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まとめと考察

ドキュメント内 協調的視覚数理モデル構築のための開発基盤 (ページ 117-122)

あり,それをロボットにそのまま実装することも期待できる.

実際のモデル構築例をいくつか示した.器官モデルと脳機能モデルの結合例として,

網膜モデルと高次機能の一つである顔検出モデルとの結合を行い,脳神経系研究に対し てコンポーネント指向でのモデル開発の重要性を示した.細胞単位でのモデル改良例と

して,運動視の一般的なモデルであるSimoncelli とHeeger が提案したモデルを最新の 知見に基づいて改良した.具体的には,まずSimoncelliらが作成したモデルのプログラ ムコードを9つのコンポーネントに分解した.HI-brainの主機能であるモデルの置換・

修正によって,ある一つのコンポーネントを置換・修正した.その結果,新たな知見を 反映させたモデルを構築することが可能であることを示した.複数の既存モデルを再利 用したモデルの開発例として,複数の注視位置を予測するモデルを組み合わせて,より 予測性能が高い新規モデルを効率よく作成し,定量評価値も既存モデルを超えることを 示した.またモデルの実装例として,一般的な計算機だけでなく,様々な環境でモデル

実装が可能であることを示すために,小型計算機であるRaspberryPi上にモデルを実装,

LAN ケーブルを介した結合を行った.モデルコンポーネントをハードウェアレベルで 構築することにより,モデル構築の並列分散処理の様子が一目で理解できる.また

RaspberryPiとモデルが一対一対応しているため,他者へのモデルの譲渡が容易となる.

さらに,異なる環境で構築されたモデルの結合が可能であることも示した.

本基盤は視覚モデルの協調的モデル研究に必要となる要件を満たしている.しかし,

脳研究者に本基盤を利用するためには利便性が不足しているという問題点もまた明ら かになった.一つは本基盤を利用するための作業手順や,使用方法が複雑であり,

MATLAB などの商用ソフトウェアと比較すると脳研究者を対象としたものとしては使

用が困難である点である.たとえばWindows7 (64bit) 上で本プラットフォーム環境を構 築するにはJava JRE,VisualStudio,cmakeをはじめ,その他7種類のソフトウェアの適 切な事前設定とインストールが必要であった.OpenRTM-aistと同様の問題ではあるが,

HI-brainの場合は boostやOpenCVライブラリのインストールも必要とするため,手順

はより複雑化している.これを解決するために,HI-brain環境を標準でインストールし

たOSを用意した.しかし脳研究者にこれを実装するための物理または仮想環境のセッ トアップを期待しなければならない.またLinuxは脳研究者にとっては一般的なOSで はない.脳研究者が通常使用するWindowsやMacOS向けの必要ソフトウェアと一括イ ンストーラなどの手段が必要となるだろう.

また HI-brain 環境は単一のソフトウェアでなく複数のソフトウェアの組み合わせに

よって構成されている.そのためインストールした個々のソフトウェアの役割や使用法 を熟知し,これらを適切に切り替えて利用しなければならない.MATLAB でのモデル

開発では,モデルの作成や修正,シミュレーションなどはMATLABのIDEでの作業で ほぼ完結している.しかし本基盤でモデルを結合させるには,まず Eclipse でコンポー ネントの概要を記述し,テンプレートを作成する.次にcmakeでビルド用ファイルの生

成,VisualStudioで実装およびビルドを行う必要がある(Windowsの場合).そのため,こ れら困難さを軽減するためのソフトウェアとして,OpenCV-RTC を開発したが,Linux

やMacOSなどには対応しておらず,使用方法を理解するためのドキュメントが必要と

なる.

モデル研究では主にMATLABが広く利用されている.そのため代替となる本基盤は,

MATLAB 同様の利便性が要求される.しかし,実行中のコンポーネントとそのプログ

ラムの所在情報が,ユーザの記憶やメモに依存しているなどの問題がある.Windowsの 場合,コンポーネントの結合関係の編集や実行は Eclipseで,コンポーネントのプログ ラムの修正はVisualStudioで行う必要がある.そのため実行中のコンポーネントを修正 する場合は,Eclipseでコンポーネントの実行を停止させ,VisualStudioで修正する必要 がある.例えば,実行中のコンポーネントをクリックすることで対応するソースコード が表示され,修正もまた自動的に反映させるなどといった仕組みを用意する必要がある.

つまりMATLABやSimulinkのようなIDEの構築が必要である.これによって,ユーザ

の記憶やメモに頼る必要がないため,脳研究者だけでなくOpenRTM-aist の主な利用者 であるロボット研究者にとっても有益だろう.この問題はOpenRTM-aist の本質的な問 題でなく,追加開発を別途行うことで解決することができるため,今後重要な問題とし て位置付けている.

協調的モデル研究を行うために,モデルデータベースの構築を行ったが,現在の

HI-brain のホームページでは,単純なモデルの羅列のみで終わっている.今後は個々の数 理モデルのメタデータ(脳領野や脳機能,依存関係など)の記述や,求められるデータ ベースの要件を十分に精査する必要がある.

これまでのモデル研究において,筆者の知る限り,過去のモデルを再利用することに よって特筆すべき成果が得られたといった例はない.新しい計算原理に基づいた新規数 理モデルの開発も重要である.しかし,これら既存研究の成果を基にした,発展的なモ デル研究もまた重要になるのではないかと思われる.

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