大阪市のみにより媒介される
TPS8
とTPS7
の関係をみると、TPS8は大阪市や尼崎市 など、TPS7 も京都市や神戸市などの近畿・中国地方の地域から構成されるという共通点をもつ。
TPS8―TPS7
は大阪市と京都市がトランスミッターとレシーバーとなり、神戸市が大阪市と堺市との媒介地となる近畿・中国地方の宿泊移動ルートが形成されている。こ のように、台湾出身旅行者による宿泊地間の移動ネットワークも、全移動のネットワーク と同様に関東・中部地方と近畿・中国地方とでネットワークが分かれる傾向にある。
他のブロックとの結合関係になく、クリーク構造を示す
TPS5
は札幌市や函館市、壮瞥 町、登別市、洞爺湖町など北海道内の地域から構成され、北海道内の周遊ネットワークと して表現される。全移動では北海道内の移動は九州地方内の移動と同一ブロックに表れて いたが、宿泊地間の移動では九州地方内の移動が消失している。他のブロックにも九州地 方内の移動は現れなかったため、台湾からの旅行者は北海道内では完結した宿泊地間移動 ルートを形成しているものの、九州地方内では宿泊地間の移動ルートを形成していないと 考えられる。その理由としては、九州地方内の移動は福岡市が宿泊地となる日帰り観光が 行われることが推測される。(5)地方分散型
最後の類型は地方分散型であり、香港出身旅行者が該当する。この類型は東京
23
区と 京都市、大阪市が中心となるネットワークに加え、名古屋市も中心となるネットワークを 形成している点が特徴である。また、北海道と九州地方でも完結したネットワークを形成 していることから、地方分散型とした。以下に、香港出身旅行者のネットワークについて 説明していく。香港からの旅行者による移動ネットワークでは主に二つの中心が見いだせる(図
50)
。 一つ目はHKA2
であり、HKA1、HKA4、HKA7 を周辺とする中心―周辺構造および、HKA3
とHKA8
を周辺とする中心化構造を形成している。とくにHKA1
とHKA4
はHKA2
との相互の結合のみであり、HKA2
が移動ルートを限定している存在となる。また、HKA3
もHKA2
への結合のみであるため、HKA2の前に訪問する地域という役割のみがある。もう一つの中心となるブロックは
HKA7
であり、HKA2とHKA6、HKA8
を周辺とす る中心―周辺構造が形成される。これらの構造に共通して周辺として位置づけられるのはHKA8
であり、HKA2とHKA7
を媒介する役割も担っている。図 50 全移動の市町村間移動ネットワークにおけるブロック構造(香港)
注:各ブロックに分類された市町村数をブロック名の()内に記載している。また、各ブロックには移動 流出入量の上位5位を、それらの市町村の()には各市町村の総移動流出入量を記載している。
「平均+1.5標準偏差」より高いブロック間の密度を示すのは
HKA2→HKA1
と、HKA2
―HKA4の直接結合である。HKA2は東京
23
区と山ノ内町のみで構成され、移動量から みても東京23
区が移動結節点となることが分かる。成田市や軽井沢町などの関東・中部 地方の地域から構成されるHKA1
と、同じく横浜市や箱根町などの関東・中部地方の地域 から構成されるHKA4
はいずれも東京23
区との移動に限定されており、関東・中部地方 内での移動が完結している(図51)
。HKA2
はHKA7
と「平均以上平均+0.5標準偏差」」未満の密度で直接結合にある。HKA7
は大阪市や名古屋市など、HKA1
とHKA4
よりも西の地域から構成される傾向にあるが、HKA2→HKA7
では東京23
区→大阪市のみ、HKA7→HKA2も大阪市・名古屋市→東京23
区のみと、東京23
区と大阪市間の移動が強調される。また、HKA2 はブロックの中心化構造において、「平均以上平均+0.5 標準偏差」」未満 の密度ではあるが、
HKA8
との直接結合が認められる。HKA8
は京都市のほかに奈良市や 泉佐野市といった近畿地方の地域が含まれているが、HKA8→HKA2
でも京都市→東京23
144
図 51 全移動の市町村間移動ネットワークにおける移動の階層性(香港)
注:市町村数は144、平均以上密度のブロック間およびブロック内の紐帯数は236である。
区のみであり、HKA2―HKA7同様に、ゴールデンルートの重要都市との移動しか確認で きない。
HKA7
の中心―周辺構造についてみると、HKA7―HKA8
はそれぞれのブロックから京 都市と大阪市への移動、および京都市と大阪市からそれぞれのブロックへの移動で特徴づ けられ、両都市を拠点とする近畿地方内を中心とする移動ルートとして位置づけられる。一方
HKA7―HKA6
は、HKA6→HKA7
においては名古屋市がHKA6
の半数にあたる8
の入次数を、HKA7→HKA6では名古屋市が
HKA6
へ10
の出次数を示し、名古屋市が上 位ノードとなる階層構造が確認できる。この名古屋市が中心となるネットワークは香港出 身旅行者のみで確認されるものである。これは、香港から中部国際空港への直行便が就航 していることや、香港出身旅行者のリピーター率が高いことが関係していると推測される。香港出身旅行者も台湾出身旅行者と同じく、北海道と九州地方で完結したネットワーク を
HKA5
のクリーク構造で形成している。HKA5は48
地域から構成され、福岡市や熊本 市、佐世保市などの九州地方内の地域と、札幌市や小樽市などの北海道内の地域から構成 される。九州地方内では福岡市や佐世保市、熊本市が5
程度であるが上位の出次数と入次 数を示しており、九州地方周遊型のネットワークを形成している。これまで、九州地方でのネットワークは複数の国・地域で確認されてきたが、多くは福岡市が中心となる拠点型 のネットワークであった。香港の例は九州地方内の多様な市町村間での結合が認められる ものであり、多様な移動ルートが形成されていると考えられる。
その状況は北海道での直接結合にも該当し、札幌市や小樽市が相対的に高い次数を示し ているものの、両都市との移動のみに限定されない構成市町村間の多様な結合が図
51
か ら確認できる。宿泊地間の移動では
HKS1
とHKS2
の独立したクリーク構造が確認できる(図52)
。ま た、HKS5
とHKS7
はそれぞれ他のブロックとの直接結合の数が6
であるとともに、それ ぞれが中心となる構造において互いに中心と周辺の関係にあり、両ブロックが最上位の階 層を構成している。ただし、両ブロックが中心となるブロック構造には違いがみられ、HKS5
はHKS6、HKS7、HKS8
を周辺とする中心―周辺構造をとり、他ブロックとの関係は往復移動で特徴づけられる。HKS7も
HKS3
とHKS5
に対しては中心―周辺構造を 形成するが、HKS6とHKS8
に対しては中心化構造を示している。図 52 宿泊市町村間移動ネットワークにおけるブロック構造(香港)
注:各ブロックに分類された市町村数をブロック名の()内に記載している。また、各ブロックには移動 流出入量の上位5位を、それらの市町村の()には各市町村の総移動流出入量を記載している。
146
宿泊地間の移動ネットワークでもブロック間の高い密度を示すのは東京
23
区が分類さ れるHKS5
である。HKS5は東京23
区と武蔵野市、愛荘町の3
市町村から構成されるが 移動量からみても東京23
区がその中心となっていることが分かる。HKS5 は大阪市のほ かに名古屋市や富士河口湖町が分類されるHKS7
からの直接結合の密度が高い。HKS5→HKS7
で東京23
区→富士河口湖町・大阪市が確認でき、東京23
区とゴールデンルートの 移動が確認できる(図53)。東京 23
区と大阪市間の高い密度は台湾との違いであり、両地 域とも全移動では関東・中部地方と近畿・中国地方が独立する傾向にあったものの、香港 では宿泊地間においてゴールデンルートが形成されるという違いが指摘できる。図 53 宿泊市町村間移動ネットワークにおける移動の階層性(香港)
注:市町村数は70、平均以上密度のブロック間およびブロック内の紐帯数は95である。
宿泊地間の移動ネットワークにおいても、名古屋市の高い中心性が
HKS7―HKS3
で確 認できる。名古屋市はHKS3
に対して出次数と入次数がそれぞれ4
を示し、大阪市よりも 高い次数を記録している。移動をみても、高山市や下呂市のように昇龍道の一部での移動 ルートが確認できる。また、HKS3はクリーク構造を示し、数は小さいものの高山市と富 山市が中心ノードとなる中部地方内の移動も行われている。全移動では名古屋市が上位と なる階層構造が確認されたが、宿泊地間の移動では名古屋市から昇龍道へ、さらに昇龍道内での宿泊地間移動が行われていることが読み取れる。
最後に、HKS1のクリーク構造についてみると、HKS1は福岡市や熊本市、佐世保市な どの九州地方内の地域から構成された九州地方の周遊ネットワークとして現れる。また、