遺伝子全合成
CooA の遺伝子配列は、アミノ酸配列をもとに大腸菌での使用頻度の高いコドンを選 択して設計した。この際、変異導入の確認および組み換えに必要となる、計 20 カ所の 特異的な制限酵素の認識部位を導入することに成功した。一度に合成し確認するために 適切な塩基対数が 400 程度であると判断し、全長 666 塩基対を二つの部分、Xho I と Hind III に挟まれた前半部分 (CA12)、および Hind III と BamH I に挟まれた後半部分 (CA34) に分け、それぞれを六つのオリゴ DNA を用いて合成することとした。なお、
オリゴ DNA の長さは約 80 塩基ほどであり、部分相補的な領域は 20 塩基程度とした。
以下に合成の方法を示す。
100 pmol/
µ
L に調製した部分相補的な六つのオリゴ DNA を 1µ
L ずつエッペンドル フチューブにて混ぜ合わせ、一段目の反応として Pyrobest により伸長反応を行い、完 全に相補的な DNA とした。得られた反応物を電気泳動で確認したところ、いくつものバンドの存在が認められたため、PCR prep purification kit によって未反応物を除去し、
次に二段目の反応として、両末端に相補的なプライマーを 10
µ
L ずつ加え、一段目の 反応物 10µ
L を鋳型として用い、一段目と同じく Pyrobest を用いて PCR を行い、目 的の長さの DNA のみを増幅させた。得られた DNA は設計に基づき、両末端の制限酵 素で処理した後、クローニング用のベクターである pBluescriptII SK(+) に組み込み、大腸菌株 XL-1 Blue MRF'に形質転換し、LB 寒天培地にて選別した。LB 液体培地で培 養した後、DNA を Mini prep purification kit によって抽出し、DNA シークエンサー で塩基配列の確認を行った。CA12 および CA34 をそれぞれ合成し、確認した後に pBluescriptII SK(+) 上で Hind III 部位で繋ぎ合わせ、全長 666 塩基対の CooA の遺伝 子を合成した。なお、PCR を用いたため、その反応条件を以下に示す。
PCR条件
95 ℃ 3 min.
95 ℃ 30 sec.
59 ℃ 30 sec. 30 cycles 72 ℃ 70 sec.
72 ℃ 5 min.
次に、合成した遺伝子を pBluescriptII SK+から、本研究室で開発された pBEX へと 繋ぎ換えを行った。まず CooA の遺伝子を含む pBluescriptII SK(+) から制限酵素 Nde I と BamH I によって CooA 部分を切断し、これを電気泳動で分離した後、CooA 遺伝 子を含むバンドを電気泳動のゲルからカッターで切り出した。ゲル断片から Ultrafree-DA あるいは DNA Extraction Kit により DNA を単離抽出し、PCR prep purification kit によって精製した後、あらかじめ酵素処理して PCR prep purification kit によって切断断片を除去した pBEX と混ぜ、DNA Ligation Kit Ver.2.0 を用いて 繋いだ。
DNA シークエンス
本研究室で現有する装置に、DNA シークエンサーがあり、これにより合成した DNA の確認が容易であった。以下にその主な操作の流れを示す。
サンプル調製 測定する DNA の濃度を 260 nm における吸光度から算出した (二本
鎖の場合は、吸光度 1 に対して 50
µ
g/mL)。これをもとに以下に示す 割合で試薬を混ぜ合わせた。DNA 300 fmol
蛍光標識プライマー 2
µ
L 10x Sequencing buffer 2µ
L 2.5 mM dNTP 1µ
L Thermo Sequence TM DNA polymerase 2µ
LMilliQ q.s.
Total 17
µ
L次に、 あらかじめ 4
µ
L ずつ分注しておいた ddATP、ddCTP、ddGTP、ddTTP に対して、上記の混液をそれぞれ 4
µ
L ずつ加え PCR を行い、反応終了後、stop solution を 4µ
L 加え、95 ℃で 2 min.熱変性をかけた。PCR の反応条件は以下に示す。PCR 条件
95 ℃ 5 min.
95 ℃ 30 sec.
50 ℃ 30 sec. 30 cycles 70 ℃ 60 sec.
泳動ゲル作製 尿素 16.8 g、Long Ranger gel solution 4.4 mL、10x TBE 4 mL を 混ぜ、MilliQ で 40 mL に調製した後、スターラーで一時間穏やかに撹 拌した。溶解後、フィルターでろ過し、30 分間脱気した後に、30 % APS 溶液 88.8
µ
L および TEMED 26.7µ
L を加え、混和してゲル板に 流し込み約四時間静置した。固まったゲルを装置にセットし、サンプ ルをアプライした後、泳動を行い、検出されたバンドから塩基配列を 決定した。CooA の発現および精製
組み換えが終わったプラスミドは発現用の大腸菌株である BL21 Gold (DE3) に形質 転換し、培養を行った。培養および精製の一連の流れを以下に示す。
前培養 LB 培地 100 mL に植菌し、アンピシリン溶液を 100
µ
L 加えた後、恒温水 浴培養器において、37 ℃で 600 nm における吸光度が 0.3 程度になるまで培 養した。本培養 LB 培地 1 L に対して、前培養液 10 mL、アンピシリン溶液を 1 mL 加えた 後、恒温振盪培養器によって 37 ℃で 600 nm における吸光度が 0.3 程度にな るまで培養した。吸光度が 0.3 に達したところで 5-アミノレブリン酸溶液を 培地 1 L あたり 1 mL 加えた後、10 時間培養し、菌体を遠心によって回収し た。
菌体破砕 遠心して回収した菌体を-80 ℃の冷凍庫に入れて、一時間以上放置するこ とにより破砕しやすい状態とした。冷凍庫から取り出した菌体は、解凍した 後に 50 mM Tris-HCl (pH 8.0) 緩衝液にて懸濁し、超音波破砕器によって 菌膜を破砕した。なお、破砕条件は下記の通りである。破砕終了後は高速遠 心 (40,000 g で 150 分) によって可溶性分画のみを獲得し、透析膜を用いて 低温下で透析し脱塩した後、精製を行った。
精製過程 透析を行った溶液を、まずイオン交換カラムである Q-sepharose Fast Flow カラム担体を緩衝液で置換した後に吸着させ、塩化ナトリウムをそれ ぞれ 0.15 M および 0.5 M 含む、200 mL の緩衝液を用いて勾配を与えて溶 出させた。赤色のヘムタンパク質を示す画分を中心にタンパク質の吸収を示 す 280 nm の吸光度、および CooA などのヘムタンパク質に固有のバンド である 420 nm 付近の Soret 帯の吸光度を追跡し、目的タンパク質の含ま れる画分を選択した。これをいったん濃縮し、Sephacryl S-100 担体を用い てゲルろ過を行い分離した。溶出画分はイオン交換の際と同様に吸光度を測 定し、CooA を含む画分を選択した後、再度 Q-sepharose Fast Flow カラ ム担体によって分離した後、濃縮し、0.1 M Tris-HCl (pH 8.0) の緩衝液に
よって置換した後に、測定に用いた。
タンパク質標品の純度および濃度決定
精製後の標品である CooA は、SDS-PAGE、アミノ酸配列解析、TOF-MS によって 分子量の評価を、吸収スペクトルおよび共鳴ラマンスペクトルにより性質の評価を行い、
得られたタンパク質が目的物質であることを確認した。また各種測定によって純度も明 らかとなり、90 %以上の高い純度で精製を行えたことが確認出来た。
濃度の決定に関しては、ヘムタンパク質に固有の方法である、ピリジンヘモクローム 法を用いて算出した。これは CooA に含まれるヘムがプロトヘムであることがわかっ ているため、用いることが可能である。まず精製後のタンパク質を緩衝液で希釈し、約 10