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なぜタイではタイ音階なの

     か

 M・ウェーバーはその著、『音楽社会学』において、

なぜ地球上のある場所には、多声性の音楽が現れ、他の 場所にはそれが欠けたのか、又かなり広く行きわたって いる多声性から、一体なぜ地上のある一点においてのみ ポリフォニー音楽や、和声的ホモフォニー音楽そしてま た近代的音組織が発展し得たか、疑問を投げかけている

(ウェーバー1967:172)。

第1節 タイ音階成立の事情

1.ウェーバーは、12平均律の完成を、西欧の和声、和 声的音楽発展の切り札として位置づけている(同上書:

199)。

 彼は、西欧的音楽発展の諸条件の一つとして、西欧流 の音譜の発明をあげ、.この記譜法に立脚する多丁丁が、

音組織の和声的合理化を最も強力に促進したという(同 上書:182)。

 そして、我々の耳は、教育のおかげで、純旋律的な表 現要求から生まれたどんな音程をも無意識に和声的に解 釈するようになっているが、我々とちがった耳は、和声 的に秩序づけられていない音程に対して、それを享受す ることにも、広く慣らされ得るという(同上書:185)。

 和声的に構成されていない音組織の中では、旋律:法が 比較的自由に動ける反面、逆に音組織の内側から音間隔 の対称性、及び比較可能性を遇い出そうという動きとな り、この場合、オクターブを和声的に分割すること、す なわちオクターブを不等間隔に分割することを基礎とし たのではいかなる合理化の試みも成功しないのであっ て、すべての音階は、つぎのような場合にもっともひろ

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い意味で、整律されることになるとする。

 つまり、音程の純粋性が相対化され、音一風の純粋性 をただ近似化することによって、種々の音程相互間の矛 盾を平均化する方法で、間隔原理が守られる(同上書:

197)。この努力の結果生み出されたものが、12等分平 均律であり、ここにおいて、自由な和音進行、自由な移 調が保証され理論面ではラモー(1683−1764>の、実際 の演奏面ではJ・S・バッハの平均律クラヴィーア曲集の 影響のもとに、究極的な勝利をおさめたとしている(同 上書:200)。

 音間隔の純粋性を近似的にする、つまり各音程相互間 の矛盾を平均化する(誤差を各音程にばらまく)ことに よって、和声進行という演算:を成立させたのが西洋音階 であるのに対し、この平均化という作業を純粋に追い求 めて、オクターブを全く同じ音間隔に分割した極限の形 態がシャム音楽の7等分平均律である。この極限の状況

においては、和声的音程に準拠した整律:はもはや問題に ならず、 音楽的 ではあるが、和声以外の基盤に立つ 音階が成立するとウェーバーは結論づけている(同上 書:197)。

2.黒沢隆朝は、7等分平均律の成立過程を次のように推 定している(黒沢1970:194−197)。彼は実際にタイ の音楽の演奏を聞くことにより、タイ音階を5音音階と してとらえ、これは、中国から伝えられたもので、それ を今に伝えているものが、タイ北部やラオスのケーンと 考える。たしかに、このケーンの音階は、三分損益法に

よる音階と考えられる。

 彼は、ここで、タイ音楽が、5音音階からなるとする と、基音からの完全5度が、音階の柱をなすと考えるの が常識であるとする。ここにおいて、ソー・ウー、ソ

ー・ hゥアンの調弦が5度を基準としている点に着目

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し、この5度を平均に分割したことが、オクターブを7つ にわることにつながった、とみる。

 さらに、私見として、これを確定的にしたのが、おな じ弦楽器のテヤケーではないかという。この楽器のノム

(支柱)は、固定的であるので、まず、オクターブを定 め、これから5度をとりあえず決定する。これを基準と

して、その他の支柱を等比間隔に立てる。この作業を成 立させるためには、最初の5度を狭くする作業が生じて

くる。

 タイ音階は、耳より目が先行して定められ、その結果 各音程が等分に分割されているかどうか耳でたしかめた 音階ではなかろうかという。

 ことの当否をタイの演:奏家に質問しても「昔からそう だった」という返答のみで、「どこからでも始められて 便利だ」という証言の紹介(黒沢1970:198)は、タイ 人のタイ音階に対する一面を語っている。

3.田辺尚雄は、「タイ国人が如何にして、その楽器を 数理的に7等分して調律するのであるかその方法につい ては不明であるが恐らく特殊の楽器製作者が、古来より の伝授によって其の特殊の聴覚を利用して行うものであ ろうと推測される」 (田辺1951:1849)と述べる一 方、 「近代のタイ国が、何故に斯くのごとき7等分平均 律を使用するにいったかという理由については、可成り 明らかなものがある」として黒沢隆朝の調査結果を引用

している(同上書:19)。

 それは、 「タイ国は、北より中国、西よりビルマ及び インド、東よりベトナム、カンボジア、南よりジャワ

と、音律を異にした四周からの音楽の投入があるのでそ の種々異なった音律のいずれにもそのまま相応じられる 為には、全音と半音との区別をなくして、その全ての音 程を均一なるものとなすをもって便利とする。しかも、

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中国も印度も西洋も近代において、8度の問に7つの音を 含んでおり、かつその旋法は大いに異なっている。その 相違せる原因は、全音の聞に配置された半音の相違にあ る。それ故8度を7等分することによってで直ちにそのま ま中国にも、印度にも、西洋にも応ずることができる。

まことにもっともなしだいであり、数理上、もっとも簡 単にして、明瞭な方法であると感服されるしだいであ

る」 (同上書:19)。

 ここから田辺は、例を西洋音階にとった場合の誤差を 検討している。その研究結果は次表である。

I

w w V

H

I

タイ国

7平均律 輔一■¶一酬幽一㎞

@ 純

6,000 T,143 S,286 R,428

ドシラソ

タイ・7等分平均律と西洋の長音階との比較        西洋長音階

2.571

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