f(t), (t≥0)で定義された関数とする.このとき,
L(f)(s) =F(s) =
∫ ∞
0
f(t)e−stdt (4.31)
をfのラプラス変換という.すべてのs∈Cに対して,L(f)(s)の右辺の式が収束するとは限らない.関数fに
よって,ℜs > s0となるすべてのs∈Cに対して,これが収束するようなs0が存在することが知られている.こ
のs0を収束座標pといい,領域{s∈C:ℜs > s0}を収束域という.簡単のため,L(f)(s)をF(s)と表すことも ある.
一般に
L(f)(s) =L(f)(s), (ℜs≥∃α) =⇒ f(t) =g(t)
が成り立つことが知られているので,像関数F(s)に対してf(t)を対応さす写像をラプラス逆変換といい,
L−1(F(s)) =f(t)
と表す.また,次のBromwichの定理からでも,ラプラス逆変換が定義できることがわかる.
定理4.20 (Bromwich(ブロムウィッチ)の定理) x ≥ 0で定義された区分的に滑らかな関数f(x)に対して,
L(f)(z)の絶対収束座標をs0とする.このとき,
f(x+ 0) +f(x−0)
2 = 1
2πi
∫ s+i∞ s−i∞
F(z)ezxdz (4.32)
が成り立つ.ただし,s > s0
証明 f(x)をx≤0の範囲では0と定義しておく.z=s+ixとすると,
L(f)(s+ix) =
∫ ∞
0
f(t)e−(s+ix)tdt=
∫ ∞
−∞
(f(t)e−st)e−ixtdt=√
2πf\(t)e−st(x) そこで,L(f)(s+ix)をフーリエ逆変換を考える.フーリエ変換の反転公式より,
√1 2π
∫ ∞
−∞L(f)(s+ix)eixtdx= 1
√2π
∫ ∞
−∞
√2πf(t)e\−st(x)eixtdx=√
2πf(t)e−st;
∴ 1 2π
∫ ∞
−∞L(f)(s+ix)eixtdx=f(t)e−st この式のe−stを左辺に移項すると,
f(t) = 1 2π
∫ ∞
−∞L(f)(s+ix)e(s+ix)tdx x−→z=s+ixに変数変換すると,次の求める式が得られる
f(t) = 1 2πi
∫ s+i∞
s−i∞ L(f)(z)eztdz
♡ 例 4.21 λ∈Rとする.具体的な関数のラプラス変換を求めてみよう.
(1) 単項式のラプラス変換部分積分を繰り返し,
L(tn)(s) =
∫ ∞
0
tne−stdt= [
tne−st
−s ]∞
0
+
∫ ∞
0
n
stn−1e−stdt
=n s
∫ ∞
0
tn−1e−stdt=· · ·=
∫ ∞
0
n!
sne−stdt= n!
sn+1;
∴ L(tn)(s) = n!
sn+1 (2) 指数関数のラプラス変換
L(eλt)(s) =
∫ ∞
0
eλte−stdt=
∫ ∞
0
e(λ−s)tdt=
[e(λ−s)t λ−s
]∞ 0
= 1
s−λ, (ℜs−λ >0);
∴ L(eλt)(s) = 1
s−λ, (ℜs > λ収束座標)
(3) 三角関数のラプラス変換
L(cosλt)(s) =L
(eiλt+e−iλt 2
)
= 1 2
{L( eiλt)
(s) +L( eiλt)
(s)}
= 1 2
{ 1
s−iλ+ 1 s+iλ
}
= s
s2+λ2;
∴ L(cosλt)(s) = s s2+λ2 同様にすれば, L(sinλt)(s) = λ
s2+λ2 (4) 超関数(デルタ関数)のラプラス変換
L(δ(t))(s) =
∫ ∞
0
δ(t)e−stdt= 1, ∴ L(δ(t))(s)≡1
命題4.22 (ラプラス変換の性質) f, gは共通の収束域を持つとする.また,f, gは必要に応じて適当な滑らかさ を仮定し,λ, µ≥0, F(s) =L(f)(s)とする.
(1) 線形性 L(af+bg)(s) =aL(f)(s) +bL(g)(s) (2) 相似 L(f(λt)) = 1
λF (s
λ )
(3) 第一移動 L(f(t−λ)) =eλsF(s) (4) 第二移動 L(f(t+λ)) =eλs
( F(s)−
∫ λ 0
e−stf(t)dt )
(5) 像の移動 L(eµtf(t)) =F(s−µ)
(6) 微分 L(f′(t)) =sF(s)−f(0), L(f(n)(t)) =snF(s)−
n−1
∑
r=0
f(r)(0)s(n−1)−r (7) 像の微分 L(−tf(t)) =F′(s), L((−t)nf(t)) =F(n)(s)
(8) 積分 L (∫ t
0
f(τ)dτ )
= 1 sF(s) (9) 像の積分 L
(f(t) t
)
=
∫ ∞
s
F(σ)dσ
(10) 畳み込み関数ラプラス変換の畳み込み関数を f∗g(t) =
∫ t 0
f(τ)g(t−τ)dτ と定義する.関数f∗gのラプラス変換は,次のようになる.
L(f∗g)(s) =L(f)(s)L(g)(s) (4.33)
証明 この後の議論で必要になる(5)(6)(8)(10)だけを証明する. 他もそれほど難しくないので各自で示せ.
(5)
L(eµtf(t)) =
∫ ∞
0
eµtf(t)e−stdt=
∫ ∞
0
eµtf(t)e−(s−µ)tdt=F(s−µ) (6)部分積分を用いて,
L(f′(t))(s) =
∫ ∞
0
f′(t)e−stdt=[
f(t)e−st]∞
0 +
∫ ∞
0
sf(t)e−stdt
=−f(0) +sF(s), (∵ lim
t→∞f(t)e−st= 0を仮定);
∴ L(f′(t))(s) =sF(s)−f(0) これを繰り返せば導ける.例えば
L(f′′(t))(s) =sL(f′(t))(s)−f′(0) =s(sL(f)(s)−f(0))−f′(0) =s2L(f)(s)−sf(0)−f′(0) (8)部分積分を用いよ.lim
t→∞
∫ t 0
f(τ)dτ·e−st= 0を仮定すると,
L (∫ t
0
f(τ)dτ )
(s) =
∫ ∞
0
∫ t 0
f(τ)dτ·e−stdt= [∫ t
0
f(τ)dτ· e−st
−s ]∞
0
+1 s
∫ ∞
0
f(t)e−stdt=1 sF(s) (10)
L(f∗g)(s) =
∫ ∞
0
f ∗g(t)e−stdt=
∫ ∞
0
∫ t 0
f(τ)g(t−τ)dτ·e−stdt=
∫ ∞
0
∫ t 0
f(τ)g(t−τ)e−stdτ dt ω+σ =t, σ =τと変数変換すると(すなわ
ち,ω=t−τ, σ=τ)
∂(ω, σ)
∂(t, τ) =
1 −1
0 1
= 1 なので,重積分の変数変換公式より,
0 t 0
τ σ
ω τ=tの直線
=⇒ 積分範囲の変更
∫ ∞
0
∫ t 0
f(τ)g(t−τ)e−stdτ dt=
∫ ∞
0
∫ ∞
0
f(σ)g(ω)e−(ω+σ)s ∂(ω, σ)
∂(t, τ) dσdω
=
∫ ∞
0
∫ ∞
0
f(σ)g(ω)e−(ω+σ)sdσdω
=
∫ ∞
0
f(σ)e−σsdσ·
∫ ∞
0
g(ω)e−ωsdω=L(f)(s)L(g)(s);
∴ L(f∗g)(s) =L(f)(s)L(g)(s)
♡ RLC回路の微分方程式
Ldi(t)
dt +Ri(t) + 1
Cq(t) =v(t)
をラプラス変換を用いて解いてみよう.ただし,i(t), q(t), v(t)はt≥0で定義されている(t <0ではi(t) =q(t) = v(t) = 0と考える).
この式を一斉にラプラス変換すると,(1)の線形性より,
LL (di(t)
dt )
+RL(i(t)) + 1
CL(q(t)) =L(v(t)) q′(t) =i(t)より,q(t) =
∫ t 0
i(τ)dτ, (q(0) = 0と仮定する),上の(6)(8)より
L(sF(s)−i(0)) +RF(s) + 1 C
F(s)
s =L(v(t))(s) F(s)(Ls+R+ 1
Cs)−Li(0) =L(v(t))(s)
ただし,F(s) =L(i(t))(s).ここで,F(s)で上の方程式を解くと
F(s) = 1
Ls+R+ 1 Cs
L(v(t))(s) + 1 Ls+R+ 1
Cs Li(0)
ここでさらに時刻t= 0での電流をi(0) = 0と仮定すると
F(s) = s
Ls2+Rs+C−1L(v(t))(s) ここで,Ls+R+ 1
Csを特性関数,又は,インピーダンス,H(s) = 1 Ls+R+ 1
Cs
= s
Ls2+Rs+C−1 を伝達関 数という.この伝達関数のラプラス逆変換をL−1
( s
Ls2+Rs+C−1 )
=w(t)とすると,(10)より,
L(i(t))(s) =F(s) =L(w∗v)(s) ラプラス逆変換すれば,次を得る.
i(t) = (w∗v)(t) =
∫ t 0
w(τ)v(t−τ)dτ 結論として,まとめれば,次の定理になる.
定理4.23 (Duhamel(デュアメル)の合成定理) (4.26)の解の電流i(t)は i(t) =
∫ t 0
w(τ)v(t−τ)dτ (4.34)
で与えられる.ただしw(t)は伝達関数H(s) = s
Ls2+Rs+C−1 のラプラス逆変換である.
注意4.24 定理4.23で述べたことは,(4.26)をより一般した定係数線形微分方程式に対しても成立する.
具体的に,L−1
( s
Ls2+Rs+C−1 )
=w(t)を求めてみよう.Ls2+Rs+C−1= 0が異なる解α, βを持つ場合 と重解を持つ場合に分けて議論する.
(1) 異なる場合Ls2+Rs+C−1=L(s−α)(s−β), (α̸=β) 部分分数展開により,
1
L(s−α)(s−β) = 1
α−β = 1 L(α−β)
( α
s−α− β s−β
)
; 逆ラプラス変換をすると,命題4.22の(5),例4.21の(1)より,
w(t) =L−1
( 1
L(s−α)(s−β) )
= 1
L(α−β) (
L−1 ( α
s−α )
− L−1 ( β
s−β ))
= 1
L(α−β)
(αeαt−βeβt)
(i)α, βが実数の場合(CR2>4L),L, R, C≥0なので,α, β≤0となる.
w(t) = 1 L(α−β)
(αeαt−βeβt)
(ii)α, βが実数でない場合(CR2<4L),ℜα=−R
2L <0, β=αなので w(t) = 1
L(α−β)
(αeαt−βeβt)
= 1
L(α−α)
(αeαt−αeαt)
= 1
Lℑ(α)ℑ(αeαt) ただし,ℜ(α), ℑ(α)は複素数αのそれぞれ実部,虚部を表す.
(2) 重解の場合Ls2+Rs+C−1=L(s−α)2 すなわち,α=−R
2L <0, CR2= 4L 部分分数展開より,
1
L(s−α)2 = 1 L
( 1
s−α+ α (s−α)2
)
; 逆ラプラス変換をすると,命題4.22の(5),例4.21の(1)より,
w(t) =L−1
( 1 L(s−α)2
)
= 1 L
( L−1
( 1 s−α
) +L−1
( α (s−α)2
))
= 1 L
(eαt+teαt)
いずれの場合も,lim
t→∞w(t) = 0のなり,伝達関数H(s)の解が実数でない場合,振動しながら減衰する.
注意4.25 ここでw(t)をラプラス逆変換を用いて求めた方法は,一般の定係数線形微分方程式でも同様に解が求 められる.この求め方の特徴は,下の図のように,微分方程式を代数的に解けることである.
微分方程式 ラプラス変換
代数方程式 解を求める ラプラス逆変換
代数方程式の解 微分方程式の解
次に,伝達関数H(s)と周波数伝達関数H(iω)の関係,インパルス応答h(t)とw(t)の関係を見てみよう.線形 システムΦの定義とデュアメルの定理4.23,及び,t−τ <0のときv(t−τ)≡0により,
Φ(v(t)) =i(t) =
∫ t 0
w(τ)v(t−τ)dτ =
∫ ∞
0
w(τ)v(t−τ)dτ ここで,v(t) =δ(t)を代入すれば,
h(t) = Φ(δ(t)) =
∫ ∞
0
w(τ)δ(t−τ)dτ =w(t); ∴ h(t) =w(t) (4.35) また,周波数伝達関数H(iω)は
Φ(eiωt) =
∫ ∞
0
w(τ)eiω(t−τ)dτ =
∫ ∞
0
w(τ)e−iωτdτ·eiωt
=L(w(τ))(iω)eiωt=H(s)|s=iωeiωt;
∴ H(iω) =H(s)|s=iω
まとめると,次のようになる.
命題4.26 周波数伝達関数H(iω)は,伝達関数H(s)のsにiωを代入したものである.すなわち,
H(iω) =H(s)|s=iω (4.36)
また,伝達関数H(s)のラプラス逆変換w(t)は,インパルス応答h(t)である.すなわち,
L−1(H(s))(t) =h(t) (4.37)
5 ラプラス 変換入門
4章4節の「ちょこっと,ラプラス変換」の内容を正確に記述する.そのため内容が重複している箇所が多く ある.