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」 に

ドキュメント内 源 氏 物 語 の 人 物 造 型 (ページ 72-87)

救 い を 求 め る

」、 7「 主 人 公 の 変 貌」

、 8

「 源 氏 に 迎 え ら れ る

」 等 の 要 素 が 共 通 す る

『 賢 愚 因 縁 経

』 巻 第 二 「 波 斯 匿 王 女 金 剛 品 第 八

」 に つ い て

末 摘 花

・ 蓬 生 巻 と 玉 鬘 巻 の 構 成 や 主 人 公 の 要 素 に 共 通 点 が 見 ら れ る と い う こ と は

、 末 摘 花 と 玉 鬘 が 造 型 さ れ た 根 底 に

、 作 者 は 同 じ 資 料 を 用 い た こ と が 考 え ら れ る

。 そ こ で 考 察 を 進 め る に あ た り

、 重 要 な 糸 口 に な る と 思 わ れ る の は

、 第 一 章 と 第 二 章 に お い て 主 人 公 と の 関 わ り を 論 じ た 金 剛 醜 女 説 話 で あ る

。 あ ら た め て 二 人 の 共 通 点 と

、 金 剛 醜 女 説 話 と の 関 わ り に つ い て 再 考 し て お き た い

。 次 の 1 か ら 7 は

、 金 剛 醜 女 説 話 の 原 拠 で あ る 賢 愚 経 と

、 末 摘 花 と 玉 鬘 の 共 通 点 と 一 致 す る と 思 わ れ る 箇 所 で あ る

。 1

主 人 公 の 登 場 賢 愚 経 の 巻 頭 は

、 如

是 我 聞

。 一 時 仏 在

舎 衛 国 祇 樹 給 孤 独 園

。 爾 時

、 波 斯 匿 王 最 大 夫 人 名 曰

摩 利

。 時 生

一 女

。 字

闍 羅

。晋 言

金 剛

( 賢 愚 経

・ 三 五 七

「 こ の よ う に 私 は 聞 い た

。 あ る 時

、 仏 は 舎 衛 国 の 祇 樹 給 孤 独 園 に お ら れ た

」 と い う 言 葉 で 始 ま り

、 仏 と 金 剛 醜 女 が 登 場 す る

。 末 摘 花

・ 玉 鬘 巻 は

、 源 氏 の 亡 き 夕 顔 へ の 追 慕 と

、 そ の 源 氏 の 思 い か ら 末 摘 花 や 玉 鬘 の 物 語 が 始 ま る こ と を 暗 示 す る 言 葉 で は じ ま る

。 巻 頭 に そ の 巻 の 主 人 公 を 登 場 さ せ る の は 常 套 手 段 と い え る が

、 源 氏 と 末 摘 花

源 氏 と 玉 鬘

、 仏 と 金 剛 醜 女 の 関 係 は

、 救 済 者 と 救 済 さ れ る 関 係 が 一 致 す る

。 2

主 人 公 の 父 方 の 血 筋 の 高 さ 金 剛 醜 女 は 舎 衛 国 の 波 斯 匿 王 の 娘 で

、 末 摘 花 と 玉 鬘 の 父 方 は 皇 族 の 血 筋

で あ る こ と か ら

、 父 方 の 血 筋 の 高 さ が 共 通 す る

。 3

人 と 親 し ま ず 身 を 隠 す 波 斯 匿 王 は

、 生 ま れ た ば か り の 娘 の 顔 を 見 て

、 便

宮 内

。 懃

意 守 護

、 勿

外 人 得

之 也

。 所 以 者 何

。 此 女 雖

醜 形 不

、 然 是 末 利 夫

人 所

。 此 雖

醜 悪

、 当

密 遣

人 而 護

養 之

( 賢 愚 経

・ 三 五 七

す ぐ に 宮 内 に

、 意 を 懃 ろ に 守 護 し

、 外 人 に 娘 を 見 せ て は な ら な い と 王 命 を 下 す

。 理 由 は

、 人 と は 思 え な い

「 醜 い 容 貌

」 で あ る け れ ど も

、 末 利 夫 人 の 生 ん だ 娘 な の で

、 密 か に

「 人

を 遣 わ し て 護 養 す る べ し と 命 ず る の で あ る

。「 外 人

」 は 宮 外 の 人 の こ と で

、 文 脈 か ら

、 末 摘 花 の

「 人 疎 う も て な し

、 玉 鬘 の

「 館 の 人 に も 知 ら せ ず

」「 人 に 見 せ ず

」 の

「 人

」( 第 一 節 3

) に 対 応 す る と い え る

。 末 摘 花 と 玉 鬘 が 外 の 人 と 親 し ま ず 姿 を 見 せ な い 暮 ら し 方 は

、 金 剛 醜 女 が 外 人 に 姿 を 見 せ な い 状 況 と 同 じ と い え る

。 4

結 婚 の 適 齢 期 金 剛 醜 女 は

、 醜 悪 で あ る 為 に 密 か に 養 護 し て 育 て ら れ る

。 そ し て

密 遣

人 而 護

養 之

。 女 年 転 大

。 任

嫁 処

( 賢 愚 経

・ 三 五 七

、「 年 転 大 な り

。 当 に 嫁 ぐ べ き 処 に 任 た り

」 と 嫁 ぐ 年 齢 に 達 す る

。 末 摘 花 は

、 命 婦 の 手 引 き に よ り 源 氏 が 通

う こ と か ら 適 齢 期 と い え る

。 玉 鬘 は

、「 こ の 君

、 ね び と と の ひ た ま ふ ま ま に」

、 乳 母 や 乳 母 子 に 守 ら れ な が ら 適 齢 期 を 迎 え る

。 三 人 の 姫 君 は

、 密 か に 乳 母 に 育 て ら れ 適 齢 期 を 迎 え る こ と が 共 通 す る

。 5

主 人 公 の

「 か た は

」 金 剛 醜 女 の 容 姿 は

、 其

女 面 類

極 為

醜 悪

。 肌 体 麁 渋

、 猶 如

駝 皮

。 頭 髪 麁 強

、 猶 如

馬 尾

( 賢 愚 経

・ 三 五 七

、 面 貌 は 極 め て 醜 く

、 肌 は 粗 く 駝 皮 の よ う で

、 頭 髪 は 荒 く 堅 く

、 馬 の 尾 の よ う で あ る

。 こ の よ う な 極 端 な 醜 さ は

、 第 一 節 5 に 挙 げ た よ う に

、 末 摘 花 の 人 離 れ し た 醜 貌 と 共 通 し

、「 か た は

」 と 言 っ て も よ い だ ろ う

。 玉 鬘 は 決 し て 醜 女 で は な い が 乳 母 に よ り

「 か た は

と 噂 さ れ る こ と か ら

、 三 人 は「 か た は」 の 要 素 が 共 通 す る

。 6

前 世 の 罪 の 自 覚 と

、 仏 菩 薩 を 念 ず る 金 剛 醜 女 は

、 自 分 が 醜 い こ と を 悩 み

、 彼

女 心 悩

、 自 責

罪 咎

。 而 作

是 言

。 我 種

何 罪

、 為

夫 所

、 恒 見

幽 閉

( 賢 愚 経

・ 三 五 七

と 自 ら の 罪 咎 を 責 め て

、 我 は 何 の 罪 を 植 え て

、 夫 の 為 に 憎 ま れ

、 常 に 幽 閉 さ れ る の か と 嘆 く

。 こ の 罪 咎 が 前 世 の 行 い に よ る も の で あ る こ と は

、 賢 愚 経 の 後 半 に 父 王 が

、 此

女 宿

何 福

、 乃 生

豪 貴 富 楽 之 家

。 復 造

何 咎

。 受

醜 陋 形

、 皮 毛 麁 強

、 劇 如

畜 生

( 賢 愚 経

・ 三 五 八

) と

、 娘 は 宿 世 に お い て

、 ど の よ う な 福 を 殖 え

、 豪 貴 富 楽 の 家 に 生 ま れ る こ と が で き た の か

。 ま た 何 の 咎 を 造 り 醜 陋 形 を 受 け て

、 畜 生 の よ う で あ る の か と

、 仏 に 娘 の 前 世 の 因 縁 を 聞 く 言 葉 か ら も 解 る

。 そ し て 金 剛 醜 女 は

、「 心

遥 礼

世 尊

、 唯

、 願 垂

、 仏 に 愍 み を 垂 れ よ と 願 う の で あ る

。 第 一 節 6 で 考 察 し た よ

う に

、 末 摘 花 は

「 わ が 身 は 憂 く て

」 と

、 玉 鬘 も

「 い か な る 罪 深 き 身

」 と

、 自 ら の 前 世 の 罪 を 責 め る こ と は

、 金 剛 醜 女 が

「 自 ら の 罪 咎 を 責 む

」 と 同 じ 情 況 と い え る

。 そ し て 末 摘 花 は 仏 菩 薩 の 変 化 如 く の 源 氏 を 念 じ

、 玉 鬘 は 長 谷 観 音 を 念 じ

、 金 剛 醜 女 は 仏 を 念 じ と

、 三 人 は 仏 や 菩 薩 に 救 い を 請 う こ と が 共 通 す る

。 7

主 人 公 の 変 貌 賢 愚 経 の 大 団 円 は

、 人 離 れ し た 醜 女 が 変 貌 す る 場 面 で あ る

。 女

仏 身

、 益 増 歓 喜

。 因

歓 喜

、 悪 相 即 滅

。 身 体 端 厳

、 猶 如

天 女

( 賢 愚 経

、 三 五 七

金 剛 醜 女 は

、 仏 身 を 見 て い っ そ う 歓 喜 し

、 歓 喜 に 因 っ て 悪 相 が す ぐ に 消 え

、 身 体 は 端 厳 に 天 女 の よ う に 美 し く な る の で あ る

。 源 氏 物 語 は 現 実 に そ っ た 内 容 な の で

、 末 摘 花 の 容 姿 が 美 し く 変 貌 す る こ と は な い

。 し か し

、「 か の

花 散 里 も

、 あ ざ や か に 今 め か し う な ど は 花 や ぎ た ま は ぬ 所 に て

、 御 目 移 し こ よ な か ら ぬ に

、 咎 多 う 隠 れ に け り」

、 華 や か さ の な い 花 散 里 と 大 し た 違 い が な く

、 欠 点 の 多 く は 隠 れ て し ま っ た と あ る

。 金 剛 醜 女 の

「 悪 相 即 ち 滅 す

」 と 末 摘 花 の

「 咎 多 う 隠 れ に け り

」 は 対 応 す る と い え る

。 仏 の 利 益 で 美 し く 変 貌 し た 金 剛 醜 女 を み た 父 王 は

、「 王 見

婦 端 政 殊 特 少

と 娘

の 美 し く 整 っ て い る 様 子 は

、 と り わ け て 優 れ て 並 ぶ も の が 少 な い と あ る

。 右 近 は 玉 鬘 の 容 姿 に つ い て

、 見

た て ま つ る に

、 命 の ぶ る 御 あ り さ ま ど も を

、 ま た さ る た ぐ ひ お は し ま し な む や と な む 思 ひ は べ る に

、 い づ く か 劣 り た ま は む

。 も の は 限 り あ る も の な れ ば

、 す ぐ れ た ま へ り と て

、 頂 き を 離 れ た る 光 や は お は す る

( 玉 鬘

・ 三

〇 六

) と

、 命 が 延 び る 源 氏 や 紫 の 上 の お 二 人 の 美 し い 様 子 を

、 他 に 並 ぶ も の は な い だ ろ う と 思 っ て い た が

、 玉 鬘 の 美 し さ は 劣 っ て い な い

、 仏 の 頭 を 離 れ る よ う な 光 は な い け れ ど も と

、 こ の 上 な い 誉 め よ う で あ る

。「 双 ぶ

」 と

「 た

ぐ ひ

」 は

、「 相 な ら ぶ も の

」 と い う 意 味 で

、 金 剛 醜 女 が 仏 の 利 益 で 変 貌 し た あ と の

、 特 別 に す ぐ れ 並 ぶ も の が 少 な い と い う 美 し さ の 表 現 が 一 致 す る

。 8

邸 に 迎 え ら れ る 波 斯 匿 王 は

、 金 剛 醜 女 が 端 厳 美 麗 に 変 貌 し た こ と を 聞 く と

、 審

是 者

、 速 往 将 来

、 即 時 厳 車

、 迎

女 入

( 賢 愚 経

・ 三 五 八

「 審 ら か に そ う な ら ば

、 す ぐ に 往 き

、 引 き 連 れ て 来 よ

」 と 宮 殿 に 迎 え 入 れ よ と 命 ず る

。 こ れ は 源 氏 が

「 容 貌 な

ど は

、 か の 昔 の 夕 顔 と 劣 ら じ や

、 右 近 に 玉 鬘 の 容 貌 に つ い て 尋 ね

、「 こ よ な う こ そ 生 ひ ま さ り て 見 え た ま ひ し か

、 母 夕 顔 よ り も 格 段 に 美 し く 成 人 し た こ と を 確 認 す る と

、「 さ ら ば か の 人

、 こ の わ た り に わ た い た て ま つ ら む

、 娘 と し て 六 条 院 に 引 き 取 る 手 順 が 一 致 す る

。 ま た 波 斯 匿 王 が

「 す ぐ に 厳 車 に て 宮 に 迎 え 入 れ よ

」 と

、 立 派 な 車 を 用 意 し て 迎 え 入 れ る の は

、 玉 鬘 が 六 条 院 に 迎 え ら れ る 際 に

、「 御 車 三 つ ば か り し て

、 人 の 姿 ど も な ど

、 右 近 あ れ ば

、 田 舎 び ず し た て た り

。 殿 よ り ぞ

、 綾

、 何 く れ と た て ま つ れ た ま へ る

と 牛 車 を 三 台 し た て

、 お 供 の 身 な り な ど も 右 近 が つ い て 田 舎 び る こ と の な い よ う と

、 源 氏 の 心 配 り に よ り

、 立 派 に 整 え て 六 条 院 に 入 る こ と も 対 応 す る

。 末 摘 花 の 場 合 も

、 源 氏 は 末 摘 花 の 誠 実 な 心 を 知 る と

、 何 年 も 訪 れ な か っ た こ と を 不 憫 に 思 い

、 か ね て か ら 造 ら せ て い た 二 条 の 東 院 に 迎 え る の で あ る

金 剛 醜 女 と 玉 鬘 を 邸 に 迎 え る の は 父 親 で

、 末 摘 花 と 源 氏 の 関 係 に 違 い が 見 ら れ る が

、 辛 苦 の 末 に 立 派 な 邸 に 迎 え ら れ る こ と は 共 通 す る と い え る

。 こ の よ う に 末 摘 花 と 玉 鬘 の 共 通 点 は

、 1 か ら 8 の 賢 愚 経 の 要 素 と 一 致 す る こ と が わ か る

。 第 一 節 で 考 察 し た 4

「 求 婚

」 の 要 素 は 仏 典 に み ら れ な い が

、 金 剛 醜 女 説 話 に

① 后 曰

末 利 夫 人

。 其 形 貌 吉 十 六 大 国 無

。 時 夫 人 生

一 女 子

― 中 略

― 時 成

十 二 三

之 間

末 利 夫 人 女 美

、 従

十 六 大 国

各 相 訪

(

注 好 撰

・ 二 八 ウ)

、 金 剛 醜 女 の 母 で あ る 末 利 夫 人 は 十 六 大 国 の な か で 最 も 美 し い の で

、 女 も 美 し い で あ ろ う と

、 十 二 三 の 年 頃

に な る と

、 十 六 大 国 よ り 求 婚 さ れ る と い う 内 容 が あ る

。 こ の「 末 利 夫 人 の 娘 の 美 し い こ と を 推 し 量 っ て」 と

、 親 が 優 れ て い る こ と に よ り 求 婚 を 受 け る の は

、 第 一 節 4 で 考 察 し た よ う に 末 摘 花 と 玉 鬘 が 競 っ て 求 婚 を 受 け る こ と に

ドキュメント内 源 氏 物 語 の 人 物 造 型 (ページ 72-87)

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