2.5 臨床に関する概括評価
2.5.5 安全性の概括評価
2.5.5.6 その他の重要な有害事象
2.5.5.6.1 投与中止に至った有害事象
増量試験のブラインド期間における投与中止に至った有害事象発現率は 3mg/kg 群 7.1%
(7/99例),6mg/kg群8.7%(9/104例),10mg/kg群4.8%(5/104例),増量群6.7%(14/208例)
であった.増量群で発現率の高かった器官別大分類ごとの投与中止に至った有害事象は「全身 障害および投与局所様態」「皮膚および皮下組織障害」であった(いずれも1.4%).3mg/kg群 では「感染症および寄生虫症」の発現率が最も高かった(3.0%).増量群で複数例に発現した 投与中止に至った有害事象は発熱(2例,1.0%)であり,これらの事象はInfusion reactionで あった.投与中止に至った有害事象がInfusion reactionであった症例は3mg/kg群7例中2例,
増量群14例中6例であった.また,投与中止に至った有害事象が感染症であった症例は3mg/kg 群7例中3例,増量群14例中3例であった.
海外試験の14〜54週における投与中止に至った有害事象発現率は3mg/kg 群5.4%(36/666 例),増量群5.9%(52/883例),プラセボ群2.1%(7/330例)であった.増量群で発現率の高 かった器官別大分類ごとの投与中止に至った有害事象は「感染症および寄生虫症」「全身障害 および投与局所様態」であった(それぞれ2.4%,0.9%).これらの事象は3mg/kg群において も認められた(それぞれ0.9%,1.4%).増量群で発現率の高かった投与中止に至った有害事象 は注入に伴う症状(0.9%),肺炎(0.5%)であり,これらの事象はInfusion reactionや感染症で あった.
3mg/kg 群と比べて,増量群における投与中止に至った有害事象発現率の上昇は認められな
かった.3mg/kg群,増量群ともに投与中止に至った有害事象にはInfusion reactionや感染症が 多いことが示唆された.なお,感染症については[2.5.5.6.2 感染症],Infusion reactionについ ては[2.5.5.6.3 Infusion reaction]に記載した.
2.5.5.6.2 感染症
増量試験のブラインド期間における感染症発現率は3mg/kg群56.6%(56/99例),6mg/kg群 54.8%(57/104例),10mg/kg群64.4%(67/104例),増量群59.6%(124/208例)であった.増 量群で発現率の高かった器官別大分類ごとの感染症は「感染症および寄生虫症」「呼吸器,胸 郭および縦隔障害」であった(それぞれ49.5%,13.0%).これらの事象は3mg/kg群において も多く認められた(それぞれ 49.5%,8.1%).増量群で発現率の高かった感染症は鼻咽頭炎,
上気道の炎症であった(それぞれ28.4%,8.7%).これらの事象は3mg/kg群においても多く認 められた(それぞれ29.3%,6.1%).
投与中止に至った感染症発現率は3mg/kg群3.0%(3/99例),6mg/kg群2.9%(3/104例),
10mg/kg群0.0%(0/104例),増量群1.4%(3/208例)であった.増量群で複数例に発現した投
与中止に至った感染症はなかった.
重篤な感染症発現率は3mg/kg群3.0%(3/99例),6mg/kg 群1.9%(2/104例),10mg/kg群
4.8%(5/104例),増量群3.4%(7/208例)であった.発現事象では細菌性肺炎(10mg/kg群2
例),レジオネラ菌性肺炎(3mg/kg群1例),クリプトコッカス症(6mg/kg群1例),扁桃炎
(6mg/kg群1例)といった呼吸器感染症が多かった.その他は腸炎(3mg/kg群1例,10mg/kg 群1例),胃腸炎(10mg/kg群1例),腎盂腎炎(10mg/kg群1例),骨髄炎(3mg/kg群1例),
敗血症(3mg/kg群1例)であった.腸炎(2例)を除き,治験担当医師により本剤との関連性 は否定されなかった.重篤な感染症について,全ての事象で回復しており,程度が高度と判定 された事象はなく,投与中止に至った事象はレジオネラ菌性肺炎,クリプトコッカス症のみで 少なかった.多くの事象では,十分な観察のもと検査入院も含めた適切な処置により,用量に かかわらず重症化が防げると考えられる.
海外試験の14〜54週における感染症発現率は3mg/kg群43.5%(290/666例),増量群47.7%
(421/883例),プラセボ群42.4%(140/330例)であった.増量群で発現率の高かった器官別 大分類ごとの感染症は「感染症および寄生虫症」「胃腸障害」であった(それぞれ44.8%,2.4%).
これらの事象は3mg/kg群においても多く認められた(それぞれ39.9%,1.4%).増量群で発現 率の高かった感染症は上気道感染,副鼻腔炎であった(それぞれ 15.5%,6.1%).これらの事
象は3mg/kg群においても多く認められた(それぞれ14.3%,8.1%).
重篤な感染症発現率は3mg/kg群3.8%(25/666例),増量群4.1%(36/883例),プラセボ群 3.6%(12/330例)であった.増量群で発現率の高かった重篤な感染症は肺炎(1.2%),膿瘍(0.6%)
であった.肺炎は3mg/kg群においても認められた(1.2%).膿瘍は3mg/kg群で認められなか ったが,プラセボ→3mg/kg群では認められた(0.6%).
重篤な感染症は本剤投与において最も留意すべき事象の1つである.添付文書では重篤な感 染症を有する患者を禁忌としており,投与後に感染症が疑われる症状がみられた場合は十分な 観察と適切な処置を行うよう注意喚起している.
増量試験及び海外試験から,3mg/kg 群と比べて増量群における投与中止に至った感染症や
重篤な感染症の発現率の上昇は認められなかった.ただし,本剤は免疫反応を減弱する作用を 有し,正常な免疫応答に影響を与える可能性があるため,増量による重篤な感染症等のリスク の上昇は否定できない.また,重篤な感染症には呼吸器感染症が多かった.市販後データ等よ り,肺疾患の合併,高年齢,ステロイド併用が肺炎のリスク因子であることが知られている.
以上のことから,肺炎のリスク因子を有する患者や3mg/kg投与に忍容性がある患者であっ ても増量時には引き続き十分な観察,慎重投与が必要であり,感染症が発症した場合にも適切 な処置を早期に行うこと等が重要である.
また,本剤では播種性結核や粟粒結核を含む結核発現が報告されている.増量試験で結核発 症はなかった.海外試験のブラインド期間で結核はプラセボ→3mg/kg群2例(0.6%),3mg/kg 群5例(0.8%),増量群3例(0.3%)に発現し,増量による発現率の上昇は認められなかった.
ただし,結核の多くは陳旧性結核の再活性化が示唆されており,国内の結核罹患率は海外と比 べて高いことから,引き続き留意する必要がある.
2.5.5.6.3 Infusion reaction
増量試験のブラインド期間におけるInfusion reaction発現率は3mg/kg群17.2%(17/99例),
6mg/kg群24.0%(25/104例),10mg/kg群22.1%(23/104例),増量群23.1%(48/208例)であ った.増量群で発現率の高かった器官別大分類ごとのInfusion reactionは「皮膚および皮下組 織障害」「全身障害および投与局所様態」であった(それぞれ11.1%,8.2%).これらの事象は
3mg/kg群においても認められた(それぞれ9.1%,4.0%).増量群で発現率の高かったInfusion
reactionは発疹,発熱であった(それぞれ4.8%,3.8%).これらの事象は3mg/kg群においても
多く認められた(それぞれ4.0%,3.0%).投与回数別のInfusion reaction発現率において,3mg/kg 群,増量群ともに回数経過による増加傾向を示さなかった([表2.7.4.2.1.4.3−5]).
投与中止に至ったInfusion reaction発現率は3mg/kg群2.0%(2/99例),6mg/kg群2.9%(3/104 例),10mg/kg群2.9%(3/104例),増量群2.9%(6/208例)であった.増量群で複数例に発現 した投与中止に至ったInfusion reactionは発熱であった(2例,1.0%).
ブラインド期間に重篤なInfusion reactionは認められなかった.なお,オープン期間の1例
(0.3%)に重篤な Infusion reaction(アナフィラキシー様反応)が認められたが,本剤投与の 中止及び薬剤処置により回復した.
ATI陽性例ではInfusion reaction発現率の上昇が知られている.いずれの投与群においても ATI 陽性例での発現率が最も高く,次いで ATI 陰性例,ATI 評価不能例の順であった([表 2.7.4.2.1.4.3−7]).投与中止に至ったInfusion reactionはいずれもATI陽性例に発現したが,重 篤に至った事象はなかった.なお,ATI陽性率は3mg/kg群27.3%,6mg/kg群23.1%,10mg/kg
群12.5%であり,増量によりATI陽性率は低下した.
海外試験の14〜54週におけるInfusion reaction発現率は3mg/kg群11.9%(79/666例),増量
群9.9%(87/883例),プラセボ群 3.3%(11/330 例)であった.増量群で発現率の高かった器
官別大分類ごとのInfusion reactionは「全身障害および投与局所様態」「皮膚および皮下組織障
害」であった(それぞれ3.9%,2.4%).これらの事象は3mg/kg群においても認められた(そ
れぞれ6.2%,3.3%).増量群で発現率の高かったInfusion reactionは注入に伴う反応,頭痛で
あった(それぞれ1.5%,1.1%).これらの事象は3mg/kg群においても多く認められた(それ
ぞれ3.0%,0.8%).投与回数別のInfusion reaction発現率において,3mg/kg群,増量群ともに
初回が高く,その後は一定又は低下傾向であった([表2.7.4.2.1.4.3−13]).
重篤なInfusion reaction発現率は3mg/kg群0.8%(5/666例),増量群0.2%(2/883例),プラ
セボ群0.0%(0/330例)であった.増量群で発現した重篤なInfusion reactionは注入に伴う反
応(0.2%)であった.この事象は3mg/kg群においても認められた(0.3%).
ATIの産生とInfusion reactionについて,いずれの投与群においてもATI陽性例での発現率
が最も高く,次いでATI陰性例,ATI評価不能例の順であった([表2.7.4.2.1.4.3−14]).投与 中止に至ったInfusion reaction,重篤なInfusion reactionの発現率はATI陽性例の方が高かった が,ATI陰性例においても認められた.なお,ATI陽性率は3mg/kg群16.5%,増量群11.4%で あり,増量によりATI陽性率は低下した.
添付文書の警告欄には,Infusion reactionに関する注意喚起を行い,重篤な事象が発現した場 合には本剤投与を中止し,適切な処置を行うこととしている.更に重要な基本的注意欄には,
投与前の準備についても記載している.
2.5.5.6.4 悪性腫瘍
増量試験のブラインド期間における悪性腫瘍発現率は3mg/kg群1例(1.0%),増量群3例
(1.4%)であった.発現事象は3mg/kg群の1例に舌の悪性新生物・病期不明,6mg/kg群の1 例に子宮癌,10mg/kg群の1例に乳癌,別の1例に胆管癌が認められた.全ての事象で治験担 当医師により本剤との関連性は否定されなかった.胆肝癌は確定診断がされておらず,総胆管 癌の疑いとして報告された.なお,オープン期間では1例(0.3%)に甲状腺癌が認められた.
海外試験の悪性腫瘍発現率は3mg/kg群8例(1.1%),増量群16例(1.7%),プラセボ群 2 例(0.5%)であった.悪性リンパ腫は3mg/kg群1例(0.1%)に認められた.
海外で実施された全ての臨床試験データから本剤投与例での悪性腫瘍発現例数と米国一般 集団での予測発現例数を比較した.その結果,悪性リンパ腫以外の悪性腫瘍はそれぞれの発現 例数に相違なかったが,悪性リンパ腫は本剤投与例で多かった.2003年3月4日に実施され たFDA Arthritis Advisory Committeeでも米国で使用されるTNF阻害剤(インフリキシマブ,エ タネルセプト,アダリムマブ)の臨床試験からいずれの薬剤においてもプラセボ投与に比べて 悪性リンパ腫が多く発現していることが示された.しかしながら,疫学的に関節リウマチ患者 は一般集団より悪性リンパ腫の発現頻度が高いとされていること[33],臨床試験に参加した 患者の大部分は疾患活動性が高く,そのような患者集団ではリスクが更に上昇するとされてい ること[34],悪性リンパ腫のリスクは他の免疫抑制剤の影響も考えられること[35][36][37]