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2. 新規⾧波⾧ホタル生物発光基質の合成および発光活性評価

3.1. はじめに

生物発光反応は低侵襲的でかつ高感度な測定法として、個体の一分子イメージングや細菌検査等に利 用されている 39。生物発光反応は化学反応に基づいており、蛍光アッセイのような励起光源を必要とし ない。そのため生物発光イメージングは、蛍光イメージングよりもノイズが低減された精密なイメージ ングが可能である。

生物発光イメージングで最も広く使用されている発光系は、ホタルルシフェリンとホタルルシフェラ ーゼによるL-L反応である。天然ホタルルシフェリン(1)は比較的波⾧が⾧い(生物発光極大波⾧、λbl = 560 nm)光を生成する。”生体の光学窓(optical window)“領域(λ = 650–900nm)波⾧は、組織光透過性が高く(図

1-16)35、また散乱も比較的小さいことが知られており(図1-17)36、生物発光イメージングにおいて最適な

波⾧域である。近年、Cycluc1(27)46やAkaLumine(22a)37など⾧波⾧発光(それぞれλbl = 599、675 nm)を 示すホタルルシフェリン類縁体が合成され、高い生物発光イメージング活性を示した48, 38。しかし、ホタ ルルシフェリンのL-L反応は、ATPやMg2+等の補因子を必要とし、さらに酵素反応速度定数(Kcat)が小さ く生物発光活性が低い。

図3-2 Cycluc1(27)およびAkaLumine(22a)

一方、セレテンラジン(2)およびセレンテラジン類縁体も広く生物発光アッセイに利用されている。セ レンテラジンによる L-L 反応は酵素反応速度定数が大きく、生物発光活性が高いため高輝度で発光する

62。近年は、発光エビ(Oplophorus 属)由来のルシフェラーゼ変異体 nanoluc®およびその特異的基質

furimazine 11aによる組み合わせにより、高輝度な発光システムを構築可能である(図3-3)8。しかし、

48 比較的短波⾧領域で発光するセレンテラジン類縁体(λbl ≤ 550 nm)が多く、生物発光イメージングではや や不利とされてきた。

図3-1 セレンテラジンおよびセレンテラミドの構造およびその発光

図3-3 Furimazineおよびnanolucルシフェラーゼ

セレンテラジンの生物発光波⾧制御は、イミダゾピラジノン構造のC’5、C’6およびC’8位における修 飾によって決定される63。Wuらは、C’6位、C’8位に芳香環を導入したセレンテラジン類縁体37を合成 し、カイアシ(Gaussia属)ルシフェラーゼとの L-L反応により⾧波⾧発光を示すことを見出した 64。井上 らは、C-5位とC-6位p ヒドロキシフェニル置換基との間に炭素架橋を形成したセレンテラジン類縁体 38 を合成し、⾧波⾧シフトすることを示した 65。また井上らは、C’8 位に電子供与性芳香環を導入した セレンテラジン類縁体39を合成し、その赤色シフトを確認した66。Giuliani らは、C’8位にS原子を導

49 入したセレンテラジン類縁体40を合成し、その赤色シフトを確認した67。Antonらは、Furimazine (32a) の構造を基にC’6位に電子供与性芳香環を導入しかつ、C’8位に電子吸引性芳香環を導入したFurimazine 類縁体11bは、nanoluc®ルシフェラーゼを用いて⾧波⾧発光(λbl = 592 nm)を示した68

図3-4 セレンテラジン2と⾧波⾧発光を示すセレンテラジン類縁体

近年、西原らは C’6 位にスチリル基を持ったセレンテラジン類縁体 41 (6-pi-OH-CTZ および

6-pi-H-CTZ)を合成し、オレフィンの共役系が生物発光波⾧の赤色シフトを促す効果を確認した(図 3-5)69。オレ

フィン構造は直線的であり、赤色ホタルルシフェリン類縁体AkaLumine(22a)に見られる通り、共役系を 拡張しつつ、酵素活性を阻害することなく生物発光活性を維持できるものと推測される。6-pi-OH-CTZの C’6位にオレフィンを導入することで⾧波⾧化が可能であるという知見を基に、オレフィンのさらなる伸 張を行うことによる波⾧制御およびそれに伴う⾧波⾧化を達成できると考えた。

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図3-5 C’6位オレフィン導入セレンテラジン類縁体41および新規セレンテラジン類縁体42a–d

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