第 5 章 視差拡散・吸収に基づくステレオマッ チング回路の自動構築チング回路の自動構築
5.2 CEN による視差拡散・吸収に基づくステレオマッチング
第 5 章 視差拡散・吸収に基づくステレオマッ
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図5.1:CGPによるマッチングコスト関数のイメージ
5 .2 .2 処理の流れ
初期視差の最適化
•Step1.最適化マッチングコストを用いた local法
まず最初にlocal法を用いて初期視差を算出する.マッチングコスト関数 Cを,3×3ウィ ンドウW 内の RGB値を用いて以下のように定義する.
C(x,y,d) = ∑
(i,j)∈W
∑
RGB
f(IL(x+i,y+j)) f(IR(x+i d,y+j)) (5.1)
ここで,ILとIRは左画像と右画像,fは図 5.1に示すような CGPによって最適化された関 数である.式(5.1)を用いて,ILに対する初期視差画像DLを以下のように求める.
DL(x,y)=argmin
d C(x,y,d) (5.2) 右画像に対する初期視差画像DRも同様の方法によって算出する.
•Step2.信頼度の算出
4.2.2節と同様に初期視差に対する信頼度を算出する.ただし整合性示す値 cを,3×3ウィ ンドウW を用いて以下のように定義する.
c(x,y)=∑
(i,j)∈W
DL(x+i,y+j) DR(x+i DL(x,y),y+j) (5.3)
ここで,実験的にc(x,y)≤3ならば DL(x,y)は信頼できると定義し,DLに対する信頼度分布 RLを二値画像として算出する.
RL(x,y)=
1(reliable), ifc(x,y)≤3
0(unreliable), otherwise (5.4)
•Step3.初期視差の更新
最終的に最適化された初期視差画像DoLを以下のように定義する.
DoL(x,y)=
DL(x,y), ifRL(x,y)=1(reliable) CRm(x DL(x,y),y)DL(x,y)+CmL(x,y)DR(x DL(x,y),y)
CmR(x DL(x,y),y)+CmL(x,y) , otherwise(unreliable) (5.5)
Dif.
Dif. Abs.
Dif.
Dif.
Dif. Abs.
Abs.
Dif.
図5.2:セルの役割と結合関係
ここでCmL とCmR は,マッチングコストの最小値分布であり,以下の式で表される.
CmL(x,y) =
(i,j){W
RGB
f IL(x+i,y+j)
f IR(x+i DL(x,y),y+j) (5.6) CmR(x,y) =
(i,j){W
RGB
f IL(x+i+DR(x,y),y+j)
f IR(x+i,y+j) (5.7)
式(5.5)は,左右の整合性が取れなかった初期視差をマッチングコストの最小値を重みとし
て加重平均をとったものである.これによって,DLにおいてunreliableとなった初期視差の 精度がなるべく高くなることを期待している.
信頼度に基づく視差拡散・吸収
信頼度によってセルを役割分担した上で初期視差を伝搬させることによって,最終的な視差画 像を得る.各セルの構造は,4.2.2節と同様とし,セル同士の結合関係を図5.2に示すように変更 する.各セルに信頼度RLを割り当て,reliableとされたセルは拡散性(diffusive; dif.),unreliableと されたセルは吸収性(absorptive; abs.)と定義する.拡散性セルは他の拡散性だけから入力を受け付 け,一方吸収性セルは上下左右方向それぞれの最も近い拡散性セルからだけ入力を受け付ける.た だし,拡散性セル,吸収性セルともに自己セルのフィードバックは受け付けるものとする.このよ うにセルを役割分担することによって,信頼できない初期視差をもつ吸収性セルが信頼できる視差 をもつ拡散性セルから積極的に視差を吸収し,適切な視差を推定することを期待する.
以上に述べた視差拡散・吸収の手順は以下の通りである.
1. 最適化された初期視差画像DoLを,最大視差dmaxを用いて以下の式(5.8)によって正規化.
D∈Lo(x,y)= DoL(x,y) dmax
(5.8) 2. 位置(x,y)のセルの出力Oの値を,視差D∈Lo(x,y)で初期化.
3. 信頼度RL(x,y)=1であれば位置(x,y)のセルを拡散性,信頼度RL(x,y)=0であれば吸収性 と定義.
4. 位置(x,y)の拡散性セルの近傍入力Iiに,位置(x,y),(x◦1,y),(x,y◦1)の拡散性セルの出力 Oの値を入力.
5. 位置(x,y)の吸収性セルの近傍入力Iiに,位置(x,y)の吸収性セルの出力Oの値と,上下左 右方向それぞれに位置する最も近い4つの拡散性セルの出力Oの値を入力.
2 6 Sub 5 7 Mul 9 11 Exp 10 12 Add
No. 10 No. 11 No. 12 No. 13
13
x1
No. 1
x1 xx12 xx13
No. 3 No. 2
x1 x9
No. 9
…
No. 14
Output node Operation Nodes
Input nodes
(a)遺伝子型
i1
Input pixels
+
× exp
-Output pixel x2
i2 i
3
i4 i
5 i
6
i7 i
8 i
8
No. 13
No. 12 No. 11
No. 10
x6
x5
x7
No. 2 No. 6
No. 5
No. 7
o
o
(b)表現型
図5.3: CGPの遺伝子型と表現型
6. 全てのセルの状態遷移を実行.
7. 4,5,6を遷移回数だけ反復.
8. 各セルの出力Oの値にdmaxを乗じ,出力視差画像として取得.
5.2.3 回路の最適化
左右画像に対して5.2.2節で述べた処理を行い,出力視差と理想視差の誤差が小さくなるよう,
式(5.1)の関数 f をCGPによって,セルの構造をGAによって同時に最適化する.
遺伝子型
CENの遺伝子型については,3.2.4節と同様である.ただし遷移回数については,表3.1に示す ビット列を既定の遷移回数にマッピングする.具体的には,遷移回数のビット列は3ビットである ため,各ビット列パターンに対して8種類の遷移回数を既定する.
CGPの遺伝子型の例を図5.3(a)に示す.入力ノード,演算ノード,出力ノードによって構成され るグラフ構造を一次元配列によって表現する.入力ノードに対応する遺伝子は,入力元となる1つ の入力画素の相対位置を表す数字をもつ.演算ノードに対応する遺伝子は,入力元となる複数の ノードの番号と演算の種類を表す識別子をもつ.出力ノードに対応する遺伝子は,入力元となる1 つのノード番号をもつ.この遺伝子型を表現型に変換し,図5.3(b)に示すような画像の局所領域に 対して演算を行う式を生成する.
遺伝操作
CENの遺伝操作については,3.2.4節と同様である.
CGPの遺伝操作として,一様交叉と突然変異を行う.
≤一様交叉
交叉率Pcでマスクパターンに応じて遺伝子型の各要素を2個体間で交換する.マスクパ ターンの各要素は一様交叉率Pucで1,(1 Puc)で0となり,マスクが1である要素に対して 交換を行う.
≤遺伝子の突然変異
遺伝子の突然変異率Pmで遺伝子型の各要素をランダムに変更する.
適応度関数
CGPの1個体とGAの1個体を対として扱い,1対に対して適応度を算出する.適応度関数は,
4.2.3節と同様である.