしている。具体的な施策 としては、開発規制を強化し郊外部への大規模集客施設の立地制限を行った 2006 年のまち づくり3法の見直し、2006 年の都市の集約化等による都市の低炭素化を図る「都市の低炭 素化の促進に関する法律」の制定、2014 年の改正都市再生特別措置法の施行による「立地 適正化計画制度」の創設があげられる。

立地適正化計画は、市町村の自主性に基づき設定された居住誘導地区や都市機能誘導区 域について、国の税財政上の支援措置等を通じて居住や都市機能の集約等を緩やかに誘導 していくものである。2018 年8月 31 日現在、420 都市が立地適正化計画について具体的な 取組を行っており、このうち 177 都市が計画を作成・公表している。市町村は、立地適正 化計画を策定すると国から様々な予算・金融上の支援措置を受けることができる。例えば、

集約都市支援事業は、都市機能の集約地域への立地誘導のため都市の集約化等に関する計 画策定支援、都市のコアとなる施設の移転に際した旧建物の除却・緑地等の整備を支援し、

都市機能の移転促進を図るもので、事業費の2分の1の補助を受けることができる。支援 事業は多岐にわたり金融支援を含め 22 事業がある(2018 年 10 月 20 日現在)。立地適正化 計画に関わる予算項目「都市機能の誘導・集約等によるコンパクトシティの推進」につい て 245 億円が措置されている(2018 年度予算)。

このように国は、郊外の大型開発の規制強化や立地適正化計画等に基づく補助金の交付

(市町村と市町村を通した民間事業者に対するものもある。)等によって積極的な政府介入 によってコンパクトシティを推進するが、このことは正当化できるのか。

本稿で検討した郊外化の動きは、競争的市場における個々人の選択の結果を基本とする 市場メカニズムによるものであり、公共財や外部性という市場の失敗が、現実に存在する ことが政府介入正当化の根拠となる。その際の政府介入は、適切かつ最小限のものとすべ きであるが、恣意的でない適切な政策判断を行うために、実証的根拠に基づく費用便益分 析をしなければならない。郊外化によりどの要因によりどれだけの費用が発生し、都市の 総便益がどれくらい失われているのか、この分析を行うことによって、より効果的な政策 を市場への影響を最小限に抑えながら実施することができる。つまり、郊外化の公共財や 外部性を実証的根拠に基づき費用便益分析を行い、それに見合った課税や負担金を徴収し、

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また、建築物や土地の使用・利用の性質、特に周辺に与える影響の大きさで立地の許可・

不許可を決める方式である「性能規定」を導入する。このような公共財や外部性への適切 な対処こそが、国がいうところの「コンパクトシティ」を価格メカニズムという市場を通 じて促進する可能性があるのではないかと考える。

最後に、本稿の課題としては、3411 条例導入の影響評価としての地価のより詳細な分析 があげられる。都市中心部や市街化区域境界からの距離等よる分析を行い、都市内部のど の場所でどれくらい影響があるかを分析することである。また、より多数の都市を同時に 分析する等データを厚くすることである。公共投資への影響については、普通建設事業費 という大きな枠で分析したが、市街化調整区域にかかる投資額を抽出し分析するべきであ る。ただし、都市計画道路のように市街化調整区域で施工されているものであっても市街 化区域等都心部のためのものもあり、都心部と郊外地域の受ける便益を案分するような操 作も必要であり、単純化が難しい側面を有する。また、本稿では、開発許可の後に追加的 な公共投資が発生しているかという客観的な因果関係までは、示すことができずこれにつ いても課題である。その他にも渋滞の発生、農用地との用途混在、都心部から失われる集 積の経済等の外部性の費用便益分析を行い都市全体としての影響評価を行っていくことが 課題である。

謝辞

本稿の執筆にあたり、金本良嗣特別教授(主査)、福井秀夫教授(まちづくりプログラム ディレクター)、三井康壽客員教授(副査)、加藤一誠教授(副査)、森岡拓郎専任講師(副 査)から丁寧かつ熱心なご指導をいただきました。また、まちづくりプログラムの関係教 員の皆様から示唆に富んだ大変貴重なご意見をいただきました。心より御礼申し上げます。

また、分析データをご提供いただくともに貴重なアドバイスをいただいた国土交通省都 市計画課、水戸市都市計画課、建築指導課、農業委員会の方々にも心より御礼申し上げま す。

さらに、本学において研究の機会を与えてくださった派遣元(水戸市)に厚く感謝申し 上げます。そして、まちづくりプログラム同期の皆様および東京における単身赴任での研 究生活を水戸から全面的に支えてくれた妻と子どもたちに改めて感謝します。

なお、本稿は、個人的な見解を示すものであり、筆者の所属機関の見解を示すものでは ありません。また、本稿における見解および内容に関する誤り等は、全て筆者の責任であ ることを申し添えます。

48 参考文献等

・多田英明「線引き制度の導入と変遷」、『新都市』52(7)(1998)

・開発許可制度研究会編集『最新開発許可制度の解説(第三次改訂版)』(2015)

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・山口邦雄(2014)「市街化調整区域における規制緩和の効果と開発可能性の研究―人口密 度の変動と 3411 区域内の農地所有者の開発意向調査の分析から」、『日本建築学会技術報告 集』第 20 巻第 45 号、2014.6、pp731-734

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