割合を有する合成種「あすなろ卵Ⅰ」を造成し,1992年から緑色卵生産鶏「あすなろ卵鶏」と して農家に普及させている。しかし,1995年からは新系統「あすなろ卵Ⅱ」が造成されたので
「あすなろ卵鶏」は「あすなろ卵Ⅰ」を雄系,「あすなろ卵Ⅱ」を雌系とした交雑により生産し ている。これは「あすなろ卵Ⅰ」と「あすなろ卵Ⅱ」の交雑によって産卵率や生存率等の形質 に雑種強勢が発現するためである。
2)造成方法
本種の造成に利用した素材鶏は農林水産省畜産試験場から導入した青卵殻色遺伝子を保有す る白色レグホーンおよび当部保有のロードアイランドレッドであった。1988年に素材両鶏種の F1を採種し,直ちに集団を閉鎖,以後世代間隔1年で更新している。本種はF5世代の1992年 孵化鶏から卵殻色の緑色を濃くするため,卵殻色a*を低める指数選抜を行い,1995年からは 卵殻色a*の低下と産卵率の増加,1997年からは卵殻色a*の低下,産卵率および卵重の増加の 指数選抜を行っている。
3)最近の能力
本種の平均能力は図3および表10,卵殻色は表11に示した。また,年次に対する能力平均
卵殻色のL*は84.9〜87.8,本報の範囲は前報2)における範囲84.7〜87.6と大差がなかった。
a*は–5.83〜–5.16,前報2)においては–6.84〜–5.71,本報では前報2)に比べやや高くなった。一 図3 あすなろ卵¿の年次別能力平均値の推移
方,b*は4.58〜6.16,前報2)では5.7〜7.2,本報ではやや低くなった。C*は7.34〜8.57,前 報2)では8.4〜10.1,本報ではやや低くなった。色相角度は136〜144度で,前報の134〜139 度に比べやや高くなった。卵殻色の各形質について年次に対する能力平均値の一次回帰係数は いずれも有意ではなかった。以上の結果から,本種では前報2)で得られた卵殻色の選抜効果,
すなわちL*およびa*の低下,b*およびC*の増加は見られなかった。しかし初産日齢の早ま る傾向と産卵率の顕著な増加が得られた。これは,1995年から採用した産卵率の増加を加えた 指数選抜の効果と考えられる。
表10 あすなろ卵Ⅰの年次別能力平均値1)
151〜450日齢生存鶏産卵率(%)
300日齢卵重(g) 300日齢体重(g)
初産日齢(日)
孵化年次
58.1±25.6 68.0±20.4 71.5±20.5 72.6±18.6 72.1±20.6 77.2±16.5 76.0±19.0 55.6±4.3
54.8±4.6 53.0±4.2 54.3±4.1 55.1±4.5 55.9±4.5 57.3±4.0 1,920±257
1,827±307 1,719±264 1,774±237 1,773±297 1,821±294 1,978±277 173.4±15.7
169.0±15.0 154.7±17.1 166.3±15.0 154.7±11.7 156.9±11.2 159.2±14.0 1995
1996 1997 1998 1999 2000 2001
1)平均値±標準偏差
表11 あすなろ卵Ⅰの 300 日齢卵殻色1)
C* 色相角度 b*
a*
孵化年次 L*
143.0±12.1 143.6±14.0 140.0±14.4 137.3±12.0 139.6±13.5 135.8±14.6 141.6±14.1 7.76±1.92
7.44±1.94 7.34±2.00 8.27±1.97 8.02±1.88 8.57±2.44 7.68±2.13 4.83±2.38
4.58±2.47 4.86±2.54 5.74±2.43 5.33±2.43 6.16±3.09 4.97±2.73 –5.83±0.83
–5.57±0.90 –5.16±0.88 –5.70±0.88 –5.68±0.92 –5.55±0.89 –5.53±0.78 87.23±2.04
87.81±2.15 86.42±1.98 84.94±3.19 86.41±2.13 86.54±2.38 87.40±2.18 1995
1996 1997 1998 1999 2000 2001
1)平均値±標準偏差
表12 年次に対する能力平均値の一次回帰係数 (あすなろ卵Ⅰ)
一次回帰係数 形 質
–2.39† 7.62 0.34 2.60**
–0.07 0.02 0.14 0.10 –0.72 初産日齢
300日齢体重 300日齢卵重
151〜450日齢生存鶏産卵率 300日齢卵殻色L*
300日齢卵殻色a* 300日齢卵殻色b* 300日齢卵殻色C*
300日齢卵殻色色相角度 †:P<0.10 **:P<0.01
4.あすなろ卵Ⅱ 1)特徴
本種も青卵殻色遺伝子(O)を保有する緑色卵殻をもつ合成種である。その血液割合は白色 レグホーン約1/2,民間赤玉鶏約1/2である。本種は2002年現在緑色卵生産鶏「あすなろ卵 鶏」の雌系として使っている。本種の外貌は写真9および写真10に示した。
2)造成方法
本種の素材鶏は1993年に千葉県養鶏試験場から種卵導入した青色卵生産鶏である。素材鶏 は直ちに集団を閉鎖し,以後世代間隔1年で,卵殻色a*を低くし,産卵率および卵重を高める 選抜を継続している。
3)最近の能力
本種の平均能力は図4および表13,卵殻色は表14に示した。また年次に対する能力平均値 の一次回帰係数は表15に示した。初産日齢は各年次で146〜185日,300日齢体重は1,832〜 2,114g,300日齢卵重は60.8〜62.9g,151〜450日齢生存鶏産卵率は61.5〜74.8%,これらの 形質はいずれも年次に対する能力平均値の一次回帰係数は有意ではなかった。また前報2)では初 産日齢146〜159日,300日齢体重1,971〜2,243g,300日齢卵重60.1〜61.1g,151〜450日 齢生存鶏産卵率64.0〜81.9%の範囲となっていた。本報の体重,卵重は前報値と大差なかった が,初産の遅延,産卵率の低下が見られた。これは,前報2)ではF1およびF2世代であるた め,雑種強勢の喪失によるものであろう。
卵殻色については,L*が83.6〜86.5で年次に対する能力平均値の一次回帰係数は有意でな かった。a*は–5.69〜–4.87で,年次の推移に伴って年当たり0.14ずつ低下した(P<0.01)。ま
た,前報2)におけるa*の範囲–5.28〜–4.82より低い傾向があった。これは,本種が集団閉鎖直
写真9 あすなろ卵À雄 写真10 あすなろ卵À雌
後からa*の低い方に選抜しているため,その選抜効果と見られる。b*は5.8〜10.6で年次に 対する能力平均値の一次回帰係数は有意でなかった。しかし,前報2)におけるb*の範囲は8.9
〜12.3であるため,本報における範囲は低くなり青味が増した。C*は7.8〜12.0で年次に対す 図4 あすなろ卵Àの年次別能力平均値の推移
る一次回帰係数は有意でなかった。前報値は10.6〜13.4であるため,本報の範囲はやや低くな る傾向があった。色相角度は各年次で120〜135度で年次に対する一次回帰係数は有意ではな かった。前報2)における範囲は113〜124度,本報の値はやや高くなり,赤緑から黄緑の色相 になった。
前報2)において,あすなろ卵Ⅱの卵殻色は,あすなろ卵Ⅰに比べ, L*が低く,a*が高い値を 示し,黄緑色は濃いものの赤味の強い傾向が見られた。これは,あすなろ卵Ⅱの素材鶏に卵殻 色の褐色が濃い赤玉鶏を使ったことによるものである。このため,本種ではL*を変えず,a*
を低くする選抜を行ってきた。その結果,本報では,a*の顕著な低下が見られ,美しい黄緑色 表13 あすなろ卵Ⅱの年次別能力平均値1)
151〜450日齢生存鶏産卵率(%)
300日齢卵重(g) 300週齢体重
初産日齢(日)
年次
68.2±14.7 68.3±17.4 72.5±17.2 61.5±20.7 61.5±19.1 74.7±15.3 74.8±12.4 62.5±5.2
62.9±5.3 60.8±4.9 62.6±5.2 62.5±4.8 62.8±4.5 62.3±4.9 1,994±235
2,114±348 1,864±228 1,953±278 1,832±305 1,951±269 1,925±283 157.0±22.1
160.3±18.2 146.0±12.2 166.2±21.1 184.8±17.3 167.4± 8.7 162.3± 9.9 1995
1996 1997 1998 1999 2000 2001
1)平均値±標準偏差
表14 あすなろ卵Ⅱの 300 日齢卵殻色1)
色相角度 C*
b* a*
L* 年次
133.3±12.8 119.8±11.7 130.5±14.7 130.9±15.6 130.5±12.9 128.8±13.4 134.8±13.9 7.80±2.47
12.01±3.97 8.70±2.82 9.56±2.76 9.47±2.33 9.94±2.66 8.87±2.29 5.80±2.87
10.56±4.37 6.78±3.45 7.34±3.53 7.27±2.95 7.88±3.27 6.43±2.96 –4.87±0.97
–5.19±1.20 –4.96±0.85 –5.52±1.28 –5.65±1.16 –5.61±0.95 –5.69±0.95 86.52±2.61
85.59±2.79 83.55±3.92 85.39±2.85 85.28±2.45 84.54±2.70 85.47±2.73 1995
1996 1997 1998 1999 2000 2001
1)平均値±標準偏差
表15 年次に対する能力平均値の一次回帰係数 (あすなろ卵Ⅱ)
一次回帰係数 形 質
2.46 –20.21
0.02 0.77 –0.13 –0.14**
–0.11 –0.01 0.80 初産日齢
300日齢体重 300日齢卵重
151〜450日齢生存鶏産卵率 300日齢卵殻色L*
300日齢卵殻色a*
300日齢卵殻色b*
300日齢卵殻色C*
300日齢卵殻色色相角度
**:P<0.01
の濃い卵を産する鶏種となり,選抜の効果が明らかであった。今後さらに,a*を低くするとと もに,産卵率を高めることに選抜の重点を移す必要がある。
5.卵黄重選抜系 1)特徴
白色レグホーン種で卵黄重を増加させる選抜を行っている鶏種である。本種の外貌および卵 黄の大きさは写真11,12および写真13に示した。
写真11 卵黄重選抜系統雄 (とさかは断冠している)
写真12 卵黄重選抜系統雌
写真13 1994 年孵化
卵黄重選抜系(左):卵重 61.3g,卵黄重 17.8g 無選抜対照系(右):卵重 57.2g,卵黄重 16.0g
2)造成方法
基礎世代は1984年から1993年まで217日齢と273日齢の平均卵黄重を重くする単独選抜を 7世代行っている3)。その後の世代では産卵率,273日齢卵黄重および卵重を増加する指数選抜 を行っている。
3)最近の能力
本種の平均能力は図5,図6および表16,卵構成成分は表17に示した。また年次に対する能 力平均値の一次回帰係数は表18に示した。初産日齢は各年次で151〜177日で年当たり2日ず つ早くなる傾向があった(P<0.13)。240日齢体重は1,555〜1,849gで年当たり23gずつ重くな る傾向があった(P<0.11)。300日齢卵重は60.4〜67.0gで年当たり0.6gずつ増加した(P<0.01)。 151〜450日齢生存鶏産卵率は53.6〜71.4%で年次に対する能力平均値の一次回帰係数は有意 ではなかった。選抜形質の273日齢卵重は59.1〜64.5gで年当たり0.6gずつ増加した(P<0.01)。 273日齢卵黄重は17.7〜19.2gで年当たり0.14gずつ増加した(P<0.05)。273日齢卵殻重は5.7
〜5.9g,卵黄卵重比は29.4〜30.9%でこれらの形質は年次に対する能力平均値の一次回帰係数 は有意ではなかった。卵白重は35.7〜39.6gで年当たり0.45gずつ増加した(P<0.01)。また卵 殻卵重比は9.16〜9.67%で年当たり0.07%ずつ減少した(P<0.01)。
加藤ら(1977)6)は,卵重が異なる三鶏種の比較から,卵重および卵白重は6〜7gの差があっ たが,卵黄重の差はほとんどなく,大卵鶏種ほど卵黄卵白比および総固形分卵重比((卵重−総
図5 卵黄重選抜系の年次別能力平均値の推移(1)
水分量−卵殻重)÷卵重)が低くなることを報告している。また,三好・光本(1980)7)は卵黄 卵白比の選抜反応が主に卵白重の変化に起因したとしている。これらのことから卵重を大きく する選抜は卵黄重より卵白重により大きな相関反応を引き起こし,鶏卵中の水分含量を高めた と考えられる。本種では卵重において8年間(1994年と2001年の比較)で5g増加した。ま
図6 卵黄重選抜系の年次別能力平均値の推移(2)
表16 卵黄重選抜系の年次別能力平均値1)
151〜450日齢生存鶏産卵率(%) 300日齢卵重(g)
240日齢体重(g) 初産日齢(日)
孵化年次
53.6±14.6 69.6±14.6 62.1±20.6 70.3±13.8 55.0±20.1 62.8±17.0 71.4±15.3 65.5±19.8 60.4±4.7
64.8±3.8 64.6±4.8 63.0±3.3 64.8±4.2 64.1±3.7 65.8±3.7 67.0±4.0 1,555±17.2
1,781±17.7 1,767±20.5 1,698±17.8 1,698±23.0 1,675±22.8 1,810±19.2 1,849±17.4 177.2±31.0
160.5±12.7 161.1±22.5 160.3±19.8 154.2±19.4 169.2±12.4 161.3± 9.8 150.6± 8.9 1994
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
1)平均値±標準偏差
表17 卵黄重選抜系の 273 日齢卵構成成分1)
卵黄卵重比(%) 卵殻卵重比(%)
卵白重(g) 卵殻重(g)
卵黄重(g) 卵重(g)
孵化年次
29.9±1.17 30.0±1.60 30.9±2.00 30.9±1.50 30.4±1.57 29.8±1.34 29.4±1.21 29.9±1.27 9.67±0.53
9.53±0.62 9.59±0.70 9.52±0.59 9.50±0.68 9.45±0.59 9.19±0.51 9.16±0.61 35.7±23.3
37.8±27.8 36.6±34.3 36.6±24.6 37.6±31.3 38.2±25.5 39.6±25.1 39.1±26.3 5.7±0.5
5.9±0.5 5.9±0.5 5.8±0.4 5.9±0.6 5.9±0.5 5.9±0.5 5.9±0.6 17.66±1.09
18.66±1.14 18.94±1.19 18.92±1.04 19.00±1.28 18.72±1.12 18.95±1.15 19.17±1.17 59.1±3.5
62.4±3.6 61.2±4.9 61.3±3.1 62.6±4.3 62.9±3.5 64.5±3.6 64.1±3.8 1994
1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001
1) 平均値±標準偏差
た,卵白重は同じ期間に3.4g増加し,卵黄重は1.5g増加した。卵黄卵重比はともに29.9%で 変化はなく,卵黄卵白比も0.49と変化はなかった。これらの結果は,卵黄重を選抜指標に取り 上げることによって,卵重の急速な増加が得られるとともに卵黄重の増加により卵の総固形分 量を高めるのに有効であることを示している。
参 考 文 献
1)西藤克己・吉田晶二(1991):地域動物資源の利用による特産鶏肉・鶏卵の開発 1)肉用タイ プ速羽性横斑プリマスロックの作出,青森県畜産試験場試験研究成績書(平成2年〜3年), 132-135.
2)西藤克己・田鎖高晴・對馬義弘(1996):鶏の改良繁殖事業 優良種鶏の造成および能力改善
(第1報),青森県畜産試験場試験研究成績書(平成6年〜7年),157-164.
3)西藤克己・吉田晶二(2000):鶏の卵黄重選抜における卵構成成分の選抜反応,東北畜産学会報 49,22-29.
4)福原元一編集(1994):日本工業規格色の表示方法 L*a*b*表色系及びL*u*v*表色系,財団法 人日本規格協会,6.
5)西藤克己・吉田晶二(1991):地域動物資源の利用による特産鶏肉・鶏卵の開発 2)「あすな ろ卵」実用鶏の交配様式および新有色卵の開発,青森県畜産試験場試験研究成績書(平成2年
〜3年),136-142.
6)加藤貞臣・鈴木昭夫・山崎 猛・大塚勝正・広瀬一夫・井口 淳(1977):鶏種と日齢による卵 質の変化,愛知県農総試研報C9,9-15.
7)三好俊三・光本孝次(1980):鶏卵における高および低卵黄・卵白比の選抜について 家禽学会 誌17,219-227.
表18 年次に対する能力平均値の一次回帰係数 (卵黄重選抜系)
一次回帰係数 卵黄重
–1.95† 22.98† 0.62*
0.94 0.61**
0.14*
0.01 0.45**
–0.07**
–0.07 初産日齢
240日齢体重 300日齢卵重
151〜450日齢生存鶏産卵率 273日齢卵重
273日齢卵黄重 273日齢卵殻重 273日齢卵白重 273日齢卵殻卵重比 273日齢卵黄卵重比
†:P<0.13 *:P<0.05 **:P<0.01