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まとめと展望

ドキュメント内 2000 COE Center of Excellence: COE JETRO 2 3 4 (ページ 32-35)

本稿ではアジア通貨・経済危機とアジアへの

FDI

との関係についてサーベイを行った。まず、

FDI

が危機によってど の様な影響を受けたかについて見ると 、単純平均値では売上が

10

%強、

収益が

20

%弱の減少ということで明らかなマイナスの影響が見受けられたが 、マクロの

FDI

フ ローを国際収支ベースで見た場合には、インド ネシアを除き大きな落ち込みは見受けらず、さら に

2000

年度以降の急速な回復が見込まれている。他方で、国別あるいは企業別に見ると危機の 影響の多様さが明らかになった。危機の影響は国内・地域市場の収縮と現地通貨の大幅な下落の 二つを主軸として様々な経路で波及する。その結果、該当国・企業の輸出比率などによって影響 は大きく異なり、中には大きな恩恵を受けた企業もあった。

次に

FDI

の存在が現地国経済にどの様な効果を持つのかという視点から先行研究を概観した。

FDI

は通貨・経済危機の発生可能性を低める効果があり、回復過程においても雇用を増やすなど 経済を安定化させる可能性があり、その後の経済成長にも大きな重要な効果を持つ。

さらに、

FDI

に関連する政策を種類毎にまとめ、それらがアジア危機を契機にさらなる自由化

局面にはいったことを議論した。ど のような

FDI

をど の様に誘致できるかについては様々な角 度から先行研究を紹介した。輸出志向型

FDI

は通貨危機下では経済を安定化させる効果があり、

関税障壁を設けて国内市場志向型の

FDI

を誘致するような保護主義的政策よりも輸出基地型の

FDI

を誘致するような政策が求められる。また、外資の出資比率の高い企業でパフォーマンスが すぐれていることも観察され 、出資規制の緩和・撤廃も一層の進展が必要である。政治の安定、

腐敗の少なさ、さらなる改革の実施、地域市場の統合とインフラ整備などに対しては企業の強い 期待があった。

以上が今回のサーベイのまとめである。冒頭にも書いたとおり、アジア危機に関する実証分析 が本格的に出始めるのはこれからである。各種の統計が出そろうことにより、今までの研究では 充分になされてこなかった、ミクロ経済学的基礎に基づいた経済理論を持つ実証分析が出てくる ことが期待される。危機下での企業の対応などは先行研究もほとんど 無いので興味深い主題であ る。急増する

M&A

をめぐ る実証研究もこれからに期待したい。アジア経済はアジア危機の影響 による停滞から脱却しつつあるようである。一部の統計指標は危機以前の水準を上回りさらなる 成長局面に入りつつあることを示している。しかし 、アジア危機は単に「失われた数年間」をも たらしたわけではない。アジア危機は確実に一つの大きな契機となったのである。貿易や

FDI

を めぐ る自由化・規制緩和の動きは後戻りできない速度で進行しはじめた。さらなる

FDI

投資や

M&A

の急増など の結果を待ち受けているものはさらなる競争である。手島

[54]

手島

-1999

も主 張するように 、競争の激化は望ましいことである一方、新たな格差につながりうる。競争とは、

アジアと非アジアの

FDI

投資先としての競争であり、アジア諸国の間の競争であり、日本の

FDI

と欧米の

FDI

の間の競争である。そのような競争を控えていながら 、多額の債務を抱え息も絶 え絶えの地場の中小企業、バブルの中で過剰な直接投資を行った一部の日系企業、危機からの 回復で取り残された感のあるインド ネシアなど 、バブル崩壊の傷跡は今なお深い。

FDI

のリスト ラ、不良債権処理、社会インフラ、市場インフラの整備などを迅速に行い、バブルの債務を清算 しこれからのグローバルな競争環境に備えることが重要である。それがなしえてはじめてアジア

危機が

FDI

に及ぼした影響をポジティブに評価できるであろう。

4 ケーススタディ

この節では、まずタイの直接投資受け入れ状況の概況を報告し 、つづいて現地日系企業のヒア リングで得た情報をまとめる。われわれが訪問したのは輸送器機産業(

2

社)、電子・電機器機

4: BOI認可企業の輸出指向型企業比率

1995 1997 1998 1999 2000

™™ Ç 43.3 36.7 60.8 65.0 62.8 ãÄ 49.1 34.2 62.7 70.7 61.7 Ö 35.6 27.9 64.5 73.6 63.6

%º 30.6 28.4 43.1 53.0 65.6 Tõ Ç 14.3 30.1 38.2 84.5 66.6 ãÄ 18.1 43.6 67.5 82.0 64.1 Ö 15.1 13.7 87.7 91.8 72.7

%º 15.4 8.8 20.6 76.3 81.9

産業(

2

社)、建設業(

1

社)の計

5

社である。

4.1

タイの直接投資受け入れの状況

BOI

投資認可統計によると

2000

年上半期のタイへの投資認可額は

771

1300

万バーツ(

352

件)で対前年比

0.5%

( 金額ベース)であった。近年の特徴の

1

つとして輸出指向型投資が多い ということがあげられる。表

4

BOI

認可企業の輸出指向型企業比率を件数ベースと金額ベー スで時系列で示している。

BOI

認可企業のうち輸出指向型企業の比率は件数ベースで

62.8%

2000

年上半期)であった。

タイへの直接投資は従来、内需向けが大多数であった。

1995

年時点の世界全体の値で、輸出指 向型は件数ベースで全体の

4

割強、金額ベースでは

15%

弱である。日本のバブル崩壊、アジア 危機、それに対応した政府の規制緩和の影響を受けたことなどがその理由として考えられる。と りわけアジア危機の影響でタイ国内の内需の冷え込みにより内需指向型が減ったこととレートの 改善によって輸出指向型が増えたことが大きく影響している。輸出指向型企業比率を時系列でみ るとタイバーツが急落した年(

1997

年)に

36.7%

だったが 、翌年(

1998

年)には

60.8%

と急激 に増加していることが示すとおりである。

BOI

の規制緩和政策とは

WTO

の影響による輸出比率 の規制撤廃、

local contents

規制の撤廃、ゾーンによる差別化の緩和などである。14

14投資企業はその工場の場所により製品の税率などが異なる。これはBOIが地方分散を政策の柱としてきたこと から、バンコクから離れるほど 恩典が大きかった。このため3つのゾーンのうち、最もバンコクから遠い第3ゾーン への投資が最も多かったが 、近年の規制緩和により近郊への投資が増加している。この規制緩和は 、既存の直接投資 企業から強い反発をうけている。

日本からの投資は

423

3100

万バーツ(

2000

年上半期)、投資総額の

54.9%

に相当する。件 数ベースでも

115

件と第

1

位である。この傾向は近年(

1995

年から

2000

年)変化はない。金額 面で日本に次ぐのが米国である。またマレーシア、シンガポール、台湾も投資上位国である。近 年顕著なのは台湾で、電子部品を中心に拡大している。

日本のタイへの進出は

1980

年代後半にピークであった。

1990

年代半ば 、再び多くの日本企業 が進出したが 、これはバブル崩壊と円高が背景になっている。総じて、撤退は極めて少なく、ほ とんどの企業は「長期的には重要不可欠な拠点」ととらえている。これはアジア危機でダ メージ をうけた企業も含まれるように見受けられる。

(

小林

[28])

日本の投資の特徴として以下の

2

点があげられる。すなわち投資規模が小型化していること、

新規投資比率が減少していることである。前者については 、とりわけ内需むけを中心として世 界的な傾向である。

2000

年上半期のデータで

5000

万バーツ以下の投資が全体の

33%

をしめて いる。件数あたり平均投資額でみてみると、

1995

年、世界の平均額はおよそ

7.1

億バーツであっ た。

2000

年上半期では

2.2

億バーツと 、

5

年前の

31%

に減少している。一方、日本の平均額は

1995

年、

7.14

億バーツであったが 、

2000

年には

3.7

億バーツに減少している。新規投資比率は

1995

年、件数ベースで

53.6%

であったが、

2000

年上半期には

33%

にまで減少している。

2000

年 上半期の

10

億バーツ以上の大型プロジェクトでは投資額が最も多いプ ロジェクトは新規である が 、第

2

位から第

6

位のプロジェクトはすべて拡張投資となっている。

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