単な る心 理的 事実 であ るか のよ うに 扱わ れて いる が、 はた して そう であ ろう か。 これ は藤 田論 文に よる 伝統 的分 類論 批判 の前 提に かか わる 問題 であ る。 法律 行為 論・ 意思 表示 論で
﹁意 思﹂ とい うと き、 それ は﹁ 効果 意思
﹂を 指す ので あっ て、
﹁動 機﹂ は含 まな い概 念で ある
。た しか に伝 統的 民法 理論 が意 思表 示の 過程 を︽ 動機
↓効 果意 思↓ 表示 意思
↓表 示行 為︾ とし て分 析し た とき
、そ こで は当 時の 心理 学の 知見 が土 台と され てい たと され る。 しか し、 いう まで もな く、 この よう な意 思表 示 過程 論が 心理 学的 にみ て正 当で ある かと いう 問題 があ るわ けで あり
、ま たそ れ以 上に
、伝 統的 法律 行為 論・ 意思 表 示論 が﹁ 動機
﹂を 考慮 しな いこ とに 対し ては 民法 学に おい ても 強い 批判 がな され てき たと ころ でも ある
。け れど も、 民法 典自 体が
﹁意 思の 不存 在︵ 欠缺
︶﹂ と﹁ 瑕疵 ある 意思 表示
﹂を 体系 的に 区別 して いる こと もあ って
、﹁ 動 機﹂ と﹁ 効果 意思
﹂の 区別 は、 今日 でも 多数 の論 者に よっ て支 持さ れて いる とこ ろで ある
。も ちろ んそ こで の区 別 は、 もは や伝 統的 法律 行為 論・ 意思 表示 論の 心理 的意 思過 程論 がそ のま まの 形で 維持 され てい るわ けで はな く、 一 定の 客観 化が なさ れて おり
、そ の点 で法 的評 価が 加え られ た﹁ 意思
﹂が 前提 とな って いる よう に思 われ る。 伝統 的行 政法 理論 が、 行政 行為 を分 類し 各々 を定 義す るた めに 用い てき た﹁ 意思
﹂に つい ても
、そ れが 純粋 に行 為者 たる 行政 庁が
﹁意 思し てい たこ と﹂
、﹁ 欲し てい たこ と﹂ を指 して いた のか につ いて
、一 度立 ち止 まっ て検 討す る必 要が ある よう に思 われ る。 田中 二郎 は法 律行 為的 行政 行為 を定 義し て、
﹁意 思表 示を その 要素 とし
、行 為者 が一 定の 効果 を欲 する が故 にそ の効 果を 生ず る行 為﹂ とい う。 藤田 宙靖 はこ れを 批判 して
、﹁
〝
意 思表 示〟
が法 的効 果を 生ず るの は、 あく まで も、 この よう な事 実上 の行 動に 法規 範が 一定 の法 的効 果を 結び つけ るか らで ある に他 なら ない﹂と いい
、﹁
〝
法 規範 が、 行為 者の 意思 に適 合し た内 容の 法的 効果 を与 える 場合〟
が、﹃ 法律 行為 的行 政行 為﹄
﹂で ある とす る。 しか し、 田中 説に おけ る﹁ 意思
﹂や
﹁欲 する
﹂は
、単 なる 心理 的・ 事実 的行 動を 指し てい たの であ ろう か。 柳瀬 良幹 が指 摘し た
ごと く、 一定 の行 為は 必ず つね にそ のよ うな 法的 性質 の行 為で ある とさ れる 以上
、そ れは 現実 に﹁ 意思
﹂し たか 否 か、
﹁欲 した
﹂か 否か とい うこ とで はな く、
﹁意 思﹂ した と考 えら れる
、﹁ 欲し た﹂ と考 えら れる とい うこ とで なけ れば なら ない ので はな かろ うか
。 たと えば
、法 律行 為的 行政 行為 の中 でも いわ ゆる
﹁営 業許 可﹂ と﹁ 公企 業の 特許
﹂は
、表 示上 は同 じ﹁
○○ に×
×を 許可 する
﹂と いう 表現 形式 を用 いて 行わ れる
。そ れに もか かわ らず
、前 者は 必ず つね に命 令的 行為 とし ての 許 可と され
、後 者は 必ず つね に形 成的 行為 とし ての 特許 とさ れる のは なぜ であ ろう か。 前者 はあ らか じめ 一般 的に 課 され てい た事 実上 にお いて その 行為 をし ては なら ない とい う義 務を 解除 する 効果 以上 の効 果を もた ない のに 対し
、 後者 はそ れ以 上に 収用 権の よう な特 別な 権能 を付 与す ると いう 効果 をも って いる とい う、 両者 の効 果の 違い に着 目 して のこ とだ った ので はな かろ うか
。 違反 建築 物に 対す る除 却命 令︵ 建築 基準 法九 条一 項︶ と、 その 強制 執行 手続 にお いて なさ れる 代執 行の 戒告
︵行 政 代執 行法 三条 一項 も︶ また
、と もに
﹁違 反建 築物 Aの 除却 を命 ずる
﹂等 の形 式で なさ れる
。同 じ表 示が
、あ ると き は必 ずつ ねに 命令 的行 為と して の下 命で あり
、他 のと きは 必ず つね に準 法律 行為 的行 政行 為と して の通 知で ある と され るわ けで ある が、 この 場合 は、 代執 行の 戒告 は義 務を 命ず る行 為で はな く、 すで に義 務が 存在 する こと を前 提 にそ の履 行を 催告 する 行為 であ り、 その 効果 は後 続の 代執 行令 書に よる 通知 およ び代 執行 の実 施の 期限 を定 める と いう もの であ るに すぎ ない
。﹁
○○ を命 ずる
﹂と いう こと とは 無関 係に 法律 効果 が発 生す るか ら準 法律 行為 的行 政 行為 だと いう わけ であ るが
、し かし
、見 方に よっ ては
、代 執行 の戒 告に 示さ れた 履行 期限 がそ のま ま後 続行 為の 期 限と なっ てい るわ けで ある から
、表 示さ れた とお りの 法律 効果 が生 じて いる とい いう るわ けで
、法 律行 為的 行政 行 為と どこ が違 うの かと いう 疑問 が生 じる
。実 際、 さき に検 討し た横 浜地 判昭 和五 三年 九月 二七 日︵ 判時 九二
〇号 九 五頁 な︶ ども
、﹁ 行政 庁が
、義 務者 に対 し、 指定 の期 限ま でに その 義務 を履 行し ない とき は代 執行 を実 施す る旨 の
意思 を表 示す るも の﹂ とい って
( )
いる
。
64
これ につ いて も効 果の 側か ら考 えて みる と、 以下 のよ うな 推論 が成 り立 ちう るよ うに 思わ れる
。こ れま で縷 々述 べて きた よう に、 準法 律行 為的 行政 行為 は手 続上 の法 律効 果を もつ にと どま り、 実体 法上 の法 律関 係に は何 ら変 動 を及 ぼさ ない ので ある が、 いう まで もな く、 手続 は、 それ 自体 に独 自の 意味 があ るわ けで はな く、 実体 的な 法律 関 係の ため に存 在す るの であ る。 柳瀬 論文 では
、通 知は 表示 する こと その こと を目 的と する もの で、 それ 以外 に目 的 を有 しな いも ので ある とい うと ころ から
、通 知は 後続 の行 為を 適法 なら しめ る効 果を 生ず るも ので ある とい う結 論 が導 かれ てい たわ けで ある が、 この よう な﹁ 目的
﹂は
、あ くま でも
、﹁ 行為 に表 示さ れた 目的 の意 味で はな く、 行 為を 手段 とし て達 せん とし てい る行 為外 に存 する 目的
、即 ち所 謂動 機の 意味
﹂で ある とさ れて いた ので あっ た。
﹁後 続の 行為 を適 法な らし める 効果
﹂だ けで 処分 性、 そし て行 政行 為た る資 格を 認め てよ いか につ いて は、 これ ま で論 じて きた よう に疑 問が ある わけ であ るが
、そ れは おく とし て、 この
﹁目 的﹂ が﹁ 行為 の表 示さ れた 目的
﹂で は なく
﹁行 為外 に存 する 目的
﹂と され たの は、
﹁後 続の 行為 を適 法な らし める
﹂と いう こと が、 それ 自体 にお いて 意 味の ある もの では なく
、そ の手 続が 仕え ると ころ の実 体的 法律 関係 を実 現す ると いう 最終 的な 目的 との 関係 で、 こ れに 付随 した 意味 しか もた ない から では なか ろう か。 つま り、 代執 行の 戒告 の場 合、 これ は後 続の 代執 行令 書に よ る通 知お よび 代執 行の 実施 の期 限を 定め ると いう 効果 をも つわ けで ある が、 この 後続 行為 の期 限を 定め ると いう こ とが それ 自体 で意 味を もっ てい るわ けで はな いの であ って
、最 終的 な目 的は 違反 建築 物を 除却 する とい うこ とで あ り、 それ との 関係 で従 たる 意義 しか もた ない とこ ろか ら、 それ は﹁ 行為 に表 示さ れた 目的
﹂で はな く、
﹁行 為外 に 存す る目 的﹂ と考 えら れる こと にな るの では ない かと いう こと であ る。 除却 命令 と代 執行 の戒 告は
、﹁
○月
×日 ま でに 違反 建築 物A を除 却せ よ﹂ とい う同 じよ うな 表現 形式 で行 われ るわ けで ある が、 法律 行為 的行 政行 為と して の 除却 命令 の方 は、 まさ に﹁ 違反 建築 物A の除 却﹂ とい う最 終的 な目 的で ある とこ ろの 義務 を課 すも ので ある から
、
それ は﹁ 行為 に表 示さ れた 目的
﹂が その まま 法律 効果 とな って いる と考 えら れる こと にな る。 これ に対 し、 準法 律 行為 的行 政行 為と して の代 執行 の戒 告の 方は
、﹁ 違反 建築 物A の除 却﹂ の義 務に 何ら の変 動も 加え ずに
、た だ﹁
○ 月× 日ま で﹂ とい う部 分が
、後 の代 執行 の実 施の 期限 とな る効 果を 有す るに すぎ ない ので
、そ れは
﹁行 為外 に存 す る目 的﹂ と考 えら れる わけ であ る。 つま り、 法律 行為 的行 政行 為と 準法 律行 為的 行政 行為 の区 別に おい て、
﹁意 思﹂ とか
﹁欲 する
﹂と いわ れて いた のは
、単 なる 心理 的な 事実 では なく
、そ の行 為が 有す る効 果に 着目 して
、最 終的 な 目的 その もの を効 果に もつ か、 この 目的 に従 属す る意 味を もつ にす ぎな い効 果を もつ かと いう とこ ろか ら、 法の 世 界の 問題 とし て考 えら れた もの だっ たの では なか ろう か。 これ が、 本稿 の憶 測す ると ころ であ る。
︵
︶ Bo do Pi er ot h/ Be rn ha rd Sc hl in k, Gr un dr ec ht eS ta at sr ec ht II ,2 3. Au fl ., 20 07 ,R n. 23 8.
︵ 59
︶ 藤田
・前 掲注
︵
︶三 七五
~三 七六 頁。
︵ 60
︶ 個室 付き 浴場 に関 する 最二 小判 昭和 五三 年五 月二 六日
︵民 集三 二巻 三号 六八 九頁
︶、 最二 小判 昭和 五三 年六 月一 六日
︵刑 集三 二巻 四号 六〇 五 61 頁︶
。
︵
︶ Ha ns -U we Er ic hs en ,i n: de rs /D ir kE hl er s( Hr sg .) ,A ll ge me in es Ve rw al tu ng sr ec ht ,1 2. Au fl ., 20 02 , 12 Rn .3 8 -39 . 62
§
︵
︶ Ma tt hi as Ru ff er t, in :H an s -Uw eE ri ch se n/ Di rk Eh le rs (H rs g. ), Al lg em ei ne sV er wa lt un gs re ch t, 14 .A uf l. ,2 01 0, 21 Rn .4 4. 63
§
︵
︶ 東京 地判 昭和 四一 年一
〇月 五日
︵行 裁集 一七 巻一
〇号 一一 五五 頁︶ も、
﹁義 務者 にお いて 戒告 に指 定さ れた 期限 まで に義 務を 履行 しな いと き 64 は代 執行 も実 施す べき 旨の 意思 を表 示す るも ので ある
﹂と 述べ てい る。
五 お わ り に これ まで 検討 して きた とこ ろを まと める と、 以下 のと おり であ る。
① 準法 律行 為的 行政 行為 とさ れて きた 行政 行為 の中 には
、法 律行 為的 行政 行為 の分 類と して 論じ られ てき た命