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 回答で最も多かったのは「③必ずしも統一されていない」(51.54%)であり,続いて「② 控除しない」(42.31%)であった(この 2つの回答で 90%以上を占めている)。証券分 析を行う際に純資産額から換金性のないのれんの金額を控除しないでそのままの数値 を用いるアナリストもいれば,状況によってはのれんの金額を控除して分析している アナリストもいることがわかる。

 国際的な議論の中では,株式投資家のような利用者は B/S に計上されているのれん額 を一般的に無視しているものの,のれん額を控除しないまま ROCE(Return on Capital Employed;使用総資本利益率)や ROIC(Return on Invested Capital;投下資本利益率)

といった指標を活用している可能性があるとの指摘がなされているが 91,本調査の結 果はこのような指摘と矛盾したものではないといえるであろう。

のれんの償却費を足し戻すか?

続いて,のれんの償却費の取り扱いについて以下の質問について回答を求めた。

(Q4-1)証券分析を行う際に,分析対象企業が採用する会計基準の違いや償却政策の差 を考慮して,利益にのれんの償却費を足し戻していますか(意識して償却費を足し戻すケ ース以外に,収益性指標として EBITDA を活用するケースなども含まれます)。以下の選 択肢の中からひとつだけお選びください。

(選択肢)

① 償却費を足し戻す

② 償却費を足し戻さない

③ 必ずしも統一されていない

④ わからない

図表2-37 のれんの償却費を足し戻すか

回答件数 割合(%)

① 償却費を足し戻す 53 40.77

② 償却費を足し戻さない 18 13.85

③ 必ずしも統一されていない 59 45.38

④ わからない 0 0.00

合計 130 100

91 この指摘はCraig et al.2018)のスライド番号33にみられる。

 上記の結果からのれんの償却費については40%程度の回答者が「①償却費を足し戻す」

と回答していることがわかる。IASB の会議や ASAF(Accounting Standards Advisory

Forum;会計基準アドバイザリー・フォーラム)会議などの国際的な議論の場では,多

くのアナリストや投資家がのれんの償却費を足し戻した利益数値を用いて証券分析を 行っているとの指摘もあるが 92,本調査の結果はそのような主張と必ずしも整合して いない93

 ただし,「①償却費を足し戻す」を選択した回答者の中には2種類のものがあり,「償却 費を意識的に足し戻している」という意味で回答した回答者と,「EBITDAの計算の構 造上(意識的ではなく)足し戻している」という意味で回答した回答者とでは,同じ回 答でも意味合いが異なってくる可能性が存在する。

 「③必ずしも統一されていない」とした回答も45.38%と大きな割合を占めており,(そ の結果の解釈は難しいものの)状況に応じてそのままの利益数値を用いたり,償却費を 足し戻したりして分析しているアナリストが存在していることがわかる。

92 たとえば,ASAF会議(20181267日)では,Group pf Latin America Standards SettersGLASS のメンバーがブラジルの金融機関の財務報告に関する調査結果に言及し,その調査の中で全てのアナリス ト が の れ ん の 償 却 費 を 足 し 戻 し て い た と 述 べ て い る ( UR https://www.ifrs.org/-/media/feature/meetings/2018/december/asaf/asaf-meeting-summary-dec-2018.pdf)。また,IASBの議長であるフ ーガ―ホースト氏も「我々は…多くの投資家が〔のれんの〕償却費を無視し,自分たちで推定を行う際に それを直接,足し戻していることを知っている」(“We [] know that many investors will ignore amortisation and will immediately add it back in their projections.”)と述べている(URL: https://www.ifrs.org/news-and-events/2018/08/chairmans-speech-japan-and-ifrs-standards/)。

93 また,仮に,償却費を足し戻す事実があったとしても,そのような実務があるからといって,「のれんを 償却しなくていい」という判断には即座につながらない点は注意が必要である。たとえば,有形固定資産 の減価償却費はEBITDAの計算過程で足し戻されるが,減価償却の手続きが実施されていることを考えて みれば明らかである。

償却後ののれん金額の有用性ついて

最後に,のれん償却後の,のれん残高(B/S上の金額)について,証券分析を行う上で有 用な情報が含まれているかを尋ねた。

(Q4-2)規則的な償却費を控除した後ののれんの金額について,企業価値(株価)を推定 する上で有用な情報は含まれていると考えますか。以下の選択肢の中からひとつだけお 選びください。

図表2-38 償却後ののれん金額に情報価値はあるか

回答件数 割合(%)

① 非常に有用な情報が含まれている 19 14.62

② ある程度有用な情報が含まれている 83 63.85

③ 有用な情報は含まれていない 18 13.85

④ わからない 10 7.69

合計 130 100

 回答結果から,「①非常に有用な情報が含まれている」と「②ある程度有用な情報が含 まれている」合わせてサンプル全体の 78.46%であり,償却後ののれんに一定程度の情 報価値が認められている。「③有用な情報は含まれていない」は13.85%にとどまったが,

一定割合,償却後ののれん残高は有用ではないと考える回答者がいることがわかる。