現在、高校進学率は全国平均97%である。小・中 学校での軽度発達障害の疑いのある児童・生徒は 6.3%である。これらを考え合わせると、高校にも在 籍している可能性は否定できない。
本研究の調査結果から、学習に対する苦手意識や 不安を感じている生徒が男女差や学校タイプ、学年 で多少の差はあるが、3割程度いることが判明した。
これら軽度発達障害の疑いのある生徒と学習に 対する苦手意識や不安を持つ生徒は、同一である可 能性が高い。さらに本人や親、学校、教師も含め、
その特性理解が十分ではないため、本人の努力不足 や怠学傾向といった評価となることで、学習不振、
自尊感情の低下、行動上の問題や学校不適応、高校 中退、さらには少数ではあるが少年犯罪へとさまざ まな間題に発展する可能性を含んでいる。
小・中学校では特別支援教育が徐々に充実しつつ ある。しかし、高校の特別支援教育については、難 しい側面を抱えている。小・中学校と高校の特別支 援教育推進のあり方を比較すると、大きく3つが違
ってくる。
一つ目は、義務教育か否かである。高校の進学率 は97%で、ほぼ全員進学に近い形であるが、進学そ のものの希望の有無やどの高校を希望するかは、生 徒の選択権によっても左右され、自分の希望で入学 した高校も、自分の意思で退学も可能な点である。
二つ目は、高校教師の特別支援に対する理解であ る。高校進学は生徒の選択権によって入学試験を受 検し、許可されたものだけが入学しているとした理 解である。加えて、中学校までは、通級指導教室や 特殊学級があり、小・中学校の教師は特別な二一ズ を要する生徒の対応スキルや理解は高いが、高校で は特別支援教室を備えている高校は少数であるた め、高校教師は糊r』支援教育についての理解は、今 後に課題を残す点である。
三っ目は、生徒の発趨程と1轄受容の問題であ る。高校にもなると早い場合は、三年で社会人とな り、社会生活を送ることになる。これまで、軽度発 達障害の疑いや特別支援教育の対象となっていた 生徒も、高校入学を機に意識のリセットがあったり、
軽度発達障害の自己受容と特別な二一ズを持つこ とが、社会に出るためのハンデキャップととらえた りすることが考えられる。またさらにこれまで小・
中学校で見過ごされ、高校へ入って新たに軽度発達 障害の疑いがあるとする場合は、本人にも親にも専 門機関へのリファーは難しい。2β年で卒業し社会 人となる者について、改めて障害といったレッテル を貼られたくないという心理状態も理解できる。
こうした制度や組織、発達過程が小・中学校とは 異なるので、高校で特別支援教育を推進していくた めには、小・中学校とは違ったアプローチの工夫が 必要であり、ボトムアップ方式やトップダウン方式 等、それぞれの高校現場に応じた方法で、高校教師 に納得や協力が得られることが重要である。
高校での特別支援教育の推進のためのアプロー チは学習支援である。小学校よりも中学校、中学校 よりも高校と学齢を重ねるごとに、学習内容も複雑 化し、基礎学習を中心とした積み重ねの内容も増え てくる。高校へ入学してくるころには、個人差も広 がり、個人内差もバランスが悪くなる。
また特別な二一ズを必要とする生徒は、入学して いないとする高校教師の意識から、特別支援教育と するだけで、拒絶反応を示し、組織的な協力は得ら れにくい。
具体的な方法としては、生徒の学習支援を通した 観察である。行動上、学習上へと幅を広げると、焦 点が拡散し、行動上、学習上にそれぞれに焦点をあ てている教師が存在する時点で、情報の共有化がさ
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第5章 まとめと今後の課題
れず、特別支援教育の「共通理解」がされていない ことになる。
他教科に有効な情報を提供するとした意識で、教 科に関する情報を提供することが、もっとも重要で ある。これは教科担任の自己開示にもつながり、抵 抗を示す教師が多いと予想される。また自教科には、
学習支援を必要とする生徒がいないとする教師も おり、容易には進まない側面も含んでいる。
したがって、中央教育審議会の理念や発達樟害者 支援法に基づき、教育行政や管理職がリーダーシッ プをとって、組織的な体制作りが必要となってくる。
生徒理解は、紐織的に教育活動を行なう上で、不 可欠であり、教科に関する情報を共有し、そこから、
学習支援の二一ズのある生徒への指導となり、具体 的な支援が可能となるのである。
これらのことから学習支援からアプローチして いくことが、高校教師による特別支援教育に対する 抵抗がもっとも少なく支援につながると考えられ る。学習支援は、教師の本来の業務であり、経験も 豊富で、タスクとしては構造化されているため、具 体的な支援がみえやすい。
こうした「高校でも特別支援教育」という漠然と したイメージから掲示板に、学校生活上で学習支援 の立場から生徒の観察記録を共有することで、具体
的になる。
学習の苦手意識や不安を解消するために、具体的 な学習支援から始めることで、高校での特別支援教 育一歩前進することが可能になる。複数の教科の学 習支援だけでなく、行動面や認知面についても、必 要であれば、生徒の行動上の観察を始めることから、
新たな問題が見つかれば、気づきを記録することで、
支援の方法を探ることができる。これらは、高校組 織全体で、生徒の観察が校内でレッテル貼りではな く、支援のために必要な観察であると、教師の共通 理解ができたときに、気づきのステップヘ生徒の観 察へと新しいステージヘ移行することができる。そ こから高校の新しい特別支援教育の道が探れるの ではないかと考えられる。
なお、本研究の調査については、学年、年齢、学 科、人数、高校や少年院についても一定に地域に限 定されており、また調査対象が統制されておらず、
調査研究の限界であったことを指摘しておく。
支援方法として提案するのは、学習に対する苦手 意識や不安を持つ生徒の情報のネットワークを広 げ、情報の共有化から始めることである。対象生徒 の学校生活や教科時間内で出来事などを、対象生徒 用の掲示板に記入することで、互いに理解を深める ことが可能となる。さらに、学習支援に結び付ける には、どの方法が効果的で有効なのか等考慮して、
関わっている教師でその支援策を計画する、いわゆ る個別の指導計画である。
問題行動も同様で、教科担任としての立場から、
学習状態を記録し、他教科の記録も参考にし、学習 面での問題点等すべて共有することから、問題 働 への経過や心理状態が伺うことが可能となる。
今後の課題としては、高校現場では一部の高校を 除いては、問題行動で指導に追われているケースが 多い。問題行動を含む学校不適応と軽度発達障害の 関係に焦点をあてた研究が臨まれる。注意しなけれ ばならないのは、軽度発達障害の疑いのある生徒が、
問題行動を起こすという捉えられ方である。問題行 動を起こす生徒の中には、軽度発達障害の疑いのあ
る生徒も存在するといった視点である。
問題行動を含む学校不適応の問題は、高校では関 心が高く、問題行動と軽度発達障害の関係が明らか になり、その特性や具体的な支援方法が解明されれ ば、不登校問題や中途退学問題についても前進が期 待できる。
参考文献
<<引用文献>>
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・古川雅文・松川隆夫・浅川潔司・上地安昭(2001)「高校進学に伴う学校適応に関する 研究」一中学校での進路意識、学校適応と高等学校での学校適応の関連一 進路指導研究 第20巻 第2号
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・小沢道夫(2004)「高校で学ぶ『特別な教育的二一ズをもつ生徒』の実態調査について」
2004年度高校教育シンポジウム
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・佐藤克敏・徳永豊(2003)「軽度発達障害のある生徒に対する後期中等教育段階の教育的 支援に関する調査研究」国立特殊教育総合研究所研究紀要30.103−114.
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Vo1. 29 No. 3, 1996
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年出版予定.
学校教育学研究 兵庫教育大学学校教育研究センター、第15巻、2007年出版予定.
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63−81.・柘植雅義(2005)「特別支援教育の基本的な考えと仕組み」「学校のPDCA」シリーズ.3 P4−7.
・柘植雅義(2005)「LD・ADHD・高機能自閉症の支援体制整備の状況〜平成15年、
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・柘植雅義(2005)「特別支援教育の基本的な考えと仕組み」学校のPDCAシリーズNO.3 教育開発研究所
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